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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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でも、人間、生まれて死ぬまで正しいことだけをやっている人なんていないんだよ。
違う?




一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。
だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。
人生は、薔薇色のお菓子のよう…。
またひとり、彼女は人を殺す。
何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?
あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。

***

フジコが殺人鬼と化すまでの心理描写は(多少大げさではあるものの)大したもの。
そうそう、子供ってこういう計算して生きてるんだよなーとふと昔を思い出してしまった。
ただ、ずっと「あなたは(人間的に最低な)母に似ている」と叔母に言い続けられて
そうなることを恐れてきたフジコが、まさにその〝母〟のように変貌していく様が
あまりにも唐突で、「その過程こそをもっと細密に書き込んでくれよ」思わず突っ込み。
〝余は如何にして殺人鬼フジコになりしか〟的な部分をもっと描写してほしかった。
これじゃ「遺伝だからしょうがないね」のひと言で終わっちゃうじゃん。

そしてさんざん読み手の好奇心を煽ってきたラストの〝仕掛け〟。
こんな仕掛け、10年ぐらい前からとっくに存在するんですけど。。。
しかも、その仕掛けはともかく内容が納得のいくものならまだしも、
伏線が一切作中にないのにあの突飛なラストはあんまりだろ。予測できたら超能力者。

私の愛するメフィスト賞の受賞作家だから期待してたのになあ。。。

あらすじの
〝何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?〟
こっちが訊きたい。真梨さん、早く答えを教えてください。



↑〝夢見るシャンソン人形〟。
たぶん聴いたことない人はいないはず。
しかし、ジェーン・バーキンが歌ってた〝無造作紳士〟もそうだけど、
ゲンスブールは〝アクヮボン〟て歌詞が好きだよな~。。。って単にフランス語に
よくある単語なだけ?
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会えてよかった。



私って、死んじゃったんですか?――新米の坊さん・海生の目の前に突然現れた、
死んだはずの女子大生。
誰にも見えない彼女と海生は同居することになるが!?
『野ブタ。をプロデュース』から4年!! 待望の文藝賞受賞第一作。

***

〝野ブタ〟のときは著者も二十歳かそこらだったし内容も内容だから
あえてポップさを狙ってあんな風に書いているのかと思ったけど。。。
4年経って二十代も半ばになった彼の著作をこうして読むと、
「ああ、天然なんだなあ。。。と思わずにはいられない。
とにかく文章が幼い。拙いんじゃなく、幼い。たとえるなら童話に近い。
かわいらしさすら感じてしまう(悪い意味じゃなく)。

そもそも今どき幽霊になった女の子とそれに恋する男の子、なんて
よっぽど中身が面白くないと誰も食いつかないでしょう(主人公の男の子が
お坊さん、という設定はちょっと個性的だったけど)。
中高生は読んでいてほんのり感動できるかもしれないけど、
二十代後半の私には食傷気味な物語だった(著者とはそんなに年齢
変わらないのになあ。。。)。

ただ、〝檀家にピンポンダッシュする坊主〟〝「照らすねぇ、君は」〟等のギャグには
かなり爆笑させられたので、今はシリアス主体のものより
デビュー作みたいなコメディタッチのものを書いてほしい。
シリアスなものを書くには彼はまだ若すぎるような気がするし、
笑いのセンスは加齢と共に消えていくものだから今のうちに活かしたほうがいい気がする。

次の作品に期待します。
長い放課後になりそうだ――。



校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。
先生を2人だけの旅行に誘う問題児、
頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、
先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。
そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。
乱歩賞受賞の青春推理。

***

〝殺害動機がものすごい小説〟ということで有名な一冊。
有名すぎてその〝動機〟は既に知ってしまっていたのですが、
犯人は運よく知らなかったので手にとってみた。

。。。東野氏、今より文章うまいし(新人賞応募作だから気合入ったのか?)。
時代的なこともあるんだろうけど最近の著作よりずっと本格ミステリしてるし。
最近の東野作品を読みなれていた身には新鮮だった。

中盤の体育祭の事件は「主人公、鈍いよ。。。そうなる可能性ぐらい
考えておけよ」と思いましたが(たぶん読んだ人皆そう思っていると思う)、
そして密室のトリックもちょっとリスクが高すぎると思いましたが、
前者はともかく後者はやっぱり高校生の若さや浅はかさからくるトリックなんだろうなあ、と納得。

