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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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そこでなら、確かに、獣にも聖人にもなれるだろう。



サド侯爵、タレイラン、メッテルニヒ夫人、ボードレールなど、
歴史の波涛に消えた思考の煌きを華麗な筆で描き出した短編集。
表題作ほか全7編を収録。

★収録作品★

 弁明 
 激しく、速やかな死 
 荒地 
 フリードリヒ・Sのドナウへの旅 
 金の象眼のある白檀の小箱 
 アナトーリとぼく 
 漂着物

***

本作中に〝一篇の詩のような物語〟という表現が出てくるのですが、
この小説こそがまさにそれだろう、というのが本作の印象。
正直小説としては(私に世界史の知識が足りないせいもあるのかもしれませんが)
あまり面白いとは思えない本作、けれどこれを散文詩集と捉えればかなり上質の部類に入ると思う。
とにかく文章が美しいし、言葉選びのセンスにも秀でていて、
けれど物語のモチーフやオチは月並みに感じられたので。

それとタイトルに反して〝速やか〟ではあるけれど〝激しく〟はない死ばかりが
描かれているのにも期待をそがれた感があった。
タイトルどおりなのはせいぜい〝フリードリヒ・Sのドナウへの旅〟ぐらい。
速やかなだけの死ならこの自殺大国・日本で毎日のように大勢の人間が(悲しくも)果たしている、
だからこそそこに激しさが加わった死を読めると思っていたらとんだ肩透かし。

ある程度本を読みなれている人におすすめの一作です。
普段読書をしない人はたぶん途中で本を閉じます。
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今でも、見えない友達はいる?



ひややかな恐怖が胸に迫る――青春ミステリの気鋭が初めて封印を破った現代の怪談!
おまじないや占い、だれもが知っていた「花子さん」。
夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。
やくそくをやぶったひとは、だぁれ?
その向こう側は、決して覗いてはいけない――。

★収録作品★

 踊り場の花子 
 ブランコをこぐ足 
 おとうさん、したいがあるよ 
 ふちなしのかがみ 
 八月の天変地異

***

各話ごとのレビュー。

◆踊り場の花子◆

プロ作家さんに向かって失礼かもしれないけど、
もしこれをミステリ系新人賞に送ったら文句なしに受賞するだろうなあ。
登場人物が少ないにも関わらず十分満足できるキャラの立ち具合、
巧妙ですっきりとした伏線、
現代病理を巧妙に物語に取り入れる手腕、
花子さんはトイレじゃなくて階段にいるという独創性、
ページを繰る手が無意識にどんどん早くなっていくような息もつかせぬストーリー展開、
そしてラスト一行で感じる戦慄。
文句なしに面白かった。

◆ブランコをこぐ足◆

冒頭のハイジ豆知識には驚かされた&笑った。
数々の人間の証言から真相が明らかになる、という構成の物語だけど、
早い段階で事件の真相は読めてしまう。
ラストはああいう曖昧な終わりじゃなくてもとズバーン! と事実を突きつける感じのほうが
よかったんじゃないかと個人的には思う。
でもそれじゃホラーじゃなくてミステリか。

◆おとうさん、したいがあるよ◆

一気読み。
先が気になるからというよりは、ぼやけたモザイクの向こう側にあるものを早く知りたくて。
でも最後までモザイクの正体がくっきりと見えること叶わず。
自分の見解としては、
①実はつつじが認知症で自分を孫と思い込んでいる祖母だった。
ふふう、と鳴く鳥呪い
のどちらかだと思うんだけど定かじゃない。

◆ふちなしのかがみ◆

さすが表題作、文句なしに面白い。
まあちょっと〝彼女たち〟には「何で友達になったの?」と訊きたいけど。
。。。将来こんな風にならないように、私も気をつけなきゃな。。。

◆八月の天変地異◆

ありふれた話にも関わらず、最後は泣きそうになってしまった。
シンプルな物語ほど作者の筆力が問われるんだな。やっぱり辻村さんはすごいです。
これを八月に読めてよかった。よりリアルに読むことが出来た。
そのぶん悲しくもなるのですが。。。



