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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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誰が、わたしを、救ってくれるの?

 

再会は地獄への扉だった。
十七年前、霧の霊峰で少年たちが起こした聖なる事件が、今鮮やかに蘇る――。

***

ドラマ化もされた有名作。
初めて原作読んでみました。

文章は端正、ただ抑揚に欠けていて読んでいてややだるい。
あまりに丁寧に書き込まれていて教科書めいているというか。。。
文体やストーリー運びに緩急をつけてもうちょっと短くまとめたほうが尚良作になったのではと
読者として惜しく思う。

少年期にそれぞれ虐待を受けた三人の主人公のエピソードも、
「ああそんな目に遭った子ならその心情は当たり前だな」
「え? そんな目に遭った子がそんな思考展開するかな?」
の二つを行ったり来たりして統一性がない感じ。ヒロイン過去の割りに図太すぎるし。
(まあこれは、二つの大きな支えがあったからという見方もあるけど。。。)

ぽんぽん人が死んだりあり得ない(いかにもフィクション的な)展開があったりと
どうなのよこれ感は多少ありますが、
人は誰も生きるということに苦しみを同居させているのだなあとやり切れない気持ちになった。

〝彼らは皆トラウマを克服し幸せに暮らしましたとさ、おしまい〟
みたいなご都合主義的なハッピーエンドはないけれど、一読に値する物語。
読む人によっては救いにもなる物語かもしれません。
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別に悪いことじゃないでしょ?



父さんは浮気のあげく帰ってこない。だから母さんは沈んでいる。
香緒里と友徳の姉弟はそんな家庭で成長してゆく…。
恋・成長・ときどきドキドキ。優しくて逞しい、ネオ青春・家族小説。『新潮』掲載を単行本化。

***

リアルです。
フィクション丸出しなのに超リアル。
改めて思う。舞城さんは不思議な作家だ。
会話のリアルさが世界観までリアルに見せてしまうのかな。

ビッチマグネット=どうしようもない異性ばかり惹き付ける人間。
私の周囲にも男女問わず結構いるので大いに楽しく読めてしまった。
モテる人間のほうがその率高いんだよな、不思議と。
って私的な話はどうでもいいか。

主人公の弟かっこいいです。
主人公の父親の愛人魅力的です。
肝心の主人公はテンションが上がったり下がったり何だかんだ悩んでも全部あっさり解決したり
何かとムカつく存在ですが、
カウンセリングでテストやらされて
設問の①~④どれにも自分が当てはまらないからって
自分で⑤を創っちゃうセンスは大いに好きです。

ディスコ探偵水曜日〟のインパクトがあまりにあんまりだったために(←ほめてる)
若干薄っぺらな印象ですが、こちらはこちらでちゃんとおすすめ。
素朴ながらもちゃんと舞城ワールド。

表紙も斬新だし何かとおすすめ。
放熱の中心へ。



子煩悩な母(パート主婦)、
わがままな姉(フリーター)、
堅実派の妹(信用金庫勤務)。
女3人が連れ立って、初めての海外へ(父は留守番)。
楽しいはずの道中は、天気も気分も荒れ模様――。
遺伝子は一緒なのに、どうしてこんなにバラバラなのか。やっぱり「世代」が違うせい?
21世紀の家族の心の叫びをリアルに描き切った傑作。

***

本谷作品にしては今ひとつパンチが足りないような。。。(キャラの魅力も)
でもオチは好きです。思わずほくそ笑んでしまった。

家族だろうが友達だろうが、旅行というものはその場所が遠ければ遠いほど
皆の神経がピリピリし出してトラブルの連続ですが、
そこに人情味&ユーモアを加えて一つのストーリーにしてしまえる本谷さんは
やっぱりさすがだと思う。
空気読めない父ちゃんと不器用な母ちゃんがいい味出しててよかった。

おすすめ。
かまわない。生きている。



―愛を失くした中年男の再生物語―
 
諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子が
コツコツ貯めた1千万円の貯金とともに蒸発してしまった。
人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、
ヤクザ者の義弟とソープ嬢!?
胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。
吉川英治文学新人賞受賞作品。

***

ラストのひと言(モノローグ)を言いたいがための390Pだったなーと思う。
そこに至るまでの経緯は正直あまり面白くない。
萬月氏のお約束とでも言うべき
ヤクザ
娼婦
暴力
性(主にスカ○ロ)
農業
といったキーワードでマンネリに埋め尽くされている。
萬月氏の作品にしてはコミカルで読みやすかったけど。
性描写を抜きにして荻原浩氏あたりがリライトしたらより面白くなるかもしれない。
主人公の義弟・アキラのキャラクターは魅力的でしたが。

