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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「どう抗ったところで、書かされる物語というのがあるんだ」



生きて行きさえすれば、いいことがある。

笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から
「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。
十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、
突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、
何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、
三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。

道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、
釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、
現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、
九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。
住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。

雑誌「STORY BOX」に掲載した全六話で構成。

★収録作品★

 かたちないもの
 海鳥の行方
 起終点駅
 スクラップ・ロード
 たたかいにやぶれて咲けよ
 潮風の家

***

本作を読了して感じたのは、
「自分はこの物語を理解するにはまだ年齢を十分に重ねていない」
ということ。
歳を重ねていればいるほど、過去を悔恨し、残り少ない余生に
何かを遺そうとした登場人物たちの気持ちが理解出来るのではと思う。

私にはまだ早すぎた。
そういった感情が理解出来ない。

年齢や世代を超えて万人に共感を呼び起こすものを傑作と呼ぶのなら、
厳しい言い方をすれば本作は私にとって傑作足り得なかった。
内容をうまく掴み切れないままただ将来への漠然とした不安を
抱かされただけの本作に、私は言うべき賛辞を持たない。
途中何度も読むのをやめようとすら思った。

〝たたかいにやぶれて咲けよ〟
にだけは、若い人間を中心に描かれた物語であるせいか
唯一感動出来たけど。
老婆が青年に遺した最後にして最大の贈り物、
これは考え得る限り本当に最高のプレゼントだと思った。
私も人生の最後にこんなプレゼントをひとに遺せる人間になりたいと思えた。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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