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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ほれ、また光りだした。



愛する人を失った悲しい記憶を胸奥に秘めて、奥能登の板前の後妻として生きる、
成熟した女の情念を描く表題作ほか3編を収める。


★収録作品★

 幻の光
 夜桜 
 こうもり
 寝台車

***

だいぶ前に映画で観て、その出来にはあまり納得がいかなかったものの
映像がとてもきれいだったことだけはずっと心に残っていて、
いつか原作を読みたいなと思い続けようやく手に取った作品。
言うまでもなく、映画と比肩し得る余地のないぐらい素晴らしい小説だった。

〝幻の光〟という、ともすれば陳腐になりかねないタイトルを、
物語内でうまく使うことによって、読み終えたころには
「この作品にはこのタイトル以外ない」
と心底納得させられる。

人(本作の場合は主人公の元夫)の奥底に眠る闇のふとした瞬間の表出を、
あんな形で表現する著者の発想にも驚嘆させられた。
悲しいと泣き喚くより、死んだように虚ろになるより、狂ったように笑い出すよりも、
ずっとずっと元夫の深い虚無と静かな狂気が浮き彫りにされていて、
そのあまりの生々しさに物悲しさよりも恐怖をおぼえた。
迫ってくる何かへの恐怖じゃなく、何か大切なものが吸い取られていくような恐怖。

表題作以外の短編はすべて、もともとテーマをはっきりと提示しない〝純文学〟という
ジャンルの中でも特に著者の主張がぼかされて書かれている本書ですが、
それでも心に染み込むように伝わってくるものは確かにあるし、
宮本氏の作品はその文章が紡ぎ出す情景が幻想的で非常に美しいので(その部分が
唯一映画にも反映されていたのかもしれません)、
そういったワンシーンワンシーンを頭に思い浮かべながら読むのもおつです。

読んでよかった。
おすすめです。



蛇足1:
本作を自宅のリビングで読んでいるとき、タイムリーにもテレビから
「ダバダ~ダ~ダ~ダバダ~ダバダ~♪」とネスカフェのテーマが流れ出し、思わず心で
『宮本輝は、知っている』と呟いてしまった←あほ
蛇足2:
宮本氏は20代のとき、私と同じパニック障害を患っていたそうだ。
こう言っちゃなんだけどなんかちょっと嬉しかった。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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