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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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もっと声を大きくして、
あなたに言えば良かった。




顔の左側をおおったアザ。
からかいの対象にされ、恋愛はあきらめていた。
けれど、映画監督の飛坂逢太と出会い、世界がカラフルに輝きだす。
24歳にして恋愛経験値ゼロの理系大学院生アイコ。
女性に不自由しないタイプの飛坂の気持ちがまったくわからず、
時に暴走したり、妄想したり、大きく外したり。
一途な彼女の初恋の行方は…!?
切なくもキュートなラブ・ストーリー。

***

鈍感、なんだと思う。
彼女の周りの人間が言うみたいに、「堂々としている」とかじゃなくて。
顔のアザにも負けないぐらい恋愛に一途、というよりは、
そこまで深く自分のアザのことを捉えてないから相手に積極的になれる、
そんな気がした。

付き合っているのに片想いみたいだ、って気持ちは
誰しも経験したことがあると思うし私ももちろんあるので
本作は読んでいてひりひりしたし主人公のアイコと一緒に傷ついたり怒ったり
嫉妬したりと気持ちが休まる暇がなかった。正直読んでいて苦しかった。

クサい部分もあるにはあるしご都合主義な展開も散見されるのだけど
それでもラストには感動したし、
傷を負っているからこそ相手の傷をも理解し受け入れることが出来る、
そんなことも改めて知って自分の欠点を誇らしく思うことさえ出来た。

おすすめです。
やっぱり島本理生さん好きだ。
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奇跡への願いを込めて。



11歳の少年ハンス・クリスチャン・アンデルセンは、
海の国から来た人魚の姫という少女セレナと、
風変わりな旅する画家ルートヴィッヒ・エミール・グリムとともに、
王子殺害の真犯人を追う!
現実と童話が錯綜する世界を舞台に描く、新感覚ミステリ。

***

童話「人魚姫」を読んで、
「こんな不条理な話があるか」と苛立ったことのあるひとには
小気味いい一作。
あの童話を新解釈でミステリにしてしまう北山氏の手腕はさすが。
もともとファンタジックな作風の彼に童話をリメイクさせたら
こんな風になるのだな、こりゃ誰も敵わないなあと感心させられた。
もちろん北山ファンお待ちかねの物理トリックも出てきます。
ただ、いつもの「城」シリーズに比べるとその仕掛けはごくシンプルだけど。

本作はタイトルがそのまま「人魚姫」なので、
「この童話面白いよ」とか言いつつそのへんの本好きな小学生に
読ませてみたい気がする。
本物の童話に触れる前に、その子供が一番に触れる「人魚姫」を本作にしてみたい。
それはそれで面白いんじゃないかと思った。

ちなみに童話「人魚姫」の原作者は、言うまでもなくアンデルセンです。
ワイパー動くよ。



大学生の望月良夫は愛車のデミオ運転中に、
偶然会った女優の翠を目的地へ送り届けることに。
だが翌日、翠は事故死する。
本当に事故だったのか?
良夫とその弟で大人びた小学5年生の亨は、
翠を追いかけ回していた芸能記者・玉田と知り合い、
事件に首を突っ込み始める。
姉、母まで望月一家が巻き込まれて、謎は広がるばかり――。
朝日新聞夕刊の人気連載が待望の単行本化。
物語の語り手はなんと本邦初! ?の「車」。
町を走る様々な車たちの楽しいおしゃべりが全編にさんざめく、
前代未聞のユーモアミステリーにして、 のんきな長男・大人びた弟…と
個性的なキャラが揃った家族の暖かいエピソードに溢れた、
チャーミングで愛すべき長編家族小説!

