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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。


日本推理作家協会が厳選。
至高のミステリー作品、夢の共演!

過去1年間に発表されたすべての短篇推理小説の中から、
日本推理作家協会が選び抜いた至高の作品だけを収録。
新鋭からベテランまでキャリアに関係なく、
とにかく面白くて優れた短篇ばかりを集めました。
巻末には「推理小説・二〇一六年」に加え、推理小説関係の受賞作を網羅した
リストも掲載。

★収録作品★

 黄昏/薬丸岳
 影/池田久輝
 言の葉の子ら/井上真偽
 陰獣幻戯/歌野昌午
 都忘れの理由/大崎梢
 みぎわ/今野敏
 旅は道連れ世は情け/白河三兎
 留守番/曽根圭介
 鼠でも天才でもなく/似鳥鶏
 ロングターム・サバイバー/南杏子
 きれいごとじゃない/若竹七海

***

 ◆黄昏◆

嫌いな作家さんじゃないけれど、本編は楽しめなかった。
どうしてこれが日本推理小説大賞受賞作?と首を捻った。
事件の真相も、「知られるのがいやなら単に言わなきゃいいだけじゃん」としか
思えなかったし、犯人が母親を慕っている描写もほぼ皆無なので
そこまでする理由がわからない。というか、慕ってるならトランク詰めに
するなよと。
細かい部分を言うと、主人公の刑事が聴き込みの際、
「どうして彼女が最近亡くなったと知ってるんですか」みたいに訊くシーンが
あるのだけど、「先日〇〇さんがな遺体で発見されて捜査をしてます」って
言われりゃ誰だって最近死んだんだろうなと思うだろと。
何だか微妙な作品でした。

 ◆影◆

速攻オチ読めた。なので途中からはダラダラ読み。
これが日本推理作家協会賞最終候補作だと思うと何とも言えない気持ちになった。
そして主人公がヘタレのくせにかっこつけで好きになれなかった。
ラストはクサい。まあそう来るだろうなとは思ってたけど。
赤の他人の些細な行動から「待てよ、もしかしたら。。。!」と
真相に気付くのも、コナンか二時間ドラマか!と突っ込みたくなった。
あと普通に星型のピアスを男がしてたらダサい。
ダサいと言えば、主人公が尾行する女、そのファッションに運動靴は
ないだろうと細かいとこまで気になった。現実でも実際大人っぽくキメてるのに
足元はスニーカーという女性が多くて「何でそのファッションでスニーカー?」
と内心で突っ込むことが多い日常、些細なことだけど気になってしまった。
面白くなかった。
というかタイトル、「影」なんかじゃなくて「三枚目の皿」とかにしたほうが
よかったのでは?と勝手に思った。
 
 ◆言の葉の子ら◆

謎そのものは、頭の体操的なクイズ本に載っていそうな感じのものだけど、
著者独自の世界観でそれを個性的な短編ミステリに仕上げている。
物語の要となる幼稚園児の不自然な話し方、何か困ったことがあると
何かと舌を出す癖のある主人公の描写が、ラストで真相に収束していく様は、
華麗とまではいかなくてもそれなりに「なるほどな」と思った。
主人公の生徒・福嗣の母親の「私は母親として完璧であろうと、私は、私は」
という、息子のことではなく自分のことしか考えていない様には
かなり苛々させられたけど、こういう母親実際にいるんだろうな。
ラストはちょっと説教臭い気がした。
子供を教える仕事に携わっている身としてはまあまあ面白く読めたけど、
やはりこれも日本推理作家協会賞最終候補作に選ばれるほどのものではない気が。
似た設定の話なら、太朗想士郎氏の「機巧のイヴ」のほうが
遥かに面白かった。
 
 ◆陰獣幻戯◆

主人公の変態描写が面白く、序盤から引き込まれた。
ストーカー被害に遭っている主人公の想い人が、変質者を怖がってる割には
主人公に簡単に好意を持つという展開には疑問を感じたけれど、
そして後半ふたりがセックスしたことを匂わせる描写があったのに
何で主人公何も気付かないんだ?とも思ったけれど、
そういう細かい突っ込みを抜きにすれば面白かった。
ちなみに三人称で書かれた本編、主人公のことが名前ではなく
「彼」と書かれていたので何かの伏線かと思っていたら何もなかったので肩透かし。
あと、殺人の動機は良いものの犯行の発覚に至った理由が唐突でご都合主義にも
感じた。
でも繰り返すけど面白いのでスイスイ読めた。
 
