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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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留まっていても、何の意味もない。



自分の子供が殺されたら、あなたは復讐しますか?
長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。
犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、
娘の復讐に動き出す――。
遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

***

ありがちな話だなという感想しか抱けないのは、
自分が腐るほど本を読んできて眼が肥えすぎてるせいだろうか。
一般の読者にとってはこれは名作なんだろうか。
今母が本作を読んでいるので読み終えたら感想を訊くつもりだけど。

あまりに主人公に都合よく動く登場人物、
お涙頂戴的ありがちなラスト(ある真相にはちょっとびっくりしたけど)、
中盤から徐々に説教くさくなってくる文章、
テーマの割りに深みのないストーリー。
読みやすいけど、読後「あー面白かった」で終わってしまうような小説。
少年犯罪を改めて考え直すきっかけになるほどのインパクトは正直言ってなかった。

主人公があの結末を迎えたのは、結果的には社会に自分の無念を訴える
最大の手段と成り得たんだろうなとは思えて、そのことにはやるせないながらも
ちょっとした感動を覚えましたが。
人間っていうのは〝物語〟、特に現実の物語に弱いから。
彼は一つの物語を創り上げ、社会に提示した。そこの展開はうまい。

それにしても〝さまよう刃〟って、主人公のことかと思ってたら違ったんだな。
それが本作一番のサプライズかも。
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――そして闇。それが始まり。



完全犯罪のために必要不可欠な密室が、あともう少しで完成するというその瞬間、
部屋の中に黒猫が入り込んでしまった! 犯行計画を崩壊させかねない黒猫を
密室から取り出そうと悪戦苦闘する犯人の前に、たまたま世界一気弱な名探偵が現れて…。
表題作をはじめ、蝋燭だらけの密室殺人を描いた「クローズド・キャンドル」など五編を収録。
キュートでコミカル、しかし心は本格ミステリ。名探偵音野順、第二の事件簿。

★収録作品★

 密室から黒猫を取り出す方法 
 人喰いテレビ 
 音楽は凶器じゃない 
 停電から夜明けまで 
 クローズド・キャンドル

***

踊るジョーカー〟の続編。
個人的には一作目より面白かったんじゃないかと思う。

それにしてもこのシリーズ(というより作者?)のトリックは
どうしても自分で実験してみたくなるなあ。。。
〝理系トリック〟といえば大抵の人は東野圭吾氏のガリレオシリーズ(or森博嗣作品)を
思い浮かべるかもしれないけど、私の中ではダントツでこの人。
探偵の可愛らしさも時おり挿入されるギャグも秀逸で、
特に北山氏の作風は壮大でシリアスなものが多いので
ちょっと毛色の違う本作はいつもと違った楽しみ方ができていい。
最終話に軽く2ch用語が入っていたのも笑えた。

文章が硬いというかクドいのが唯一の難点かな(って気になるほどじゃないけど、
筆致がもっとテンポがよければより本作の魅力が増すと思うので)。。。

おすすめです。
(ていうか本作収録の〝人喰いテレビ〟、ちょうど今〝ペルソナ4〟やってるところなので
リアルに脳裏に浮かんでしまった)

神はいる。
しかし、ここにはいない。




牧師の子に生まれ、神の愛を一途に求めた少年。だが、それは恐るべき悲劇をもたらすことに…。
もっとも神に近かったはずの魂は、なぜ荒野を彷徨うのか? 
ミステリーの限界を超えた新世紀の「罪と罰」!

