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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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豚は笑うよ。



高速道路で運搬トラックが横転し、一匹の豚、トンコが脱走した。
先に運び出された兄弟たちの匂いに導かれてさまようが、なぜか会うことはできない。
彼らとの楽しい思い出を胸に、トンコはさまよい続ける…。
日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作をはじめ、
親の愛情に飢えた少女の物語「ぞんび団地」、究極の兄妹愛を描いた「黙契」を収録。
人間の心の底の闇と哀しみを描くホラーの新旗手誕生。

***

深いホラー小説というものを、初めて読んだような気がする。
純文学にも通じるものがある。そんな感想を持った三編だった。

表題作〝トンコ〝の作中に出てくる「ペットおやつ」「リンゴ」といったキーワードが、
ここまで切なく物語に貢献するものかと読んでいて驚いた。著者のセンスに見事にやられた。
ラストの場長の台詞も、淡々としているのにあまりに切なすぎて(そして残酷で)
今でも心から離れない。胸にずきずきくるひと言だった。
本編は豚の眼を通して人間の愚かさを説いた芥川龍之介の〝河童〟のような物語だけど、
それだけでは終わらない、もっと深い何かを感じた。

〝黙契〟も、ラストは普通に考えればグロテスクなのに
非常に切なく(さっきから切ない切ないうるさいですが、本当に切ないんです、この本は)、
とても美しいワンシーンとして心に刻まれた。そのことにも著者の力量を感じた。

この著者の新作がとても楽しみ。
おすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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