試すな、神様。
母に捨てられ、残された10万円で幼い弟とサバイバルを続ける少年、晴臣・13歳。
家庭に蝕まれ、日常的に家出を繰り返す少女、三葉瑠・16歳。
リストラされて鬱になり、妻も家を出ていったタクシー運転手、原田悟・41歳。
交錯する3人のハルの運命。
そして一挺の拳銃を軸に、新たな物語が動き始める……。
★収録作品★
ハル、ハル、ハル
スローモーション
8ドッグズ
***
うまいなあ。。。と言わざるを得ない。
物語の、そして何より〝言葉〟の伏線の張り方。最初に出てきたときは意味のなかった単語が、
ストーリーが進むにつれて途端に重大な意味を持つ言葉に変わる。
どういう脳みそしてるんですか? とあくまで厳粛かつ真剣に訊いてみたい。
筆致も物語の書き方も独特で、〝ロックンロール七部作〟を初めて読んで以来のファンですが、
本作でますます好きになってしまった。
笑えるのに泣けるってすごい。
ありがちなのに斬新ってすごい。
この著者は本当にすごい。
著作に犬ばっかり出してくるところと巻末で自作について自分で語っちゃうところは
正直どうかと思うけど。でも好き。
そういえばもうひとつこの作者すごいなあと思うのが、既存の物語(エピソード)を説明する文章が
むちゃくちゃ面白いということ。
〝ロックンロール~〟のときはエルビス等のミュージシャンについての実話を延々書いてるくだりが
あるんだけどものっすごい面白くて惹きつけられたし、本作にも某超有名小説について主人公が
言及するシーンがあるんだけど、ちなみに私はその小説の中身を知ってたんだけど、にも関わらず
それはもう楽しく読んだ。ひょっとすると実物を読むよりも。
こういう人っているんだよなー。既存の話をより輝かせて表現してみせることのできる人が。
あとひとつ、この年代の著者が若者を書くと、必ず喋りや行動が「うわー無理して書いてんなー」
って感じになっちゃうのが常なのに、古川作品からはそれを感じない。もう今年で42なのに。
これもかなり大したことだと思う。「そんなもんかあ?」と思う人は、一度荻原浩氏や朱川湊人氏の
小説を読んでみてください(いや、どっちも大好きな作家なんだけど)。
何はともあれこの小説に出会えてよかったなー。
〝健全なる絶望は健全なる肉体に宿る〟
私もこれを信条にしよう。
ギャ―――――!!!
(註:狂ったわけじゃありません笑)
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