***

同じ宗教的なものをテーマにした作品なら
花村萬月氏の〝王国記〟シリーズや
重松清氏の〝疾走〟のほうが
よほど神という概念をうまく描き出していると思う。

ありきたり&説教くさい、そしてあまりに同調しづらい思考ばかりが書かれた本作は
私にとっては読んでいて苦痛でしかなかった。
第二章だけが叙述トリックなのも最後の最後でベタすぎるトリック持ってくるのも
本作を無理やりミステリ仕立てにしようとしているようで
神のことを突き詰めたいのかミステリを書きたいのか
著者の意図がわからずどっちつかずでやたら中途半端に感じた。
オチもベタだし。

実は本作、だいぶ昔に最初の数十ページだけ読んで何となく嫌な予感がして放置し、
でも最近になって何を思ったかもう一度読み返してみようと手に取った次第なのですが、
一度目の勘は正しかった。そのまま読まずにいればよかった。

そもそも私は既存の神様を崇める性質じゃないから余計に肌に合わなかったのかも。
神様なんて自分の中か、実在する尊敬すべき人の中にしか自分は見出したことがないから。
答えを。



親父が死んだ。自殺だった。俺は安藤直樹。親父が残したパソコンのなかにいるのは裕子。
いや違う、あれは単なるプログラムにすぎない。でもプログラムに意識が宿ったのならば…。
いったい彼女は何者なんだ!
徹底した方法意識に貫かれたテクストが読者を挑発する、第五回メフィスト賞に輝くデビュー作。

***

著者が19歳(当時)と若いためか、
「自分はこんなことを知ってるんだぞ」みたいな
音楽や絵画や心理学の(誰でも知ってるような)講釈が頻発したり
読んでるこっちが恥ずかしくなるような中二病的表現や台詞が炸裂したりと
とかく初めは読みづらいのですが(文章も下手ではないけどややくどいし)、
読んでるうちにハマりだし中盤から一気に読書スピードが加速。
クライマックスでは快感に似た戦慄に震え、
ラスト一行に心地いい寒気を覚えながら楽しく読み終えることができた。

発表から10年経った今読んでもそこまで違和感のないパソコン描写は
なかなかのもの。
更に本書は本格推理に対するアンチテーゼでもあり、
一時期本格ものばかり読んでいた身としては
「確かに被害者・加害者サイドからすると名探偵って微妙だよなあ。。。」と
改めて思い知らされてしまった。
御手洗潔が人気あるのは名探偵にしちゃ人情があるからなんだよなー。。。

ページ数はそれなりですがおすすめ。
まさにメフィスト賞の真骨頂ともいえる物語です。

ただ、閉じられたドアを見つめている。



模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。
死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。
同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、
彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。
複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。

***

「人や自分が使った皿は基本洗わない主義」などと平然と抜かす萌絵とか
ただ屁理屈たれてばっかりでシリーズ序盤のキレがない犀川とか
身近にいたら絶対お近づきにはなりたくない俺女のラヴちゃんとか
今回のメインキャラにはあまりに魅力がなさすぎた(註:金子くん除く)。
トリックもストーリーもここまでのページ(文庫本にして700P)を割いて書くほど
大層なもんじゃ正直ないし。

これを今後読む予定の人に言っておきたいのはただひと言、
プロローグをしっかり読み込むように、ということです。
流し読みしちゃ駄目、絶対。
そしたらまだあとで腹が立ちません。

それにしても一体いつから、犀川と萌絵は恋人同士になったの?
互いにちゃんとした了承のないまま、本作でいつの間にかそういうことになってたんだけど。
「言葉がなくても通じ合える」みたいな、所謂そういうことなんでしょうか?
それが本作最大のミステリィ(←著者風に)。
自分は、今、どちら側に居る――?



満月の蒼白い光が、皓々と地面に降り注いでいる――

右眼に藍玉(アクアマリン)のような淡い水色、
左眼に紫水晶(アメジスト)のような濃い紫色の瞳をもつ
石細工屋店主・風桜青紫(かざくらせいし)と、彼を慕う女子大生・鴇冬静流(ときとうしずる)。
先生に殺されたいと願う17歳の霧嶋悠璃。
境界線(ボーダー)を彷徨う人々と、頭部を切断された犬の首を縫い付けられた屍体。
異常と正常。欲望と退屈。絶望と救い。
根源を射つメフィスト賞受賞作!!

