止められない。
恋人・降一を事故で亡くした志保。彼の母親が営む店を手伝う彼女の前に現れたのは、
その事故の原因をつくった五十嵐だった。彼の存在を受け入れられない志保だったが、
同じ悲しみを抱える者同士、少しずつ二人の距離が近づいていく。。。
★収録作品★
君が降る日
冬の動物園
野ばら
***
今までの島本理生作品の中で一番好きかも知れない。
どの物語も終わりかたが秀逸で読み終わるたびに唸った。そのたび背中がぞっとした。
特に〝野ばら〟は著者自身も気に入っているという発言のとおり傑作。
今すぐ頭をハンマーで殴り付けて記憶を失ってからまっさらな状態でまた読みたい。
もちろん少し時間を置いて再読するつもりだけれど。
おすすめです。
おまけ:
谷川俊太郎の〝あなたはそこに〟。
必ず本作を読了後お読みください。
『あなたはそこに』
あなたはそこにいた
退屈そうに 右手に煙草 左手に白ワインのグラス
部屋には三百人もの人がいたというのに
地球には五十億もの人がいるというのに
そこにあなたがいた
ただひとり
その日その瞬間 私の目の前に
あなたの名前を知り
あなたの仕事を知り
やがて
ふろふき大根が好きなことを知り
二次方程式が解けないことを知り
私はあなたに恋し
あなたはそれを笑いとばし
いっしょにカラオケを歌いにいき
そうして私たちは友達になった
あなたは私に愚痴をこぼしてくれた
私の自慢話を聞いてくれた
日々は過ぎ
あなたは私の娘の誕生日にオルゴールを送ってくれ
私はあなたの夫のキープしたウィスキーを飲み
私の妻はいつもあなたにやきもちをやき
私たちは友達だった
ほんとうに出会った者に別れはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ くり返し私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
初めてあなたを見た日から こんなに時が過ぎた今も
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