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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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もうすぐ総ては終わるよ。



現在、過去、未来。別々の時を刻む3つの大時計を戴くクロック城。
そこは人面樹が繁り、地下室に無数の顔が浮き出す異形の館。
謎の鐘が鳴り響いた夜、礼拝室に首なし死体、眠り続ける美女の部屋には2つの生首が。
行き来不能な状況で如何に惨劇は起こったか?
世界の終焉を鮮烈に彩る衝撃のメフィスト賞受賞作!!

世界が終わるまでに、ぜひ読んでいただきたいと思います。――(北山猛邦)

***

再読。
大胆なトリックと各所に散りばめられた微細なトリックのバランスが素晴らしい。
終末を舞台にした世界観も文句なしに好きだし。
オチがわかっててそれでもなおまた読みたくなるミステリというものも珍しい。
これを当時二十歳になるかならないかの人間が書いたというのが信じられない。
ときどき横文字連発で読んでいて恥ずかしくなるシーンもあるにはあるけど、
個人的には傑作だと思う。

こういう、ただミステリとしてすごいというだけじゃなく
物語としても完成されていて、また読み返したくなる小説っていうのを自分も
書けたらいいなと思う。

おすすめです。
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わたしはいったい何が欲しいんだ?



「一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…
気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、
その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはうまい妹、
その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…」
14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、
大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情。

★収録作品★
 
 まともな家の子供はいない
 サバイブ

***

サバサバした爽快な小説だった。
変に捻ったりせず直球で物語を紡ぐ、そしてそれがとても魅力的、
それが著者の津村さんのいいところ。
主人公の少女の親への嫌悪感、そしてラストのちょっと見方が変わるその感じ、
そういう心理が真っ直ぐにこちらに届いて、読んでいる間中ずっと
主人公と一緒に顔を顰めたり笑ったりキレたりと感情を共にしている自分がいた。

同時収録の〝サバイブ〟は、表題作で主人公だった少女・セキコの友人が
語り部なのだけど、表題作ではわからなかった彼女の内面が具体的に描写されていて
「人間誰しもいろいろあるなあ」と改めて思わされた。

ここ最近の津村作品の中では一番好きです。
おすすめ。
だからその日まで。



ピアニストからも絶賛! ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。
ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、
全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、
コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、
やがて殺人事件まで発生する――。
第8回『このミス』大賞受賞作品。

***

著者は特に音楽を演っているひとではないようなのにこのクオリティの高い音楽描写。
今自分は音楽ミステリ(私のはクラシックではなく歌だけど)を書いているのだけど、
本作を読んで自分の文章が恥ずかしくなりしばらく執筆が手につかなかった。
それぐらいにピアノの演奏シーンが圧巻。

正直ミステリとしては詰めが甘いけど(綾辻行人氏の小説にそっくりなものもあるし)、
ラストにはそれなりに衝撃を受けたし最後の一行の妙に打たれて涙が出そうになった。
ここまでタイトルをうまく内容に絡めた小説に出会ったのはひさしぶり。

上記のとおり、ミステリというよりは青春音楽小説ですが、
非常に文章が達者で読みやすい(演奏シーンには読み手の想像力も必要とされるけど)ので
おすすめです。

BGMにはこれ↓をどうぞ。





みんな、死んでしまえばいい。



「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」
サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。
自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。
息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。
ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、
志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、
ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。
さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、
これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める──。

***

この世に〝犯行動機〟は数あれど、
ここまで恐ろしい犯行動機はついぞお目にかかったことはなく、読み終えて戦慄が走った。
その点で言えば本作はミステリというよりもれっきとしたホラー。

事件の真相は早い段階で読めてしまったけれど、
よく練りこまれたサイバー犯罪に関するストーリーはなかなかに読み応えがあった。
ところどころサイバーセキュリティに関する知識が足りなくてついていけない場面はあったけど、
楽しめました。

読後、タイトルの〝檻の中の少女〟と、表紙と裏表紙の写真が誰なのかということにも気付き、
改めて「なるほどなあ」と思わされた。
特に最近著名な作家さんの表紙で見ることが多い、イラストレーターの加藤木麻莉さんの扉絵には
「よく作品を読み込んでるなあ」と感心した(これって著者への評価じゃないけど)。

おすすめです。
愛してる。



同じ保育園に子どもを預ける三人の若い母親たち――。
家を出た夫と週末婚をつづけ、クスリに手を出しながらあやういバランスを保っている
“作家のユカ”。
密室育児に疲れ果て、乳児を虐待するようになる“主婦の涼子”。
夫に心を残しながら、恋人の子を妊娠する“モデルの五月”。
現代の母親が抱える孤独と焦燥、母であることの幸福を、作家がそのすべてを注いで描きだす、
最高傑作長篇。