***

うちでは過去に二回車を売ったことがあるのですが、
その車たちがいなくなることに寂しさを感じ涙が出そうになった覚えがあります。
見た目が生き物っぽいし動くし一緒に行動するし、
無生物でも彼らは立派な人間のパートナーなんでしょう。

なので車が語り部の本作には非常に感情移入することが出来た。
主人公のミドデミ(緑のデミオ)がとにかく可愛い。
ほかの車の登場人(?)物たちも個性があって、皆人間が大好きで、
読んでいてとにかく愛着が湧く。
渋滞に巻き込まれたミドデミの周りに何故かやたらとクラウンが多くて
ミドデミが笑いを堪えるシーンでは思わず一緒に吹き出しそうになったし、
序盤から登場するブルーバードの活躍シーンも気分が爽快になった。
著者の伊坂氏が何故主人公に緑のデミオを選んだのかがわかるラストでは、
ミドデミの、持ち主である望月家の人間たちを想う気持ちに思わず涙が滲んだ。
そしてあの小気味よくも感動的なエピローグ。

いい歳して読むと伊坂氏の小説はちょっと子供っぽいきらいがあるのですが、
それでもやっぱり好きで新作が出るたびに手にとってしまうのは
伊坂氏の人間を見る目が優しくて温かくてそれがとても心地いいから。
今回はその「人間」を語るのが同じ人間ではなく「車」ということで、
より一層伊坂氏が人間の悪い部分も受け入れ、肯定的に描写するという在り方が
際立っているように感じた。

車の免許をとろうとしているひと、もしくは取得したひとに、
プレゼントとして渡したい本です。
本作は車を運転するひとなら誰でも確実に楽しむことが出来る。
そして自分の車に今まで以上に愛着が湧くに違いないと思う。

おすすめです。
果てもない修羅に落ちていく。



「あなたは前世で私の恋人だったの」。
謎の少女・小織の一言を手がかりに、失った記憶を探し始める。
自分は一体何者だ? 姉はなぜ死んだ?
レイプを繰り返す警官・鷲尾、
秘密結社“夜叉の爪”を追う公安刑事・久我、
記憶喪失の〈僕〉が、錯綜しながら驚愕のクライマックスへと登りつめる、
若き俊英の傑作本格ミステリー。

***

ショックだ。。。
敬愛する貫井氏の小説なのに読み進めるのが苦痛だった。。。

貫井氏ならではの絶妙な構成力が本作では鳴りを潜めまくり、
最後に絡むと思っていたエピソードたちもろくに絡まないままジ・エンド。
まあ結局「転生は実はあったんだよ」と言いたかったのでしょうが、
それにしても小織が出てきた意味はあったんだろうか。。。
&ラスト一行で読者を驚かせたかったんだろうけど、それも早い段階で
オチには気付いてしまったし。

そして、暗くて陰鬱な描写も突き抜ければ面白いけど
本作のそういった描写は変にリアルで悪い意味で生々しいので
読んでいて気分が荒んで鬱になってしまい純粋に楽しめない。
そういや読書家の知人も、貫井氏の小説にはそういうところがあるから
あまり好きじゃないって言っていたな。

まあいろいろ書いたけど、ひと言で言えば「つまらない」。
あまりおすすめしません。
タイトルに反して「修羅」まったく終わってないし。
私にとってそれは、目まぐるしく姿を変える万華鏡か、
あるいは様々な色の光を乱舞させるプリズムのようだった。




小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。
彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、
事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……。
万華鏡の如く変化する事件の様相、幾重にも繰り返される推理の構築と崩壊。
究極の推理ゲームの果てに広がる瞠目の地平とは?
『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んで話題を呼んだ衝撃の問題作。

***

うーん。。。
「見る角度によって導き出される答えは違うんだよ」
ということをプリズムにたとえたのはもちろんわかるのだけど、
ただそれだけというか。。。
やはり読者としてはたったひとつの「光」を著者に提示してほしかったというのが
本当のところ。
途中までの経過はとても面白いのですが、それはもちろん
ラストで明確な解が提示されると信じていればこそで、
それが結局最後まで曖昧なままではあまりに物足りなかった。
貫井氏はいい意味で結論を読者に委ねるつもりだったのだろうけど、
読めと言われている行間の量があまりに多すぎて途方に暮れてしまった。

繰り返しますが、こんなオチのないオチが待ち構えていると知るまでは
面白かっただけに残念。

貫井作品の中ではあまりおすすめしません。
文章は相変わらず、ひと針ひと針丹精込めた縫物のように繊細で丁寧で
とても読みやすかったのでそこは評価するけれど。
願わくば、黄昏の向う側へ行けますように。