最近のどんでん返し系ミステリは登場人物や彼らの行動がごちゃごちゃしすぎていて
読み手がけむに巻かれているうちに事態が突然あさっての方向にいくものが多くて、それを
「どんでん返し」と錯覚させられるものが多いですがそんなものはただ単に
急カーブで乗ってる車の中ですっ転ばされて驚いているだけ的なしょうもないもので、
その点本作のどんでん返しは、東野氏の運転する車にのほほんと乗っていたら
ふいにやたら急勾配が続いて、とどめに崖から転落させられた感じ。
バウンドして裏、バウンドして表、またバウンドして最後にひっくり返った車。まさにこれこそが
〝どんでん返し〟。
さらに言うなら崖から落っこちた先は道路でダンプカーが迫ってくるような。。。
最後までスリル溢れる物語で一気に読めた。

本作執筆当時27歳とはいえ、様々な年代の女性の心の機微をよくわかっているなあ、と
女の私でも思わされました。

おすすめです。



ちなみに蛇足ですが、私が最近東野作品ばかり読んでいるのは、
彼の文章は癖がないので自分が書く小説に影響がないからなのです(単純に
好きってこともありますが)。
今は執筆期間の私です。
「幕が開きます。もう逃げられませんよ」



本選集は日本推理作家協会が、1996年に雑誌等に発表された数多い短篇推理小説から、
すぐれた15篇の傑作を選出して、推理小説界とSF界の1996年の展望と共に収録した
代表作アンソロジー「決定版推理小説年鑑」です。

★収録作品★

 子を思う闇/貫井徳郎
 経理課心中/山田正紀
 プラットホームのカオス/歌野晶午
 マリーゴールド/永井するみ
 猟奇小説家/我孫子武丸
 音の密室/今邑彩
 彼なりの美学/小池真理子
 刑事部屋(でかべや)の容疑者たち/今野敏
 鑑定証拠/中嶋博行
 わざわざの鎖/佐野洋
 背信(シザーズ)の交点(クロッシング)/法月綸太郎
 右手に秋風/渡辺容子
 裁かれる女/連城三紀彦
 死ぬ時は意地悪/西澤保彦
 ポートレート/北森鴻

***

作品ごとのレビュー。

◆子を思う闇◆

各サイトで「短編小説の傑作」と絶賛されているのでドキドキしながら読んだものの
さして衝撃も感銘も受けず。
これだけの短さでよくもこんなにインパクトたっぷりに書けるなあとは思いましたが。
冒頭から読み手を惹きつける技量もすごい。
でも皆が傑作傑作というほどには感じなかった。私には佳作というところ。

◆経理課心中◆

物語の中核を成す二人の人間の思考回路がどちらもひとりよがりすぎで
話を動かすために著者に無理やり動かされている駒のように感じた。
なのでどうにもリアリティがない。
読後の感想は「あー楽しかった」という感じ。

◆プラットホームのカオス◆

伏線の張り方はうまいのですが、後半での〝犯人〟の挙動が浅はかすぎ。
相手を見れば自分を脅そうとしているのかどうかぐらいわかると思うのですが。
あと、(蛇足ですが)このタイトルセンスはどうにかならないものか。
結構楽しく読めたのにタイトルがこれじゃ。。。

◆マリーゴールド◆

隣の芝生は。。。ってやつですね。
ちょっと偶然が重なりすぎ&展開が強引すぎる気もしましたが、
あとオチがやや二時間ドラマ風だったのがあれですが、
それなりに楽しく読めました。

◆猟奇小説家◆

こういう、主人公も含めて誰が悪役で誰が被害者なのかわからない小説は
スリルがあって好きです。
オチはまさかそう来るかというぐらい怒涛の展開ですが、
ラストに登場するある人物は私的には好みだったり←狂人好き

◆音の密室◆

。。。。。。。。。
トリック読めすぎ。
くだらなすぎ。
やっつけで書いたんですか?と嫌味じゃなく本気で問いたい。
タイトルを見て期待していただけに拍子抜けもいいところだった。
作家志望の素人レベル。

◆彼なりの美学◆

ここまで長々と引っ張った割りにはオチは想像の範疇内だった。
ある有名な翻訳ものミステリのラストをちょっとひねったような話。
とりあえず突っ込みたいのは、西洋人はともかく日本人女性は
よっぽど不摂生してない限り26歳でシワなんかできたりしません。
女性作家なのになぜ知らない?

