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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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勇気はあるか?



岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」
五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」
渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」
大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」
井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」
渡辺佳代子は怒る。「善悪なんて、見る角度次第」
永嶋丈は語る。「本当の英雄になってみたかった」

検索から、監視が始まる。
漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品、最長1200枚。

***

いきなり註:
本作は↓の続編なので、こちらを先に読んでから読むことを推奨します。



。。。
あれだけ好きな作家だったのに、ここ最近の伊坂作品には
読むたびごとに幻滅を感じさせられている。

理由としては、これまでの伊坂作品はあくまで伊坂氏の想像力をメインに
描かれていたのに対して、ここのところは何か別の媒体(映画や本)からの引用、
政治絡みのエピソードが非常に多くなってしまって、物語というよりはもはや
エッセイに近くなってしまっている、ということ。
本作でも、ここ最近の時事問題を詰め込んでそれに対する意見を
登場人物の口を借りて語らせているだけ、という印象を受けた。
本作には自分の思っていることを他人に言わせることが出来る、人間腹話術師の
能力を持った人物が登場するけど、まさにこの小説自体が伊坂氏の言いたいことを
そのまま口にしているだけの腹話術本といった感じだった。
(たとえるならNHK教育で人間とぬいぐるみが会話しながら社会や理科とかについて
「そうかあ! そういうことだったんだねお兄さん!」「そうなんだよ○○くん」
とやっている白々しさに似ている。製作者の思惟が透けて見えてしまって
最早物語として受け止められないあの感じ)
その割りに、作中における名台詞は全部どこかからの引用で
伊坂氏自身の言葉じゃないし。。。
昔はちゃんと伊坂氏自身の考えた言葉が、登場人物たちの口から飛び出して
忘れられない記憶になって読み手の心に残ったのに。

そして内容。前著〝ゴールデン・スランバー〟とほとんど同じ。。。と思っていたら
伊坂氏本人にもその自覚はあるようで、あとがきでそのことについて言及していましたが、
「本作と〝ゴールデン・スランバー〟は二卵性の兄弟のようなもの」
って。。。だったらいっそその卵をひとつにまとめて一冊にして出してほしかったよ。
ほとんど同じ内容の小説を、しかもこんなにぶっとい本を、二回続けて読まされる
こっちの身にもなってほしい。
どんな駄作でもそれと気づかず読めるほどの盲目的伊坂信者(もしくは
そこまで身を入れて本を読まない性質で読んだ端から内容を忘れるようなタイプ)じゃない限り
二冊とも楽しめた、なんて人はいないと思う。
そして〝魔王〟が大好きな私としては、あれだけ壮大な凄みを感じさせる終わり方だった前著が
こんなつまらない続編として発表されたことにも嘆かざるを得ない。
自分が「きっとこうなるんだろうな」と勝手に夢想していた内容のほうがよっぽどいい。
なので本作は自分の中ではなかったことになっている(FFⅩ-2と同じように。。。って
わからない人はごめんなさい)。

一番はじめに、〝魔王〟を読んでから本作を読むよう打診しましたが、
〝魔王〟で感動した人は正直こっちは読まないほうがいいです。
自分の中の何かが壊れるから。

〝魔王〟のあのクソ野郎の敵討ちが続編である本作で成されていたのだけはすっきりした
けど、それもあんな第三者じゃなくて〝彼〟にやってほしかったなあ。。。
あーほんと読むんじゃなかった。

あとこれは完全に私事ですが、今年某ミステリ新人賞に出そうとして書いた短編と
同じトリックが本作にも使われていることに驚愕。
私がこの短編を書いたのは相当前なのでネタを思いついたのはこっちが先なのに
結局はアマチュア対売れっ子プロ作家。。。これが原因で落ちたらまじ恨む←逆恨み

いろんな意味でいただけない小説でした。
前から思ってたけど伊坂氏、〝火の鳥〟と〝浦澤直樹〟に影響受けすぎだし。



どうでもいいけど伊坂さん、〝下唇をぬるっと突き出す〟って表現と、
老婆を蠱惑的に描写するのはいい加減やめてほしいんですが。。。
〝老いてなお魅力的〟っていうのを書きたいのはわかるんですが、
どうやっても女を捨てきれないでしがみついている、大人になり切れない無様な女、
にしか見えないですから、あなたの書く老婆は。。。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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