「今から起こることは、全部おまえのせいだ」。
高校時代の同級生に復讐するため、高層ビルの展望室を占拠し、
多数決で殺す人質を決める“命の投票”を始めた男・伏見。
彼の計画は、一人の男の登場によって綻び始める……。
人それぞれの隠れた弱みを巧みに見抜き、利用し、業務をこなす義波と
復讐代行業者《援助者》。
だが、彼らにもある組織が忍び寄る――。
変幻自在にあなたを惑わす、衝撃のミステリ!
***
「GIVER」に続く、<復讐の贈与者>シリーズ第二弾です。
まずとにかく、本作の著者は文章表現がうまい。
文章が巧みというのはもちろんですが、登場人物の些細な仕草や表情まで、
どう書けば魅力的に読者に見えるのかということがとてもよくわかっている。
本作収録の「グラスタンク」では、主人公や作中に登場する少女の魅力が
すごいなもうこの作家さんは、と思わず唸ってしまうほど伝わってきて、また内容も
連作短編集であるこの作品の中ではずば抜けていて、読んでいて
「自分もこういうものを書けるようになれたらどんなにいいか」と
心底思った。そして「グラスタンク」を読んだことが原因で
作ってあった自分の短編のプロットがいかにしょうもないものであるかに
気付かされ、速攻ボツに。新しい短編のプロットを立て直したほどだった。
元々この「グラスタンク」という話は、「ザ・ベスト・ミステリーズ」という
アンソロジーに収録されていたものを読んでこのシリーズに興味が湧き、
今となってはこの作家さんにドはまりしている状態なので、日野草さんという
作家さんとこのシリーズの存在を教えてくれたそのアンソロジーには感謝したい。
ただ、本書収録の「スプリング・ブレイク」を読んだときは、
何が言いたいのかわからず、もやっとしたものが残りましたが(恐らくは
三作目「TAKER」の伏線として書かれた物語であるためなのでしょうが)。
明るい物語ではないですが、コテコテではないほどよいダークな世界観に、
日々に鬱屈を抱えていたり胸の裡に不満を溜め込んでいるような人が読めば
一種の悦楽を感じることが出来るのではないかと思う。
もちろん普通にエンタメとして読んでも面白いです。主人公の義波がとにかく
イカれてて格好いいので。
おすすめです。
次は前述のシリーズ最終作「TAKER」を読む予定なのですが、
このシリーズを読み終えるのがもったいなくてなかなか手が出せない。
この世界と主人公・義波とお別れしたくなさ過ぎて。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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