◆刑事部屋(でかべや)の容疑者たち◆

出だしでだいたいどういう話か、オチはどうなるのかは読めてしまいましたが
ショートショート風ですぱっとまとまっていて面白かった。
ただ、刑事たちがそろいもそろってお人よし(というかおせっかい?)すぎるのと、
ラストがちょっとクサいのが難。

◆鑑定証拠◆

一時期何を思ったかアホみたいに遺伝子工学の本を読み漁った自分には
オチが見えてしまい、中盤のDNAに関する長々とした説明もつらかった。
長々と引っ張る割りにそのオチもかなり単純だし。
ていうか容疑者の彼に対する疑問なんだけど、
腹違いの兄弟に遺産をとられるのが嫌で恋人と養子縁組したはいいけど、
もし彼女がとんだ食わせ物だったら今後どうするつもりなんだろう?
その点は普通にあんな軽い女じゃなくて賢明な女性が恋人という設定にしたほうが
よかったと思うんだけど。。。
ラスト一行には笑いました。

◆わざわざの鎖◆

読んだばかりなのにもう記憶がおぼろげで何も感想が書けない。
ものすごく失礼だけどこの人の作品はいつもそう。

◆背信(シザーズ)の交点(クロッシング)◆

鉄道ミステリ!? と一瞬引きましたが(←超苦手)
乗り物はあくまでミステリを盛り上げるためのガジェットとして使われているだけで
ベースは王道本格ミステリ。非常に面白く読めた。
小説家である主人公が作中で著作をボロクソに言われているシーンに
著者が重なってしまい思わず吹いた。

◆右手に秋風◆

女Gメン(Gウィメン?)かっこいい。
文章表現が面白くて笑えた。
それにしてもオブラートで変身できるなんて知らなかったな。。。今度やってみよ。
トリックは大したことないですが(というか「え、これミステリ?」って感じですが)
ヒロインのど根性が好きです。ホレます。

◆裁かれる女◆

翻訳ものミステリにありそうな話。
一人の人間の複雑な心情を破綻なく書き上げた筆力には感服。
ただ、〝〟って単語を使うのはちょっといやかなりアンフェアだろ。
あの登場人物にこの単語を使わせたいなら、あの人物をもっと変態風に書かなきゃ
どうしても違和感が拭えない。

◆死ぬ時は意地悪◆

ひと言で言えば「つまらない」。
出だしはいい感じで引き込まれたのに。。。この著者の書く話はほんと当たり外れ多いです。
ていうかこれ匠千暁シリーズだったんですね。。。この探偵も影が薄くて
今まで面白いと思ったためしがないんですが。。。
〝スコッチ・ゲーム〟が評判いいので見切らずに今度読んでみようと思います。

◆ポートレート◆

香菜里屋シリーズはあまり好きじゃないのでどうにも読んでいて乗り切れなかった。
ってことを抜きにしてもあまり面白いとは思わなかった。
オチは不服。写真の種類がどうであれ、それが最近撮られたものか昔のものかぐらい
見た目や触り心地でわかるだろ。
しかも十数年以上前の作品なのでジェネレーションギャップがあって到底真実に
たどり着けない。当時中学生だったのに流行ってた記憶ないんだけどなあ。。。
忘れてるだけ??
終盤の主人公の〝孤独の心理〟にだけはひどく共感しました。あーあ、私も
大人になっちゃったんだなあ。。。
今日発売の文庫本です。



以前採用して頂いた拙作

〝ギネス級〟
〝クソオヤジ〟

の二編が収録されています。

本シリーズの出身者である道尾秀介氏、古処誠二氏、
その他諸先生方とほんのちょっとだけでも肩を並べることが出来、
とても嬉しく思っています。

書店で見かけた際には是非手にとってやってください。
「治外法権なんだな。子宮は」

 

エンブリオ―それは受精後八週までの胎児。
天才産婦人科医・岸川は、人為的に流産させたエンブリオを培養し臓器移植をするという、
異常な「医療行為」に手を染めていた。
優しい院長として患者に慕われる裏で、彼は法の盲点をつき、倫理を無視した試みを重ねる。
彼が次に挑むのは、男性の妊娠実験…。
神の領域に踏み込んだ先端医療はどこへ向かうのか。
生命の尊厳を揺るがす衝撃の問題作。

