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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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夢は、必ず覚める。



八年前に突然絶筆した作家・咲良怜花は、
若い編集者の熱心な復活のアプローチに、自らの半生を語り始める。
そこで明かされたのは、ある男性との凄絶な恋愛の顛末だった――。

***

正直ラブストーリーは苦手なのですが、
この話は非常に面白く読めた。
恋愛を書いてもベタベタした感じにならずいい意味で淡々としているのが
貫井氏のいいところ。

そして主人公・怜花の心理描写が絶妙。
愚行録〟のときにも思ったけど、どうしてここまで女性の心理がわかるの?と
訊きたくなる。女性だけじゃない。人物造形がこの著者は抜群にうまくて
登場人物一人ひとりのキャラクターが鮮明に想像出来る。
そしてこの著者は導入で読者の興味を惹き付けるのがとてもうまいので
先がどうなるんだろう、と気になって気になって一気に読ませる。

さして特殊でもない〝不倫〟という恋愛を、言い方は悪いけど
ここまで面白く描けるひとはなかなかいないのではないかと思う。
やっぱり貫井氏最高。

怜花が筆を折った理由がちょっとあっさりしすぎていたのが
ちょっとだけ物足りなかったけど、彼女の立場に自分を重ね合わせてみれば
わたしでも筆を折るかも知れないな。

ひとりの女性作家の成長ストーリーでもあるので
文筆に携わっている方が読んでも面白いのではないかと思う。
その点は桜庭一樹さんの〝ファミリーポートレイト〟にちょっと似てたかな。

非常におすすめです。
本作は〝ひとりの男性しか愛せなかった女〟を書いていますが、
ヒロインがただ相手の男性を好きだ好きだ言うだけじゃなく、
何故彼しか好きになれないのかを胸が痛くなるほど具体的に描写しているので
ふたりの絆が推し量れて切ない気持ちになる。

わたしも「ああ、やっぱりこのひとしかいないな」
と心から思えるような恋愛をしてみたいものです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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