信州の名家、新羽家の先代、堂市が変死。
東京から葬儀に訪れた孫の医師、桂木優二は、
自殺と判断されたその死に、不審感を抱く。
葬儀の直後、遠縁の画家、滝見伸彦が転落死。
さらに新羽家当主の妻、佳織が失踪する。
生前の滝見が白昼夢のように見ていた「妖精」に、
連続する事件解決の鍵があると考えた桂木は、
米国ボストンに暮らす心理学者のトーマ・セラに、
調査への協力を依頼する。
トーマは「妖精」の真実に辿り着けるのか!?――。

***

正直評価は低いです。

不自然に都合よく進む推理、
何の驚きもない真相、
理解不能な人々の心理描写、
そしてところどころに不必要に挟まれる薀蓄。
巻末に参考文献が山と載っていますが、
それらを読みすぎてこんなまとまりのない物語になってしまったんじゃないのか、と
思わずにはいられない。
会話文より地の文が多くて読むのが面倒になることもたびたびあったし。

私の敬愛する島田荘司氏主宰の文学賞の受賞者だからと
期待して読み進めましたが本作から満足を得られることは出来なかった。

おすすめしません。
それこそが――神のゲームの、ルール。



天才建築家・驫木煬が山奥に建てた巨大な私邸“眼球堂”。
そこに招待された、各界で才能を発揮している著名人たちと、
放浪の数学者・十和田只人。
彼を追い、眼球堂へと赴いたライター陸奥藍子を待っていたのは、
奇妙な建物、不穏な夕食会、狂気に取りつかれた驫木…
そして奇想天外な状況での変死体。
この世界のすべての定理が描かれた神の書
『The Book』を探し求める十和田は、
一連の事件の「真実」を「証明」できるのか?
第47回メフィスト賞受賞作。

***

平成も25年になったこの時代に
〝読者への挑戦〟が表記されたバリバリの本格推理に出会えるとは。
嬉しかった。
しかも綾辻行人氏や島田荘司氏が書くような所謂〝館〟もの。
本格ファンには垂涎ものです。

ただいかんせん、私はメフィスト賞受賞作を読みすぎており
それらがたどるおおよその筋道が見えてしまっているので、
本作のトリックにも最後の最後で明かされる「驚愕の真相」にも
予測がついてしまったのが残念。
本作がメフィスト賞受賞作だということを知らないで読めば
きっともっともっと楽しめたのにな。

でも、若干ラノベっぽい文章はさておき、
これでもかというぐらいエンタメエンタメしている物語なので
一気に読み切ることが出来た。
眼球堂に集う天才たちは皆天才性があまり描かれておらず肩すかしだし、
最後でヒロイン・陸奥藍子が語っていたことは
正直物語に無理やりに辻褄を合わせるための言い訳にしか思えなかったけど、
そんな瑕疵にも眼をつぶってしまえるぐらい
本作は楽しませてもらった。

同著者の次回作が夏には刊行されるとのことで
今からとても楽しみ。

非常におすすめです。
ミステリファンの方は、是非。

蛇足:
本作のあるトリックが、去年書き上げて
今月中に応募しようと思っている拙作のトリックと被っていて
ちょっと動揺していたりします。。。
「既存のトリック」とか烙印を押されて落選しないことを、そして
万が一受賞できても2chあたりで「パクリだ」と糾弾されないことを
祈るばかりです。
私は元気。
そっちは、元気?




昼間はOLにして鍵穴からの観察者、ミス・ブースカ。
夜は街角の婚活占い師として人気の、ミス・アンジェリカ。
女達の悩みのエネルギーを換金するために始めたインチキ占いだったが、
いまやこの街角には、様々な悩みを抱える人々が集ってくる。
恋愛相談をはじめ、結婚運や仕事運、さらには
不倫関係まで悩みは尽きることがない。
だがまれに一風変わった悩みを持ち込まれることがある。
隣でキャンドルを売る誠司のおせっかいもあり、
度々それぞれの事情に巻き込まれてしまい――。

