見ているか?
道州制による分権のもと、監視カメラのネットワークによって国民に絶えず順位を付ける制度
(RANK)が施行される近未来の日本・関東州。
(RANK)低位者の拘束を業とする公務員「執行官」の中には、任務に疑問を抱く春日と、
歪んだ正義感のもと暴走していく佐伯がいた。
抑圧された人々の蠢きによって、自らに危機が迫っていることも知らず…。
第三回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作。
***
あらすじ&ポプラ社大賞入賞作という肩書きからエンタメ色の強い小説と思いがちですが、
どちらかというと本作は今の世の中に対する風刺・啓蒙的な物語なので
単に面白さを求めるだけなら読まないほうが吉です。
文章も最近の娯楽小説にしては難しめ。
というかこの著者、あまり長編には向いてない気がする。
筆致が独特なので読んでて疲れるんだよな。
たまに古川日出男氏や舞城王太郎氏にそっくりな文体とか出てきて「パクリ?」とちょっと
イラっともするし。
内容は何だか〝デスノート〟+〝イキガミ〟+〝20世紀少年〟+〝ゴールデン・スランバー〟
って感じだし。
ものすごく実力のある新人作家さんだとは思うけど、〝地図男〟の際も言及したように
どうも新鮮味に欠ける。
ほんともったいないと思うので、今後真藤氏には独自の文体を創り上げていってほしい。
それにしても〝<眼>は視ている〟という文章のこれでもかとばかりの連発が
読み進めるごとにこちらの身体に、精神にじわじわと浸潤してきて
次第に嫌な気分にさせてくる手腕はすごいなと思った。
まさにこの世界の人間たちと同じ感覚を味わわせてもらった。
ただ、黒幕の人物が突飛すぎてあまり驚けなかったことと、
終盤が突如SF化していたこと、
電気系統が麻痺したときに備えて〝眼〟には病院並みの予備電池とかつけるのが普通なのに
何であれぐらいで一斉OFFになってんの? という突っ込みどころはありましたが。
個人的にはこういう話好きです。
作中の登場人物・佐伯にはいたく共感してしまったし。
でも本当にこんなシステムが日本にあったら、突出した才能はまず生まれないだろうなあ。
ダメダメ人生を数十年送り続けてある日突然返り咲く、みたいな人のほうが
才能ある人には多いのに、そうなる前に排除されてしまう。
画一的な人間ばかりがぞろぞろと量産されていく。
。。。あ、それも著者の風刺か。
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