***

本作の続編である〝インターセックス〟を先に読んでしまったので
なかなか手を出す気になれなかったのですが、ようやく読了。

岸川医師のマッドぶりはやはり第一作であるこちらのほうがすごかった。
ただ、続編のレビューにも書いたのですが、内容のほとんどを
セレブ同士の会話やカジノ等の娯楽やどうでもいい会話等に費やしてしまっているので
読んでいてだるだるでした。
どうせ蛇足を書くのなら、医学うんちくを書いてほしかった。
誰が医師としてではない、プライベートモードの主人公のことなんか知りたいもんか(でも
島田荘司氏の〝御手洗シリーズ〟の〝御手洗潔の一日〟的な話は大喜びで読んだ私です)。

平行して起こる数々のエピソードも、どれも中途半端に終わるし、
何だか小説と医者の日記の中間みたいな読み物を読んでいる気分にさせられた。

そして岸川医師、天才の癖に、中盤で起こるある事件の真相に気づくの遅すぎ。
まあだいたいが読み進めていくうちに、〝狂的な天才〟に見えていた彼がだんだん
〝腕のよさを笠に着る自己中なオッサン〟に自分の中で変化していったぐらいだしな。
やはり彼も、天才なれど人間なんでしょう。
オチなんかもう天才どころか〝ただの嫌がらせオヤジ〟だし(狂気より情けなさを感じた。
おまえは幼児か、と。偉そうに患者を救いたいとか言ってたプライドはどうした、と)。

帚木氏には今後もうちょっと、余計な描写をそぎ落としたシャープなものを書いてほしい。
料亭のエビの活けづくりとかモナコで買ったTシャツとかもうそういうネタはまじいらないから。
(そして水族館でのあのサメのダジャレ。正直殺意が湧いたのでほんとかんべんしてください)

というかこの著者、精神科医なのにどうして産婦人科ネタばっかり書くんだろう。
彼が全身全霊で書き上げた精神医療ものの長編を読んでみたいのに。
あんたは、神か?



この作品のあと、オウム真理教の事件が起きた――。
改造バイクで暴走するジョーは、麻薬漬けの知人を救出するため狂信者集団に潜入する。
性と麻薬と宗教を描いた長篇ハードボイルド 。

***

主人公とヒロイン・律子が教団に潜入するまでがやたら冗長できつかった。
ロードムービーならぬロード小説&バイクうんちく小説と化してたし。。。
(そのあたりについては終章で著者本人が同じことを書いていて笑ったけど)
潜入後は教祖とのやり合いが楽しめたし律子の空手は格好いいしで
一気にクオリティ上がりましたが。

ただひとつ疑問なのは、律子が男として生まれてこられなかったことに
コンプレックスを持ち、男という生き物に憧憬を抱いているなら、
男性器に興味を示すだけじゃなく、妬みや嫌悪をも同時に顕すだろうに
そういった描写がまったくなかったこと。
あそこまで精神が不安定で些細なことで狂ってしまう律子なのに、
そこだけ性格が単純で違和感を感じた。

まあともかく、オウム真理教が台頭し始める3年も前に
こんな作品が書ける萬月氏の慧眼(というか先見の明?)には感心させられる。

なかなかの良作なのではと思う。
今夜は震えて眠れ――。

 

闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、
ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。
白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた
巻島史彦警視だった――。史上初の劇場型捜査が幕を開ける。
第7回大藪春彦賞を受賞し、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、
2004年のミステリーシーンを席巻した警察小説の傑作。

***

よくできた二時間ドラマでした。。。というのが率直な感想。
はっきり言って映画化されたり大きい賞を獲るほどの出来ではない。
面白くて一気に読めたけど、深みも含蓄も感じられない、単なるエンターテインメント。

だいたいが警察がテレビ局とタッグを組み、捜査官がテレビに出ることで
犯人をあぶり出そうというのが目的であるはずなのに、結局最後は
主人公(捜査官)がテレビに出ようが出まいが犯人捕まってたんじゃないの? オチ。
テレビを通しての主人公と犯人とのやり取りも、はじめは面白く読めるけれど
それが延々淡々と続くので後半に差し掛かるころにはダレてきた。
テレビ越しの正義VS.悪のバトルを楽しみたいなら、本作よりも
デスノートのほうがはるかにおすすめ。

ていうか、事件解決の決め手が奇跡的偶然二連発のおかげってどうよ?
二度目の偶然にはまあまだ眼をつぶるとしても、最初のはご都合主義すぎるだろ。

ちなみに個人的には、
犯人VS.主人公
より、
犯人VS.植草(主人公と同じく刑事)
のほうがよっぽど面白かった。

前にレンタルで映画版を借りかけたことがあるけど、借りなくてよかった。

最後に、重箱の隅をつつくようでなんですが、著者の雫井氏、ネーミングセンスやばいです。
犯人が〝バッドマン〟て。。。
主人公の若いころのあだ名が〝ヤングマン〟て。。。
犯人の手紙に毎回書かれている「フハハハハハ」も正直サムいし。。。
〝黄泉がえり〟で、原作では〝マーチン〟だった女性歌手が、映画では
〝RUI〟に変更されていたときの物悲しさを感じちゃったよ。。。