***

知人の作家、成田名璃子さんの最新作。
ユーモア溢れるやわらかい文体はそのままに、
デビュー作〝月だけが、私のしていることを見下ろしていた。〟に登場した
ミス・ブースカこと田中花子が魅力的なキャラ全開に大活躍します。
〝月だけが~〟がラブストーリーメインだったのに対して、
本作は田中花子と彼女のよき相棒で想い人?でもある誠司のコンビが
街角で知り合った人間たちと関わることでごたごたに巻き込まれるという
コメディ色が強い。
けれどすべてハートフルな形に帰結するので(最終話を除いて。。。)
収録されているどの話も笑顔で読み終えることが出来る。
ただ、副題に〝ときどき、謎解き〟とありますが、最後のハテナが表わすとおり
ミステリの要素は非常に薄いので、ミステリを期待して読まないほうが吉。

終わり方を見る限り続編が刊行されるようなので、
田中花子が、きなこが、ブースカが、そしてミス・アンジェリカが(すべて同一人物)
いったいどうなってしまうのか、楽しみに続きを待つことにします。

それにしても著者の名璃子さん、普段はのほほんとした可愛らしいひとなのに
ここまで人間観察力(特に女性に対して)が鋭いのはさすがプロ作家というべきか。
「ああ、あるわー、女ってそういうとこあるわー」とか独り言ちつつ敬服してしまった笑

おすすめです。
冒険の予感がした。



物語をつくってごらん。きっと、望む世界が開けるから――
暴力を躱すために、絵本作りを始めた中学生の男女。
妹の誕生で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。
最愛の妻を喪い、生き甲斐を見失った老境の元教師。
切ない人生を繋ぐ奇跡のチェーン・ストーリー。

★収録作品★

 光の箱
 暗がりの子供
 物語の夕暮れ

***

雑誌〝Story Seller〟に収録されていた〝光の箱〟に二編書き足して
連作短編集となった本作。
三つの話が絶妙にリンクし、またそれぞれの話の中に出てくる作中作も素敵で
タイトルにふさわしいとても素晴らしい話に仕上がっています。
全体的にあったかい物語、でもその中にもどきっとさせる仄暗い描写や
ミステリ要素もふんだんに絡んできて、読んでいてさまざまな感情を
味わうことも出来る。

正直道尾氏はそんなに文章のうまい作家さんだとは思わないけど、
言葉というもの、そしてそれが織りなす表現を
とてもよく勉強しているひとだと思うし、
温かな人柄が滲み出る作風は相変わらずとても好き。

おすすめ。
クリスマスプレゼントに送られたら「このひとセンス最高だな」と
私なら思う、そんな一作です。
他人ではなく自分のために。



孤独に暮らす老婆と出会った、大学生の総司。
家族を失い、片方の目の視力を失い、貧しい生活を送る老婆は、
将来を約束していた人と死に別れる前日のことを語り始める。
残酷な運命によって引き裂かれた男との話には、総司の人生をも変える、
ある秘密が隠されていた。
切なさ溢れる衝撃の結末が待ち受ける、長編ミステリー。

***

舐めてるのかと思う。

と思わず挑発的なひと言から始めてしまいましたが、
本作はとてもプロが書いたものとは思えない。
同著者の著作〝五声のリチェルカーレ〟が非常に面白かったので
最新作の本作も期待して読み始めたのですが、
正直面白い面白くない以前にこれが商品として売られていることに納得がいかない。

まず文章が気に食わない。
笑わせよう、泣かせよう、感動させよう、
物語の端々にそんな著者の意図が恥ずかしいほど垣間見えて(というかモロ見え)、
押しつけ感がひどくて白ける。
展開も強引だし出てくるヒロインも登場した意義がまったくわからないまま
わけわからんままにフェードアウトするし読みにくい漢字は多発するし
懲りすぎてわかりにくい比喩は多いしで、読んでいて多大なストレスを感じた。
ラストは安っぽい三文ドラマみたいだし。
それにあの作中作は一体? あんな体裁で書かれたら読み手は誰もあれが真実だと
信じちゃうだろうに実は嘘って。。。

本をここ数年で1000冊近く読んでいてそれなりに読書眼は培われていると
自負する身として言わせてもらえば、
本作を読んで感動するひとは読書レベルがかなり初心者だと言わざるを得ない。

繰り返すけど、あの〝五声のリチェルカーレ〟を書き得たひとが
なんでこんな駄作を生み出してしまったのか理解に苦しむ。

おすすめしません。
次回作に期待。
プロフィール
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kovo
性別:
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自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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