 ◆都忘れの理由◆

ほっこり話。
主人公の老人の心理が、ちょっとお茶目に丁寧に描写されている。
ただ、謎の真相を中盤で主人公がすべて頭の中で推理してしまい、
まさかそのとおりってことはなくて途中でどんでん返しがあるのだろうと
思っていたら本当にそのまんまだったので、構成に勿体なさを感じた。
「まさか、理由はあれじゃ。。。!」とぼかしておいて、
ラストの会話で真相を明かす、という構成にしたほうがいいのではと
思ってしまった。
このままではミステリとは呼べないと思うので。
 
 ◆みぎわ◆

警察小説が苦手なので、読むのに苦労した。
真相がわかっても、「あーまあ、そういうこともあるよね」としか思えず。
というか被害者に連れがいたかどうかなんて、被害者の携帯のメールのやり取りとか
見たらすぐにわかるんじゃないか?と。
同じ警察小説でも、横山秀夫氏のだったら割と面白く読めるのにな。
この作家さんの書く話はあまり好きじゃないみたいです。
 
 ◆旅は道連れ世は情け◆

メフィスト賞出身の作家さんはたまにとんでもないトリックを使ってくるので、
本編もそうなのではないかといろいろ考えを巡らせながら読んでいたものの、
ラストは予想外で「そう来たか」と驚かされた。すぐに読み返して、
散りばめられていた数々の伏線になるほどと感心した。
面白く読めたけれど、主人公と旅を共にする男が主人公に話した自分の過去と、
主人公が好きになる女性の夫がアニメ制作会社に勤めているということが
重要な伏線になっているのかと思いきや見事に本筋に関係なかったので、
そのふたつを物語に絡めればもっと面白くなったのにと個人的には思う。
あと、タイトルにしては、「世は情け」を思わせる描写がなかったので
そのあたりも何かしらのエピソードを入れればよかったのにとも思った。
 
 ◆留守番◆

読み始めてすぐオチがわかったので面白くなかった。
疑問だったのは、何故主人公は「彼女」が未だに女優になりたいと思っていたのかと
いうこと。そんな描写は皆無だったので。まあ単なる彼の妄執だったのかも
知れないけれど、そのあたりが描写不足に感じた。
有名女優を目指す女があんな場所で働いていることにも疑問を感じた。
あと警察無能過ぎ。

 ◆鼠でも天才でもなく◆

短編にしては長め。そしてそんな長さは必要ないのではと思った。
犯人は物語的に「このひとしかいないだろ」と読めてしまうので、
フーダニットは楽しめない。
あと、ある絵画を見て探偵役が事件の真相に気付くのだけど、
この絵で真相がわかるか?と思うほど事件との関連性を感じられなかった。
トリックにも無理があったし。
そして探偵役のヒロインの描写があざとくてちょっと鼻白んだ。
主人公のほかの登場人物への心の突っ込みがちょっと面白かった、
でもそれだけ。
この作家さんの作品で面白かったのは、短編「美しき余命」だけだな。
 
 ◆ロングターム・サバイバー◆

ミステリというにはミステリ要素が弱過ぎた。
そして何より突っ込みたいのは、末期癌にかかった名誉教授が手術を手掛けた
という患者の中にMM(多発性骨髄腫)のひとがいたこと。
私の身内がこれを患っているのだけど、MMは消化器系の癌じゃないので
消化器系癌の権威が手術を手掛けるのはおかしいし、そもそも
外科手術が出来る病気じゃないので。出来て自家移植がせいぜい。
現役医師であるひとが書いた話であるだけに、リアリティのなさを感じた。
ちなみに私事ですが、前述の身内は症状が軽くロングターム・サバイバーなので
安心しています。
 
