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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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いっそ、さめたくなんてないのに。



まるでやわらかな幾何学のように描かれた人間関係。
全盲の青年をめぐる人々を、鮮やかに切り替わる視点で活写する傑作!
「たそがれ刻はにぎやかに」を併録。

***

料理の味がどう、旅行先の国がどう、そういうのはいらないから
人物描写・心理描写をもっときちんとしてほしかった。
何だか他人のホームビデオを観させられているような白けっぷりだけが残った。
一番重要なはずの〝月食という現象を二人にしかできない方法で分かち合う〟、
このシーンも、期待していた割には凡庸で肩透かしだったし。
(いや、シーンそのものはよかったんだけど、登場人物に思い入れることができてないから
何とも思わなかっただけかも。『え、何で彼にそれをしてあげるのがあんたなの?』みたいな)
そして文章の視点があまりにころころ変わるので非常に読みづらかった。

著者のデビュー作〝風化する女〟を以前たまたま雑誌で読んで
割といいなと思ったから読んでみた本作だけど、感想は「つまらない」、このひと言だけ。
よくこれが芥川賞候補になったな、そして何冊も本が出せるなと正直思ってしまった。
ほかの作品はもっといいのかな?
まあ、いつか手にとってみようと思う。
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知らないのなら、教えてやろう。



空前の劇場型犯罪が幕を開ける。
2010年3月21日未明に、奈良と東京で、女性と男性が殺害された。
被疑者は被害女性の夫であり、被害男性の大学時代のサークルの先輩だった。
同一人物による500km離れた場所での同時殺人。
警察庁「裏店」のキャリア警視正・我孫子弘が捜査の指揮をとると、
被疑者の大学時代の映画サークルの仲間4人がこれまで、
3月21日に事故・もしくは自殺で死亡していたことが明らかになる。

***

前作よりつまらなかった。
いや前作と比べるまでもなくつまらなかった。
作中に出てくるエピソードのほとんどが既にどこかで読んだような内容だし、
警視正は確かに個性はあるけどそれが魅力に転化できてないし(というかこの程度の
個性の持ち主、ミステリってジャンルにはいくらでもいる。そんな中で見ると彼は薄すぎ)。
構成力も正直微妙で流れるように読むことができないし。
ラスト直前のあのページを出したいがために書いた物語ですか?という感じ。

自慢したいのかただの素なのか、早稲田(著者の出身校)が頻繁に出てくるし。
(自作に自らの出身校の慶応をばんばん出してくる某作家を思い出した)

おすすめしません。

ていうか第五章で(劇中劇のキャラとして)出てくる女が、
アパートで鉢合わせた女性に向かって
「あんたのコレかい?」と小指を立てて女性の恋人が住んでいる部屋を示すのおかしくないか?
レズじゃないんだから。。。
わたしは他者になりたい。



京都の大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ乙女たち。
日本式の努力と根性を愛するバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、
「一九四四年四月九日、日曜日の夜」の暗記に励んでいる。
ところがある日、教授と女学生の間に黒い噂が流れ……。
言葉とアイデンティティの問題をユーモア交えて描く芥川賞受賞作。


***

よかったです。面白かった。

たとえばAという人間がいたとして、その人物がいかなる人物かを正確に語ろうとするときに、
より真実に近い意見をするのは
友人や恋人や身内といった〝好意的なフィルターor色眼鏡〟で相手を見てしまう者よりも、
Aとはそこそこ距離があって客観に徹して相手を見ることができる人間なのだな、と
本作を読んでそう思った。
ひと言で言えば〝岡目八目〟。
カウンセラーが問題を抱えたクライアントを見るときと同じ、もしくは
両想いなのにそれに気付かない男女を少し離れたところから白けた顔で見ている友人、みたいな。

妙な脚色や自己陶酔なしに真実の〝人間(アンネ・フランク)〟を最終的には見ることができた
主人公のようなひとが実際にいれば友達になりたい。

〝乙女〟という言葉に、著者独特の意味付けをしているところも非常に興味深かった。
この著者の使う〝乙女〟という単語は、辞書に載っているものとも普段私たちが認識している
ものとも違う。
そういう言葉を生み出せるひとを私は尊敬する。

芥川賞受賞作にしては少し地味だけど良作です。

突き抜ける、音がする。



★収録作品★

 しあわせのこみち
T大学文学部二年生、清水あやめ。「感性」を武器に絵を描いてきたという自負がある。
しかし、授業で男子学生・田辺が作った美しい映像作品を見て、
生まれて初めて圧倒的な敗北感を味わい……。

 チハラトーコの物語(「『嘘』という美学」を改題)
美人でスタイル抜群、ガチに博識でオタク。
チハラトーコは、言葉に嘘を交ぜて自らを飾る「嘘のプロ」。
恩師、モデル仲間、強気な脚本家との出会いが彼女にもたらすものとは?

