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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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まるで静かな狂気のような。



塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。
静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。
あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた……。
第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作でもある『塩の街』が、
本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームでハードカバー単行本として刊行される。

***

カテゴリーとしてはライトノベルに属する作品なので、漫画的表現&恋愛には
(既に二十代も後半の私としては)読んでいて時おり顔が赤らみますが、
扱われているテーマやストーリー展開、世界観の深みは(決してラノベを馬鹿にして
言うのではなく)一般小説になんら引けをとらない秀作です。

塩と化した世界で二人暮らす秋庭と真奈、そしてそんな彼らとその前を次々に通り過ぎていく
様々な人間たちとの邂逅を描き出した本作、そのひとつひとつのエピソードが
読みやすい筆致と抑えた表現で書かれているにも関わらずものすごいインパクトをもって
胸の深い部分にまでしみ込んでくる。
本作の一番初めに登場する青年のエピソードは、ふだんラブストーリーを「へっ」と
小ばかにしている私が読んでも思わず目が潤んでしまった。
(そもそもがこの著者の〝Story Seller〟というラブストーリーにいたく感動したため
本作を手にとった次第なのですが)

文庫がハードカバーになるにあたって加筆された〝その後〟は正直ないほうがよかった気が
するので(何だか想像の余地が奪われてしまったようでつまらなかった。
マンガ〝ときめきトゥナイト〟〝ぼくの地球を守って〟(知らない人はすいません)も
続編にかなり幻滅させられたので。。。)、私は文庫版を読んだのだということにしておきます。

それにしても、本作で何度も繰り返される〝失った代わりに得られるもの〟、
それがあるから人間は辛うじて生きていられるんだよなあ。。。

因みに以下の作品が好きな人は本作は特におすすめです。

終末のフール/伊坂幸太郎
キノの旅/時雨沢恵一
最終兵器彼女/高橋しん
ドラゴンヘッド/望月峯太郎



蛇足:本編中に出てくる過呼吸発作の止め方は実際にやるとかなり苦しいので
もしなったら紙袋を口にあててゆっくりと呼吸する、というやり方でおさめてください。
実際にその病気持ちである管理人からのおせっかいな忠告です。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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