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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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――君には、私が見えているか?



戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母とすごすことになった園子の一家。
避難もせず、防音スタジオも持たないが、果たして無事にのりきることができるのか――。
表題作ほか書下ろし1編を含む全9編。
眩いほどに不安定で鮮やかな世界を見せ付ける、贅沢な傑作短編集。

★収録作品★

 鼓笛隊の襲来
 彼女の痕跡展
 覆面社員
 象さんすべり台のある街
 突起型選択装置(ボタン)
 「欠陥」住宅
 遠距離・恋愛
 校庭
 同じ夜空を見上げて

***

誰もが一度は経験したことのある出来事や抱いたことのある感情を、
ファンタジーの要素を絡めることで遠まわしに、けれど直球で表現するより遥かに
心に響く形で描き出している本作。
それは胸に染みるものであったり薄ら寒くなるようなシュールなものだったりと
話によって様々ですが、三崎氏の作品を読むたびに「ふざけんな」と
壁本(=壁に本をぶん投げること)かましてた私にしてみれば異例ともいえる
太鼓判的良作でした。

〝となり町戦争〟と同じく、描写があまりに抽象的すぎて結局何が言いたいのか
わからない、読者の想像に委ねるにもほどがあるだろ的作品も中にはありましたが、
全体的に筆者の持つ独特な価値観・世界観がうまく物語に昇華されていて
偉そうに言えばなかなかの成功作なんじゃないかと思う。

〝遠距離・恋愛〟はクサすぎて「ハッ」とか鼻で笑ってしまったけど(三崎さんごめんなさい)、
〝彼女の痕跡展〟はなんともいえない(細かい&一部の人しかわからない例えをすれば
貴志祐介氏の〝クリムゾンの迷宮〟のラストシーンを読んだときのような)切ない気持ちになるし、
最終話〝同じ夜空を見上げて〟はそのタイトルから「どうせまたクサいんだろ」と
なめてかかっていたら読み終えた瞬間思わず涙が滲んでしまった。

多少の感性は要求されますがおすすめの短編集です。
私がこの著者の小説すすめたのそういや初めてだな。。。(ふだんはボロクソなので==;)
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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