***

著者の金原ひとみさんは結婚・出産を経てから作風が変わったような気がする。
それとも単に今そうなだけで、しばらくすればまた元のバイオレンスなノリに戻るんだろうか。
私はそっちのほうが好きなので、是非またあの乱暴で破天荒な世界観を見せてほしいと
思っているのだけれど、でも本作も、主人公である三人の母親の
子供や結婚に対する思考や心理描写が巧みで、最後まで非常に面白く読めた。
(ラスト間際がちょっと駆け足だった気もするけど)
特に涼子の物語(本作は三人の母親のモノローグで成り立っています)は、
「何で世間の母親はあんなに普通に子供を育てあげられるんだろう」
と常々疑問に思っていた私に深い共感を呼び起こさせるものだった(本当なら共感しちゃ
駄目なんだけど)。

陳腐な言葉で言わせてもらえば、人間は皆自分の中に何かを抱えて生きる生き物であり、
そして母親になったとしてもその前にひとりの人間である、ということなんだろう。
それにしても、〝母親〟というものは、〝母親〟であるためにまず〝人間〟である自分を
消さなきゃいけないというのなら、私は一生子供はいなくてもいいかもな、と思う自分を否定できない。
子供を何人も作って幸せそうにしている周りの人間たちが、私にはエイリアンにしか見えない。
そもそも私は心に病気を持っているので、子供は作らないほうがいいのかも知れない。

。。。といろいろ考えさせられる物語だった。
女性だけじゃなく、男性にもおすすめ。
こういう作品は夫婦で読めば互いの理解が増すような気がする(そもそもふたりで一冊の本を
読むぐらい仲がよければ、本作のような問題も起きないんだろうけど)。
有機をもって恋をせよ。



どんなに複雑な物質であっても、瞬時に合成ルートを編み出す能力を持つ
大学院生・藤村桂一郎。
ところが彼は研究室にやってきた新人秘書・真下美綾にひと目惚れし、
能力を失ってスランプに陥ってしまう。
そんなある日、カロンと名乗る黒衣の妖女が「キミの能力を取り戻してあげる」と現れ、
美綾への告白を迫るが…。
東大で理系草食男子が巻き起こす前代未聞のラブコメ&ミステリー。
東大卒の著者が描く“日常系コメディ”登場!
2011年第9回『このミス』大賞優秀賞受賞作。

***

著者の経歴(東京大学大学院卒)に
「おいおい、おカタい話は勘弁してくれよ」とちょっと偏見を持っていたのですが、
とんだ勘違い。とても可愛らしい物語だった。
ミステリというよりは完全に青春恋愛小説だけど、
ミステリ派の自分でも十分満足のいく内容で読み進めるのが楽しく、そして終わるのが残念な、
そんな魅力的な小説だった。

物語のところどころにマンガからの引用である展開が見られるのが
オリジナリティ足りない気もしたけど(そして多少展開が読めてしまうところもあるけど)、
それはそれで割り切れば非常に面白く読める。
ストーリー進行が主人公にとって都合よすぎるところもまあ眼を瞑ります。

恋愛小説嫌いな私ですが、本作だけは「こんな恋愛してみたいな」と素直に思えた。

おすすめです。
「犯人は、あなたです!」
「……青砥先生には、今回、ぜひ残念賞を差し上げたいですね」




自称・防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)榎本と、美人弁護士(実は天然!?)純子のコンビが、
超絶トリックに挑む!
貴志祐介にしか考えつけない、驚天動地の密室トリック4連発!
密室ミステリの金字塔、ついに登場。

★収録作品★

 佇む男
 鍵のかかった部屋
 歪んだ箱
 密室劇場

***

〝硝子のハンマー〟〝狐火の家〟に続く榎本&純子シリーズ。

貴志氏、久々の(そして待望の)ミステリ節全開。
それも東野圭吾もびっくりの理系トリックあり、叙述トリックありの盛りだくさんで楽しく読めた。
ただ、最後の話(〝密室劇場〟)にはノリもミステリ部分もまったくついていけなかった。
何あれ?
何で眼の前で殺人が起きてるのに主人公コンビあんな平然としてんの?
しかもてっきり最後に「この一連のやりとりも全部お芝居でした★ちゃんちゃん♪」
みたいな感じで締めるんだろうと思っていたらそのまま普通に終わっちゃうし。
(著者本人は、本編をして「笑って読んでもらえれば幸い」とのことだが正直くすりともこない)
『~新境地を開きつつあるらしい。あきらかに、間違った方向にだが』はあんただよ貴志さん、と
思ってしまった。
純子のとってつけたような天然キャラも作者の狙いがあざとすぎて読んでいてシラけたし。。。

でもまあ何だかんだ言ってそれなりに面白かったのですが、それでも
〝ISOLA〟〝黒い家〟〝クリムゾンの迷宮〟〝天使の囀り〟〝青の炎〟。。。
どれも何度も、本がボロボロになるまで読み返すほど大好きだったのに、
今の貴志氏には当時の面白さを望むべくもない。。。どうしちゃったんだろう。残念。
だからこそ、あなたを虐げる。



「最愛の女を救うため、俺は悪魔になる。」
至上最強・最悪の主人公が登場!新堂冬樹のノアールがここに結実――。

最愛の女性・サキがスキルス性のガンに侵され、余命三ヶ月と宣告された。
絶望に見舞われた花崎修二は、サキからさらなる衝撃の告白を受ける。
その日から、修二は「悪魔」になることを誓った。何者にもひれ伏さず、慈悲を捨て、
己に潜む悪を解き放つ……。
サキの命の期限が迫リ来る中で、何が修二を“悪虐”に駆り立てるのか。
著者が自身の原点に立ち返って人間の心の闇を執拗に抉る、渾身のノンストップ・ミステリー!

