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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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その空は、宇宙へとつながっている。



佃航平は宇宙工学研究の道を諦め実家の町工場を継いでいたが、経営はまさに崖っプチ。
だが世界最先端の技術で特許出願をしていた佃製作所に、ロケット開発という思わぬ展開が…。

***

主人公の性格がどうにも好きになれず物語に感情移入ができず、
最後まで他人事として読んでしまった。
内容的にも〝空飛ぶタイヤ〟のほうがずっといいし。
というかこの著者、本作のラストもそうだけど、
仕事仲間たちの絆を書くのはうまいけど家族描写が妙にクサい。
そこにもややしらけてしまった。

直木賞を本作でとったことは著者にとってプラスになるのかどうか。。。
巷での評判はいいようですが、私は好きになれなかった。
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「めちゃくちゃにして、めちゃくちゃに」



ようこそ、人殺(ヒトゴロ)シティへ。

花嫁が、夫が、同窓生が連続変死!
『七回死んだ男』の西澤保彦が贈る仰天トリック×逆転推理!

今日は倉橋譲の結婚式。この男、とにかく女運が悪い。
婚約しては逃げられ、結納しては逃げられ、挙式中に逃げられ……。
八年前には、控室から消えた花嫁が別の男と無理心中。
そんな中、今日の花嫁が心中した男の交際相手だったと発覚。
これを単なる偶然と言えるのか?(「エスケープ・ブライダル」より)

――殺人街・櫃洗市で起きる奇妙・珍妙な6つの事件を描いた連作ミステリー。

★収録作品★

 エスケープ・ブライダル
 偸盗の家
 必然という名の偶然
 突然、嵐の如く
 鍵
 エスケープ・リユニオン

***

個性的な連作短編集。
普通のミステリとは一味違った物語を楽しむことが出来ます。
ただいかんせん後味が悪い話が多い。
謎が解決すっきり爽快、というようにはいかないので今後読むひとは注意が必要。

個人的には最後の書き下ろしの一話だけつまらなかった。
本作に限らず、短編集の書き下ろしって、
雑誌に掲載されたものに比べてつまらない確率が多いのは何でだろ。

まあおすすめ。
(とはいえ独特の文体が自分にはつらかった。
あと、わざとなんだろうけど、〝突然、嵐の如く〟の女子中学生の
「~だし、~だし」連発の不自然な喋りも)
豚は笑うよ。



高速道路で運搬トラックが横転し、一匹の豚、トンコが脱走した。
先に運び出された兄弟たちの匂いに導かれてさまようが、なぜか会うことはできない。
彼らとの楽しい思い出を胸に、トンコはさまよい続ける…。
日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作をはじめ、
親の愛情に飢えた少女の物語「ぞんび団地」、究極の兄妹愛を描いた「黙契」を収録。
人間の心の底の闇と哀しみを描くホラーの新旗手誕生。

***

深いホラー小説というものを、初めて読んだような気がする。
純文学にも通じるものがある。そんな感想を持った三編だった。

表題作〝トンコ〝の作中に出てくる「ペットおやつ」「リンゴ」といったキーワードが、
ここまで切なく物語に貢献するものかと読んでいて驚いた。著者のセンスに見事にやられた。
ラストの場長の台詞も、淡々としているのにあまりに切なすぎて(そして残酷で)
今でも心から離れない。胸にずきずきくるひと言だった。
本編は豚の眼を通して人間の愚かさを説いた芥川龍之介の〝河童〟のような物語だけど、
それだけでは終わらない、もっと深い何かを感じた。

〝黙契〟も、ラストは普通に考えればグロテスクなのに
非常に切なく(さっきから切ない切ないうるさいですが、本当に切ないんです、この本は)、
とても美しいワンシーンとして心に刻まれた。そのことにも著者の力量を感じた。

この著者の新作がとても楽しみ。
おすすめです。
あなたは、どんな野球をしてもらいたいですか?



公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことで
ドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、
野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。
みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、
ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。
家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本。

***

タイトル&発想の奇抜さと萌え絵の表紙だけで売れてるんだろ、
と思っていてごめんなさい。
普通に感動しました。
変に捻ったり奇をてらったりしないド直球の物語だったけど、
「単純だな」とか「ありがちだな」とか思わずに最後まで楽しく読めた。
文章はあまりうまいとは言えないけど、シーンごとの情景が
読んでいてまざまざと浮かび上がってくるようだったのは、
やっぱり物語の質がいいからなんだろうな。
映画化されたのも頷けます。
いい小説だった。ヒロインの個性・ただ者じゃなさが素敵すぎ。本当に読んでよかった。

