――罪とはなんだね。
両親の離婚後、母と弟の3人で暮らす小学6年の杉原美緒。
無理をしてきた母はアルコールに依存し、入退院を繰り返すようになってしまった。
弟とともに母の従妹の薫に引き取られた美緒は、ますます内にこもっていく。
そんな折、薫が経営する喫茶店の常連で元検事という初老の男と知り合いになる。
美緒は徐々に心を開いていくのだが、彼は過去に娘を誘拐され、
その事件は未だ解決されていないことを知る。
数年後、成長した美緒は何かに背中を押されたかのように未解決の誘拐事件を探りはじめ、
その裏に複雑な人間関係と驚愕の事実が隠されていたことを突き止める――。
***
前作〝146gの孤独〟の主人公の人間性がギリギリだったため
今回はどうなのだろうと危ぶんでいたんですが。。。
やはりギリギリだった。
メイン登場人物のほとんどが、一見普通の人間のようでいて
よくよく見ると心の動きや行動が常人と違うような。
しかも著者が狙ってそういうふうに書いているという感じではなく、
書き手の性格が無意識ににじみ出てしまってるんじゃないかというような
そんな印象を受けるんだよなあ。
一人一人の人間は個性があってすごくよく書けてるんだけど
どこか生理的な嫌悪を微かに感じてしまって近づきがたい、的な。
物語としては前著より面白かった。
偉そうに意見すれば構成力が今ひとつで、
「えっ今ここでそれを明かしちゃうの?」みたいな突っ込みどころも多少あったし
起こるエピソードの何もかもが突飛に感じられたりはしたけど、
文章はうまいし長編にも関わらず最後までスラスラ読めた。
ラストで明かされるある〝事件〟の真相や仕掛けられたサプライズはありきたりで
読めてしまったけどそれでも楽しめた。
読んで損はないです。
ちょっと暗い世界観の中にもほんの少しの、でも確かな温もりと希望を感じ取れる良作だった。
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