 ◆きれいごとじゃない◆

好きな作家さんだけど、本編は楽しめなかった。
掃除とおせちに関する蘊蓄を読むのがただひたすらしんどかった。
伏線も、「散りばめられてる」というより「とっ散らかってる」という感じで
雑駁に感じた。物語に起伏もないし。
ラストは同氏の傑作「クール・キャンデー」を思い出してちょっとにやっと
なったけど。
それにしても女性の作家さんって、文体が男性に比べて軽いというか
バリバリの口語体って感じでそういうところはあまり受け付けない(もちろん
そうじゃない女性作家さんもいるけど)。

***

総評としては、どの作品もいまいち。
私の中では、
芹葉大学の夢と殺人(辻村深月)
透明ポーラーベア(伊坂幸太郎)
を超える短編は未だありません。
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それでも、御劔を信じている。



高校生の木崎奏が出会ったのは、職業も風体もどこか浮世離れした御劔耕助という男。
常に和服で丸眼鏡、紙芝居屋を自称し、喫茶店“ひがな”の地下室で昭和レトロな品々に
囲まれて暮らす謎多き人物だ。観客のニーズをまるっと無視した
バッドエンドの紙芝居ばかりつくる御劔に、なぜかいたく気に入られてしまった奏は、
そこから不思議な夏休みを過ごすことに…。
紙芝居が秘められた過去をひもとく、心ほっこりミステリ!

***

著者のデビュー作「裏閻魔」が大好きで、シリーズ全作読破してしまったので、
またこの作家さんの本を読んでみたいと思い手に取った一冊。

角川ホラー文庫から出版されていますが怖いところはほとんどなく、
「なぞとき」と題されているもののミステリ要素もほとんどなく、
強いて言うなら「キャラ萌えほっこりストーリー」といったところ。
ミステリを期待して読んだのでその点はちょっと肩透かしでしたが、
御劔の優しくのほほんとしてとぼけたキャラがとても魅力的なことと、
文章の言い回しの随所にフフッと笑えるユーモアがあり、
楽しく読むことが出来た。
「裏閻魔」とはまるで違う文体に、いろいろな抽斗を持っている作家さん
なのだなあと感心もした。

連作ならでの、今後解き明かされていくだろう伏線もちょいちょい
散りばめられていて、続編も読まなければと思わされたのは
やはり御劔の圧倒的なキャラの良さに拠るものなのだろうなと思う。
あとは著者の筆力。ホラーでもミステリでもない物語をここまで読ませて
しまえるのは、氏の実力の故だと思う。

ちなみに著者の中村さん、ずっと小説を書き続けては賞に投稿することを
繰り返しているうちに次第に最終選考に残るようになり、デビューに至ったという
努力のひと。
下積みが長いひとは実力が安定しているなと改めて思った次第。

キャラ萌え、ほのぼの系が好きなひとは是非。
「裏閻魔」もとてもおすすめです。

 

「ホスト、やるやんな?」
就活に惨敗し、自暴自棄になる22歳の光太の前に現れた、関西弁のホスト・雫。
翌年のチャンスにかけ、就活浪人を決めた光太は、雫に誘われるままに
ホストクラブ「チュベローズ」の一員となる。
人並み外れた磁力を持つ雫、新入りなのに続々と指名をモノにしている
同僚の亜夢、ホストたちから「パパ」と呼ばれる異形のオーナー・水谷。
そして光太に深い関心を寄せるアラフォーの女性客・美津子。
ひとときも同じ形を留めない人間関係のうねりに翻弄される光太を、
思いがけない悲劇が襲う――。

***

同著者の著作はこれまでに二作読んだことがあるのですが、
「ピンクとグレー」では「友情」を、
「閃光スクランブル」では「喪失からの再生」を、
それぞれ描いていたのに対して、本作はテーマが何なのか
いまいち掴み切れなかった。