***

真相が全部著者の描写によって先に明かされたあとで
推理を披露してみせる探偵って何か意味あるんだろうか。。。

という点以外は楽しめました。
イロモノ揃い(大好きですが)のメフィスト賞受賞作にしては
まともなほう&文章はうまいし。

ただ、二つ出てくる殺人の動機はどちらも陳腐&唐突。
この物語を読んで犯人当てられる人がいたら正直超能力者だと思う。
犯人割り出すための伏線ほとんどといっていいほどないし。

あと作中に出てくる犯人につけられる二つ名(コードネーム)、正直ダサいです。
〝インビジブルレフトハンドハンター〟〝ルナティックケルベロス〟って。。。
昭和時代のRPGの敵モンスターの名前か。
やたらルビが多いのもやや鬱陶しい(同賞出身の古野まほろ氏には到底敵いませんが)。

とまあいろいろ書いたけど、そんなに長い物語でもないし結構面白く読めたかな。

今、どこの海にいますか。



藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。
高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。
戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。
皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき――。

***

人間が普段隠してる感情をもうあからさまに剥き出しに描き出す作家さんなので
読んでいて結構辛かった。
しかも(自分語りは好きじゃないけど)今回の主人公が自分と性格被りすぎていて
その元彼も自分が過去に好きだった人と(あそこまでひどくはないけど)キャラ被りすぎで
「あまりに人間として最悪なのでむしろこいつがどこまで堕ちるのか観察してたい」
と主人公が元彼に抱く気持ちに共感してしまってそんな自分が何か嫌だった。

物語としては、私がこの作家さんが大好きで全作何度も読み返しているので
物語の創作パターンがある程度読めてしまっているのでオチもすぐわかってしまい
感動すべきクライマックスも「ああやっぱりね」としか思えなかったけど、
それでも素敵な話でした。
中盤の主人公の母親の「掃除してくれたのにごめんね」と荷解きのくだりにはやられた。
あれは卑怯だろ誰だって泣くだろ。

ちなみに主人公はドラえもんの映画の中で〝海底鬼岩城〟が一番好きと言ってましたが
私は〝宇宙小戦争〟が一番好きです。
大人になって改めて見返して、武田鉄矢そっくりの宇宙人が出てきたときには爆笑しましたが。

余談ですが小学生のとき、どっかの僧侶みたいに貯めた5円と50円をヒモに通して首から提げて
本屋にドラえもんのひみつ道具百科買いに行って店のおばさんに
「がんばって貯めたの?」と微笑まれたことはこっ恥ずかしくもいい思い出です。
大学時代〝自分の尊敬する人〝を英語でレポート書いて一人ずつ皆の前で発表することに
なったとき、〝藤子不二雄先生の生涯〟みたいな本をわざわざ買って彼の人生を熱く語ったのも
振り返れば懐かしい。

って私自分で思ってるより藤子不二雄さん好きだな。

おすすめです。



おまけ:
ドビュッシー〝沈める寺〟。


  クラシック版もすごく好き。
また、いずれ、どこかで。



T大学大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。
杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、
実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。
眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?
『幻惑の死と使途』と同時期に起った事件を描く。

***

前作〝幻惑の死と使途〟と対を成す作品。
前者が奇数章のみで構成されていたのに対し、本作は偶数章のみ。
二冊用意して交互に読んでいったりするのも結構面白いかも。
。。。というかそうしたほうがいいかも。
本作で主人公・犀川の妹が言っているとおり、この物語の事件は
「もやもやしてて地味でつまらない」ので(こんな台詞を言わせるあたり、
森氏も書いていて自覚があったんだろうか?)。
しかも読み終えてもどうも何かが釈然とせず、
「行間を読めってことか? でも読み取らなきゃいけない行間が多すぎ、ていうかむしろ
その読み取るべき行間のほうが本文より多いんだけど」
状態。
今までのS&Mシリーズで一番楽しめなかった(そもそも番外編的作品なので
二人の登場頻度低いけど)。

ちなみに序盤の杜萌の一人称の中に、ごくさり気なく決定的な伏線が張られているので
真相を自分で暴きたい人はそこを見逃さないようにしましょう(見落とす確率かなり大ですが。
いや、それよりもあの伏線だけで真相がわかったら超能力者だな)。

