「悪いことをするには、天使に分け前を払わなくっちゃならない」
第10回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。
「法曹関係の圧倒的ディテール、そして司法と検察、弁護側の馴れ合いを糾弾する
作者の筆致が、実に素晴らしい。(茶木則雄)」と選考委員も絶賛の、
現役弁護士が描く法曹ミステリーです。
舞台は福岡。母子殺害事件の被告人を信じた弁護士の「私」は無罪を主張するが、
裁判所は聞く耳を持たない。
被告人を救おうとした「私」は業務を一年間停止する処分を受ける。
復帰後、別居中の夫に生活費の請求をしたいという美女の依頼を受けるが、
連続する殺人事件に巻き込まれていく…。
***
現役医師とか弁護士とかの肩書を持つ作家さんは、
もちろん皆が皆そうというわけじゃないのだけれど
専門的知識はすごいものの小説家としてはどうか、と思う稚拙な文章を
書くひとが多い気がするのですが、
(名指しで失礼ですが、〝デザイナーベイビー〟を書いた
岡井崇さんなんかは文章が下手すぎて読み始めて数行でリタイアした)
本作の著者はこれがデビュー作なのにも関わらず
文章が「小説として」非常にうまいどころか既に自分の文体・作風を
確立していて驚かされた。
きっとこれまでにたくさん小説を読んできた方なんだろうなあと思わせるほどの
こなれた文章、主人公の独特で個性的なキャラクター、
まさに文句のつけどころなし。
正直ミステリとしては弱いなと思ったけど
主人公のとぼけた思考・行動に笑わされながら
楽しく読み進めることが出来た。
作品を読んで「この著者と友達になりたいな」と思わされたのは久しぶり。
それぐらい、著者の面白くて好人物そうな人柄が作中に滲み出していた。
というか本作の副題の〝天使の分け前〟の意味が読後わかるのですが、
「へーそういう意味だったのか」と感心した。
お酒を飲むひとなら知ってるひともいるかも。
最後のページにおまけっぽく書いてある〝弁護士用語〟にも
笑わさせてもらった。
あー自分が裁判に関わることがもしいつかあれば
この著者に弁護してもらいたい。
おすすめです。
ちなみに本作が面白かったひとは、荻原浩氏の
〝ハードボイルド・エッグ〟もおすすめ。
ハードボイルドにかっこつけた実はとぼけた探偵、というのが共通してます。
第10回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。
「法曹関係の圧倒的ディテール、そして司法と検察、弁護側の馴れ合いを糾弾する
作者の筆致が、実に素晴らしい。(茶木則雄)」と選考委員も絶賛の、
現役弁護士が描く法曹ミステリーです。
舞台は福岡。母子殺害事件の被告人を信じた弁護士の「私」は無罪を主張するが、
裁判所は聞く耳を持たない。
被告人を救おうとした「私」は業務を一年間停止する処分を受ける。
復帰後、別居中の夫に生活費の請求をしたいという美女の依頼を受けるが、
連続する殺人事件に巻き込まれていく…。
***
現役医師とか弁護士とかの肩書を持つ作家さんは、
もちろん皆が皆そうというわけじゃないのだけれど
専門的知識はすごいものの小説家としてはどうか、と思う稚拙な文章を
書くひとが多い気がするのですが、
(名指しで失礼ですが、〝デザイナーベイビー〟を書いた
岡井崇さんなんかは文章が下手すぎて読み始めて数行でリタイアした)
本作の著者はこれがデビュー作なのにも関わらず
文章が「小説として」非常にうまいどころか既に自分の文体・作風を
確立していて驚かされた。
きっとこれまでにたくさん小説を読んできた方なんだろうなあと思わせるほどの
こなれた文章、主人公の独特で個性的なキャラクター、
まさに文句のつけどころなし。
正直ミステリとしては弱いなと思ったけど
主人公のとぼけた思考・行動に笑わされながら
楽しく読み進めることが出来た。
作品を読んで「この著者と友達になりたいな」と思わされたのは久しぶり。
それぐらい、著者の面白くて好人物そうな人柄が作中に滲み出していた。
というか本作の副題の〝天使の分け前〟の意味が読後わかるのですが、
「へーそういう意味だったのか」と感心した。
お酒を飲むひとなら知ってるひともいるかも。
最後のページにおまけっぽく書いてある〝弁護士用語〟にも
笑わさせてもらった。
あー自分が裁判に関わることがもしいつかあれば
この著者に弁護してもらいたい。
おすすめです。
ちなみに本作が面白かったひとは、荻原浩氏の
〝ハードボイルド・エッグ〟もおすすめ。
ハードボイルドにかっこつけた実はとぼけた探偵、というのが共通してます。
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そう、運命が求めればまた会える。
『催眠』『千里眼』に続く「第3のカウンセラー」登場!