非常におすすめです。
今自分が中高生だったら読書感想文に間違いなくこの本を選ぶな。

オマケ:
cicada.jpg









何ともタイムリーなことに今朝母親が見つけて撮った
脱皮直後のセミ。
確かにきれい&かわいい。
永遠に解読されない記号。



妻はそれきり11年、口を利かなかった――。
30を過ぎて結婚した男女の遠く隔たったままの歳月。
ガルシア=マルケスを思わせる感覚で、日常の細部に宿る不可思議をあくまでリアルに描きだす。
過ぎ去った時間の侵しがたい磐石さ。その恵み。人生とは、流れてゆく時間そのものなのだ――。
小説にしかできない方法でこの世界をあるがままに肯定する、日本発の世界文学! 
第141回芥川賞受賞作。

★収録作品★

 終の住処
 ペナント

***

芥川賞受賞作はいつもチェックしているけど、これが芥川賞受賞作?というのが率直な感想。
今まで読んだ中では一番微妙かも。

とにかく主人公の思考がトレースしづらい。
純文学の主人公というのは総じて精神病質なタイプが多いけど、本作の主人公は
躁&ノイローゼキャラで、精神病質というよりはほんまもんの精神病患者っぽい。
それを差し引いても、レストランに入ってガラス窓越しに泣いている女の子を見て急にキレて
席かわろうとしたりとどうにも思考回路が意味不明でついていけない。
そしてあらゆる物事にいちいち大袈裟なリアクション&考え方をするので、
読み進めるごとにうざくなってくる。

大袈裟といえば著者の磯崎氏の比喩・暗喩が総じて大袈裟&陳腐なので
その点も読んでいてつらかった(「夕日に人生の終わりを感じる」って今どき。。。失笑)。

互いに妥協して結婚した相手との夫婦生活、というのが物語の主軸なはずなのに
会社のいざこざやら何やらまで持ち出してきてしかもその描写が無駄に細かく、
主人公夫婦も単なる倦怠期の二人みたいで
〝妥協した結婚ならではのあれこれ〟がほとんど描かれてないので
結局最後まで著者が何を言いたかったのかわからずじまいだった。

よかったのはイグアナの挿話とラスト一行ぐらいかな。
ちなみに「恋をした大勢の人間の中に実は一人の人を見ていた」というのは
既にこの↓漫画家がやってます(そしてこっちのほうがよっぽどいいです)。



主人公が島耕作並みにモテるのも物語を進める上で必要あるのかないのかよくわからんし。
そもそもたとえモテるとしてもそのモテ方がおかしいし(あれじゃ女たちみんな変態だよ)。

何も心に残らなかった。
同じ夫婦のことを書いた芥川賞受賞作なら、伊藤たかみ氏の〝八月の路上に捨てる〟のほうが
断然いい。

あまりおすすめしません。
これが芥川賞を獲れて田中慎弥氏に獲れないのがあまりに納得いかない。
まあ、そのうち正しい明かりになるだろう。



人って、生きにくいものだ。
みんなみんな、本当の気持ちを言っているのかな?

青春小説の金字塔、
島田雅彦『僕は模造人間』('86年)
山田詠美『ぼくは勉強ができない』('93年)
偉大なる二作に(勝手に)つづく、'00年代の『ぼくは~』シリーズとも言うべき最新作!
「本が好き!」連載中に第一回大江健三郎賞を受賞したことで、ストーリーまでが(過激に)変化。
だから(僕だけでなく)登場人物までがドキドキしている(つまり落ち着きがない)、
かつてみたことのない(面白)不可思議学園小説の誕生!
* ( )内は作者談

***

読み終えたあとパーっとページをめくってみたら、ほとんど全部の文章が
記憶に残ってることにびっくり。
それだけ一文一文が印象的で、心に刻まれてたんだろうな。

よく友人に「こうこうこういうことをこんな風に考えることってない?」と訊いて
「何それ普通考えないよ。あんた突き詰めすぎ。どういう頭してんの」と笑い飛ばされることを
本作のヒロインは当たり前に考えていて、そのことにとてもほっとさせられた(だから純文学は好き)。

そして普通に面白すぎ。読んでいる間何度も爆笑。
(特に「おいどんは~」と「ニョローンニョロニョロ」には本気で吹いた)

図書部ならではの想像力(妄想力?)と、でもそれに飲まれてしまうんじゃなく
そんな妄想体質の自分を客観的な視点で見ている、主人公・望美のバランス感覚がすごく好き。
きっと金子先生の小説のあのタイトルは、望美の行動よりは思考回路を指したものなんだろうな。