上巻の「AGE 22」は、主人公・光太のホストクラブでの描写が
だらだらと冗長に続き、物語に起伏が感じられず、読むのがしんどかった。
下巻の「AGE 32」からは多少展開が面白くなってくるものの、
上巻とあまりに雰囲気や内容が違うので違和感が。
本作は一応はミステリという括りに入るのだろうけど、それにしては
謎や真相にあまり魅力がない。いや、あるにはあるのだけど、
人物の書き込みが足りていないせいでミステリとしてはショボい印象を受けた。
著者が書こうと思っていたことが伝わってくるぶん、筆が追い付いていないのが
もったいなく感じた。
女子高生失踪事件とか正直要らないエピソードだと思ったし、
主人公が八千草の耳のアレを何ら疑問に思っていないのも謎だったし、
主人公たちがある犯罪を犯すシーンも、あんなもの絶対監視カメラに映ってる
だろうに警察が動く気配が一向にないのが不自然だったし、
何より著者が一番描きたかっただろうラストシーンも、主人公が
「彼女」を想う描写がこれまでほとんどなかったのでまったく感情移入出来ず。
下巻は2025年を舞台に描かれているけれど、科学が進歩している部分が
あったかと思いきや今とまったく変わらないところがあったりと、
世界観にも不安定さを感じた。

熱帯魚にスタンガンのシーンとか、表現の端々にとても光るものを感じる
著者であるだけに、その実力不足が残念。
もし著者が本作のテーマに掲げるものが「恋愛」であるのだとしたら、
失敗だと言わざるを得ない。先に書いたように、ミステリとしても。

風呂敷を広げ過ぎて畳み切れていない、そんな物語だった。
決して駄作ではないけれど、作家としての加藤シゲアキ氏には期待していたので
そのぶんがっかりしてしまった。

今後本作を読む方がいたら、最初に書かれている「人物相関図」は
見ないことをおすすめします。特に下巻。ある程度筋がわかってしまうので。
一度だけでいいから。



もしも「記憶屋」が、つらくて忘れたい記憶を消してくれるなら、
あなたはどうする――?

夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座っていると現われ、
忘れたい記憶を消してくれるという怪人、「記憶屋」――。
大学生の遼一は、そんなものはただの都市伝説だと思っていた。
だが互いにほのかな想いを寄せ、一緒に夜道恐怖症を乗り越えようとしていた
先輩・杏子が「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも
忘れ去ってしまう。まさかと思う遼一だが、他にも周囲で
不自然に記憶を無くした人物を知り、真相を探り始める。
遼一は、“大切なものを守るために記憶を消したい"と願う人々に出逢うのだが……。

「記憶」を消せることは、果たして救いなのだろうか――?
そして、都市伝説の怪人「記憶屋」の正体とは――?

衝撃的で切ない結末に、きっと涙こぼれる。
二度読み必至の青春ノスタルジックホラー!

***

同年の日本ホラー小説大賞の大賞受賞作「ぼぎわんが、来る」
より面白かった。
ホラーというよりミステリなのだけど(何故著者はミステリ系の賞に
投稿しなかったのかと思うほど)、登場人物の描写と彼らのエピソードが
とにかく魅力的で、面白く最後まで一気に読めてしまった(文章が若干くどく、
ラノベっぽいきらいはあるけれど)。
特に弁護士・高原のキャラが抜群にいい。こういうひとが実在したらな、と
心から思うような素敵なひとだった。
中学生の少女・操の、自分の記憶を消したい理由も切なくてよかった。

「記憶屋」の正体には早い段階で気付いたので真相が明かされても
驚きはなかったけれど、ラストシーンはどうしようもなく胸が苦しくなった。
ああ、「記憶屋」は、これまでにも何度もこの台詞を
 口にしてきたのだろうなと思うと。

ひとが忘れたつらい記憶を、ひとりだけ憶えていて、それを抱え続けていく。
「記憶屋」のその在りようは、都市伝説の怪人というより「神」に近いと思う。

主人公・遼一の「ひとの記憶は消すべきではない。苦しい過去を持っていても、
それを抱えて生きていくことこそが人間の本当にあるべき姿だ」というスタンスは、
やはり綺麗ごとだと思ったけれど。
消してしまいたいほどつらい記憶を引き摺っていることで、逆にそのひと本来の
人間性や魅力が発揮出来なくなるということは絶対にあると思うから。
つらい過去を抱えていれば人間性に深みが増すというものでもないし。
私にも、消してもらえたらもっと人間らしく生きていけるのにと思える過去があるし、
大切なひとが抱えている故苦しんでいる過去を消してあげたいと思うこともあるし。