新宿・歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生。
現場となった風俗店に勤める女性たちのPTSD予防のため現れたのは、
派手なギャル系ファッションに身を包んだ臨床心理士だった。
彼女の名は一ノ瀬恵梨香。その驚異の能力に、内閣情報調査室の宇崎俊一は
閃きを感じ、手製爆弾テロを阻止するため、彼女に協力を求める。
やがて謎めいた彼女の内面が明らかになるが――。
「第3のカウンセラー」一ノ瀬恵梨香が登場する「松岡ワールド」の新境地。
***
うーん、謎の見せ方がうまくないのか謎自体に魅力がないのか、
あまりミステリとしては惹かれるものがなかった。
一之瀬恵梨香の登場シーンこそ「こんなカウンセラーが本当にいたらすごいな」と
思ってしまうほどインパクトがあってよかったけど、
彼女のキャラがいちいちぶれるのでキャラを掴みにくいところがあったし。
もちろんぶれるのには理由があるんだけど、
こういう破天荒なキャラを主役に据えるなら
下手に彼女のバックグラウンドを描くより
いっそもっととことん突き抜けた人格にしてしまったほうが
魅力が増したんじゃないかと思う。
著者が臨床心理士の資格を持っているだけあって心理学の描写はうまいのだけど、
物語自体にのめり込める要素があまりなく、強いて言うなら二時間ドラマ的な感じ。
後半のチープなアクションシーンとか、「要るのかこれ?」と思ってしまったし。
まあ好きなひとは好きなんだろうけど。
ただ、私がこの著者に求めているのはそういうものではなかったので、
期待していたぶん肩透かしを食らった感があった。
序盤の放火事件のことも考えてみれば結局尻切れトンボで終わってるし。。。
(まあその後の展開の導入として必要だっただけなんだろうな、とは思ったけど)
今まで読んだ松岡作品の中では一番楽しめなかった。
一之瀬恵梨香のキャラクターは決して嫌いではないんだけど。
『催眠』『千里眼』に続く「第3のカウンセラー」登場!
新宿・歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生。
現場となった風俗店に勤める女性たちのPTSD予防のため現れたのは、
派手なギャル系ファッションに身を包んだ臨床心理士だった。
彼女の名は一ノ瀬恵梨香。その驚異の能力に、内閣情報調査室の宇崎俊一は
閃きを感じ、手製爆弾テロを阻止するため、彼女に協力を求める。
やがて謎めいた彼女の内面が明らかになるが――。
「第3のカウンセラー」一ノ瀬恵梨香が登場する「松岡ワールド」の新境地。
***
うーん、謎の見せ方がうまくないのか謎自体に魅力がないのか、
あまりミステリとしては惹かれるものがなかった。
一之瀬恵梨香の登場シーンこそ「こんなカウンセラーが本当にいたらすごいな」と
思ってしまうほどインパクトがあってよかったけど、
彼女のキャラがいちいちぶれるのでキャラを掴みにくいところがあったし。
もちろんぶれるのには理由があるんだけど、
こういう破天荒なキャラを主役に据えるなら
下手に彼女のバックグラウンドを描くより
いっそもっととことん突き抜けた人格にしてしまったほうが
魅力が増したんじゃないかと思う。
著者が臨床心理士の資格を持っているだけあって心理学の描写はうまいのだけど、
物語自体にのめり込める要素があまりなく、強いて言うなら二時間ドラマ的な感じ。
後半のチープなアクションシーンとか、「要るのかこれ?」と思ってしまったし。
まあ好きなひとは好きなんだろうけど。
ただ、私がこの著者に求めているのはそういうものではなかったので、
期待していたぶん肩透かしを食らった感があった。
序盤の放火事件のことも考えてみれば結局尻切れトンボで終わってるし。。。
(まあその後の展開の導入として必要だっただけなんだろうな、とは思ったけど)
今まで読んだ松岡作品の中では一番楽しめなかった。
一之瀬恵梨香のキャラクターは決して嫌いではないんだけど。
言葉のみが全てを支配する。
大手ゼネコンに勤務する田中は、学生時代にボクシングをしていたせいか、
耳の聞こえが悪い。そのため誤解から家を出た恋人の友人宅に電話をしても、
「嫁は寄生虫」「ひがんで実家に帰っている」などと聞き違えてしまう。
そして同じ時間、同じ場所に、やはり勘違いの甚だしい自称・カリスマ日本語教師がいた…。
彼らの言動が、取り返しのつかない大惨事へ――。
★収録作品★
漢は黙って勘違い
ビバ日本語!
