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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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だから、それまで。



那由多小学校児童毒殺事件――男子児童が、クラスメイトの男子児童を教室内で毒殺した事件。
加害児童は、三日後に同じ毒により服毒自殺を遂げ、動機がはっきりとしないままに
事件は幕を閉じた。
そのショッキングな事件から30年後、ある人物が当時の事件関係者たちを訪ね歩き始めた。
ところが、それぞれの証言や手紙などが語る事件の詳細は、微妙にズレている…。
やがて、隠されていた悪意の存在が露わになり始め、思いもよらない事実と、
驚愕の真実が明かされていく。
『このミステリーがすごい!』大賞2009年、第7回優秀賞受賞作。

***

湊かなえさんの〝告白〟に似ていると巷では言われていますが、
共通のキーワードといえば〝小学校での殺人〟〝牛乳(笑)〟ぐらいで、
そこまで「似てる!」という印象は受けなかった。
どちらかといえば貫井徳郎氏の〝愚行録 〟のほうが近い。
個人的には愚行録よりはエンタメしていて、告白ほどトンデモじゃなくて、
こういうモノローグものの小説の中では一番バランスがいいと思った。

ただ難を言うなら、真相がすぐに読めちゃうことかな。
真相が悟りやすいというのはそれだけ作者の文章が読みやすく丁寧であるということだと
私としては思うのですが(単に伏線を張るのがヘタでバレバレな作家もたまにはいるけど)、
もうちょっとミスリードがあったほうが読み応えはあったと思う。
でもこの塔山氏は文章も複線の張り方も登場人物の心理描写(これがとにかくすごい)も
これがデビュー作とは思えないほど抜群にうまく、
今から次の作品を楽しみにしている自分がいたりする。

ただ腑に落ちない点もいくつかあり、
たとえば
★夏実、子供が欲しいだけなら結婚まですることないじゃん。
お嬢様だから私生児なんてあり得ないとでも思ってるのかと思ったけど、
簡単に離婚しようとしてるしじゃあそうでもないんだろうし。
★クーさん、そんなに弟に(子供が同じ顔になるほど)そっくりなら、
いくら廃工場で本名名乗らなくても絶対誰かが気づいたはずだろ。
それにやたら羽振りがいいって子供らの誰かが証言すれば
すぐ金持ちの彼に行き着くだろ。
★砒素ってちょこちょこ飲ませた場合と一気にがばっと飲ませた場合で
検死のとき差異が出るんじゃないの?
証拠隠滅のためにあとから大量に飲ませても無意味じゃ?
それとも三十年前の医学じゃそこまで調べられなかったとでも?

★誤植多すぎ。三箇所見つけた。
これは作者には関係ないので、担当編集さんと校正の人に文句を言いたい。
〝一挙手一足〟ってオイ。

でもまあ、作りが既存の小説と似ているよりも
文体・台詞回し・設定・登場人物の性格、そのすべてが伊坂幸太郎氏の完パクである
屋上ミサイル〟を大賞にしといてこっちを優秀賞にする道理はないよな。
これ&同じ大賞受賞作の〝臨床真理〟よりも本作のほうがずっとレベル高いし面白いのに。

この賞出身の作家の本は本当の実力に裏打ちされて書かれたものよりも
くだらないけどエンタメに徹しているもののほうが売れる傾向にあるので(あんまり知り合いじゃ
ない人をけなしたくないけど、たとえば海堂尊氏とか)、
今後はどうなるか予測できませんが、
この作家さんにはこれからもどんどんこういう良質のミステリを発表し続けていってほしい。

おすすめです。
塔山さん、応援してます。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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