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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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もしもし、聞こえますか?



母親を刺し殺した“僕”は、自転車で家を飛び出し駅へ走る。
目的地もなく電車に乗り、終点で降りるが行くあてもない。
公園のトイレで自分を殴り、髪を切って自らの風貌を変え、見知らぬ街をさまよう。
やがて所持金が底をつき、空腹が限界に達したとき、わずか3円でパンを譲ってくれたのは
ホームレスのハタさんだった。
誘われるまま“僕”は、経歴を詐称してホームレスたちとテント小屋で生活を共にするようになる。
他人の事情には立ち入らないという暗黙の了解のうえで、なぜか親切にしてくれる彼らに、
“僕”は少しずつ心を開き始めるが――。

***

これは〝生まれることが出来なかった〟少年の物語。
本作の主人公はこの世に〝産まれた〟だけであって〝生まれる〟ことはできなかった。
ただ母親の腹の中から外へと排出されただけだった。
その原因は作品内では特に言及されてはいない。
母親の子の育み方、成長過程での環境、本人の器質・または気質的なもの、
そういった複合要素が複雑に絡み合って、子を生かしたり殺したりする。
まだ母親の胎内に宿っているうちに。そしてこの少年のように、外の世界に出されたあとに。
ラストシーンがそのことを明確に表していると思う。

それにしても、22、3歳の若さでここまで文章がうまいのはすごい。
正直読んでいて自分が小説書く気失くすほど。
二つの異なる情景が読み手の頭の中で交錯し、重なった瞬間の美しさと離れていく際の余韻は、
そこらのプロの比じゃない。

本作がデビュー作である天埜氏、すばる文学賞じゃなく純文学系の(たとえば文藝賞とか
新潮新人賞)賞に送ったほうが更に評価は高かったんじゃないか、むしろ
そっちのほうが作風的に合ってるんじゃないかと思うんだけど
本人はそこらへんどう思ってるんだろ?
すばるはちょこっとエンタメ方向だからな。

何にせよ今後に期待。
彼の実家も結構地元だし、街でばったり会えたらいいなー@
応援します。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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