鬼八先生のワープロ
情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群
***
よくwordとかでテキストを書いていて、ひらがなを漢字に直したときに
とんでもない変換ミスが出てひとりで吹き出した。。。なんてことは
誰しもが経験することでしょうが、
そういった日常に溢れる〝言葉〟の遊びをとことんまで追究して
書かれたのが本作に収録された四編。
深水黎一郎さんは確かな筆力を持った作家さんだという
信頼があったので最後まで読み進めましたが、
もしこれが彼の作品の初読だったら
明らかに途中で読むのやめてただろうな、というほど内容的にはふざけた作品。
と、一見そう思えるのですがよく読むとその裏に
著者の〝日本語〟、ひいては〝言葉〟そのものに対する見解や主張がはっきりと
浮かび上がって見えてきて面白い。
特に最終話〝情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群〟なんかは
クライマックスにおける主人公のスピーチが
そのまま著者の魂の叫び(笑)になっていて
わかるわかる、と心から頷いてしまった。
普段から言葉というものに触れる機会が多いひとほど
本作は楽しめるんじゃないかな。
まあ、〝鬼八先生のワープロ〟なんかはさすがに冗長すぎて
「これショートショートでいいだろ。。。」と読むのが途中でつらくなりましたが、
ここまで日本語を突き詰めた作品を書き上げた著者の体力には
ただただ感心するばかり。
万人におすすめしづらい作品ではあるけど、
ハマるひとはとことんハマるタイプの内容ではあるかな。
私的にはおすすめです。
それにしてもこれ、校正のひと苦労しただろうな。。。笑
大手ゼネコンに勤務する田中は、学生時代にボクシングをしていたせいか、
耳の聞こえが悪い。そのため誤解から家を出た恋人の友人宅に電話をしても、
「嫁は寄生虫」「ひがんで実家に帰っている」などと聞き違えてしまう。
そして同じ時間、同じ場所に、やはり勘違いの甚だしい自称・カリスマ日本語教師がいた…。
彼らの言動が、取り返しのつかない大惨事へ――。
★収録作品★
漢は黙って勘違い
ビバ日本語!
鬼八先生のワープロ
情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群
***
よくwordとかでテキストを書いていて、ひらがなを漢字に直したときに
とんでもない変換ミスが出てひとりで吹き出した。。。なんてことは
誰しもが経験することでしょうが、
そういった日常に溢れる〝言葉〟の遊びをとことんまで追究して
書かれたのが本作に収録された四編。
深水黎一郎さんは確かな筆力を持った作家さんだという
信頼があったので最後まで読み進めましたが、
もしこれが彼の作品の初読だったら
明らかに途中で読むのやめてただろうな、というほど内容的にはふざけた作品。
と、一見そう思えるのですがよく読むとその裏に
著者の〝日本語〟、ひいては〝言葉〟そのものに対する見解や主張がはっきりと
浮かび上がって見えてきて面白い。
特に最終話〝情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群〟なんかは
クライマックスにおける主人公のスピーチが
そのまま著者の魂の叫び(笑)になっていて
わかるわかる、と心から頷いてしまった。
普段から言葉というものに触れる機会が多いひとほど
本作は楽しめるんじゃないかな。
まあ、〝鬼八先生のワープロ〟なんかはさすがに冗長すぎて
「これショートショートでいいだろ。。。」と読むのが途中でつらくなりましたが、
ここまで日本語を突き詰めた作品を書き上げた著者の体力には
ただただ感心するばかり。
万人におすすめしづらい作品ではあるけど、
ハマるひとはとことんハマるタイプの内容ではあるかな。
私的にはおすすめです。
それにしてもこれ、校正のひと苦労しただろうな。。。笑
死ぬ寸前まで。
榊信一は大学時代に同郷の恋人を絞め殺しかけ、自分の中に眠る、
すべての女に向けられた殺人願望に気づく。
ある日、自分が病に冒され余命僅かと知り、欲望に忠実に生きることを決意する。
それは連続殺人の始まりだった。
榊の元恋人だけが榊の過去の秘密を知るなか、事件を追う刑事、蒼井凌にも
病が襲いかかり、死へのカウントダウンが鳴り響く。
そして事件は予想もしない方向へ――衝撃の展開、感涙の結末。
***
犯人・刑事、共に同じ病。
連続殺人をすることで僅かな余命に生きがいを感じる犯人と、
その犯人を捕まえることに残りの命のすべてを賭ける刑事、
二つ巴の攻防が描かれた、ちょっと斬新な設定の物語。
