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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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たとえ先に別れが待っていようとも。



ある街の高台に佇むおんぼろアパート「てふてふ荘」。
敷金礼金なし、家賃はわずか月一万三千円、最初の一ヶ月は家賃をいただきません。
この破格の条件の裏には、ある秘密があって……。

***

しみじみした。
とてもいい物語を読ませてもらった。
お陰で今心がすっきりと気持ちがいい。

連作ヒューマンドラマである本作、連作小説が陥りがちなマンネリにも陥ることなく、
最後までがっつり読ませてくれた。
最終話がヒューマンドラマから一転、ちょっとしたミステリに変貌するのも、
一粒で二度おいしい感があってとてもよかったと思う。

〝~荘〟と銘打つような物語というと、ほとんどのひとが
「住人たちが騒動起こしたりなんだりしつつも仲良くなっていく、みたいな話なんだろ」と
思いがちだけど、本作はその枠には収まりません。幽霊という特殊な存在が登場するから。
その点ファンタジーに近いのかも知れないけど、著者の確かな筆力で
最後までリアリティ溢れる世界観を楽しむことができます。

おすすめ。



人間っていうのはやっぱりひととの触れ合いが不可欠だよね本当に。。。



おまけ:
本作のテーマソングとも言うべき一曲。

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来るかい?



ある高校で殺人事件が発生。
被害者は物理教師、硬質ガラスで頭部を5度強打され、死因は脳挫傷だった。
現場は鍵がかかったままの密室状態の理科室で、容疑者とされた生徒はなんと20人!
銘探偵メルカトルが導き出した意外すぎる犯人とは――。
「答えのない絵本」他、全5編収録。麻耶ワールド全開の問題作。

★収録作品★

 死人を起こす
 九州旅行
 収束
 答えのない絵本
 密室荘

***

まず最初に言っておきたいのは、本作はミステリ初心者には確実に向かないということ。
これはふだんミステリばっかり読んでるひとが王道を外れた変則技を楽しむ小説です。
ミステリを普段読みつけないひとが下手に読むと頭の中がハテナまみれになります。
悪くするとムカつきのあまり壁本直行。
壁|

まあそれでも、〝九州旅行〟と〝収束〟はまだ辛うじてミステリとして成り立ってはいたけれど。
でも探偵の性格が相当悪いので(たぶん私が知ってる古今東西の探偵の中で一番悪い)
やっぱり読んでてイライラはするでしょうが。
(以前のメルカトルシリーズでは死体を蹴っ飛ばしたりしてたし、
本作の最終話なんか、探偵がワトソン役を犯人なんじゃないかと普通に疑ったりするので。
探偵と助手の絆はどこに? ←まあ、これもまた〝王道〟ではない〝邪道〟の一環
なんでしょうが。。。)

このレビューを見て、そしてカバー折り返しの著者コメントを読んで、
それでもやっぱり読みたいというひとだけ手にとってみてください。

個人的にはこれは。。。おすすめするともしないとも言えないなあ。。。
面白いところは面白いし、つまらないところはつまらないという何だかおかしな小説なので。
何になりたい? どこへ行きたい?



1950年代、大阪近郊の小さな町。少年は印刷所の片隅でSF小説を読みふけっていた。
友人に手渡された翻訳小説に描かれていたのは、人類による地球脱出の物語だった。
生物種の最後の一頭が息絶えるとき、人類進化の素“ロータス”を吐き出すという。
自分以外の何者かになりたいと願う3人の少年たちは、
見世物小屋で「三つ目ヤマネコ」が吐き出す“ロータス”を飲んだ。
そして混乱のうちに悲劇は起こった。
それから半世紀後、越野町では大学の新キャンパス造成が急ピッチで進んでいた。
学校関係者の子供たち3人は夏休みに、ある秘密を抱えた少女を日本に呼ぶことを計画する。
少女の願いを叶えるために…。

***

。。。
。。。つまらなかった。
522Pもあるのに、最初から最後まで一貫して心がぴくりとも反応しなかった。
登場人物も魅力的に思えないし、文章や構成も雑で、読み手のこと考えてるのかという感じ。

そもそも、
早瀬氏の著作は〝レテの支流〟、乱歩賞受賞作の〝三年坂 火の夢〟、〝サトシ・マイナス〟
を読んでどれも全然面白いと思えなかったのになぜ本作を手に取ったのか
自分でもよくわからない。
。。。いやわかる。あらすじが面白いんだ。だから懲りずに手が伸びちゃうんだよな。。。

でもさすがに懲りました。もう早瀬氏の著作を手に取ることは今後二度とないでしょう。

SFとしてもミステリとしても中途半端、というかそれ以前に
これ本当にプロが書いた物語? としか思えない微妙な内容。
本作を2800円出して買うひとがいたら会ってみたい。ていうかこの本高すぎ。

