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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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明日はきっと晴れる。



両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美は、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。
「日本は集団を重んじる社会。極力目立つな」と父に言われ不安だったが、
クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。
だが一つ奇妙なことが。気になる男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、
なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。
一体どうして――?
栄美は、すべてが終わったあとに真相を知ることになる。

***

小ぢんまりとはしていますが、切なくて優しいミステリ。
全三章から成る本作、一章と二章はただ淡々と話が進んでいくので
ミステリ目的で読むひとはだるく感じるかもしれませんが、
そこをちゃんと読み込んでおくほどに最終章で明かされる真相によりはっとすることができる。

本作中の英語トリックはもう使い古されている感があるし、
ケータイトリックも「ちょっと無理あるだろ」という感じですが、
(そして主人公のそっくりさんが都合よく出てくるのには些かご都合主義を感じましたが)
大作や感動を期待しないで読むぶんには面白く読める内容です。

でもやっぱり貫井氏にはもっと重厚な小説を書いてほしいと個人的には思うけど。

まあまあおすすめ。
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私を殺してくれて、どうもありがとう。



新聞に連載小説を発表している私のもとに一通の手紙が届く。
その手紙には、ミステリー界最後の不可能トリックを用いた「意外な犯人」モノの小説案を
高値で買ってくれと書かれていた。
差出人が「命と引き換えにしても惜しくない」と切実に訴える、究極のトリックとは?
読後に驚愕必至のメフィスト賞受賞作。

***

ウルチモ・トルッコ。
アルティメット・トリック。
究極のトリック。
久々再読。

今までどのミステリ作家も成し得なかった〝犯人は読者〟オチに
敢えて挑戦した著者の気概は買う。
でも本作におけるこのトリックは正直賛否両論だと思う。
私は。。。まあなるべく深く考えないことで純粋に楽しむことができたけど(二度目だし)、
終盤での主人公の「あのときのあれはこうだったんですよ、だからアンフェアじゃないんです」
って言い訳の連発にはちょっと冷めた。わざわざあそこまで言い訳しなくてもいいのに。
黙ってたって別に誰も文句言わないのに必死に取り繕ってる感じがして何か嫌だった。
というか〝犯人は読者〟トリックよりも序盤~中盤に出てくる双子の姉妹の超能力トリックのほうが
私的には面白かった。初読で「なるほど、こんな手があったか!」と呻らされ、
「このトリック自分が思いつきたかった。。。!」とほぞを噛んだことは未だ記憶に新しい。

ちなみに本書、面白いんだけど読後の後味はかなり悪いです。
何で愉しいはずの読書でこんな目に遭わされなきゃいけないんだ、とかちょっとだけ思ったり。
むしろ被害者はこっちだよ、みたいな(←意味は読めばわかります)。

これってメフィスト賞だからこそアリな物語なんだろうなあ、やっぱり。

でも何だかんだ言っておすすめです。楽しいよ。
いつかの日に置き去りにされたあなたを。



“あなた”と“私”…名前すら必要としない二人の、密室のような恋。
島本理生の新境地。至上の恋愛小説。

***

ひと言で言えば不倫の話なんだけど、
そこに付随する汚らしさ、俗っぽさをまったく感じさせない文章はすごい。
まるで詩集を読んでいるような心地よく斬新な言葉・表現の連続。
切ない展開ともあいまって、読んでいる間ずっと心地よかった。
セックスの描写が抽象画みたいに遠まわしで淡いのに、
ヘタな官能小説(読んだことないですが)よりずっと生々しく迫ってくるのにも驚かされた。
ヒロインの想い人である〝あなた〟の、敬語とタメ口の使い分けのバランスが
絶妙であることにも著者のセンスを感じた。

ラストシーンがやや陳腐なのがかなり惜しいところ。
(あと、〝リストカット〟〝過呼吸〟等お約束のキーワードが出てくることも)
そこに至るまでは本作の持つ世界観に惹き込まれ、惹き込まれすぎて
最早小説を読んでいる感じがしなかった。久々にこんな感覚になった。嬉しかった。
著者にお礼を言いたい。

おすすめです。
ひょっとしてこれが、「青春」てやつ?



「身の丈サイズでゆるーくやっていきたいと思う反面、
ダサいもの、価値観に一ミリでも合わないものは受け入れたくない」。
矢部健太高校二年生、夏休み直前。そんな彼が…。
84年にタイムスリップ「つっぱり」メンバー達とのひと夏のふれあい。

***

正直本作を読むんだったら
地下鉄(メトロ)に乗って〟読むか〝バタフライ・エフェクト〟観たほうがいい。

タイムスリップもののお約束(言葉遣いやファッションが違う、観たこともないものに驚く、等)
だけで話がだらだら進むので次第に読むのが苦痛に。
オチもどうなるかほぼ読める。
そして肝心の、〝ユルーい主人公がツッパリ魂に触れて生まれ変わる〟までの描写が
まったくといっていいほどない。主人公が唐突にアツいキャラに変わるので正直ついていけない。
タイムスリップした先が〝1Q84〟なのも狙ってるだろ、って感じだし。