のっけから様々な謎が散りばめられていて
とにかく読者を飽きさせない。
どうなるんだろう、どうなるんだろう、
そう思いながらどんどん読み進めてしまった。
内容はまったく違うけど、道尾秀介さんの〝シャドウ〟が楽しめたひとなら
本作もちょっと作りが似てるので面白く読めるのではないかと思う。
途中である主要人物が死ぬのですが、
それもラストのためだったんだなと思うとちょっと無理やり感が拭えないのと、
犯人・榊にとっての最大の謎を出すタイミングが唐突に過ぎるきらいはあったけど、
総じて楽しく読むことが出来ました。
物語が進むにつれて主人公を取り巻く人間関係が
素敵に変化していくのも見どころ。
おすすめです。
榊信一は大学時代に同郷の恋人を絞め殺しかけ、自分の中に眠る、
すべての女に向けられた殺人願望に気づく。
ある日、自分が病に冒され余命僅かと知り、欲望に忠実に生きることを決意する。
それは連続殺人の始まりだった。
榊の元恋人だけが榊の過去の秘密を知るなか、事件を追う刑事、蒼井凌にも
病が襲いかかり、死へのカウントダウンが鳴り響く。
そして事件は予想もしない方向へ――衝撃の展開、感涙の結末。
***
犯人・刑事、共に同じ病。
連続殺人をすることで僅かな余命に生きがいを感じる犯人と、
その犯人を捕まえることに残りの命のすべてを賭ける刑事、
二つ巴の攻防が描かれた、ちょっと斬新な設定の物語。
のっけから様々な謎が散りばめられていて
とにかく読者を飽きさせない。
どうなるんだろう、どうなるんだろう、
そう思いながらどんどん読み進めてしまった。
内容はまったく違うけど、道尾秀介さんの〝シャドウ〟が楽しめたひとなら
本作もちょっと作りが似てるので面白く読めるのではないかと思う。
途中である主要人物が死ぬのですが、
それもラストのためだったんだなと思うとちょっと無理やり感が拭えないのと、
犯人・榊にとっての最大の謎を出すタイミングが唐突に過ぎるきらいはあったけど、
総じて楽しく読むことが出来ました。
物語が進むにつれて主人公を取り巻く人間関係が
素敵に変化していくのも見どころ。
おすすめです。
会いに来るよ。
今日、わたしはさよならする。
図書室の先生と。
退学してしまった幼馴染と。
生徒会の先輩と。
部内公認で付き合ってるアイツと。
放課後の音楽室と。
ただひとり心許せる友達と。
そして、ずっと抱えてきたこの想いと――。
廃校が決まった地方の高校、最後の卒業式。少女たちが迎える、
7つの別れと旅立ちの物語。
恋愛、友情、将来の夢、後悔、成長、希望――。
青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
★収録作品★
エンドロールが始まる
屋上は青
在校生代表
寺田の足の甲はキャベツ
四拍子をもう一度
ふたりの背景
夜明けの中心
***
ああもう本当に大好きだ。
結婚してほしい。
。。。というほどハマっている作家さんの最新作。
青春物という点では既刊と違いはありませんが、
今回は新しい試みを取り入れていて
(〝在校生代表〟なんかはひとりの少女のモノローグになっていて
湊かなえさんの〝告白〟好きなひとにはたまらないのではないかと)
偉そうなことを言えば著者の成長をひしひしと感じました。
この作家さんはこれからもっともっと伸びていくんだろうなあ、と
その無限大の伸びしろに悔しさを通り越して崇拝の念さえ抱いたり。
本作に収録されている短編、そのすべてが、
読み終えたあとにぞくりと背筋がけばだつような感動を私にもたらしてくれた。
本当に大好きです。
めっちゃおすすめ。
今日、わたしはさよならする。
図書室の先生と。
退学してしまった幼馴染と。
生徒会の先輩と。
部内公認で付き合ってるアイツと。
放課後の音楽室と。
ただひとり心許せる友達と。
そして、ずっと抱えてきたこの想いと――。
廃校が決まった地方の高校、最後の卒業式。少女たちが迎える、
7つの別れと旅立ちの物語。
恋愛、友情、将来の夢、後悔、成長、希望――。
青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
★収録作品★
エンドロールが始まる
屋上は青
在校生代表
寺田の足の甲はキャベツ
四拍子をもう一度
ふたりの背景
夜明けの中心
***
ああもう本当に大好きだ。
結婚してほしい。
。。。というほどハマっている作家さんの最新作。
青春物という点では既刊と違いはありませんが、
今回は新しい試みを取り入れていて
(〝在校生代表〟なんかはひとりの少女のモノローグになっていて
湊かなえさんの〝告白〟好きなひとにはたまらないのではないかと)
