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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「もう行っちゃうの?」
「いつまでも痛いのは嫌だろう?」


 

密室と化した図書館内で女性が短剣で貫かれる。周囲には七芒星の模様が。
城から六人の男が消失、首を切られ、辿り着けるはずのない湖で発見される。
さらに頭部を失くした人間が突然現れたり、人の出入りのない状況で四体もの死体が消える。
恐るべき不可能犯罪の運命的な連鎖を描く本格ミステリ。 

***

北山氏の〝城〟シリーズ、
巷では〝『アリス・ミラー城』殺人事件〟が評判がいいみたいですが、
私は本作が一番面白かった。

著者の代名詞とでもいうべき〝物理トリック〟も、今回は少し地味(というかシンプル)ではあるけれど
意外と予測し難くて明かされたときには読み手をあっと驚かせてくれるし、
200Pちょっとの厚さでこんな3時間の大作映画並みの世界観を描ききれる筆力はすごい。
「よくもまあそこまですごいこと考えつきますね」と思わず言いたくなるような
〝輪廻転生〟を下地にしたはじけとんだ設定を、読み手の心にすんなりと浸透させてしまう
表現力・描写力も感嘆に値する。

ファンタジーと科学、本来相反する二つの要素が何ら違和感なく溶け合っているのも
北山氏ならでは。
この作者は本当にそういうのがうまいからなあ。。。
知ってる限りじゃその二つが水と油みたいに分離してしまってる小説のほうが多いのに。

それにしても本作を読んで痛感したのは、
「男のほうが女よりロマンチストってほんとだなあ」ということ。
著者の恋愛観があまりに壮大すぎて、感動を通り越してめまいすら感じてしまった(北山氏の著作は
女性の読者が多くつきそうだなと前々から思ってはいましたが、本作にてはっきり再確認)。
あーそれにしてもこんな感覚は

 

を読んだとき以来だー(この二つもかなりおすすめ。恋愛なんて次元とっくに超越した、
最強の絆で結ばれた男女の物語を堪能できます)。

本作に敢えて難を言うなら、
戦争パート(本編は〝現代パート〟と〝中世パート〟と〝戦争パート〟に分かれています)の
トリックがいささかアンフェアな点(遺体消失の理由はまあいいのですが、それを推理する
主人公のモノローグに読者の誤解を招く部分あり)と、
某人物が「世の中の男はすべて自分だ」と心底信じている(意味は読めばわかります)割には、
すぐそばにいる別の男性を完全に他人視して嫉妬するという矛盾がある点(自分自身に
嫉妬する人はいないし)。
この二つさえなければ私の中では100点だったのに(まあ他にもツッコミポイントは
いくつかありますが)。

でも全体に良作。推します。
ラストシーンで最後にして最大の謎が明かされたときの切ない高揚感(思わず涙目で「あ!」と
叫んだ)、
更にその次のページに待ち構える驚愕のオチ(↑の二倍の大声で「ああっ!!!」と叫んだ)、
最後まで魅せてくれる物語です。

私が男なら(いや女のままでもいいんだけど)恋人に無理にでも勧める。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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