ところで著者が本ストーリーを思いついたきっかけが、
漫画家の高橋しん氏が自らの著作〝最終兵器彼女〟を思いついたときのそれと似ていて、
(電車のつり革に〝最終兵器〟と〝彼女〟という表記を見つけて、
「彼女が最終兵器だったらいやだろうなあ。。。」と思ったことから着想を得たらしい)
物語というのはどこで思い浮かぶかわからないものなんだなあと妙に感心した。

本作の著者の岩崎氏に着想を与えた〝マネージャー〟という言葉に感謝したい。
それがあったからこの物語が生まれた。

おすすめです。
今度映画も観てみよ。
確かに存在するはずの、明るい未来に向かって。



東京都西部で起きた連続幼児失踪事件。我が子を失った美菜子はじめ6人の被害者家族は、
積年の悲嘆の果てに、かつて犯人と目された投資家、土佐が暮らす通称「人面屋敷」へと乗り込む。
屋敷の中で「人面」の忌まわしき真相を知った親たちの激情は、抑えがたい殺意へと変容。
さらに謎の美少女が突然現れたことで、誰もが予想すらしなかった悲劇をも招き寄せていく。
論理(ロジック)×狂気(マッドネス)。気鋭のミステリー2011年進化型。

***

。。。言いたいことはふたつ。

何この(悪い意味で)倫理観と常識崩れまくった小説。

そして、

人面屋敷関係ないじゃん!



石持作品の登場人物は総じて常識がズレていることが多くて
いい加減慣れたつもりでいたけど、今回はひどい。ひどすぎる。
「え? 何でそうなるの?」ってシーンが多すぎてうんざりして
でも後半は一周回って面白くなってきて読みながら薄ら笑いを浮かべてる自分がいた。
「少女は美少女だが身体はグラマーじゃないので色仕掛けは無理に違いない」
とか普通に言い出すからね。誰もそれ否定しないからね。その理屈普通に通っちゃうからね。
そんなのが作中に出てきまくるからね。
そんで何最後握手とかしてんの?
おかしいじゃん。
あんたたちどう考えても握手するような間柄じゃないじゃん。
もうつっこむところが多すぎてむしろ閉口だよ。いちいちダメ出しするのも面倒くさいよ。
犯人を犯人と断定するに至った経緯も無理ありすぎだし。

そして〝人面屋敷〟。
タイトルにまで冠されてるくせに別に舞台が人面屋敷じゃなくても話は進むじゃん。
ていうかこれのどこが人面屋敷?
綾辻氏に失礼だよこれ。一緒にしちゃダメだろこれは。
何が「少なくとも石持館にはなってると思う」だよ。まあある意味石持館にはなってるけど。
石持氏しか書けないもんこんなの(もちろん悪い意味で)。
でも綾辻氏みたいな〝館もの〟にはほど遠いよ。遠いっていうかもはやジャンルが違う。
館自体にトリックなんてひとっつもないからね。
タイトルに見事に騙されたよ。
まあ書いてるのが石持氏って時点で疑ってかかるべきだったけど。

。。。思わず素になってしまいました。
おすすめしません。
石持氏の作風を知っていて、知った上で敢えて違う視点から楽しみたい、ってひとだけ
読めばいいと思う。
今度こそ、幸せになれるよ。



第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作! 
妻、娘と親子三人で幸せな生活を送っていた「私」につきつけられた小学校時代のアルバム。。。
そこには当時悲惨な生活を送っていた「私」の封印された過去が。

***

〝キョウダイ〟というタイトルと、
作中で双子の一方が片割れを「兄」でも「弟」でもなく「キョウダイ」と呼ぶことから
トリックには見当がついてしまったけど、
クライマックスの真相には「そうだったのか!」と普通に驚けたし
全体に面白かった。
なかなかの佳作といったところ。

冒頭の、茶番のようなクサい家族愛描写も、
後の伏線になっていたのかと思うと本作は恐ろしい物語だなと改めて思う。

終わり方がちょっと物足りないのが残念だったかな。
主人公、あれだけ大事に思っていたを簡単に手放しちゃうし(まあ、あんな真実を聞かされて
平然と大事に思い続けるほうが難しいのはわかっているけど、
でもそこらへんの葛藤がもうちょっと描写されていたらなと思った)。

でもそれなりに面白いし、そんなに長くないので中篇感覚でさらっと読めます。

おすすめ。
つながっている。



TBNテレビの人気報道番組『ニュースイレブン』の遊軍記者・布施。
警視庁捜査一課・継続捜査担当のベテラン刑事・黒田。
偶然にも二人が追い始めた未解決の女子学生猟奇殺人事件、
背後には都会にうごめく巨大な闇が…。
最新長編ミステリー。

