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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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たった一人きりで。



涼子の精神科クリニックに、発作を起すとトランス状態になり、手指を激しく動かす奇妙な動作をする
少女・あや香が訪れる。
同じ頃、涼子の学生時代の親友で、明晰な頭脳と美貌、そして旺盛な行動力を持つ祐美は、
留学先のアメリカで「不死の患者」と遭遇していた。2度にわたり死刑が執行されたが死に切れず、
全身を癌に冒されているにもかかわらず、その男には死が訪れない。
2人が直面した奇妙な患者たちに秘められたものは何か? 
期待の新人作家が放つ、ホラーとヒューマン・ドラマが渾然一体となった傑作。

***

自分がとても尊敬する、知り合いの作家さんの著作です。

本作に使われているいくつかのファクターについて
(偶然にも)以前小説を書くために勉強しまくっていたせいか、
作中に張られた伏線にはかなり早い段階で気づいてしまった。
それでもラストの〝涙〟のシーンには泣きそうになったし、
もし自分に事前知識がなければもっと心を揺さぶられたのにと思うと悔しい。

それにしても著者のルカさんは個性的な男性の描写がうまい。
偏見かも知れないけど女性作家の描く男性像は型に嵌まってしまいがちなことが多いので、
この才能は貴重だと思う。
主人公の元同棲相手、特に派手な台詞やアクションをぶちかますわけでもないのに
いっそすがすがしいほどに嫌な奴すぎて笑える。
ストーカーの行動にも、鳥肌立ちつつ爆笑してしまった。
確かにあんなことされたらマヨネーズ食べられなくなるよな。。。
(私もあるトラウマから豚肉が食べられなくなったことがある。克服したけど)

ファンタジック・ミステリですが、大人の女性の精神的成長を描いた作品としても読めます。
人は自分が認める誰かに生き方やポリシーを揺さぶられがちだけど、
こんな風に自分ひとりの力で立てたらいいなと常々思っていたので染みた。
本作の元のタイトル〝カウントテン〟とうまく絡ませて表現されているところもよかった。

ただ、あくまで個人的には、ラスト1ページは要らなかった気がする。
そこは読者の想像で十分に補えたと思うから。
あと、主人公の友人の終盤での、「何で私じゃ駄目だったんだろう」というひと言。
主人公より聡明で頭が回るのにどうしてそれがわからないの? と違和感が。
頭脳は友人、けれど感情を読み取る術は主人公のほうが長けていた、という設定だとしても
物語全体を通して切れ者だった彼女がそのシーンだけ鈍感でちぐはぐな印象を受けた。

その点以外は非常に面白く一気に読めた。
次はおそらく短編集かな。楽しみにしてます、ルカさん。
(ところで作中に出てくる犬のレナードは、やっぱり〝レナードの朝〟から来てるのかな?)



それにしてもプロメテウスとかアトラスとかイクシオンとか。。。
ギリシャ神話の神様って皆揃いも揃って拷問されまくりだよな。。。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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