「ただいま」
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、
アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、
線を描くことで次第に恢復していく。
***
私が購入した時点で四刷でした。
なかなか売れていて、あちこちで話題になっているみたいですね。
私は単にメフィスト賞受賞作だから、という理由で手に取ってみたのですが。。。
何だろう。
筆力も高いし、芸術に生きる人間の、いや、すべての人間の心に響く
とても深いことを「水墨画」をテーマに書いているのですが、
正直既視感が拭えなかった。
大切な人間を亡くし、その悲しみや不遇に耐えて生きている主人公が、
何かと出会い、その才能に開眼し、様々な人との出会いを経て、
つらさを乗り越えていく。
こういう流れってもう使い古されている気がして。
いや、王道なテーマなので別にいいのですが、王道でマンネリ化している
このテーマを、そんなこと気にならなくなるほどすごい、と絶賛するまでには
至らなかったというのが正直な感想です。
同じテーマなら、漫画ですが、
「3月のライオン」のほうがずっと言葉も胸に響くものがあって感動するし、
「この音とまれ!」「四月は君の嘘」のほうがずっと主人公たちが奏でる音が
聴こえてくるように思えるし、
「ガラスの仮面」のほうがずっと感情移入出来ると思うし。
漫画と小説を比べるのはナンセンスな気がしますが、私の中では本作は
それらの漫画を超さなかった。
というか、終盤で語られる、「人の幸福さえ自分の幸福のように感じる」という
境地にまで至らなければ傑作が生まれないのであれば、「他人の不幸は蜜の味」
的スタンスで生きている私のような性格の悪い人間には一生いいものは
生み出せないだろうなとへこんでしまった。
あと、本作と上記の漫画に共通して言えることですが、
芸術がどうのこうの言ってても結局一番大事なのは恋愛なんだなおまえら、
みたいなツッコミも禁じ得なかった。
本作ラストの、「君の笑顔が一番の贈り物」みたいな主人公の考えには
正直がっかりしました。おまえも何だかんだ言ってやっぱり一番は女か、と。
一度でいいから、恋愛が絡まなくてもひたすら自分の選んだ道に邁進する
主人公を見てみたいものです。
こういう王道系の話って、「大きなものを失った代わりにもっと大きなものと
大切な人を手に入れて幸せになりました」みたいなオチばかりなので。
(「四月は君の嘘」はヒロインがいなきゃ成立しない話だしちょっと王道とは
違うかもですが)
いい話だな、とは思ったけれど、感動するとまではいかなかった。
というか著者はどうしてこれをメフィスト賞に投稿しようと思ったんだろう?
小説すばる新人賞とかのほうが向いてる気がするのですが。
まあ別に受賞さえすれば何でもいいのかも知れませんが。
とごちゃごちゃ書きましたが、ひと言で言えば私にはあまり合いませんでした。
でもゴミ小説が乱発されている最近の文壇の中では良作だと思うので、
読んで損はないです。
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、
アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、
線を描くことで次第に恢復していく。
***
私が購入した時点で四刷でした。
なかなか売れていて、あちこちで話題になっているみたいですね。
私は単にメフィスト賞受賞作だから、という理由で手に取ってみたのですが。。。
何だろう。
筆力も高いし、芸術に生きる人間の、いや、すべての人間の心に響く
とても深いことを「水墨画」をテーマに書いているのですが、
正直既視感が拭えなかった。
大切な人間を亡くし、その悲しみや不遇に耐えて生きている主人公が、
何かと出会い、その才能に開眼し、様々な人との出会いを経て、
つらさを乗り越えていく。
こういう流れってもう使い古されている気がして。
いや、王道なテーマなので別にいいのですが、王道でマンネリ化している
このテーマを、そんなこと気にならなくなるほどすごい、と絶賛するまでには
至らなかったというのが正直な感想です。
同じテーマなら、漫画ですが、
「3月のライオン」のほうがずっと言葉も胸に響くものがあって感動するし、
「この音とまれ!」「四月は君の嘘」のほうがずっと主人公たちが奏でる音が
聴こえてくるように思えるし、
「ガラスの仮面」のほうがずっと感情移入出来ると思うし。
漫画と小説を比べるのはナンセンスな気がしますが、私の中では本作は
それらの漫画を超さなかった。
というか、終盤で語られる、「人の幸福さえ自分の幸福のように感じる」という
境地にまで至らなければ傑作が生まれないのであれば、「他人の不幸は蜜の味」
的スタンスで生きている私のような性格の悪い人間には一生いいものは
生み出せないだろうなとへこんでしまった。
あと、本作と上記の漫画に共通して言えることですが、
芸術がどうのこうの言ってても結局一番大事なのは恋愛なんだなおまえら、
みたいなツッコミも禁じ得なかった。
本作ラストの、「君の笑顔が一番の贈り物」みたいな主人公の考えには
正直がっかりしました。おまえも何だかんだ言ってやっぱり一番は女か、と。
一度でいいから、恋愛が絡まなくてもひたすら自分の選んだ道に邁進する
主人公を見てみたいものです。
こういう王道系の話って、「大きなものを失った代わりにもっと大きなものと
大切な人を手に入れて幸せになりました」みたいなオチばかりなので。
(「四月は君の嘘」はヒロインがいなきゃ成立しない話だしちょっと王道とは
違うかもですが)
いい話だな、とは思ったけれど、感動するとまではいかなかった。
というか著者はどうしてこれをメフィスト賞に投稿しようと思ったんだろう?
小説すばる新人賞とかのほうが向いてる気がするのですが。
まあ別に受賞さえすれば何でもいいのかも知れませんが。
とごちゃごちゃ書きましたが、ひと言で言えば私にはあまり合いませんでした。
でもゴミ小説が乱発されている最近の文壇の中では良作だと思うので、
読んで損はないです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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