とにかくいい作品でした。おすすめ。
いい監督、脚本家、演出家、役者で映画化されればいいなと思う。

ちなみに本作、3まで続編が出ているようなので、そっちも読んでみようと
思います。
まだ見えない。



主人公・林ちひろは中学3年生。
出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
第39回 野間文芸新人賞受賞作。

***

200Pちょっとと短い話であることと、
純文学でも読みやすい文体と先が気になる物語展開に
一日で読み終えてしまった。

結局人間というものは不安と自らの人生への覚束なさを抱えているもので、
何かに縋らないと生きていけない。
ラストではそういう、人の「自分自身を頼りないと思う気持ち」が
表現されていて、共感と哀しみを思い起こさせられた。

主人公・ちひろは、きっとこれから大人になるにつれて
自分の両親が傾倒している宗教に疑問を感じ、彼らから離れていくのだろう。
そんな、我が子が自分から遠ざかってしまってしまうだろう予感に、
弱さを抱えた両親がどうしようもない寂しさを感じていることが伝わってきた。
ちひろは恐らくは彼女の両親ほどは弱くない。そのことを両親もわかっている。
とても普通な子であるちひろは、いずれ自分の肉親との決別を決意する。
決して両親のことを嫌っているわけではなくても。

価値観・感情のすれ違いは本当に切ないことだ。
それが身内なら尚更。
その身内が自分に愛情を持ってくれているなら尚更。

久しぶりに純文学でいいと思える作家さんに出会えた。
私はミステリ作家を志しているけれど、元々は純文読みだったので、
他の作品も読みたいと思わせてくれる純文作家さんに出会えたことが嬉しい。

ちなみに余談だけど、私も子供のころエドワード・ファーロングに
ハマったなあ。。。
親に頼んでCDまで買ってもらったりして(ちなみに彼、歌は下手でした)。
今でも口ずさめる。どうでもいいか。

とにかく、おすすめです。
走れ。



「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、
爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。

こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。

書き下ろし2篇を加えた計5篇。シリーズ初の連作集!

***

決して駄作というわけではないけど、これまでの
伊坂氏の作品から比べたら明らかに陳腐な印象。
Amazonレビューを見たら高評価がやたらと多くて、
何でだろうと思ったのですが、よく見ると恐妻家や子を持つ父親が
共感してるレビューが多くてああそういうことね、と。

第一話で思わせ振りに出てきた美人教師も、
今後話の筋に絡んでくるのかと思いきやあっさり退場。
あとは主人公・兜がハチの巣駆除したりなんだりとつまらない描写が多く、
連作短編というのは、各話のすべてがラストに向けて収束していくものなのに
「連作」と銘打つには失礼なぐらいそれぞれの話にほとんど繋がりがない。
最終話の「罠」も、もしあれ息子が引っかかってたらどうなってたんだよと
微妙な気持ちになった。

最後のエピソードはちょっとよかったけど、
初期のころに感じていた「この作家さんはすごい」感は
微塵も感じられなかった。
というかあれほど好きな作家さんだったのに、
「バイバイ、ブラックバード」以降このひとの作品に納得がいった試しがない。
本作は図書館で借りたのだけど、何度も途中で返そうと思った。

私はおすすめしません。
伊坂さん、頼むからまた以前みたいな素晴らしい物語を書いてください。


犯人を白日のもとにさらすために――防犯探偵・榎本と犯人たちとの頭脳戦。

様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。
主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。
そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。
表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。

★収録作品★

 ゆるやかな自殺
 鏡の国の殺人
 ミステリークロック
 コロッサスの鉤爪

***

初期の貴志作品は、一度ページをめくったら止まらず
朝まで徹夜で読んだものだった。
読後の感動といったらなかった。
でも本作は読むのが苦痛で、読み終えるのに多大な時間を要した。
「狐火の家」あたりから「あれ?」とは思っていたけれど、これはひどい。

「ゆるやかな自殺」は、ある程度よくまとまっているとは思うけど
ふーんそうですかの域を出ない。
だいたい、アル中で脳が半分溶けてる人間の証言をそこまで警戒する
必要があるのか。
 
