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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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わたしは他者になりたい。



京都の大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ乙女たち。
日本式の努力と根性を愛するバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、
「一九四四年四月九日、日曜日の夜」の暗記に励んでいる。
ところがある日、教授と女学生の間に黒い噂が流れ……。
言葉とアイデンティティの問題をユーモア交えて描く芥川賞受賞作。


***

よかったです。面白かった。

たとえばAという人間がいたとして、その人物がいかなる人物かを正確に語ろうとするときに、
より真実に近い意見をするのは
友人や恋人や身内といった〝好意的なフィルターor色眼鏡〟で相手を見てしまう者よりも、
Aとはそこそこ距離があって客観に徹して相手を見ることができる人間なのだな、と
本作を読んでそう思った。
ひと言で言えば〝岡目八目〟。
カウンセラーが問題を抱えたクライアントを見るときと同じ、もしくは
両想いなのにそれに気付かない男女を少し離れたところから白けた顔で見ている友人、みたいな。

妙な脚色や自己陶酔なしに真実の〝人間(アンネ・フランク)〟を最終的には見ることができた
主人公のようなひとが実際にいれば友達になりたい。

〝乙女〟という言葉に、著者独特の意味付けをしているところも非常に興味深かった。
この著者の使う〝乙女〟という単語は、辞書に載っているものとも普段私たちが認識している
ものとも違う。
そういう言葉を生み出せるひとを私は尊敬する。

芥川賞受賞作にしては少し地味だけど良作です。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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