すごく楽しめた小説でしたが、ただ残念なのは、
〝彼〟のエピソードが尻切れトンボに終わってしまったこと。別に作中に出さなくてもいいから
もうちょっと納得のいくようにストーリー内で処理してほしかった。
あと、頼子のラストの行動の意味。もともとキャラの掴みにくい子だけど、
最後のあれは何がきっかけになって突然あの行動に出たのか(出ることができたのか)、
あとちょっとだけでいいから読者に想像できるように書いてほしかった。

でもおすすめです。
久々いい本を読んだなー。
ノゾミヲイエ――



宿泊料1泊7000円、都内にあるリバーサイドホテル。何の変哲もないそのビジネスホテルには、
使用禁止の部屋―廊下一番奥の「705号室」が存在していた。
その部屋はなぜ使用禁止になっているのか?
その部屋でいったい何があったのか?
ホテルの従業員でも、知る者は誰もいない。
新しく支配人に就任した本城はホテルの売り上げを上げるため、
「705号室」を改装し十数年ぶりに予約を取ることを決めた。
やがて、大きな代償を払うことになることを知らずに。
「705号室」に関わったがために、宿泊者、デリヘル嬢、支配人、客室係、フロント係たちの人生が
災いに蝕まれていく…。

***

。。。本当にあの〝毒殺魔の教室〟を書いた人?
終始一貫つまらなすぎ。
文章下手すぎ。
とてもじゃないけどあの傑作を書いた人と同一人物だとは思えない。
大昔に書いた原稿を引っ張り出してきて出版したとか?

第一章なんて今どき昼の怪談ドラマでもしないようなベタなストーリーだし
なかなか読点(。←のこと)打ってくれないから読みにくいにもほどがあるし(打たないまま
ページをまたいだときはさすがに笑った)。
「~のだった」「とも思った」「も(この一文字がいらないところに頻繁に出てくるんだこれがまた)」
だらけでどんだけ文章表現の引き出しないのって感じだし。

序盤の、〝この怪奇現象、幽霊のせいと思わせておいて実は人間の仕業なんですよ、
それを登場人物たちが勝手に幽霊だと勘違いしてビビってるんですよ、
一番怖いのは疑心暗鬼に陥った人間の精神なんですよ〟
ってスタンスを最後まで貫けばまだよかったのに、最後本当に霊出てきちゃうし
それどころか妖怪まで出てくるし。
しかも妖怪は女の経血が好物とか言ってる癖に妊娠させてどうすんだよと。

。。。あーもうこれ以上突っ込む気にもならないほどつまらない小説だった。
この作家さんには期待してたのに。

「望みを言え」?
〝毒殺魔の教室〟レベルの物語を次こそは書いてください塔山先生。

お前はお前の大目標を、大往生を探せ。



五十人の老婆が、奇妙なコミュニティを形成する現在の姥捨て山「デンデラ」。
ある者は自分を捨てた村を恨み、ある者は生き永らえたことを喜び、ある者は穏やかな死を願う。
様々な感情が渦巻く隠れ里は、一匹の巨大羆の襲来により、修羅場と化した――。

***

出ん出らりゅうば 出て来るばってん 
出ん出られんけん 出ーて来んけん 
来ん来られんけん 来られられんけん 
来ーん来ん

出ようとして出られるならば、出て行くけれど、
出ようとしても出られないから、出て行かないからね。
行こうとしても行けないから、行くことはできないから、
行かない、行かない。



。。。やっぱりこの歌がタイトルの元なんだろうか(え? 動画のインパクトが強すぎる?
気にしない!)

佐藤氏は文章が冗長なので少しメリハリに欠ける部分もあったけど、
ミステリの要素も入った本作は割りと楽しく読めました。

ただ、こういった作品を書くには、佐藤氏はまだ若すぎたように思える。
何でそう思うかって、ばあちゃんたちがやたらとたくましすぎるんだよな。
めちゃくちゃ寒い山中なのに妙に寝つきがいいし、
(慢性的に食料不足なのを差し引いても)食欲も旺盛。
ヘタな若者より感情表現豊かだし喜怒哀楽激しいし、
身体にガタがきてるはずなのに身体能力高い上に体力もある。
挙げ句熊に身体をえぐられてもなかなか死なない。違和感ありあり。
老人ならではの生への無頓着(もしくは過剰な執着)、身体や精神の衰え、
そういうものがほとんど描かれていないのは、おそらく著者がまだ二十代だから。
もうちょっと歳をとってからこのテーマに着手してほしかったというのが正直な感想。