「鏡の国の殺人」は、トリックが小説というメディアと
相性が悪すぎる。これで真相がわかるひとがいたら逆にすごい。
わざとなんだろうけど、犯人も丸わかりだし。
「天使の囀り」に登場する美術館が出てきたのは嬉しかった。でもそれだけ。

「ミステリークロック」も、犯人が丸わかりな上にトリックも
「あー時間いじったのね」というのがすぐにわかる。
けれどその肝心のトリックが細かすぎて悪い意味で予測がつかない。
「悪の教典」をイジったネタが出てきたときは、
著者悪ふざけが過ぎるだろ、と思った。

「コロッサスの鉤爪」も、トリックは解きようもないもの。
謎解きに必要な重要なファクターが後半で取ってつけたように出てきて
「そりゃないだろ」と思った。

あと全体的に、笑いを狙うにしても
主人公のひとり・青砥純子の推理が頭悪すぎ。
探偵ものではお約束のトンチンカン推理を披露するダメダメ刑事でも
こんなアホな推理はしないだろうという推理を自信たっぷりにするので
苛々する。
「硝子のハンマー」のとき、こんなアホなキャラだっけ?
しかもそのアホ推理と榎本の推理の掛け合いが毎回ワンパターンで、
もういいよとなってしまう。

買ったことを後悔しました。
榎本シリーズに拘るのもいい加減もうやめにしてほしい。

「黒い家」「青の炎」「クリムゾンの迷宮」「天使の囀り」
みたいな傑作をもう一度読んでみたいものです。
いくら何でも本作は貴志氏の悪ふざけが過ぎた。


神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、
曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、
剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、
想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。
しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する第27回鮎川哲也賞受賞作!

***

本格ミステリをよくわかってる作者だな、と思う。
その上で、普通なら思い付いても馬鹿らしくて書かないだろう
「●●●」をクローズドサークルを作るため、そしてホワイダニットのために
使うという発想、実行力がすごい。

ちょっとラノベっぽい表現もあったりするし、
探偵役・比留子のキャラが一貫してない(慎み深いと主人公が言う割に
ちゅーだの膝枕だの言ってきたり自分の胸を仕方ないとは言え平気で
男に押し当てたり。あと「はわっ」とか言ってたかと思えば
「君は~~かい?」とか喋り口調が不安定だったり)ところはあったものの、
犯人もオチも読めず、先が気になり一気に読まされてしまった。

重要だと思われたあのキャラが早々に退場したのも、残念な気はするけど、
「ナナシノゲエム」というDSのゲームをやったときに
このひとだけは大丈夫だろうと思ってたひとがやはり異形と化してしまう展開に
「嘘だろ」と思わず叫んでしまったときと同じ、ある種の悲壮な痛快さを味わった。

比留子と主人公でシリーズ化するのかな、それは何かな。。。と思っていたら、
あのラスト。とても綺麗に纏まっていて、納得のいく終わり方だった。

伏線が「これは伏線ですよー」と主張するかのように散りばめられているのが
ちょっと気にはなったけど、何のための伏線なのかまではわからず、
事態が収束したときに「ああなるほど!」と唸らされた。

気になったことといえば、結局マダラメ機関は何がしたかったのかということ。
まあ、あえて詳細を書かないことで逆に存在を大きくしたかったのだとは
思うのですが(漫画「いぬやしき」の宇宙人のように)。

綾辻氏や島田荘司氏のような壮大なスケールの本格物ではないけれど、
これはこれでしっかりと著者特有のジャンルを確立しているな、と思う。

最近ベテラン本格作家さんが不作で本格ミステリに飢えていたので、
こういう新人さんが出てきたことは素直に嬉しい。
また読んでみたい作家さんです。

余談ですが、本作、「キノベス!」の二位に選ばれていて、
私は別の作家さん目当てで授賞式兼サイン会に足を運んだのですが、
ファンに並ばれるベテラン作家さんたちの間に著者の今村氏がぽつんと座り、
スタッフの方が「今村先生のサインご希望の方、いらっしゃいますかー」と
声をあげていたのが記憶に残っている。
あの時点ではまだ本作を読んでいなかったのでそのまま帰ってきてしまったけど、
サインもらっとけばよかったなあと今更ながら思う。
さあ、音楽を始めよう。



私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った
青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!

