僕は今どこにいるのだ?
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、
天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。
僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、
激しく混乱し、動揺していた。
限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
「気なんか抜けない。抜いたらバラバラになって自分が自分じゃなくなってしまう」
「失望するのが嫌だから友人は敢えて作ろうとは思わない」
等の台詞にまずやられた。著者に心を読まれているのかと思った。
まあ、私を含め多くの人間が考えることを細密に描写しているからこそ
本作は世界的に人気があるのでしょうが。
(ファッションセンスを除けば)本作が23年前に書かれたものだということも信じられない。
いい曲を聴いたときと同じ、古臭さがまったくない。
本物というのはこういうものなんだなと、改めて感銘を受けた。
でも本作を読んで一番感じたのは
〝去るものは日々に疎し〟
ということ。
結局は精神疾患に苦しむ、ほとんど会えない女性よりも、
身近な別の女を選んじゃうんだもんな主人公は。。。
いやなリアリティだなほんともう。。。
対して、作中を通して常に主人公に都合のいい女や友人が用意されていたことには、
フィクション臭さを感じずにいられなかった。
〝泥土〟描写や最後の数行には主人公の抱く闇が垣間見れてまだよかったけど。
納得いかない部分も少しはあり、でも長年読み続けられてきた良作であることに
間違いはないと思う。
そして、所詮死んだら忘れられる、憶えてくれてはいてもそれは既に過去のものとして。。。
って考えるとまだまだ死ぬわけにはいかないなと思う。
直子と同じ、心を病んでいるfvの極私的感想でした。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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