***

ギャグ?
これはギャグ小説なの?
始まってすぐに真面目に読む気が失せた。
2時間ぐらいで読める短さだったのがまだ救い。読んでいて終始あっけにとられた。

内容は、主人公が自分に何の関係もない人間をやたらめったらボコボコにするだけの話。
とか言うと何だか映画〝処刑人〟みたいなスタイリッシュな物語が想像できそうだけど、
そんなかっこいいもんじゃない。ほんとひたすらボコる、ボコる、ただそれだけの繰り返し。
冒頭からやたら仄めかしてくる〝妻との約束〟も速攻その中身が何なのか想像つくし、
文章の合間合間に差し挟まれる回想シーンの会話もすべて
鳥肌が立つぐらいのクサさ&茶番っぷり。
つまらないのを通り越してだんだん読んでいて(ある意味)楽しくなってきて、
読んでいる間顔が笑いっぱなしだった(半分はひきつり笑いだけど)。
「うふぁっ! うふぁっ! うふぁっ! うふぁっ!」のシーンには腹を抱えて大爆笑した。

そもそも主人公の妻の名前が〝花崎サキ(ハナサキサキ)〟な時点でギャグだし。

おすすめしません。
こんな物語を書いてひとに読ませる、著者の行為こそが何よりの〝悪虐〟です。
手だけは、離さずに。



村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。
突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、
村長選挙を巡る不正を暴き“村を売る”ため協力する。
だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった――。
辻村深月が描く一生に一度の恋。

***

。。。辻村深月さんの小説を読んでつまらないと思ったのは今回が初めてかも知れない。
これが一生に一度の恋? にしては薄っぺら過ぎる(〝一生に一度の恋〟というコピーは
編集が考えたものだろうから著者を責めるのは間違ってるけど)。
脇キャラも、伏線(ぽいもの)を張るだけ張って何で出てきたのか意味もわからないまま
あっさりフェードアウトしていくし、フェードアウトといえば物語の流れ全体が
曖昧なままフェードアウトって感じだし(水没した村は結局何の意味があったんだろう?
ラストの比喩のためにだけ? それじゃあまりにあんまりな気が)。

辻村作品初の濡れ場には驚かされましたが。

にしても今作の一番の欠点は、本来魔性の女であるべきはずの由貴美の
〝魔性〟の部分が圧倒的に少なく、〝人間〟としての弱さ・脆さのほうが
強調されがちだったことだと思う。
そこらへんのバランスが悪く、物語の着眼点は非常にいいのに勿体ないなと思った部分。

決して駄作ではないのですが、辻村作品を読後いつも思う「また読み返したい」が
今回はなかったことが残念だった。

そしてこれは余談なのですが、
本作には今自分が書いている小説と表現が被っている場所が二箇所もあり、
「これ応募してパクリってことになって落とされたらどうしよう」と
戦々恐々としている今日この頃です。
伝えられるはずもない。



琵琶湖畔の街・石走に住み続ける日出家と棗家には、代々受け継がれてきた「力」があった。
高校に入学した日出涼介、日出淡十郎、棗広海が偶然同じクラスになった時、
力で力を洗う戦いの幕が上がった!

***

文章もうまいしキャラも(美形いないのに)魅力的だし物語の構成もしっかりしているし。。。
ただいかんせん、長い。
それも起承転結の、起・承・承・承。。。みたいな感じで物語が進んでいくものだから
耐え切れず何度もあくびが出た。
これだけの長さ(550P)の物語にするには内容が地味すぎるんだよな。。。
作中には超能力を使えるキャラがたくさん出てくるけどラノベや漫画みたいな派手さはないし。
(もちろん、あまり派手にするとリアリティがなくなるからという配慮の元に書かれてるんだろうけど)
文体も、全体的にのんびりしているので読んでいてテンションが上がりにくいし。
ラストも一瞬感動しかけたけどよくよく考えるとありがちな終わり方だし。

プリンセス・トヨトミ〟のほうが個人的には面白かった。

「しゅららぼん」という素っ頓狂な(笑)単語を生み出した著者のセンスには拍手を送りたいけども。

まあおすすめです。



余談ですが、自分としては
しゅらららららららららっ、
という音はサイダーなんかの炭酸飲料が弾ける音、
ぼぼぼぼぼぼんんんんん
は花火の音を連想した。
本作を読んだほかのひとはどんな風に感じるのか、聞いてみたくもあります^-^
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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