蛇足ですがこの小説、舞城王太郎氏がリメイクして書いたら
かなり面白いかもしれないと思ってみたり(いや真剣に)。
……あなたを信じて。



同級生の宮前由紀子は俺の子を身ごもったまま、そして
俺の愛が本物だったと信じたまま事故死した。
俺にできる償いは本気の関係だったと皆に告白することと事故の真相を暴くことだけだった。
やがてある女教師が関わっていたことを突き止めるが、彼女の絞殺体が発見されるや、
一転俺は容疑者にされてしまう。

***

今や知らない人はいないであろうベストセラー作家のデビュー第二作。
部屋を掃除していたら高校時代図書室で借りパクしていたものが出。。。ゲフンゲフン
ので、とりあえず読んでみました。

やっぱり若書きだけあって(いや、関係ないかもだけど)、構成やストーリーの面白さが微妙。
謎を解くのに重要な鍵はほとんど後出しジャンケンだし、
警察が調べるに決まっているはずのところを調べなかったりするし(しかもそれが
事件解決の決め手だし)。
そもそも教師に追われて逃げているうちに車に撥ねられて死んだ少女、って設定も
あまり興味をそそられない。え? 別に逃げなくても適当にかわすなりしらばっくれるなり
すればいいんじゃ。。。としか思えず。
この少女が妊娠していたことも後々に何らかの伏線にでもなってくるのかと思いきや
なーんもないままジ・エンド。言い方が下品ですがこれじゃこの女の子ただの孕み損。
作中で主人公の少年を動かすための単なるファクターとしてしか使われておらず
女としてちょっとイラっときた。
というかこの主人公、思考も行動もやることなすことみんな癇に障る。まあ要するに
好きになれないタイプの主人公なんだよな。

あんまりおすすめできないです。
それにしてもこんな内容の小説がよく高校の図書館にあったな。
まさか「子供のくせに妊娠なんかする(させる)とこんな目に遭うぞおまえら」的な
教師たちの訓示が。。。???(((( ;゚Д゚)))ヒャー
私たちの心は壊れてなんかいない。



鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪。
蝶に導かれて赴いた村で起きた猟奇殺人事件。
いま最も注目を集める新鋭・道尾秀介が満を持して送り出す、初の連作短編集!

★収録作品★

 鈴虫
 犭(ケモノ)
 よいぎつね
 箱詰めの文字
 冬の鬼
 悪意の顔

***

導入部から物語に入り込める数少ない作家さん。
単行本化する前から雑誌の掲載作を読むほど好きな人ですが、
ここ最近は性虐待ネタが多く引き気味で、この短編もそうだったらどうしようと
少し心配していたけれど杞憂に終わった。
道尾氏の初短編集、最高に楽しめました。

ミステリというジャンルにおどろおどろしさや異常性、普通のミステリとは異質のラストを
この著者が持ってこられるのは、やっぱりホラー系の賞でデビューした人だからだろうか。
ミステリ畑一本でやってきた作家さんたちとは何かミステリの書き方、物語の運びが
違っているというか独特なんだよな。
だからこそ先が読めない、先が読めてもその一味違った描写力で
最後までがっつり読ませてくれるのですが。
今回なんかミステリ+ホラーに加えて何気に純文学的テイストまで入っているし。
異なる三つのジャンルをまったく違和感なく融合させられるセンスには脱帽のひと言。

ちょっとオチの弱い話もあったりしましたが、全体的にかなりの良作だと思う。
おすすめです。

それにしても、全編に〝S〟なる人物が登場するのは、これは〝somebody〟のS
なんだろうか。こういうことは誰にでも起こりうるよ、というメッセージ的な。。。
それとも罪を表す〝sin〟? 意表をついて道尾介のS?笑
全話にカラスが出てくるのはまあ不吉・不幸・死の象徴としても
こればかりは謎。誰かわかったら教えてください。答えなんてないんだろうけど。。。

あー、それにしても、久々にいい作品を読めて嬉しかったー。
いい出会いをしたな。
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自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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