忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[1612]  [1609]  [1604]  [1606]  [1594]  [1607]  [1591]  [1584]  [1586]  [1581]  [1580
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ぼくの心に、負の感情が降り積もっていく。

 

少年院を出た彼は本当に更正できたのか。

久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。
頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、
決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。
神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。

〈上巻〉第一部ではこの3人の中学生が殺人者になるまでを、
その内面を克明にたどりながら描く。
その3人が同じ少年院に収容されて出会うのが第二部。
過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる。

〈下巻〉第三部。少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、
周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくしていく。そして、再び3人が出会う日がくる。 
少年犯罪を少年の視点から描いた、新機軸のクライムノベル。

***

貫井徳郎という作家は、
とにかく人間の心をとことんまでに掘り下げて書くひとなので、
胸が抉られていくようで精神が浸食されていくようで
いつも読んでいて怖くなる。
上巻は殺人を犯してしまった少年三人の心中を純文学ばりに細密に描いていて、
そんな彼らに同化してしまいそうになる、彼らの心に飲みこまれそうになる
自分を感じた。

ところが下巻は一転して様相が純文学モードからエンタメモードに切り替わる。
そこが貫井氏のミステリ作家たる所以なのだとは思うけれど、
読むひとによってはその変貌ぶりに戸惑いを感じるのではないかとも思った。
テーマは一貫しているものの、雰囲気があまりにごろっと変わるので。

なので本作は、人間の心を突き詰めて描き出しながらも
根本に流れるものはミステリなのだということを、
上巻の純文学性はあくまで下巻のミステリ的展開を盛り上げるための
長い長い布石なのだということを、忘れないで読み進めてほしいと思う。

単なる謎解きに終始しがちなミステリというジャンルを
ここまで深いものに仕上げられる貫井氏の力量には
相も変わらずただただ感服するばかりだったけれど。

おすすめです。
PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]