 樹氷の街
中学校最後の合唱コンクール。指揮を振る天木だったが、本番一ヶ月前になっても
伴奏のピアノは途中で止まり、歌声もバラバラ。
同級生の松永郁也が天才的なピアノの腕を持つことを知った彼は……。

***

叶えたい目標を持つひとが読んだら、その意思が強ければ強いほど
共感できる内容だと思う(私は共感を通り越してへこんだけど。だって何だかんだで
主人公皆才能にも運にも恵まれてるし、それ以外にも成功者バンバン出てくるし。。。)。

〝冷たい校舎の時は止まる〟、
〝スロウハイツの神様〟、
〝ぼくのメジャースプーン〟、
〝凍りのくじら〟、
〝太陽の坐る場所〟
と、これまでの辻村作品のキャラ大集合的な内容なので、上記作品を読んだことがあれば
より本作を楽しめるはず。

それにしても二話目の某キャラの、
「私は病人なんか相手にしないわ」。。。
これかなり無神経な台詞だと思うんだけどどうよ?
ちょっと著者の常識疑った。。。(本人にそういうつもりはなくても)
やっと人間が辞められます。



くたびれた一戸建て(平屋・貸家)に引っ越してきた男(45歳、作家、独居)。
やがて、夜となく昼となく呻き声・悲鳴・絶叫が漏れ、
屋根には血塗れの全裸女(マネキン)と巨大な赤剥けの手(粘土細工)が据えられ、
はては探検を仕掛けた小学生が…。
眠ったような町の住人――自殺しそこなった老人、うつの主婦、つやつや教信者の理髪店主、
鳥インフルエンザにおびえる会社員等々と独居男がくりひろげる阿鼻叫喚のご近所狂詩曲。

***

〝独居45〟と銘打ってはいるものの、内容は全然〝独居45〟じゃない。
〝45歳の独居男性〟というシチュエーションに少しもスポットが当てられていない。
それだけでも軽く「騙された」と思ったのに、内容も著者はいったい何が言いたいのか
ちんぷんかんぷん。
悪い意味で本能だけで書いたんじゃないかと訝ってしまう。
計算して書いたのなら「じゃあ何でこうなるんだ」ともっと訝る。
主人公を初め登場人物たちの心情もまったく伝わってこないし。
純文学に出てくる人物たちは、どんなに奇行に走っても
著者によって内面描写がしっかりとされているからこそ共感することができる。
でも本作は単に主人公たちの奇を衒った行動に引くだけ(というか、失笑というか。。。)。

ところどころに差し挟まれる著者による哲学のようなものは
深みがあって結構よかった。

でもこの作家さんの文章リズムはあまり好きじゃない。
いつか彼のほかの著作でも読んだら印象が変わるかな。
必ず、すべてを終わらせる。



ある日、看護師の前に現れた、ひとりの男。彼は女性にこう囁いた。
「この病院は、まもなく倒産します」……
鬼才・新堂冬樹が病院乗っ取りという社会問題をテーマに挑む、衝撃と感涙の書き下し長篇!

***

内容がペラペラですぐ展開とオチが読める。
登場人物たちの心理描写もあまりに浅い。
(簡単に相手を信用したり、簡単に相手を好きになったり。。。)
後半の誘拐騒動なんかは正直コントかと思った。
つまらなくて3分の2ほど読んだところでページをめくる手が止まりがちになったし。。。

おすすめしません。

お前は一体、誰なんや?



モザイクをかけられた顔は、私なの? 知らない間に裸の私がネットを歩き回っている! 
ここに書かれているのは、あなたのことかもしれない。
ネット社会の罠を克明に描いて話題沸騰の問題作刊行。

***

満足した。
物語としても、純文学としての観点から鑑みても。
本作の世界観に気持ちよく飲み込まれることができた。
はっとさせられる表現にもいくつも出会うこともできたし。
久々に納得のいく小説にめぐり会えたと思う。

