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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「『やーめた』って、一緒に、言いたくない?」



セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。
そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。
二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても
人間としての肉体感覚が持てないでいた――。
十九歳の里帆と二人の“アラサー”女性。三人が乗る「ハコブネ」は、
セクシャリティーという海を漂流する。

***

人間誰しも
「今自分が見て、聞いて、触れている世界は、ほかの皆とは違う世界なんじゃないか?
自分は自分の、自分だけの、妄想の世界を生きてるんじゃないか?」
と思うものですが(えっ思わない?)、
それを見事描き出してくれているのが本作。
自分の中にある何とも言えない感覚を代弁してくれている著者の言葉(文章)に、
終始心地よく浸ることができた。

この村田さんという作家さんは、人間が己の内側に抱え込んでいる
うまく言い表せないもやもやとしたものを文章にして物語の中に組み込むのが非常にうまい。
彼女の作品に、他人に大っぴらには言えない自分の考えと共通するものを読み取って
よき理解者に出会えたように感じている読者は意外と多いんじゃないかと思う。

個人的には、里帆の求めているセックスの方法は
既に知佳子が実践しているような気がしたんだけどほかの読者はどう思ってるんだろう。
気になるところだ。

それにしても、ふたりの主人公・知佳子&里帆の間に
椿というキャラクターを挟んだところはうまいと思う。
自分に〝女性〟を見出せなくて悩む里帆、自分に〝人間〟を見出せなくて悩む知佳子、
その真ん中で当たり前に〝女性〟も〝人間〟も持っているんだものな、彼女は。
(それでも彼女は彼女なりに苦しい思いを抱えているわけだけど)
非常にバランスのいい人物配置だと思った。

おすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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