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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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いついかなるときも、穏やかに微笑む人だった。



エリート銀行員の仁藤俊実が、意外な理由で妻子を殺害、
逮捕・拘留された安治川事件。
犯人の仁藤は世間を騒がせ、ワイドショーでも連日報道された。
この事件に興味をもった小説家の「私」は、
ノンフィクションとしてまとめるべく関係者の取材を始める。
周辺の人物は一様に「仁藤はいい人」と語るが、一方で冷酷な一面もあるようだ。
さらに、仁藤の元同僚、大学の同級生らが不審な死を遂げていることが判明し……。
仁藤は本当に殺人を犯しているのか、そしてその理由とは!?

貫井氏が「ぼくのミステリーの最高到達点」と語る傑作。
読者を待つのは、予想しえない戦慄のラスト。

***

冒頭で事件を提示し、何故それが起こったのかということを
周囲へのインタビューを交えて描き、徐々に炙り出していくという手法は
〝愚行録〟に通じるものがある。
けれど個人的にはあの作品よりも楽しんで読むことが出来た。
というか最早面白くて一気読み。

ただ、終盤で「いかにもわかりやすい理由を事件に与えて
話を締めくくることは簡単だ」と登場人物に語らせている割に、
本作自体がそういう「いかにもわかりやすいオチ」を付与されて
薄っぺらく終わってしまっているのが残念だった。
結局著者が本作で言いたかったのは
「人間なんて端から見ててもその本質は決して窺い知れないものだ」
ということで、でもそんなテーマは今更ベタだし
直球すぎて若干鼻白んでしまった。
それともこれがエンタメ小説の限界なんだろうか。そうは思いたくないけど。
とりあえず自分の意見を言うなら、
どうせエンタメなら仁藤俊実の異常性、さもなくば
異常か正常かもわからない得体の知れなさを
徹底的に強調してほしかったと思う。
こんな「わかりやすいオチ」に逃げてほしくなかった。

テーマとかそういう難しいことを考えず
普通に読むぶんにはとても面白い内容でおすすめだけど、
貫井氏はもっと深い世界が書けるひとだと思うだけに惜しい。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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