***

布施の魅力をただひたすら描き出す、ただそれだけの小説だった。
ミステリとしてもドラマとしてもあまりに薄味で入り込めないし、
ストーリーは進めば進むほど盛り上がるどころか失速していく。
他キャラによる布施の持ち上げもしつこすぎて
「魅力あるのはわかったからもういいよ」とうんざりしてしまう。

非常に読みやすくてあっという間に読めてしまったのが救いといえば救いかな。
本当、著者の今野氏はよくも悪くも二時間ドラマの原作にふさわしい小説を書くひとだなと思う。

あまりおすすめしません。
明るく暖かい光に満たされるだろう。



魚住と山下の両刑事は小学校教師の中原みどり殺害事件の聞込み捜査で、
被害者の元同僚だった井川英一を訪ねた帰り、バッタやキリギリスの羽や首をバラバラにして、
穴に葬っている児童に出会った。二人を送ってきた心理学の講師である井川は、
その児童は殺されたみどりの勤めていた小学校の生徒だと教えた。
そして彼は一見無意味に思える行動にも精神的原因があり、
この子にも精神的葛藤がある筈だという。その話を聞いた魚住は
ミドリ色の虫と中原みどりという共通項に気づき、二人の関係を調べることにした…。

★収録作品★

 精神分析殺人事件
 催眠術殺人事件
 精神分裂殺人事件
 麻薬分析殺人事件
 児童心理殺人事件
 
***

歌でも絵画でもそうだけど、どうして本当にいいものっていうのは
年月を経ても変わらずに〝名作〟足り得るんだろう。
本作が40年も前に書かれたものだとはとても思えない。
心理学を絡めたミステリを、心ゆくまで堪能することが出来た。

心理学をテーマにしたミステリ小説というと、私の中では
永井泰宇氏の〝刑法第39条シリーズ〟、
綾辻行人氏の〝フリークス〟、
松岡圭祐氏の〝カウンセラーシリーズ〟
がぱっと浮かぶけど、本作はそれらと比肩し得る、いやそれ以上の
サイコロジカルミステリだった。
こんな言い方は失礼だけど、著者の森村誠一氏が心理学について非常によく
勉強していることが読んでいて伝わってきた。

心理学大好きな身としては、今後こういう小説がこれからもっと出てきてくれればなと思う。
おすすめです。
ドント・ビッチアバウト・エヴリシング!



腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。
連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが?
ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!
故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。
破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った
第19回メフィスト賞受賞作。

***

再読。
これをミステリと言ったら世のミステリマニアは怒るかも知れない。
伏線や事件の真相が完全に後出しだもんな~。
でもこの破天荒な世界観がどうにも好きなのです。
「これが本物の小説でミステリだ! 何か文句あるか?」
的な強引さが。
長時間一緒にいると疲れるけどたまに会って遊ぶと面白い、
めちゃくちゃ個性の強い友人に振り回されているときの快感に近いものを
読んでいると得られるのです(変な喩えですいません)。

主人公がちょっとマザファッカーマザファッカー言い過ぎだけど
(私はあまりこのスラングが好きじゃないので読んでいてどうしても鼻についた)
ラップみたいに文章にリズム感があるから一気に読める。
一見アナーキーなようでいてその実恥ずかしげもなく堂々と〝愛〟をテーマにしているところもいい。
そしてそれがまったくクサくないところにも著者のセンスを感じる。

おすすめです。
早く芥川賞獲ってほしいな。

余談ですが私が読んだ本作はラスト数ページが乱丁になっていて
363Pの次が360Pでした。
ある意味レアなのか?
同じようになっていたひとは是非ご一報を。
With one look,I can break your heart.



賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。
その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、
西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。
由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。
このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて
幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、
彼女は身も凍る思いがした――。
第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。

***

読みすぎて単行本が磨り減っているぐらいの愛読書。
とはいえ大人になった今読み返すと、
エンパスだの幽体離脱だのホラーというよりファンタジー要素が強すぎて
子供だましに感じるところもなきにしもあらずなのだけれど、
それでもギリギリ説得力のあるライン内に収めているところが貴志氏の貴志氏たる所以だと思う。

男女の恋愛描写の下手さ(貴志さんすいません)は
初期も初期の作品なだけあり貴志作品の中でダントツですが。。。

それにしても、漢字の意味から解離性同一性障害(多重人格障害)の別人格たちに
名前を付ける、という貴志氏のセンスには脱帽。
それが〝ISOLA〟の意味にもうまく絡んでるしラストの恐怖に一役も二役も買ってるし。
よくテレビで多重人格のひとのドキュメンタリーやってるけど、
そこに出てくる別人格の名前よりありそうで物語が現実的に感じられた。

おすすめです。
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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