おすすめしません。
鬼も仏も、そこから生まれる。



ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中にある仏像の工房・瑞祥房を訪ねる。
彼がその夜見たものは、口を開けて笑う千手観音と、闇の中で血を流す仏像。
しかも翌日には仏師が一人消えていた。
道尾は、霊現象探求家の真備、真備の助手・凛の三人で、瑞祥房を再訪し、その謎を探る。
工房の誰もが口を閉ざす、二十年前の事件とはいったい。

***

再読(いや、再々読?)。
著者のデビュー作〝背の眼〟(真備シリーズ)二作目。
直木賞作家・道尾氏が、まだバリバリの本格ミステリを書いていたころの作品。

ちょっとだけ真相やトリックに「え? それちょっと都合よすぎない?」と思うところがあるものの、
トータル的にはかなりの完成度。
本格ミステリというジャンルを、心行くまで楽しむことができます。
道尾作品に共通して出てくる(本作にも当然出てくる)〝ハイテンションの軽くウザいおじさん〟も、
慣れれば逆に面白くなってきます。
特に本作におけるハイテンションおじさん・唐間木は、
キャラがいいぶん存在感も際立っていて、もし彼がいなかったらラストのあの切なさは
なかっただろうなと思えるほど。

おすすめです。
夏はやっぱり読んでスカッと爽快の本格ミステリが一番。
繋がっているとは、そういうことなのだと思いたい。



元英語講師の梨花、結婚後、子供ができずに悩む美雪、絵画講師の紗月。
3人の女性の人生に影を落とす謎の男「K」。
感動のミステリ。

***

こんなこと言うのもなんだけど、湊かなえさんの小説は
刊を増すたびにつまらなくなっている気がする。。。

本作も、三人の女性の物語が平行して描かれてはいるものの
彼女たち一人ひとりに個性が乏しくエピソードも興味を惹かれるものではないため、
どれが誰の話だったかちょっと油断しただけで忘れてしまう。
文章のつまらなさはそのへんの主婦のブログ並み(きんつばとかコマクサとか正直どうでもいいし)。

なので最後に真相が明かされたときも、
「そうだったのかー!!!」
じゃなく、
「え? そうだったの? ふーん。。。」
みたいな感じにしか思えず。
「え? ていうかそのひとって誰だっけ。。。えーと、ああ、第○章のこのひとね、
あーなるほどこのひととあのひとが繋がってたわけだ、で、あとこっちは誰だったっけ?」
みたいな。

ラストもいまいちぴんとこなかったし、あまりおすすめしません。
〝告白〟を超せとは言わないけど、もうちょっと素直に面白いと思える物語を
湊さんには書いてもらいたい。才能はあるひとなんだと思うから。
この世界は、きっとどこかと繋がってる。



「どこかの誰かが、この鳥を必要としている」――
誰よりも小説を愛し、誰よりも小説に愛される芸人、太田光がついに作家デビュー!
 
舞台芸人の一瞬の輝きを一羽の鳥に託した表題作ほか、
父との不和に悩む娘やイジメにあう男子高校生の葛藤から、
人類の行く末、そして神の意志までを、
持てる芸のすべてを注いで描き尽くした《希望の書》。

★収録作品★

 荊の姫
 タイムカプセル
 人類諸君!
 ネズミ
 魔女
 マボロシの鳥
 冬の人形
 奇跡の雪
 地球発…

***

シンプルで読みやすい文章ともあいまって、
小説というより童話のような感じ(特にラストの〝地球発……〟を読んだときは
文章表現の妙と「この童話とこの童話を合体させるか!」という新鮮な驚きにぞくぞくした)。
だからといって(〝人類諸君!〟や〝奇跡の雪〟なんかを読めばわかると思うけど)
こぢんまりとまとまるのではなくいろいろと実験的なことをしているところも面白く、興味深く読めた。
個人的に一番好きなのは〝タイムカプセル〟。これはそこらのプロよりも
生々しく斬新で心に迫ってくる。名作だと思う。

爆笑問題を離れた太田氏がここまでやってくれるとは正直思ってなかった。
彼には是非また小説を書いてほしい。できれば今度は長編も読んでみたい。

おすすめの一冊です。
世界の果ては遠くない。



小学4年生のぼくが住む郊外の街に突然ペンギンたちが現れた。
この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、
その謎の研究を始めるが――。
冒険と驚きに満ちた長編小説。

***

子供向けの読み物みたいな文体だけど、それが逆に個性になっていて面白い。
急激な進展のないゆったりとした物語ながらも、ページを繰るたびにゆっくりとゆっくりと
内容に惹きこまれていく自分を感じた。
そしてあの寂しいながらも微笑みたくなるようなしみじみとしたラスト。
いいもの読ませてもらったなー、読んでよかったなと思える作品だった。

小中学生の夏休みの宿題の読書感想文、自分だったら本作を選びます。
大人から子供まですべての年齢層におすすめ。
日常とファンタジーの境目みたいな不思議で楽しい世界観を是非楽しんでみてください。
いつか羽ばたく日を夢見て。



寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、
胸に刺さったナイフだった。
大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。