偉そうなことを言えば著者の成長をひしひしと感じました。
この作家さんはこれからもっともっと伸びていくんだろうなあ、と
その無限大の伸びしろに悔しさを通り越して崇拝の念さえ抱いたり。
本作に収録されている短編、そのすべてが、
読み終えたあとにぞくりと背筋がけばだつような感動を私にもたらしてくれた。
本当に大好きです。
めっちゃおすすめ。
「どう抗ったところで、書かされる物語というのがあるんだ」
生きて行きさえすれば、いいことがある。
笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から
「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。
十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、
突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、
何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、
三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。
道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、
釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、
現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、
九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。
住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。
雑誌「STORY BOX」に掲載した全六話で構成。
★収録作品★
かたちないもの
海鳥の行方
起終点駅
スクラップ・ロード
たたかいにやぶれて咲けよ
潮風の家
***
本作を読了して感じたのは、
「自分はこの物語を理解するにはまだ年齢を十分に重ねていない」
ということ。
歳を重ねていればいるほど、過去を悔恨し、残り少ない余生に
何かを遺そうとした登場人物たちの気持ちが理解出来るのではと思う。
私にはまだ早すぎた。
そういった感情が理解出来ない。
年齢や世代を超えて万人に共感を呼び起こすものを傑作と呼ぶのなら、
厳しい言い方をすれば本作は私にとって傑作足り得なかった。
内容をうまく掴み切れないままただ将来への漠然とした不安を
抱かされただけの本作に、私は言うべき賛辞を持たない。
途中何度も読むのをやめようとすら思った。
〝たたかいにやぶれて咲けよ〟
にだけは、若い人間を中心に描かれた物語であるせいか
唯一感動出来たけど。
老婆が青年に遺した最後にして最大の贈り物、
これは考え得る限り本当に最高のプレゼントだと思った。
私も人生の最後にこんなプレゼントをひとに遺せる人間になりたいと思えた。
生きて行きさえすれば、いいことがある。
笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から
「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。
十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、
突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、
何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、
三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。
道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、
釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、
現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、
九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。
住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。
雑誌「STORY BOX」に掲載した全六話で構成。
