相も変わらず。
友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている
十九歳の貫多。或る日彼の生活に変化が訪れたが……。
こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか――。
青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と痛飲、そして怨嗟と因業を渾身の筆で描き尽くす、
平成の私小説家の新境地。
***
大きな看板の下で
時代の移ろいを見ていたいな
と歌ったのは宇多田ヒカルですが、
本作の主人公はお水のキャッチが持っている看板より冴えない小さな看板を背負って生きている。
プライドが保てない。プライドを捨て切れない。
自分より上に見えるものをやっかんで攻撃しながら、イソップの狐みたいに
「あの葡萄は美味しくないに違いない」と惨めな悪態をついて生きている。
看板は見向きもされない。たまにそれを眼にした人は「嫌なものを見た」という顔で
さっさと通り過ぎていく。
身につまされる物語だった。
興味深く、一気に読めた。
ただ、これが芥川賞受賞作だと言われると「?」としか思えない。
抜きん出たものが感じられない。
たぶんあと数ヶ月もすれば内容は頭の中で薄れていってしまうんじゃないか。
そんな風に思えてしまう小説でした。
文章に癖はあるけど、意外と読みやすいのでまあおすすめ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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