作中に登場する石川力夫が実在の人物だということに驚いた。
格好いい人もいたもんだ。
そういえばだいぶ前の話だけど、某ニュース番組の暴走族ドキュメンタリーで、
自殺しようとする子を抱いて「一人では死なせない」と一緒に飛び降りたリーダーのことを
やっていたけど、そのときと同じ感動を覚えた。
いつまでも人の心に残る人間というのは存在するんだ。
他人の核に成り得る人間というのは。

そういう人物が私にとっては〝王国記〟シリーズの主人公・朧だった。
第一部最終回、読みました萬月さん(と突然私信)。
朧を支えにここまで来たのでかなり辛かったですが、あの生き様は正に朧だった。
彼を生み出してくれてありがとう。
貴方は私のサイコーのダチ。



四方八方田んばだらけの茨城県下妻。そんな田舎で浮きまくりのバリバリロリータ少女・桃子は、
大好きなお洋服欲しさに始めた個人販売で、これまた時代遅れなバリバリヤンキー少女・イチコと
出会う。見た目も趣味も全く違うこの二人。わかり合えるはずはないのに、やがて不思議な友情が
芽生えて…。
ギャグぶっちぎり! 思いっきり笑ってほんのり泣ける爆走青春ストーリー。
刺激的でエンターテイメント・センスがたっぷりなコマーシャルで知られる
ディレクター・中島哲也氏が惚れ込み、自ら監督を名乗り出た素敵な映画化原作。

***

映画が面白すぎたので読んでみた。

読んでよかった。

文句なしに面白い。

こりゃ映画の監督じゃなくても(上記参照)惚れ込むわ。

嶽本作品は初体験だったのですが、
この独特の文体。語感。センス。リズム感。
ひっじょーに心地よかった。爆笑のツボも盛りだくさんだし。

だいたいが(私的ネタで恐縮ですが)物語の舞台にもなっている下妻が
うちの最寄駅から一本で行ける場所にあったりするので
臨場感がもうハンパじゃなく「そうそうギャハハ」の大連発。
(常総線とかうどん屋兼キオスクとかジャスコとかコンテナ型のカラオケBOXとかもう。。。)

もちろん地元が田舎じゃない人も楽しく読めます。
独特の価値観を持ったヒロイン二人に
「あー人生こういう構えで生きてくやり方もあるんだ」と眼からウロコを落としながら
どうぞ読んでみてください。

非っ常におすすめ。
あの世行きを祝しまして。



師匠が死んだ。百年に一人といわれた咄家橋鶴、最期までオチをつけてのあの世行きだ。
今夜の通夜は酔った者勝ちの無礼講、何も起こらないわけがない!? 
笑いのアナーキスト、らもテイスト満喫の全9篇。

★収録作品★

 寝ずの番(1~3)
 えびふらっと・ぶるぅす 
 逐電 
 グラスの中の眼 
 ポッカァーン 
 仔羊ドリー 
 黄色いセロファン

***

らもさんだなあ。。。
読めば読むほどらもさんだなあ。。。
話が進むごとにフィクションがノンフィクションになってくし(〝グラスの中の眼〟の
らもさんが考えたとんでもないキャッチコピーは実話です)。
シモいしエロいし登場人物は飲んでばっかりだけど、
中島らもという人物のひととなりを知りたいなら本作はうってつけ。
〝仔羊ドリー〟のラストはあまりにらもさん節炸裂すぎて吹き出した。
(主人公の最後の台詞の抑揚まで聞こえてくるようだった)
「ポッカァーン」のギャグを知らない世代なのが悔しい。

故・らもさんは未だ物語の中に健在です。ちゃんと生きている。
あの世でも何やかんやおもしろいことやってんだろうなー彼は。

らもさんのあの世行きを祝しまして、かんぱぁい

映画版もおすすめ。
そして、すべてが終わる。

 

人気ゲームソフトをプレイした日本中の子どもが、
黒いマントの男の幻影に魅入られ、次々に自殺行為に走る…。
潜在意識下に持つ恐怖を人為的に表面化させることは可能か? 
サイコ・サスペンスの書き下ろし巨編。

***

これだけのページ数を割いてまで書く物語じゃないのでは。。。
さんざん引っ張っておいてこの納得のいかなすぎるオチは一体。。。
ラストのほうでは禅問答みたいなもんまで出てきてそれまでの世界観ぶち壊しだし、
基本的に身勝手な連中ばかり出てくるので読んでてイライラするし。。。
正直読んだ時間返してほしい。