人生の最後の最後に、極楽浄土に行く以上の〝大往生〟を見せてくれた彼女には
爽快な感動を覚えましたが。

あーそれにしても、ラストを読んでから表紙を見ると、
「ああこの表紙が。。。」と感慨深い気持ちになるなー。
まだまだ見つけられる海がある。



ミステリ界注目の門井慶喜が描く学園小説!
「テレポーテーションが現実に可能であることを証明して下さい」。
生徒から新任教師に投げられた難問に答えはあるのか?
知的好奇心をくすぐるミステリ。

★収録作品★

 パラドックス実践 
 弁論大会始末 
 叔父さんが先生 
 職業には向かない女

***

文章にクセのある作家さんだけどさすがにもう慣れてきたな。
前回読んだ〝人形の部屋〟よりはずっと面白かった。何より〝弁論ミステリ〟というのが
斬新でいい(まあ、探偵vs犯人のやり取りなんて全部弁論みたいなものなんだけど)。

ただ、表題作〝パラドックス実践〟、これが日本推理作家協会賞ノミネート作品というのは
首を捻らざるを得ない。
生徒たちの
「テレポートは可能か」
「サンタはいるのか」
「海が山、山が海になることはあるか」
この問いに対して主人公の教師が出した答え、正直ただの屁理屈じゃん。
掴みが面白かっただけに裏切られた気分になった。
同じノミネート作品でも、道尾秀介氏の〝流れ星のつくり方〟、
米沢穂信氏の〝心あたりのある者は〟等は「何でこれが受賞しない?」とまで思えたほどの
秀作なのに。

〝弁論大会始末〟も、大会に出た女の子が「鮭を増やすのにこういう方法はどうでしょう」と
提案した方法が彼女が使用した参考文献に載ってなかったことよりも、
他人が考えた方法をあたかも自分が思いついたかのように語ってることのほうが問題なのに
どうして誰も突っ込まないの?と違和感を感じた。
問題解決の鍵になった〝川〟も、彼女は弁論大会においてはそこまではっきりとした言い方は
してないのに教師が妙に勘よすぎるし(というか思い込みが激しい?)。

〝叔父さんが先生〟は一番納得いく話だったかな。
主人公の姪が生意気すぎだけど。

〝職業には向かない女〟、これもまあ読めるんだけど、
著者本人が書いたんじゃない限り(相田みつをのように)、手書きの詩ってそれだけで
活字に比べて印象操作される気がするから主人公の考えには賛同しづらい。
そしてラスト、一見さわやかな終わり方だけどよくよく考えたら主人公微妙にストーカーチックで
怖い(彼女のルックスにもよるけど。。。)。
まあいいけどさ。
タイトルはうまい。好きです。

何だか読んでいる間、自分も弁論に参加してる気になってくる小説だったな。
割りとおすすめ。
思いは濃度を増していく。



昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある
首都・東京。
この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、
警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が
当局に届けられた! しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。
警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。
「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、
エンタテインメント巨編。

***

娯楽小説としては非常に面白く一気に読めてしまいましたが、
巷で評判になっているほどにはクオリティは高いとは思えず。
白夜行〟のように、まず事件が起こり、後の章でその裏側が明らかになる、
この構成は興味をそそるのですが、警察サイドも主人公(犯人)サイドも行動に穴が多すぎて、
(悪い意味で)次にどう出るかがわからないのでどうにも緊迫感がなく読んでいてハラハラしない。

「どうして警察に張られてるのにトレードマークの帽子かぶり続けてんの?」とか
「これだけの大物犯罪者を追うのに立ち〇ョンしてたり全員が揃いも揃って水ガバガバ飲んでたり、
刑事や探偵が張り込みのときに尿意を催さないように水分補給を最低限にするのは基本だろ」とか
「何で真っ黒に日焼けしてるのにコスプレごときで人の眼を欺けるの?」とか(まああの格好は
露出少ないけど)
突っ込みどころ満載でミステリとしては不満が残った。

特にこういう、実際にあった歴史的イベントを背景にした物語は
臨場感があってリアルさを感じられる反面、オチがある程度読めちゃうってデメリットも
あるんだよな。。。

それにしても、現代でも格差社会の貧困層は(昔ほどでないにせよ)
金銭的にも社会的にも苦しい思いをしているわけだけど、
上層の人間たちもストレスによって病を得たり急な倒産に見舞われたりと
その階級ならではの苦しみを抱いている。
主人公が今の時代に生まれてたら、一体どうしてたんだろうな。
それが唯一知りたいことだ。

