忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[971]  [960]  [954]  [965]  [962]  [948]  [932]  [947]  [928]  [936]  [949
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

この世界に。
僕の側に。



大好きなのに、いつまでも一緒にいたいと思ったのに、
ぼくの心を一瞬で奪った君は“消えてしまった”。
君の存在を証明するのはたった数分のビデオテープだけ。それが無ければ、
君の顔さえ思い出せない。
世界中の人が忘れても、ぼくだけは忘れないと誓ったのに――。
避けられない運命に向かって必死にもがくふたり。
日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による、切ない恋の物語。

***

ある歌に、
『嫌われていい 覚えていてくれるなら』
という歌詞があった。

ある漫画に、
自分のことを知る人間が皆死んでしまい孤独になって、
臨終の際にそばにいた相手に「私の名前を呼んでくれ」と頼み、
名前を呼んでもらって安心したように息を引き取る老人が描かれていた。

上記からもわかるように、当然ながら人間というものは
〝忘れられる〟ということを〝死ぬ〟ことより遥かに恐れる生き物だ。
なのに本作のヒロインはそんな〝誰からも忘れられる〟という宿命を背負っている。
クラスメイトも、挙げ句親までもが、彼女のことを〝忘れて〟いく。
そこに肉体の病のような苦しみはない。ただやるせないほどの心の痛みだけがある。

それが読み手にも伝染するのか、読んでいる間中胸が痛かった。
彼女に恋をする主人公のように、自分だけはこの物語をずっと覚えていようとさえ思った。
主人公を通して〝忘れる〟側の苦しみも自分の内側に流れ込んでくるようで、
ラブストーリー(本作はSFの要素も入ってますが)ではめったに心を動かされない私も
思わず鼻がつんとした。

個人的な話だけど、以前、心の支えにしている作家さんに手紙を書いて、
「あなたのことを覚えておく」と返事をもらい号泣したことのある私にとって、
ひどく共感できる内容だった。
いや、これは人間なら誰もが共感できる物語と思う。
生きていたって簡単に忘れられる、携帯のメモリに登録した人間を「誰だっけ?」と
どうしても思い出せない、そんなことが頻繁にある今みたいな世の中では特に。

おすすめです。
映画化してほしい。密かな名作になりそう。

PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]