最後に、犀川の「名前が逆」発言は絶対アンフェアだったと思うな。
本来なら「立場」「役割」が逆、と表現すべきだと思うんだけど。

ミステリとしてはかなりアレだけど、人間ドラマの部分だけは割りと面白かったです。
だから、心を壊してしまいたかった。

 

「週に三度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。
彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。
彼女自身の肉体にも異変が起こる。
女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。
一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは…。

***

これがデビュー作!?と驚くほどの筆力。
もしまだ〝ホラーサスペンス大賞〟があったら間違いなく大賞獲ってるだろうと思う。

ただ、文章力に比べて若干構成力がない。
ひとつひとつがぼやけてしまうようなエピソードの並びに
後出しジャンケン的に出てくる数々の真相、
ラストを含めあちこちにあるかなり無理のある展開、
挙げ句内容を捻り過ぎてどんでん返しを通し越してむしろ鬱陶しくなってしまっている。

あと、この作家さんは貴志祐介氏にかなり影響を受けている気が(少なくとも本作に於いては)。
あと貫井徳郎氏の某作品にも形態が少し似てたな。

まあまあ面白く読めたけど、すべてを消化し切れていない感のある小説なので(&グロいので)
深く考えずにミステリを楽しめる人以外には正直おすすめしません。
あと、ものを食べながら読むのは絶対やめたほうが吉。

blueb.jpg









とか警告しつつも嫌がらせ画像
なんてね



雪野原に立つ民家で、初めて会った者同士が一夜を過ごし、翌朝、死体発見
(『六つの玉』)。
姪に話して聞かせる、十五年前の「大学生・卒業研究チーム」爆死事件の真相
(『五つのプレゼント』)。
大学の補講中、マジック好きな外国人教授が死んだ、ESPカード殺人事件
(『四枚のカード』)。
中味を間違えた手紙と残された留守電が、エリート会社員殺害の真相を暴く
(『三通の手紙』)。
特注の掛軸は、凝ったイタズラが大好きな、地方の名士がが殺された謎を知っている
(『二枚舌の掛軸』)。
決定的な証拠がありありとそこに存在した、ベテラン作家邸殺人事件
(『一巻の終わり』)。

見た目は「太ったチャップリン」!? 林茶父が、今日もどこかで事件解決。

***

まずは〝五つのプレゼント〟から突っ込む。
ラストで探偵の姪が「自分の都合ばかりを優先して相手の迷惑を顧みない」と
某人物三人のことを中傷しているけど、言う対象間違ってない。。。?
一番迷惑なのはあのカップルだと思うんだけど。。。
しかも殺人犯と何の悪気もない(そして別にしつこくもしてない)友人らを悪く言うって一体。
クサれカップルが馬鹿すぎて不快&姪の感性がズレまくってて読後の印象最悪。

続いて〝二枚舌の掛軸〟。
漫画ならともかく文章だけでこのトリックを理解しろというのは拷問に等しい。
よほど神経が研ぎ澄まされてないか古美術に詳しい人じゃなきゃ
書かれていることはおそらく即座にはイメージしづらいんじゃないかと思う。
実際参照図もやたら細かく描かれてたし。
そこまでしなきゃいけないならいっそ誰かに頼んでコミカライズしてください。

〝一巻の終わり〟。
ラスト一ページには「おおっ」と思わされた。

全体的に及第点な印象。
乾氏ならもっと斬新な物語が書けそうなものだけどな。出版社からの縛りでもあったのかな。
探偵役が凡庸で魅力に欠けるのも残念なところ(手品を使って(もしくは手品の応用から何か
閃いて)事件解決! とかなら面白いのに手品師って設定がほとんど活かされてないし)。
唯一「なるほど」と思わされたのは、いろんな場所を駆け巡って人生経験豊かな人間のほうが
頭でっかちの安楽椅子探偵たちより本番(事件の謎解き)に強い、って論理かな。
(実際たいていの推理小説は、ミス研とか医者とか博士とかひきこもりとか多いしな)

どうでもいいけど表紙の主人公、どう見ても50代のオッサンにしか見えないんだけど。。。
(本当は30代半ば)
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kovo
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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