★収録作品★
かたちないもの
海鳥の行方
起終点駅
スクラップ・ロード
たたかいにやぶれて咲けよ
潮風の家
***
本作を読了して感じたのは、
「自分はこの物語を理解するにはまだ年齢を十分に重ねていない」
ということ。
歳を重ねていればいるほど、過去を悔恨し、残り少ない余生に
何かを遺そうとした登場人物たちの気持ちが理解出来るのではと思う。
私にはまだ早すぎた。
そういった感情が理解出来ない。
年齢や世代を超えて万人に共感を呼び起こすものを傑作と呼ぶのなら、
厳しい言い方をすれば本作は私にとって傑作足り得なかった。
内容をうまく掴み切れないままただ将来への漠然とした不安を
抱かされただけの本作に、私は言うべき賛辞を持たない。
途中何度も読むのをやめようとすら思った。
〝たたかいにやぶれて咲けよ〟
にだけは、若い人間を中心に描かれた物語であるせいか
唯一感動出来たけど。
老婆が青年に遺した最後にして最大の贈り物、
これは考え得る限り本当に最高のプレゼントだと思った。
私も人生の最後にこんなプレゼントをひとに遺せる人間になりたいと思えた。
あいつを独りきりで悩ませたりしない。
美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。
決して交わってはならなかった二人の心が、魂を切り裂く別れをきっかけに通い合う。
しかし、奇妙な暖かさに満ちていた二人の幸福な時間は、長くは続かなかった。
仇敵である舞原と千桜、両家の執拗な糾弾が勢いを増していく。
そして、二人の未来には、あまりにも重く、どうしようもないまでに
取り返しがつかない代償が待ち受けていて……。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、儚き愛の物語。
悲哀と遺愛の第三幕。
***
〝ノーブルチルドレン〟シリーズ第三集。
シリーズ前作までは小粒だったミステリパートが
殺人の真相を追うものへとレベルアップしていてなかなかに楽しめた。
ただ、吐季の緑葉への想いが唐突に動き過ぎな気はした。
心開くの早っ!(全四巻で次巻で終わりなので性急にならざるを得なかったのかも
知れませんが)。
シリーズ中では第二集〝ノーブルチルドレンの告別〟が
名言も多いし心動かされるシーンも多いし秀逸だと思うのですが、
今巻も楽しむことが出来ました。
今巻では麗羅、吐季に続き、緑葉と歩夢の過去が明らかになります。
メインキャラすべての過去が明かされ、主人公ふたりの関係にも大きな動きがあり、
いったいどんなラストで締め括ってくれるのだろうと最終巻が
今から非常に楽しみです。
おすすめ。
美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。
決して交わってはならなかった二人の心が、魂を切り裂く別れをきっかけに通い合う。
しかし、奇妙な暖かさに満ちていた二人の幸福な時間は、長くは続かなかった。
仇敵である舞原と千桜、両家の執拗な糾弾が勢いを増していく。
そして、二人の未来には、あまりにも重く、どうしようもないまでに
取り返しがつかない代償が待ち受けていて……。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、儚き愛の物語。
悲哀と遺愛の第三幕。
***
〝ノーブルチルドレン〟シリーズ第三集。
シリーズ前作までは小粒だったミステリパートが
殺人の真相を追うものへとレベルアップしていてなかなかに楽しめた。
ただ、吐季の緑葉への想いが唐突に動き過ぎな気はした。
心開くの早っ!(全四巻で次巻で終わりなので性急にならざるを得なかったのかも
知れませんが)。
シリーズ中では第二集〝ノーブルチルドレンの告別〟が
名言も多いし心動かされるシーンも多いし秀逸だと思うのですが、
今巻も楽しむことが出来ました。
今巻では麗羅、吐季に続き、緑葉と歩夢の過去が明らかになります。
メインキャラすべての過去が明かされ、主人公ふたりの関係にも大きな動きがあり、
いったいどんなラストで締め括ってくれるのだろうと最終巻が
今から非常に楽しみです。
おすすめ。
このどうしようもなく病んだ世界で。
美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。
二人の奇妙な推理勝負は話題を呼び、いつしかルームシェアした部室には、
悩みを抱えた生徒が頻繁に訪れるようになっていた。
緑葉の一方的で強引な求愛に辟易する日々を送る吐季だったが、
ある日、同級生、琴弾麗羅にまつわる謎解きをきっかけとして転機が訪れる。
麗羅の血塗られた過去が暴かれ、誰も望んでいなかった未来の幕が、