***

本作が直木賞をとってすぐに購入したものの、
今まで読めずにいた。

もったいなさ過ぎて。

あまりに周りにいい小説がなかったため、大事に取っておき過ぎた結果
今の今までほとんど未読のままに至った。

ピアノ演奏の描写は、技術的に言えば中山七里さんのほうがうまい。
けれどより胸に迫ってくるのはどちらかと言われれば、圧倒的にこちら。
ピアノのコンクールでの主人公たちの演奏、ただそれが描かれているだけなのに、
読み手を飽きさせない。「音楽を読む」、そんな経験をさせてもらった。

恩田氏のファンタジーは正直苦手で、けれど本作には
そのファンタジー要素がないということと、「音楽」がテーマになっていたので
迷わず購入。
恩田氏の豊かな表現力に非常に唸らされた。
主人公たちの演奏を「文章」を通して聴き、結果の発表には
まるでその場にいるかのように緊張し。
素晴らしいフレーズを耳にしたときのように、一つひとつの文章に
ぞくりと鳥肌が立ち、感動し、泣かされ。
読み終えるのがもったいないという作品に本当に久々に出会った。

タイトルの「蜜蜂と遠雷」の「遠雷」という単語には、
遠くに聞こえる神がかった偉大なもの、やがてそれが人々の頭上で
神々しく轟きその心を打ち貫くだろう、という意味が含まれているのだろうな。

自分に本気で目指すものがあるということが、とても恐ろしく、けれど
とても誇らしく思えるような物語だった。

非常におすすめです。


“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん―。
幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。
それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。
一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。
愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?
全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。

***

結局、一番怖いのは「人間」なのだなと。
自分がそこそこ幸せだから他人もそうに違いないと思い込む
人間の図々しさ、傲慢さこそが最も恐れるべきものなのだなと、
そう思わされた本作。

第一部を読んだときはありがちな化け物ホラーとしか
思わず、それでも主人公の男の「イクメンブログ」に気味悪さを感じ、
第二部である真相が明かされたときは「ぼぎわん」という化け物より
人間のほうが怖くなった。
第三部冒頭の、主人公のひとり・野崎の友人たちの
浅はかなノリの軽さにも軽蔑の念を抱かずにいられず。
人間って本当に苦しい何かを抱えてない限り、自分の幸せでいっぱいになって
どうしようもなく無神経になるものなのだな、と戦慄が走った。

私もSNSに「パパやってまーす家族愛してまーす」というノリの
男「友達」がいるけど、そのひとに対するのと同じ不気味さを感じた。
それと、昔二人目を妊娠中の友人を見舞ったとき、
「●●ちゃん(私)も35までには子供生みなよーダウン症の確率
一気に上がるよー」とグラフまで書いて説明されたときに感じた
薄気味悪さも思い出した。

もちろん人間の出来た素晴らしいひともいることは知ってるけど、
本作を読んで、繰り返しになるけど人間の傲慢さを再確認。
私が敬愛するある作家さんの作品で、家族写真付きの年賀状を
送ってくる友人に対して主人公が、
「彼に悪気はない。彼は何も悪くない。ただ、幸福な人間は、
時に暴力的で恐ろしい」と思うシーンがあるのだけど、
まさしくそれだな、と思った。

ホラーとしてはあまり怖くないです。というかありがち。
化け物VS霊媒師、とか正直手垢が付いてると思うし、
読んだのが十代のときだったせいもあると思うけど
「リング」や「パラサイト・イヴ」を読んだときほどの恐怖は
まったくといっていいほど感じなかった。
かといって「黒い家」ほどエンタメに徹しているわけでもなく、
「かにみそ」「夜市」「白い部屋で月の歌を」みたいな独創性・文学性が
あるわけでもない。
著者のあとがきから感じ取れる人間性から察せる限りの、軽いノリのホラー。
余談だけど、この作者、長年プロ作家を目指していたわけでもないのに、
「受賞の知らせをしたら友人が泣いた」と書いていて、
その「友人」にも失礼ながら不気味さを感じてしまった。

基本人間は怖い。
そんな物語でした。

「ぼぎわん」という化け物の正体を知ったときは切なくなったけど。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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