10年前の作品なのにそこまで違和感のないゲーム&パソコン描写ができるのは
素直にすごいと思いましたが、それだけ。
せめてオチが、
世の中には寂しい子供が多いから、噂に便乗して親の気を引くための演技として
騒動を起こした
、だったらまだ納得いったのに。
普通子供にとって〝怖いもの〟といえば黒いコートの男なんかじゃなくて
鬼とかオバケとかだと思うんだけどなあ。。。

おすすめしません。
見届けろ。



4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の
隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わっていた。巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、
次々に人を「食べている!」自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか
「歪んでいた」。
一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく――。
ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント。

***

自衛隊三部作、最後の一作。
個人的には、
塩の街>>(超えられない壁)>>海の底>>>空の中
かな。
そもそもこの歳で「巨大ザリガニ、日本を襲撃!」とか読んでてちょっとキツかったし。
でも警察や自衛隊の対応は非常にリアルかつ細かく描写されていて、
(まあ実際こんな事態に陥ったとき政府はここまで悠長だろうか、という疑問はさておき)
潜水艦の中に閉じ込められた子供たちのやり取りも
一人ひとりのキャラが立っているせいで楽しく読むことができた。

ただ本作、
福井晴敏的超絶自衛官エンターテインメント+横山秀夫的警察ドラマに
子供の好きそうなSF&冒険要素(&恋愛もか)が入っているという謂わばごった煮作品なので、
一体どういう読者層に照準をあてているのかがちょっと謎だった。
ザリガニとの対決も「え? そういうオチなの? さんざん引っ張っといてそれなの?」的な感じだし。

やっぱり〝塩の街〟が文句なしに一番のおすすめ。
この手が、届けば。



怪盗・無貌…それは世界が畏怖する生ける怪異。
探偵・秋津とその助手・望は、宿敵無貌逮捕の報を受け、夏原ホテル――
別名「夢境ホテル」へと向かった。そこには、殺人鬼探偵をはじめ、
一癖も二癖もありそうな宿泊客ばかりが…。
やがて、ホテルの一室で刺殺死体が発見される!
探偵たちを嘲笑うかのように繰り返される殺人。
「夢境」の彼方に隠された事件の真実を、望は追う。
新世紀の探偵小説として華々しくデビューをかざり、各方面から絶賛された
無貌伝』の続編がついに刊行!!

***

待ち望んでいた続編ですが。。。
ファンタジーとして捉えるなら著者の想像力に脱帽ですが(本場ファンタジーは除く)、
ミステリとしてみると起承転結に乏しく謎自体もインパクトがないので
いまいち読み応えに欠ける感じ。
だいたいが舞台が夢の中なので何でもありといった感もあるし。
デビュー作は越していないな、というのが感想。
というかデビュー作のほうが圧倒的に面白いです。
〝無貌〟もだんだんおどろおどろしさというか得体の知れない恐怖のオーラが剥がれてきてて
あんまり怖くなくなってるし。
助手である主人公の推理をいたずらに撹乱する探偵も正直どうかと思ったし。

社交ダンス踊りながら謎解きする主人公というのは初めてお目にかかったので斬新だった。
&ラストで出てくる魔縁の名前に笑った(明らかにオリエント急行@)。

ミステリよりファンタジーが好きな人ならまだ入り込めるのかな、この世界観は。。。

ほら、あなたも食べませんか?



「猫」が「コウモリ」を呼び、「コウモリ」が「芸人」を呼ぶ!?
たった一言のキーワードが次の物語へと引き継がれ、思いがけない展開を呼ぶ
このリレー短編集には、冒険心と遊び心がいっぱい。
個性豊かな凄腕ミステリ作家たちが勢ぞろいしたこの本には、
最高に愉快な体験がつまっています。
豪華執筆人によるチーム力もまた絶妙。「あとがき」までリレー形式にこだわった
欲張りな一冊が出来上がりました。

★収録作品★

  『くしゅん』北村薫
→『まよい猫』法月綸太郎
→『キラキラコウモリ』殊能将之
→『ブラックジョーク』鳥飼否宇
→『バッド・テイスト』麻耶雄嵩
→『依存のお茶会』竹本健治
→『帳尻』貫井徳郎
→『母ちゃん、おれだよ、おれおれ』歌野晶午
→『さくら日和』辻村深月

***

よりによってトップバッターがかなり苦手な北村氏だったのはキツかったけど、
それ以降は見事全員が前の話を汲んでストーリーを創り上げていて
プロの交換日記を見せてもらっているみたいな楽しさを終始味わうことが出来た。
基本的に後味の悪いオチが多い中ラストに辻村さんを持ってきたのは正解。
でなきゃドロドロアンソロジーになってるところです本作は。

本編はもちろん、一遍一遍の合い間に挟まれたコメントやあとがきで
作家諸氏の交友関係を知ることが出来たのも興味深かった。

おすすめ。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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