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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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『カラスヤノ アサイケイスケ アキミレス』

 


忘れてしまってはいませんか? あの日、あの場所、あの人の、かけがえのない思い出を。
東京・下町にあるアカシア商店街。
ある時はラーメン屋の前で、
またあるときは古本屋の片隅で――。
ちょっと不思議な出来事が、傷ついた人々の心を優しく包んでいく。
懐かしいメロディと共に、ノスタルジックに展開する七つの奇蹟の物語。 

★収録作品★

 紫陽花のころ
 夏の落し文
 栞の恋
 おんなごころ
 ひかり猫
 朱鷺色の兆し
 枯葉の天使

***

これはまずいです。
朱川湊人氏に傾倒している私ですが、この作品だけはもう別格。
直木賞受賞作である〝花まんま〟より、こっちのほうがずっと好きだし
内容もハイクオリティだと思う。

ジャンルがホラー寄りのファンタジーという点でも、胸の内にどこかしら傷・または孤独を抱えた
人間の再生を描いた話が多い点でも、朱川氏の作風はかの乙一氏に通じるものがある。
ただしこちらは時代設定が昭和初期。
ただでさえ切ない物語なのに舞台をそんな古き良き時代にされちゃ、
一遍一遍を読み終えたときのやるせなさに拍車がかかって、
もう悶えながら泣くしかありません(笑)。

それぞれの話に当時ヒットした曲がモチーフとして設定されているので、
若い世代の人は両親にでも尋ねながら、まさにその時代を生きたという人は
メロディを思い出して懐かしみながら、本作を読み進めるといいかも。
今はネットで何でも聴けるし、作中の曲をBGMとして流しながら読むのも
またおつかもしれません。

人一倍辛い思いを抱えながらも人一倍誰かを思いやれる、そんな
奇跡のような温かくそして強い人間はこの世界に確かに存在していて、
それは今をちょっと遡ったこんな時代のほうが多かったのかもしれない。
朱川氏はそれをわかっていて、当時のそういった人々のしなやかな強さと優しさを
こうやって書き留めておいたのかもしれない。

氾濫する情報に振り回されることなく自分の頭でものを考えて動けた。
眼の回るような日常に忙殺されることなく自分のペースで日々を生きられた。
親の確かな教育と貧しさへの忍耐に由来する一本芯の通った人間が多かった。

そんな時代。
今はもうほとんど失われてしまった〝人間性〟という名の〝かたみ〟が
ここには描かれている。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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