俺はここに居つづける。

 

住人たちを立ち退かせるため、八木沢省三郎は管理人として骸骨ビルに着任する。
そこは、戦後、二人の青年が子供たちを育てた場所だった。
食料にも事欠き、庭で野菜を作りながら、彼らは命を賭して子供たちと生きた。
成人してもなおビルに住み続けるかつての子供たちと、老いた育ての親、
それぞれの人生の軌跡と断ち切れぬ絆が八木沢の心を動かす。
すべての日本人が忘れられない記憶。
現代人が失った純粋な生き方が、今、鮮やかに甦る。

***

半分フィクション、もう半分は輝さんの日記といった感じの小説だった。
何々をした、どこそこの料理はうまい、何時に寝た。。。こういう表記の羅列には
正直ちょっと寝そうになったり。
個人的な感想としては本編があらすじに負けているようにも思えた。
子供たちを育てた二人の青年の素晴らしさを、もっと強く伝える術が輝氏にはあったと思うのに。
これだったら〝窓際のトットちゃん〟や〝兎の眼〟のほうが主人公を支える大人の魅力が
よほどよく伝わってくる。

主人公がしょっぱなから骸骨ビルの面々に好かれるのにも違和感を感じた。
主人公の奥さんが、新婚でもないのに夫の長い単身赴任を寂しがって泣いたりするのも(正直
自分の知り合いの既婚者は旦那さんがいないと大喜びしてたりします)。
ていうか自分の息子がこれから人生の再スタートを切るってときに
単身赴任先で料理屋を開きたいってそりゃないだろ父ちゃん、と。

唯一いいなと思えたのは、サイコロ寿命占い。これを読んだあとに本作の冒頭を読むと
〝爽快な悲しみ〟という滅多に味わえない感情を味わうことができます。

尊敬できるような大人がいない昨今、本作を子供や若い子に読ませるのはありだと思う。

vsign.jpg







Vサイン。
 

あり得たはずの未来。



ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。
街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、
職務怠慢なアルバイト医、
救急外来の常習者、
事なかれ主義の市役所職員、
尊大な定年退職者……
複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。
残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。
遺族は、ただ慟哭するしかないのか?
モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!

***

導入部から惹き込まれ510Pを一気読み。
最後まで退屈するということがまったくなかった。
一日中手放せないぐらい面白い本に出会ったのは久しぶり。

本当に貫井氏は、〝悪人というほどではないけど小憎たらしいバカ人間〟を書くのがうまい。
特に本作のようなテーマの話を書くのに一番ふさわしい人が筆をとったのだから、
これはもう面白くないわけがない。
まあ、序盤でバラバラに散っているパズルのピースの、模様は一つ一つ見えているわけだから
それを組み立てるとどういう絵になるのかはすぐに予想できてしまうのですが、
それでも面白いんだからすごい。

〝乱反射〟というよりはプリズムのように、いろいろな人間が出した様々な色の光が
一つの色(結末)に収斂していく、その様が絶妙な小説だった(貫井氏がこのタイトルにしたのは
登場人物たちそれぞれの行動が物語に書かれていないところでも第三者に何らかの影響を
及ぼしている可能性を示唆してのことだと思う。「悲劇はこれだけじゃないんだよ」的な)。

ただ。。。本作のケースではあらゆる小さなことが積み重なって惨事を招いてしまったわけだけど、
場合によってはそのモラルのなさが誰かを救っている場合もなきにしもあらず、ということ。
人の善意が誰かを殺すこともあれば、悪事が誰かを救うこともある。
私はモラルのない人間は大嫌いだけど、本作を読んで「もっとモラルに気をつけないと」と
単純に思うのは難しいな。。。
四年前の脱線事故で亡くなった男の人がぜんそくを克服して退院したばかりだったのも、
もし医者の腕がもっと悪ければ死なないで済んだのにと思うとどうにもやるせない。

でもラストは涙が出ました。
ほんの少しずつでいいからこの二人が立ち直っていってくれることを願う。
終盤に出てきたあの手紙、読者が物語という垣根を越えて彼ら夫婦に送ったものだと思いたい。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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