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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ここにいるよ。



そのソフトを使えば誰でも「理想の人物」を生み出せるという…。
ストリートライブでおぼろげな記憶の中にいる「彼」を歌う佐川夏実。
大学のサークルで世の中に流布する都市伝説を研究する伊神雄輝。
二人の前に現れた奇妙なソフトによって、運命は大きく揺さぶられていく。

***

全体に説明的というか文章のリズムが重いので(難しい、というわけじゃない)
読んでてあまり楽しくなかった。
〝理想の人間を生み出せるソフト〟という設定には惹かれるものがあるけど、
盛り上がるべきところでいつもストップがかかってしまうという構成の至らなさには
かなりイライラさせられた。
主人公の男はムカつくしオチは尻切れトンボというか説明不足で突っ込みどころありまくりだし。

それなりに楽しめはしたけどこの内容で400Pはちょっと長すぎ。
せめて300P以内に収めてほしかった。

著者には失礼だけど瀬名秀明氏か鈴木光司氏あたりが書いたら名作になったのではと思う。
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忘れられない。



夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。
木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。
陽炎のように儚い一週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから十三年…。
僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で――。
誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。第42回メフィスト賞受賞作。

***

メフィスト賞受賞作の割にミステリというよりは純文学寄りの内容だったけど、
よかったです。ミステリを期待して読み進めていたのでちょっと肩透かしは食らったけど、
ラブストーリーで感動したのは本当に久々かもしれない。

それはたぶん、登場人物たちの男♂と女♀の部分だけじゃなく
〝人間としてのその人〟も丁寧に書き込まれているから。
ちょっと人物設定や文体が村上春樹氏に似てしまっている気はしたけど、
かなりの筆力を持った新人さんであることに変わりはなく、
安心して物語世界に身を委ねることができた。

知り合った場所や知り合ったときの肩書きや互いの年齢、性別、(服装等を含んだ)外見。。。
そんなさまざまな要素が絡んで、人と人との関係は形作られていく。
もし別の出会い方をしていたら二人の関係を表す単語(恋人、友人、etc.。。。)は
変わっていたかもしれないし、すぐに別れていたかもしれない。逆により親密になってたかも。
そういった人間の関係性の脆さや、そして逆に関係性に縛られない絆の強さ、
その両方を本作には教えてもらった気がする。

素敵な話でした(何よりタイトルが秀逸だ。読後ぞくぞくっとなった)。
おすすめ。



おまけ:
本作に主題歌を付けるとすれば絶対にこれだと思う。

誰にも言わない。



このままずっと小説を書き続けるか、あるいは……。
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。
極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、
物語を紡ぎ続けた――。
「Story Seller」に発表された一編に、単行本のために書き下ろされた新たな一篇を加えて贈る
完全版!

***

SideAを雑誌〝Story Seller〟で読んだときには読後放心するぐらい感動できただけに、
SideBの中途半端さは残念(著者の作中での実験的な試みは面白いけど)。
前者は「まさかこれ。。。著者自身の実体験も少なからず入ってるんじゃ?」と思わされたけど、
後者にはまず「こんな夫いないよ==;」と突っ込み(あまりに人格者すぎる)、
ラノベ全開な文章ともあいまってフィクションくささが鼻についてならなかった。
大好きな映画のしょぼい続編を目の当たりにしたような「最初はよかったのに。。。」感が
拭えないというか。

SideBの存在によって名作だったはずの(そして限りなくノンフィクションに近かった)SideAが
「しょせんこれもフィクションじゃん」的な感じになってしまっていてそれが何よりも残念。
(〝ターミネーター〟の続編が出るたびに
「え? じゃあ前作までの戦いは何だったの?」とがっくりくる感じを思い浮かべてもらえれば
わかりやすいと思う)

著者には悪いけど私の中ではSideBはなかったことにする。
SideAはかなりおすすめです。
なので本作〝ストーリー・セラー〟ではなく〝Story Seller〟の文庫を買うことを
個人的にはお勧めします。
どうにもならないままただ過ぎて行った時間のことを。



古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。
依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、
結末の伏せられた五つの小説を探していた。
調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。
二十二年前のその夜何があったのか? 幾重にも隠された真相は?
米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。

***

読み終えた瞬間に背筋が(いい意味で)ぞっとした小説は久しぶり。
本作に作中作として登場する五編のリドルストーリーには面白みに欠けるものもあり、
それらを使ったトリックも少々ややこしくはありますが(そのせいでかったるくなったりもしますが)、
挫折なく読み進めていったおかげであのラストにたどり着けたのだからそれでいいかな。

