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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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それでいいだろう。
他に、何を、どうすればよかった?




いわゆる女たらし系の「おれ」は、いろんな女性をナンパしつつ、
一人の恋人に出会ってここで「死のう」と思う…。
現代文学版「100万回生きたねこ」。第46回群像新人文学賞受賞作。

***

。。。駄目だ冷静な感想が思い浮かばない。
なんで?
なんで?
なんでここまで痛々しいほどに切ないラブストーリーが書ける?
主人公の男の最愛の女性は作中に一度も出てこないのに。
その見えない透明な存在が、ギリギリ胸と涙腺を締め付けてくるのはなんで?
たくさんの女と寝てばかりの主人公が(性格だってちゃらんぽらんで
美徳や魅力なんていったものは少しも感じられないこの男が)
この世で一番誠実な人間に見えてくるのはなんで?

主人公がある一人の女に向けた愛情があまりに本物であまりに純度が高すぎて、
感動したり涙することすら憚られた。むしろその崇高さに畏怖の念さえ感じた。怖かった。
彼の〝彼女〟に対する心理描写なんて一行も出てこないのに、
彼の思いの強さだけはもういいよってほど伝わってくる、この不思議な物語は一体なんだ?

〝彼女〟についての描写は、メール文のみで構成された17章だけ。
それ以外の〝彼女〟にまつわることには、主人公は口を閉ざしすべて隠してしまっている。
この世界の誰もからかばうように、触れさせないように。
〝彼女〟の描写がない、というのはつまりはそういうことなんだろう。

ほかのその他大勢の女性とは違って、唯一主人公に「君」と呼びかけられる〝彼女〟。
三人称ではなく二人称で。
私もそんな風に心で呼びかけてくれる人と出会いたいなと正直心底思ってしまった。
今まで読んだ(or映画で観た)どんなものよりも憧れる物語だ。
今まで出会った中で最高のラブストーリーだった。
〝彼女〟になりたい。
〝彼女〟が羨ましい。
本作を読んで泣けるとしたらその思いからくる悔しさと妬ましさだけだ。


↑ちなみにこれが知る人ぞ知る〝100万回生きたねこ〟。
読んだのだいぶ子供のころなのに未だに憶えてるんだよなあ。。。
それにしても私の好きになる純文作家はどうして愛知の人が多いんだろう。。。どうでもいいけど
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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