***

相変わらず構成力すごいです。
全体に散りばめられた伏線が終盤できれいに収束します。
飽きがこないうちに物語が新展開を見せるところも「書き慣れてるなあ。。。」と感心。

ミステリより人間ドラマを重視した内容なので、トリックとかロジックとか重んじるひとには
向かないかも知れないけど、さらっと読めるのでおすすめ。

東野氏にはそろそろ〝白夜行〟みたいな骨太の作品を書いてほしいと思わなくもないですが。
(というより熱望してますが)

本作でまあまあ満足できたので、その日が来るのをゆっくりと待とうと思います。
極上の推理小説で。



『理由あって冬に出る』の似鳥鶏、
『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞した相沢沙呼、
『叫びと祈り』が絶賛された第5回ミステリーズ!新人賞受賞の梓崎優、
同賞佳作入選の「聴き屋」シリーズの市井豊、
そして2011年の本格的デビューを前に本書で初めて作品を発表する鵜林伸也。
ミステリ界の新たな潮流を予感させる新世代の気鋭五人が描く、学園探偵たちの活躍譚。

★収録作品★

 お届け先には不思議を添えて/似鳥鶏
 ボールがない/鵜林 伸也
 恋のおまじないのチンク・ア・チンク/相沢 沙呼
 横槍ワイン/市井豊
 スプリング・ハズ・カム/梓崎 優

***

 ◆お届け先には不思議を添えて◆

こういう〝頭の体操〟的なミステリって苦手なんだよなーξ
「こうすることであれがこうなって、これがそうなって」。。。みたいに自分で考えなきゃいけないやつ。
ってそこまで難しい内容ではないのですが、あまり楽しめなかった。
謎にも全然興味を惹かれないし(←これが一番大きい)。
もともとこの著者は〝理由あって冬に出る〟のころから苦手っていうのもあるんだけど。
それにしてもタイトルは毎回うまいよな。

 ◆ボールがない◆

何故100個あるはずのボールが99個しかないのか?――そんな議題について
熱く語る野球部員たちが微笑ましい。
オチもくすりとできていい。
けっこう楽しめました。

 ◆恋のおまじないのチンク・ア・チンク◆

謎自体は小さなものだけどキャラ同士の絡みが面白く楽しく読めた。
なぜヒロインがバレンタインのチョコを血眼で選んでいたのか、の真相は強引な気がしたけど、
まあ許容範囲内。
かわいいミステリ、楽しませてもらいました。
ちなみに本編、鮎川哲也賞受賞作〝午前0時のサンドリヨン〟の続編。ファンのひとは是非一読を。

ところでこの著者、鮎川賞の受賞パーティーで手品を披露したそうで驚き。
ヒロインだけじゃなくて本人もできるんだな、マジック。。。
(ミステリ作家は手品できるひとが割と多い気もするけど。
やっぱり基本的にひとを驚かせるのが好きなのでしょう)

 ◆横槍ワイン◆

謎は小粒だけど、登場人物のキャラがたっているし筆致もテンポがよくてさらっと読める。
読後感もさわやか。
文章がちょっとだけ幼い気がするけど、まだ若いからだろうし今後が楽しみな作家さん。

 ◆スプリング・ハズ・カム◆

トリックとしては目新しいものではないけど、この著者はミステリに絡めるドラマ部分が
非常にうまいひとなので、印象深くとても心に残る読みごたえだった。
それにしても切ない。
誰もが二度読みたくなる物語(私も時間を空けてもう一度読んでみるつもり)。



80年代生まれの作家さんのアンソロジーなので若干若書きのきらいはあるけど、
全体的に楽しめました。
続編とか出たら嬉しいな。
たしかなものもある。たとえば――。

noname.jpg











ながい髪に、印象的な瞳とそばかす。ジーンズをはき、
E・Nとイニシャルを縫いこれまたナップザックをかかえた少女。
彼女の名前はエマノン――四十億年分の記憶とともに生き続ける存在。
彼女の身体の中には、『地球』とおなじだけの喜びや悲しみが積み重なっていた。
人類の祖先をすくった意思を描く「さすらいビヒモス」や、
化学兵器汚染地区での物語「まじろぎクリィチャー」などの五篇を収録。
前作「おもいでエマノン」同様、鶴田謙二のイラストでおくるシリーズ第二弾。

★収録作品★

 さすらいビヒモス  
 まじろぎクリィチャー  
 あやかしホルネリア  
 まほろばジュルパリ  
 いくたびザナハラード

***

おもいでエマノン〟の続編。

〝おもいでエマノン〟がよすぎたせいか今回は凡作の印象。
どれも心に残るものがなかった。
最終話のメタっぷりは唐突ながらも面白かったけど。
でもUFOとか出しちゃったあたりいくらSFにしてもやりすぎだろこれ、と思わずにはいられなかった。
オチも「もう既にそこにはエマノンの姿はなかった」みたいなのが多くて若干著者の手抜きを感じた。

あまりおすすめしません。
シリーズ三作目〝ゆきずりエマノン〟に期待することにします。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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