それにしても、
〝アントワープの銃声〟という作中のあの雑誌記事をもうちょっと初めに持ってきてくれていたら
読者も謎解きに参加できたのにな。だいぶあとにならないと出てこなくて残念。
あと主人公がちょっと魅力に欠ける人物だったのも×。

映画〝インシテミル〟が公開されてこの著者も知名度上がるかな。
でも米澤氏の真髄はいかにも娯楽小説っぽいあれよりも本作のような物語にあると思うので、
映画を見て(もしくは原作を読んで)気に入った人は
本作を含めたほかの作品も是非チェックしてみてください。

shinobu.jpg







日々確実に、発狂してきた。



迫ってくる体温を感じながら感じた、世界が変わっていくのを――。
堕ちてゆく痛み、翳りない愛への恐れ。自身に注がれる冷徹なまなざし。
クールさと瑞々しさをともに湛えた恋愛長篇。

***

再読。
男の登場人物の書き込みが若干足りないことを除けば秀逸の作品だと思う。

とかく文章が心地いい。
リズムがあって、オブラートのかからない剥き出しの痛々しさが伝わってくるようで。
現に著者の金原さんが本作を執筆時、主人公と同じ拒食症に陥り、
病院に通ったというエピソードは有名。

一人の人を好きで好きで好きで仕方なくなりながらも
ほかの異性を保険として手元に(女としての本能で無意識に)留めておく、
どちらが本気なのかと言われればどちらとも、と答えるしかない、
そのあたりの機微がじっくり書き込まれていて深い共感を覚える。
そして同属意識からくる嫌悪感も。

ラスト一行が大好きです。
何だかミステリにおけるリドルストーリーの恋愛バージョン、みたいな感じで。

おすすめ。
楽園とは居心地のいい牢獄。



周囲の者が次々と殺人や事故に巻き込まれる死神体質の魚マニア・美樹と、
それらを処理する探偵体質の弟・真樹。
彼ら美少年双子はミステリ作家が所有する孤島の館へ向かうが、案の定、館主密室殺人に遭遇。
犯人は館に集った癖のあるミステリ作家たちの中にいるのか、それとも双子の…?
最強にして最凶の美少年双子ミステリ。
第37回メフィスト賞受賞作。

***

うーん。。。あんまり。。。
軽くメタ入っててミステリ書いてる身としてはちょっと面白かったけど、
事件もトリックも大したことないし(特にトリックは、思いついたことがよっぽど自慢なのか?
ってぐらい何度も何度もくどいぐらい文中に出てくるし)、
文章が読みづらくて状況を把握しにくいので真相が語られても
「はあ。。。そうだったんですか。。。」って感じだし。
双子のキャラはなかなかいいけど、語り部役の刑事があまりに影薄くて
「あれ? この話って誰の視点で語られてんだっけ?」ってときどき忘れそうになるし。。。
偉そうに言わせてもらえばメフィスト賞を受賞するに値するほどのものでもなかったような。
(まあ、ときどきとんでもないのが受賞したりもする賞ですが、
本作はいいほうにも悪いほうにも突き抜けてなくて中途半端に感じた)

著者のアクアリウム&浦沢直樹氏への愛だけは十分に伝わってきました。

あまりおすすめではないかな。。。
本当に殺したい。



死んだ女のことを教えてくれないか――。
無礼な男が突然現われ、私に尋ねる。私は一体、彼女の何を知っていたというのだろう。
問いかけられた言葉に、暴かれる嘘、晒け出される業、浮かび上がる剥き出しの真実…。
人は何のために生きるのか。この世に不思議なことなど何もない。ただ一つあるとすれば、
それは――。

***

くどい! 文章がくどい!(特に最終章の冒頭)
そして雑! 推敲してるのこれ?
ていうか初期の京極氏はどこに行ったの? あの巧みなプロットと簡潔&精緻な文章は?

。。。などとちょっと腹立ったりもしましたが基本的には面白いです。
六つからなる章の全部が全部似たようなストーリー運び&台詞のオンパレードなので
読み進めるごとにだれてはきますが、ラストのまとめ方はなかなかに秀逸。

皆自分のことばかり。
他人のことなんか知ったこっちゃない。
人と喋ってて何か相談してもいつの間にか話題が相手のことに移ってる、
そんな経験誰しもあるでしょうが、本作はそういった〝虚しさ〟みたいなものを浮き彫りにしてる。
苦笑いしつつ共感してしまった。

一見無能な一人の男が様々な肩書きや矜持を持つ人間を
弁舌巧みに(しかし本人にその自覚はない)追い詰めていく様はなかなかに痛快(もし自分が
追い詰められる立場だったらとちょっとぞっとしないですが)。
人間心理もよく書き込まれているし(ちょっと追い詰められる側が弱すぎる気がしないでも
ないけど、それはたぶん追い詰める側の青年・ケンヤの卓越した話術故と捉えておこう)。

まあおすすめかな。
それにしても改めてすごいタイトルだな本作。。。



オマケ:
本作がツボだった人はこちらがおすすめです。

Are you still with me?