静かに上がってしまったのだ。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、儚き愛の物語。
激動と哀切の第二幕。
***
〝ノーブルチルドレン〟シリーズ第二集。
〝告別〟のタイトルにふさわしく、吐季と麗羅の重い過去と、
かつてそれぞれが味わった大切な存在との〝別れ〟が描かれていて
読み応えたっぷりの内容になっています。
吐季が僅かに緑葉に心を開く重要な巻でもあるのですが、
そのことがまるで読み手にも心を開いてくれたようで、
読んでいてちょっと嬉しさを感じることが出来たり。
吐季のような感情表現の苦手な、自分の世界に籠もって固く心の扉を閉ざしているような
人間には、
過剰なまでにストレートに愛情をぶつけてくる緑葉のような存在がお似合いなんだろうなと
ふたりの相性のよさを思い知らされた巻でもありました。
というか今回緑葉のモノローグが素敵すぎて手帳に名言集としてメモりたいぐらいで、
「この子に愛される人間は幸せだな」と第一集より更に彼女に魅力を感じた。
彼女の夢は心療内科医になることなのですが、彼女になら癒される人間は
そりゃもうたくさんいるんじゃなかろうか←魅力にやられてテンション上がって素になり中。
ミステリパートはやはりやや物足りないのですが、
キャラクターの魅力で十分に楽しませてもらうことが出来ました。
おすすめ。
美波高校の『演劇部』に所属する舞原吐季と、『保健部』に所属する千桜緑葉。
二人の奇妙な推理勝負は話題を呼び、いつしかルームシェアした部室には、
悩みを抱えた生徒が頻繁に訪れるようになっていた。
緑葉の一方的で強引な求愛に辟易する日々を送る吐季だったが、
ある日、同級生、琴弾麗羅にまつわる謎解きをきっかけとして転機が訪れる。
麗羅の血塗られた過去が暴かれ、誰も望んでいなかった未来の幕が、
静かに上がってしまったのだ。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、儚き愛の物語。
激動と哀切の第二幕。
***
〝ノーブルチルドレン〟シリーズ第二集。
〝告別〟のタイトルにふさわしく、吐季と麗羅の重い過去と、
かつてそれぞれが味わった大切な存在との〝別れ〟が描かれていて
読み応えたっぷりの内容になっています。
吐季が僅かに緑葉に心を開く重要な巻でもあるのですが、
そのことがまるで読み手にも心を開いてくれたようで、
読んでいてちょっと嬉しさを感じることが出来たり。
吐季のような感情表現の苦手な、自分の世界に籠もって固く心の扉を閉ざしているような
人間には、
過剰なまでにストレートに愛情をぶつけてくる緑葉のような存在がお似合いなんだろうなと
ふたりの相性のよさを思い知らされた巻でもありました。
というか今回緑葉のモノローグが素敵すぎて手帳に名言集としてメモりたいぐらいで、
「この子に愛される人間は幸せだな」と第一集より更に彼女に魅力を感じた。
彼女の夢は心療内科医になることなのですが、彼女になら癒される人間は
そりゃもうたくさんいるんじゃなかろうか←魅力にやられてテンション上がって素になり中。
ミステリパートはやはりやや物足りないのですが、
キャラクターの魅力で十分に楽しませてもらうことが出来ました。
おすすめ。
大丈夫、私たちはきっと正しい結末に辿り着ける。
僕等は互いを抱き潰してしまうかもしれない。兄と姉と弟の生活が狂い始めて…。
17歳で衝撃のデビューをはたした大学生作家による、文芸賞受賞第一作。
***
ひと言で言えば〝共依存〟の話。
親の再婚で出会った兄弟と女性が三人だけの閉じた生活を始めるという物語。
深く自分をわかってくれる理解者がいるというのは素晴らしいことだけど、
そのぶんその相手以外の人間を「自分を理解し得ない者」として排除してしまう。
どうしようもなく排他的になってしまう。
それは諸刃の剣で、幸せな反面ものすごく怖いことなのだなと感じた。
物語後半はちょっとメタが入っていて
純文学を普段読みつけないひとには難しいかも知れない。
本作を書いた当初大学生だった著者が
ここまでのものを書いたということにはただただ驚くばかり。
文章が若干大袈裟でポエティックに過ぎるきらいはあるけど、
とても危うくて素敵な物語だった。
おすすめです。
あーそれにしても、やっぱ精神的に落ちてるときって
純文学が異様に理解出来るわ~。。。
それだけが落ち込んでる身にとって唯一の救いといえば救いだな。
僕等は互いを抱き潰してしまうかもしれない。兄と姉と弟の生活が狂い始めて…。
17歳で衝撃のデビューをはたした大学生作家による、文芸賞受賞第一作。
***
ひと言で言えば〝共依存〟の話。