加藤実秋氏の作品は全部読んでいるけど一番つまらなかった。
タイトルがダサい時点で警戒しとけばよかった。
次回作に期待。













待ってて。



父を早く亡くし、母に酒をのませてもらい金を無心して生きている私。
祖父の三回忌で伯母に「そろそろ働いたら?」と問われ、明かされはじめた過去。
中学教師に秘められた戦争中の出来事とは――。
圧倒的な筆力で現代を照らしだす新鋭の誕生。
新潮新人賞受賞作「冷たい水の羊」併録。

★収録作品★

 図書準備室
 冷たい水の羊

***

デビュー作〝冷たい水の羊〟が大好きで大好きで何回も読んでしまう本作。
終わり方よすぎ。
物語に漂う空気感最高。
何より純文学作家というものは
比喩表現がどれだけ達者か、というのが作品の良し悪しの決定打になるものだけど、
個人的には田中氏のそれは純文学作家の中で一番好きかもしれない。
〝神殿を守る少女〟とかのくだりには何度読んでも首筋まで鳥肌が立つ。

川上未映子さんの〝ヘヴン〟と同じ、いじめを扱った物語なので
併せて読んでみるのも面白いかもしれない。

おすすめです。

夢から醒めて。



十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して
初めて見えた風景とは。
表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、
荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。
魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。

★収録作品★

 虫卵の配列
 羊歯の庭
 ジェイソン
 月下の楽園
 ネオン
 錆びる心

***

20代半ば以上の女性に薦めたい短編集。
(セクシャルな意味じゃなく)アダルトな物語ばかりなので。

個人的に一番面白かったのは〝虫卵の配列〟。
登場する女性のキャラがグロくてリアルで
「うわこんなの本当にいるよ。。。」とぞっとしつつも苦笑してしまった。
六話すべてが人の心の機微を緻密に描写した物語なので純文学好きにもおすすめ。

一番つまらなかったのは〝月下の楽園〟かな。
男性の狂気と女性の狂気、どちらか一方を描くだけで十分だと思った。両方は蛇足。

〝羊歯の庭〟は男女のかけひきの描写が秀逸だし、
〝ジェイソン〟はオチは読めるけど単純に娯楽作品として楽しめる。
〝ネオン〟も自己陶酔する人間の愚かさ・カッコ悪さを見事に描き出していてよかった。
〝錆びる心〟は主人公が身勝手&ちょっとラストがご都合主義な気もするけど
「ああそうだよな、女ってこういうものだよな」と自然に読者に思わせる筆力は
さり気なくもさすがのひと言。

おすすめです。
望んだことはただそれだけなのに。



父親が被害者で母親が加害者――。
高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。
遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。
その家族と、向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。
『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。

***

家族ドラマ。ミステリではない。
〝告白〟のようなものを期待しているひとは読まないほうがいい。

というか、デビュー作はたまたま小説の神が気まぐれで著者に降りてきただけとしか思えないほど
その後出す作品がことごとく面白くない。
本作はデビュー作と比較したら言わずもがな、単品で捉えてもつまらない。

そして湊さん、〝告白〟のような語りかけ一人称はうまいけど三人称だと文章がへた。
誰がどういう状況で何をやっているのか把握するのにいちいち読み返さなきゃいけなかったり、
会話の意味がわからなくてしばらく考え込んだりということが度々。
これは面白い面白くない以前の問題。

極めつけは登場人物がことごとくムカつく性格。共感できる人間ひとりもなし。
〝告白〟はそのせいで返って面白さが倍加していたけど、
こうも毎回気に食わないキャラばかり出されるとだんだん読みたくなくなってくるので
そろそろやめにしてもらいたい。

ていうかいっそ作中で何度も引き合いに出されるアイドル・高木俊介が
最後の最後で親を殺してニュースにでもなる
、って展開にしておけば神だったのに。
まさか終わりまでまったく彼が本筋に絡んでこないとは思わなくて拍子抜け。

著者の書きたいテーマは終始一貫していたのでブレなく読み切ることはできたけど。
この著者に期待するのはもうやめにしておこうかな、というのが
彼女の著作を全部読んだ上での率直な感想です。

表紙デザインだけはやたらとよかったな。中身よりそっちを評価したい。
シンプルで解放された世界に。



大手建設会社に総合職として勤めていた名門Q女子高出身の和恵。
学内で売春し退学した美貌のユリコ。
最下層の娼婦として渋谷で再会した二人は、ともに殺害される。
犯人と目される中国人チャン、東大医学部に進みながら新興宗教に入信、犯罪者となった
Q女子高時代トップのミツル、和恵と同級生だったユリコの姉……。
せめぎあう黒い魂たち――。