 

学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。
ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー。

***

〝MONSTER(/浦沢直樹)〟
+〝デスノート(/大場つぐみ・小畑健)〟
+〝バトルロワイアル(/高見広春)〟
といった感じの内容。でも面白くなかった。
夜通し一気で読みきってしまうほどの、読んでしばらく経つとまた手にとってしまうほどの、
かつての貴志節はどこにいってしまったんだろうと悲しい気持ちになった。

〝MONSTER〟〝デスノート〟ほど悪役にカリスマ性はないし(ていうか
時々使う英語がもうサムくて仕方ない)、
後半で〝(一人)バトルロワイアル〟的展開になるくせに
バトロワに比べてまったく手に汗握らない(要するに生徒たちに魅力がない)。
前作で「あれ?」と思ったせいで本作は買わずに図書館で済ませたけど
本当に買わなくてよかったと思う。
主人公も殺人手段が穴だらけで全然賢く見えないし(ていうかむしろアホに見える)、
オチも予想の範囲内だった。
何より後半で絶対活躍すると思ってた猫山教諭がそのままフェードアウトしたのにはあ然。

せめて殺人鬼視点ではなく被害者視点で書いたらずっといいものに仕上がったのでは。
ラストで蓮実を追いつめる決定打だけは意外性があってよかったけど。

でもこれ読むなら上記三作を読んだほうがよっぽどいいです、正直。
次こそは三度目の正直で面白いものを書いてほしい。。。

そんな顔するなよ。な?



吹奏楽の“甲子園”普門館を目指すハルタとチカ。ついに吹奏楽コンクール地区大会が始まった。
だが、二人の前に難題がふりかかる。
会場で出会った稀少犬の持ち主をめぐる暗号、
ハルタの新居候補のアパートにまつわる幽霊の謎、
県大会で遭遇したライバル女子校の秘密、
そして不思議なオルガンリサイタル…。
容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?
退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続く“ハルチカ”シリーズ第3弾。青春×本格ミステリの決定版。

★収録作品★

 ジャバウォックの鑑札
 ヴァナキュラー・モダニズム
 十の秘密
 空想オルガン

***

第一話〝ジャバウォックの鑑札〟には「へえ~!」と思わされたけど
話が進むごとにだんだんつまらなく。。。(特に最終話にして表題作〝空想オルガン〟が
長い上につまらない。。。シリーズを通して読んできたひとにはちょっと嬉しいシーンなんかも
一応はあったりするんだけど)
それでも一定のレベルは保っているので決して駄作ではありませんが。
でもキャラが非常に魅力的で個性に溢れているのにストーリーが追い付いていない。。。というか
吹奏楽ミステリなんだからもうちょっと音楽に関するトリックやってよ、というのが個人的希望です。
キャラ同士の掛け合いは相変わらず健在で非常に面白いですが。
(orz とドラクエネタと「……な、なにこのイケメン?」には吹いた)

まあおすすめかな。
シリーズ第一作の〝退出ゲーム(表題作)〟は爆笑できるしミステリとしてもかなりのものです。

さあ、戦争を始めよう。



「覇王」として君臨した祖父の高みに至るべく、「特別な自分」を信じ続けようとする「僕」。
北海道の片隅で炸裂する孤独な野望の行き着く先は、
「肉のカタマリ」として生きる平凡な人生か、それとも支配者として超越する「覇王」の座か?
さあ、世界のすべてを燃やし尽くせ。

***

自分の目標や存在価値が見出せず平凡な生活に飽いている若者が読んだら
彼(もしくは彼女)にどんな影響を及ぼすのか。。。なんてことが気になった本作。
彼(もしくは彼女)が若ければ若いほど、反発するのかもしれないなあ。。。
「こんな終わりは認めない!」
とか言って。
でも真実この世で一番幸せなことは本書のラストに書かれていることなんだろうなとは
心の深いところで悟れるのかもしれない。
本作は精神(思考)がそこにたどり着くまでの所謂準備書のようなものなのかもしれない。

おそらくは著者の佐藤氏の実体験も盛り込まれているだろう本作、
なかなかに興味深い作品だった。
でももし私がもっと若いころに読んだとしたらやはり「こんなの認めない」と
反発するんだろうけど。。。

十代には反発を、
二十代には希望(あるいは救いを秘めた絶望)を、
そして三十代以降の人間には懐かしさ(青臭い自分を振り返る感覚)を抱かせるような作品です。
おすすめ。

sagurada.jpg









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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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