親の再婚で出会った兄弟と女性が三人だけの閉じた生活を始めるという物語。
深く自分をわかってくれる理解者がいるというのは素晴らしいことだけど、
そのぶんその相手以外の人間を「自分を理解し得ない者」として排除してしまう。
どうしようもなく排他的になってしまう。
それは諸刃の剣で、幸せな反面ものすごく怖いことなのだなと感じた。
物語後半はちょっとメタが入っていて
純文学を普段読みつけないひとには難しいかも知れない。
本作を書いた当初大学生だった著者が
ここまでのものを書いたということにはただただ驚くばかり。
文章が若干大袈裟でポエティックに過ぎるきらいはあるけど、
とても危うくて素敵な物語だった。
おすすめです。
あーそれにしても、やっぱ精神的に落ちてるときって
純文学が異様に理解出来るわ~。。。
それだけが落ち込んでる身にとって唯一の救いといえば救いだな。
お願いだから、あたしの名前を呼んで。
美波高校に通う旧家の跡取り舞原吐季は、 一つだけ空いた部室を手に入れるため
『演劇部』と偽って 創部の準備を進めていた。 しかし因縁ある一族の娘、
千桜緑葉も『保健部』の創設を目論んでおり、 部室の奪い合いを発端に、
奇妙な推理勝負が行われることになってしまう。
反目の果てに始まった交流は、やがて二人の心を
穏やかに紐解いていくことになるのだが…。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、
美しくも儚き愛の物語。
***
ラノベ、というカテゴリに一応は属するのでしょうか。
確かに登場人物の名前はやたら凝ってるし、文体も全体に軽いのですが、
キャラが立っている小説が好きな私は一気に読み切ってしまいました。
対立する家系の子供である緑葉と叶季が
不承ながらも共に三つの謎を解いていくことで、距離が近くなり、互いに
惹かれ合っていく。
その描写に、十代のころの恋愛を思い出して懐かしい気持ちになりました。
結ばれることの叶わないふたりがこれから先どうなっていくのか、
続編を読むのが今から非常に楽しみです。
一応ミステリというジャンルになっているのですが、
ミステリ部分はかなりライトなもので、ミステリを目当てに読むひとは
肩透かしを食らわされるかも知れません。
なのでラブストーリーと思って読んだほうが吉。
でもベタベタな描写なんかは出てこないので、そういうのが苦手なひとも
ご安心ください。
吐季に恋をすることで自分の心臓の位置を初めて知った、
そんな緑葉の心理描写にがつんとやられました。
彼女が思う「この世で一番美しい言葉」にも、
なるほど確かにそうだよなあと共感を覚え胸を打たれたり。
おすすめです。
美波高校に通う旧家の跡取り舞原吐季は、 一つだけ空いた部室を手に入れるため
『演劇部』と偽って 創部の準備を進めていた。 しかし因縁ある一族の娘、
千桜緑葉も『保健部』の創設を目論んでおり、 部室の奪い合いを発端に、
奇妙な推理勝負が行われることになってしまう。
反目の果てに始まった交流は、やがて二人の心を
穏やかに紐解いていくことになるのだが…。
ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、
美しくも儚き愛の物語。
***
ラノベ、というカテゴリに一応は属するのでしょうか。
確かに登場人物の名前はやたら凝ってるし、文体も全体に軽いのですが、
キャラが立っている小説が好きな私は一気に読み切ってしまいました。
対立する家系の子供である緑葉と叶季が
不承ながらも共に三つの謎を解いていくことで、距離が近くなり、互いに
惹かれ合っていく。
その描写に、十代のころの恋愛を思い出して懐かしい気持ちになりました。
結ばれることの叶わないふたりがこれから先どうなっていくのか、
続編を読むのが今から非常に楽しみです。
一応ミステリというジャンルになっているのですが、
ミステリ部分はかなりライトなもので、ミステリを目当てに読むひとは
肩透かしを食らわされるかも知れません。
なのでラブストーリーと思って読んだほうが吉。
でもベタベタな描写なんかは出てこないので、そういうのが苦手なひとも
ご安心ください。
吐季に恋をすることで自分の心臓の位置を初めて知った、
そんな緑葉の心理描写にがつんとやられました。
彼女が思う「この世で一番美しい言葉」にも、
なるほど確かにそうだよなあと共感を覚え胸を打たれたり。
おすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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