***

ミステリかと思いきや純文学に近い娯楽小説だった。
事件に関わった一人ひとりの語りから(読み手が)真相を突き詰めていく、という構成は
ミステリと言えなくもないけど。
ほんのちょっと〝告白〟(/湊かなえ)と似てるのであの作品が好きなひとは
読んでみてもいいかもしれない。

でもこの小説、(自分がエグい純文ばっかり読んでるせいかもしれないけど)
〝グロテスク〟というにはあまりにきれいすぎるんだよな。
こんなタイトルを冠した以上は、もっと眼を背けたくなるような描写や展開があっても
よかったんじゃないかと個人的には思う(それを自分が読みたいかどうかは別として)。

完璧な美貌を持つユリコのキャラも、歳とったら普通のオバちゃんになっちゃって
え? じゃあ前章で散々描写されていた若いころの彼女のあの独特のものの考え方、精神は
どこにいっちゃったの?とあっけにとられた。
美貌だったり頭がよかったり、どんな人間だろうが歳とりゃただのババアだよ、っていうことを
まさか作者は言いたかったんだろうか? それこそがグロテスクなことだと? そんな馬鹿な。

それにしても本作には本当に、グロテスクと呼べるほどの要素がないんだよなー。
やはり(偏見かもしれないけど)女性作家に〝エグさ〟を求めてはいけないんだろうか。
男性作家が書く本作を読んでみたかった(でもそれだとエグ描写ばっかりで中身がなくなりそう
だけど)。

でも何だかんだで面白くて一気読み。
おすすめです。

あー私にも〝チャン〟がいたらな。。。
この国のどこが不満だ?



一党独裁の管理国家であるこの国では国家に対する反逆はなによりも罪が重く、
人材育成をなにより重要視するこの国では小学校卒業時に児童の将来が決められ、
非戦平和を掲げるこの国では士官学校はたんなる公務員養成所となり、
経済の豊かなこの国では多くの女性が売春婦としておとずれ、
文化を愛するこの国では「カワイイ」をテーマに博覧会が開かれる。

そんな「この国」だからこそ起こる「事件」がある。
 
★収録作品★

 ハンギング・ゲーム
 ドロッピング・ゲーム
 ディフェンディング・ゲーム
 エミグレイティング・ゲーム
 エクスプレッシング・ゲーム

***

この著者テロ好きすぎ。
いったい何作テロばなし書いたら気が済むんだろう。もういい加減食傷気味。
(しかも面白いならともかく、ワンパターンでつまらないし)
変に世界観広げなくていいから〝扉は閉ざされたまま〟みたいなのをもっと書いてほしい。
最終話なんか読むの苦痛で眠気と戦うの大変だった(そもそも〝カワイイ展〟の内容が
中学生の文化祭以下の内容でくだらなすぎるし。〝カワイイ〟をコンセプトに展覧会開くなら
アイドルコスプレでライブやるとか着ぐるみ着て踊るとかぬいぐるみ作るとかもっといろいろ
あるだろ。何でマンガ&バイクがかわいい、みたいになるんだよ。
あと主人公の非情さを表現したいんだろうけど文中で射殺射殺言いすぎ。生理的にキモかった。
それに主人公〝ケルベロス〟なんて二つ名付けられてるけどそこまで大したもんじゃないし、
だいたいがケルベロスって三つ頭の怪物なのに一人の人間に付けるのは何か変)。

ハンギング・ゲームだけが唯一まともに読めた話かな(それでも展開が無茶すぎるけど)。

まったくおすすめしません。
今日はどうする? 生きるかい?



ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている。
仕事は霊魂を体内に受け入れること。彼にとっては霊たちが
自分の内側の白い部屋に入ってくるように見えているのだ。
ある日、殺傷沙汰のショックで生きながら霊魂が抜けてしまった少女・エリカを救うことに
成功する。だが、白い部屋でエリカと語ったジュンはその面影に恋をしてしまったのだった…。
斬新な設定を意外なラストまで導き、ヴィジョン豊かな美しい文体で読ませる
新感覚ホラーの登場。第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

★収録作品★

 白い部屋で月の歌を
 鉄柱(クロガネノミハシラ)

***

あまりに心の琴線に触れたためことあるごとに読み返している、
そんな、私にとってとても大事な物語です。

〝ジュン〟の泣けるほど純粋な恋心、そして彼の持つあまりに純真な魂は、
読み終えたあと本を閉じて日常に戻ることを簡単に読者に許してはくれない。
そして一度読んだら忘れられないあのラスト三行。読むたびに打ち震える。打ちのめされる。

同時収録〝鉄柱〟に登場する、すべての人間の心の中にある生きる上での葛藤を
具現化したようなあの〝ミハシラ〟(逆L字型の鉄の棒)の存在も、
自分のこれまで、そしてこれからを深く考えさせられるインパクトと深みを持っている。

非常におすすめの一冊です。



余計なおまけ:
平家蟹
本作を読了後もノークレームでお願い致します。

heikegani.jpg








プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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