正しくなくて構わない。
父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため
父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。
十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、居場所がわからなくなっていた
香織の調査を探偵に依頼する。
街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。
僕の周りには刑事がうろつき始める。
しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。
それは、絶ったはずの家系の男だった――。
刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。
芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編。
新たなる、決定的代表作。
***
展開こそ殺伐としていて全体的に昏い彩りだけれど、
一歩引いて全体を見渡してみれば、本作は主人公からある一人の少女への
壮大なラブレターなのだと思う。
〝白夜行〟(東野圭吾著)に少しテーマが近いけど、
本作のほうは主人公の内面まで描写されているぶん余計に読んでいて苦しく、
また少女への狂的なまでの熱情が伝わってきてぞくりとした。
といってもその狂いっぷりに引いたのではなく、
「自分もこんな風に愛されてみたい」
という背徳的な願望故に。
これまでの中村作品の中では一番、主人公が未来を見据えていると思える物語だった。
主人公・文宏には生きて生きて最後まで生き抜いて、
本当に「自殺しなかったぞざまあみろ」と
神にファックサインでも突きつけながら勝ち誇ったように言ってほしい。
おすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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