ミステリの要素も孕んでいるので、普段純文学を読みつけないひとにもおすすめ。

んーでもそうかー、
私は女だからわからないけど(いや、男性でもわかっているとはあまり思えないけど)、
改めて考えると所謂アダルトビデオの中のひとたちにも一人ひとり自我があるんだよな。
〝肉体としての存在〟だけじゃなく。
人間なんだから当然なんだけど。
ああ、でもそれはAVに限らず自分以外の他人すべてに言えることか。
私たちは普段周囲にいる第三者の〝顔〟を見ていない。
どういう人間かまるで知らない、いわばのっぺらぼうを見てるんだ。
今ハマっている漫画〝GANTZ〟に出てくるある男キャラが、死ぬ間際になって初めて
そばにいた恋人に「へえ、こんな顔してたんだな」と呟くシーンがあるけど、
人って意外と他人の〝顔〟をちゃんと見ていない気がする。

少し寂しいことだ。
最後の息が消える瞬間まで。



そこへ行けば、救われるのか。
富士の樹海に現れた男の導き、
死んだ彼女と暮らす若者の迷い、
命懸けで結ばれた相手への遺言、
前世を信じる女の黒い夢、
一家心中で生き残った男の記憶…
光と望みを探る七つの傑作短篇。

★収録作品★

 森の奥 
 遺言
 初盆の客
 君は夜
 炎
 星くずドライブ
 SINK

***

ちょっと文章の熱が高すぎて
著者のテンションについていきづらいところがあった。
あとは物語が尻切れトンボ(&説明不足)で読後釈然としない話もいくつか。

著者が(著作〝まほろ駅前多田便利軒〟でもわかるように)
萌え男を書くのがうまいので
一話目とかは青年・青木のキャラクターに楽しませてもらったけど。

個人的には〝遺言〟が一番よかったかな。

各話のタイトルはイエモンの曲からそれぞれとっているそうです。



家族が死んでも読むし書きます。
プロになるにはそうしなきゃいけないしまたそれ以外何もする気が起きない。
何もしないでいると頭が変になりそうでもある。
望んだあの日がここにある。



施設で会った80歳の老人は、介護士の卵でボランティアにきた「わたし」だけには心を開いてくれた。
彼の嘘のような失敗続きの半生記にただ聞き入る日々。
あるとき老人が呟いたひとこと「あの日にかえりたい」の真意とは……!?

戦慄と感動の表題作ほか、
いじめられっ子の家出少年と動物園の飼育員のひと夏の交流「真夜中の動物園」、
地震に遭った少年が翌日体験した夢のような一日「翔る少年」、
高校時代の仲間と15年ぶりの思わぬ再会を描く「へび玉」。
落ち目のプロスキーヤーが人生最期の瞬間に見た幻「did not finish」、
ハクモクレンの花の下で出会った老女の謎「夜、あるく」。

北海道を舞台に、時を超え「あの日」へ帰る人びとの、
小さな奇跡と希望を描く、感動の傑作短編集!

★収録作品★

 真夜中の動物園
 翔る少年
 あの日にかえりたい
 へび玉
 did not finish
 夜、あるく

***

「孤独と引き換えに王になる」、
この表現はなかなかだな、と唸らされたものの、
正直全体的に〝浅い〟。
さらっと読むぶんには、文章もうまいし内容にも惹かれるものがあるし
きっといいんだと思うけど、
物語に深みを求めてしまう自分のようなタイプには残念ながら響かなかった。
どの話も早い段階でオチが読めてしまうし、
構成に懲り過ぎて返って読みにくくなってしまっている話もあった。

初期の「よくこんな物語考えつくなあ」と驚かされたクオリティの話を読みたい。
デビュー作〝夏光〟なんて写本するほど好きだったし。

次回作に期待します。

永遠の孤独に向かって。



東京の片隅。ホームレスに拾われた赤ん坊・臥薪正太郎は、不思議な力をもっていた。
少年に成長した正太郎は、その力を買われヤクザの組織に招かれる。
彼らの目的は、正太郎を教祖として、沖縄で宗教ビジネスを立ち上げること。
しかしその背後では、人間の想像を超えた壮大な神と悪魔の闘いが、幕を開けようとしていた――。

***

完璧に同著者の著作〝王国記〟シリーズの焼き直しです。それも劣化した。

不思議な力を持っていて周りから崇拝される子供。
最初はまったくモテなかったのにいきなり若い女とセックスにふけりだす中年男。
そして聖母マリアと崇められる娼婦の女。
何から何まで一緒。これだったら普通に〝王国記〟を読んだほうがずっといい。

文字とイラストがこれでもかと絡み合う本書の体裁には興味を惹かれたものの、
あまり好きな絵柄じゃないし内容にハマってるとも思えなかった。

内容といえば物語の後半なんか「ダイジェストか?」ってぐらい展開が速くてついていけず。

萬月氏の著作で初めて「これはないわ」と思った作品。

おすすめしません。
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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