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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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世界の終わりの美しさを知ったら、もう離れられない。



「きみたちは、世界の終わりを見たくはないか――?」 震撼の黙示録!

「世界はこんなに弱くてもろくて、滅ぼすなんて簡単なんだってことを……
ウエダサマが教えてくれたんですよ」

7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。
結婚を機にその地に越してきた私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離を
つかみかねていた。
前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と
面影が似ているらしい。
この夏、上田は社会に復帰し、ひそかに噂が流れる――世界の終わりを見せるために、
ウエダサマが降臨した。
やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。
一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。
そして再び、「事件」は起きた――。

***

重松さんの著作「疾走」が、自分の中の傑作ベスト3に入るほどの
私としては、是非読んでおかなければと手に取った作品。

導入部は非常によかった。
主人公の内省(心理描写じゃなく、あくまで内省)がゴチャゴチャうるさくて
しつこいと感じられた以外は、先が気になって中盤まで一気に読み進めました。
ただ、読みながら一抹の懸念もありました。この作者は家族の絆をテーマに
物語を書くことが多い人なので、「まさか自分が想像しているような陳腐なラストじゃ
ないだろうな。。。」と不安に思いながら読み進め。。。ラスト1ページを読んで、
思ってしまった。「ああ、やっぱり思ったとおりだった」と。
(というかラスト一行を読んだ瞬間、大袈裟じゃなく寒気がした。
「サムい」という感覚はこういうことか、と体感した)
このオチをやりたいんだったら、主人公と義理の息子は、少なくとも数年は
一緒に暮らしていて、それでもどこかしっくり来ない関係、という設定に
しておいたほうが絶対によかったと思う。ラストの晴彦の変貌が、ご都合主義にしか
感じられなかったので。
というか40過ぎてガキの戯言に振り回されている主人公にも違和感を覚えた。
大人になり切れない今どきの大人に対する皮肉か?というほど情けない。
もしどうしても振り回されちゃうおじさんを書きたかったんだとしたら、
振り回すガキに読者も納得するだけのカリスマ性を持たせてほしかった。
 
酒鬼薔薇事件を題材にしたのだろう「ウエダサマ」が登場する中盤以降も、
何か中二病臭いというか、敢えて作者が狙って書いているのだとしても
B級臭を感じてしまった。
主人公の謎のハリウッドもどきアクションがちょくちょく入るのもどうかなあ、と。
そして晴彦の母親、中盤から一切登場しなくなりますが、彼女息子のこと
わかってなさすぎというか。。。のん気にもほどがあるだろと呆れた。
加えて、細かすぎる感想でなんですが、第三者に自分の親のことを話すときに、
42歳にもなって「お母さんが。。。」って。。。「母が」だろ。
前に22歳の男性と飲みにいって、彼が「お父さんが、お母さんが」と言うのにも
引いた私としては、何このおばさん、幼いなという感じだった。
その幼さが息子の内面にも気付けなかったという伏線なのだとしたら
むしろすごい(まずないでしょうが)。
内藤先生も、「私は7年前の事件でトラウマを負いました」って言ってるだけで
その後フェードアウト。いったい何のために出てきたのか。彼女の登場が
何かの伏線だと思っていたので肩透かし。
主人公の同僚のオッサンたちも、主人公に本当の子供がいないのを知ってるくせに
「うちの子は育てるの苦労した」だの「あいつがガキのころはどうのこうの」だの。。。
もう友達やめちまえよ苦笑
  
ちなみに酒鬼薔薇事件があった当初、様々な有識者が酒鬼薔薇が事件を起こした
原因について議論してましたが、私が一番納得がいったのが「性的快楽」説だった。
本作みたいに「ニュータウンに潜む闇」説を唱えていた人もいたけれど、
それは何か違うんじゃないかなと子供ながらに思っていた。
なので本作の「ニュータウンが悪いんだ」説はどうにも入り込みづらかった。
作者は酒鬼薔薇事件の際も「ニュータウンの闇」説を推していたんでしょうか。

途中までは面白かったぶん、パターンにはまったオチのつけ方が
非常に残念でした。重松さんにはもっとダークな作風に開眼してほしい。
今のままだともう先の展開読めちゃうので。

あと、余談ですが、表紙の絵の題名が「karaoke」なのは何でなのか。
ちょっと笑ってしまった。

本作の登場人物「上田」と「高木」にはちょっと惹かれましたが、
彼らみたいな人間に魅力を感じなくなったら、よくも悪くも
自分は完全に大人になったんだな、ということだと思う。
本作を読ませれば、読ませた相手の精神年齢測れそうです。
本作を絶賛したり「共感した」とか言う人とは、安心して距離を置けそう。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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