忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[658]  [679]  [662]  [661]  [657]  [655]  [660]  [648]  [653]  [652]  [656
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

夜の先に、また別の夜があるのだとすれば。

 

福岡市内に暮らす保険外交員の石橋佳乃が、携帯サイトで知り合った
金髪の土木作業員に殺害された。二人が本当に会いたかった相手は誰だったのか?
佐賀市内に双子の妹と暮らす馬込光代もまた、何もない平凡な生活から逃れるため、
出会い系サイトへアクセスする。そこで運命の相手と確信できる男に出会えた光代だったが、
彼は殺人を犯していた。彼女は自首しようとする男を止め、一緒にいたいと強く願う。
光代を駆り立てるものは何か? 
その一方で、被害者と加害者に向けられた悪意と戦う家族たちがいた。
誰がいったい悪人なのか?
事件の果てに明かされる殺意の奥にあるものは?
毎日出版文化賞と大佛次郎賞受賞した著者の最高傑作、待望の文庫化。

***

文章うまい。
構成力抜群。
内容めちゃくちゃ面白い。
久しぶりに〝当たり〟の小説に出会えた気がした。

ベタなキャッチコピーをつけるとすれば、本作の場合
 〝誰が悪人だったのか〟。
貫井徳郎氏が書きそうな内容なので、氏の〝乱反射〟が面白く読めた人なんかは
こっちも確実におすすめ。

それにしても著者の吉田氏の女性心理の描写力はすごい。
男性作家でここまで巧みに描き出せる人もそういないと思う。
ある女性がウザい女として描写されてるシーンでは、
「ああ、ほんとにいるわこういう女」と妙に感心してしまった。
もちろん女性だけに限らず、とにかく人間の心理描写が非常にうまい作家さんなので、
大勢登場するどの人物にも感情移入することができて、
それぞれのキャラクターと一緒に笑い、怒り、怯え、泣き、と感情の休まる暇がなかった。

終わり方がほんのちょっとだけありきたりだったのが残念。
でもこの手の物語は大抵ラストで主人公が死んで(殺されて)終わる、というパターンが多いので
そこに落とさなかった著者は(偉そうだけど)でかした!と思う。

それにしても本作の主人公は、恋愛の〝恋〟じゃなく〝愛〟がとにかく欲しかったんだろうな。
どの女性に向ける激情も一途で激しいけれど決して恋ではなかった。

この物語が終わったあと、描かれていないその後の人生で、
彼がどちらも手に入れてくれることを願ってやまない。

加えていい物語と出会えたことに心から感謝したい。
PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]