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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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そして、あの舟が心の中にある限り、僕たちは先へ進むことができる。



大時化の海の遭難事故によって、信頼の強い絆で結ばれた六人の仲間。
そのなかの一人、米村美月が、青酸カリを呷って自殺した。
遺された五人は、彼女の自殺に不自然な点を見つけ、
美月の死に隠された謎について、推理を始める。
お互いを信じること、信じ抜くことを、たったひとつのルールとして――。
メロスの友の懊悩を描く、美しき「本格」の論理。

***

この著者の書くミステリは謎解きがおかしい。
「そんなわけねーだろ。普通はそうしねーよ」という内容のことを
登場人物たちが大真面目に推理するので
読むたびに呆れてため息が出る。
読者でも気付くことに誰もなかなか気づかなかったりするし。
そしてそんな登場人物たちのリアクションがいちいち大袈裟で
読んでいて苛々する。

。。。とこんなにボロクソに書いているのに何で読むのかと言われると、
やはり設定が魅力的だからなんですね。
普通の小説家はまず思い付かないような物語を
この石持浅海という作家さんは持ってくる。
ミステリの部分とか正直いつも詰めが甘すぎだけど
犯行動機なんかがとかく個性的で斬新なので面白くて
新刊が出るたびに手にとってしまう。

本作も、ミステリということに眼をつぶって(つぶったらおしまいだろ、という
突っ込みは置いといて)甘々な視点で読めば
それなりに楽しめると思う。

至高の体験に半端じゃない恐怖体験がオマケでついてくると
大抵の人間は精神の大事な部分をどこかに持ってかれて
虚ろになっちゃうようです。
ハリウッドのアクション映画の主人公たちとかやっぱタフだよな、
そう考えると。
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みんな、ここから生まれたりここで死んだりしている。



恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、
「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、
舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、
親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、
働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、
ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。

★収録作品★

 シャッターチャンス
 本日開店
 えっち屋
 バブルバス
 せんせぇ
 星を見ていた
 ギフト

***

性愛小説は苦手だ。
本作を読んで改めてそのことを思い知った。
第一話〝シャッターチャンス〟は妙齢の女性の心の機微をよく描けているし、
〝せんせぇ〟なんかは年端もいかぬ教え子に心を救われる
男性教師の心情が巧みに描写されている。
でも熟年の男女のセックス描写を初め、
生理的に受け付けないところがあまりに多かった。
(性描写はまったくハードでないにも関わらず)
文章はとてもうまい作家さんだと前から思っていたし
才能があることもわかるけど、好き嫌いでいったら私は本作は好きではない。
本作が直木賞を獲ったことも、「ああ、そう。。。」としか思えない。
「そりゃ獲るだろう」と手放しでも思えないし「これが受賞?!」という
積極的な反発もない。
心に引っかからない物語だった。偉そうながらも
「まあよく書けてるんじゃないスか?」とせいぜい思う程度。
何だろう、ルックスは最高にいいんだけど仕草とか声が何か気に入らない
異性とでも対峙しているような気分だ。
君はいなくなったけれど、君はいつもそこにいた。



良いニュースと悪いニュースがある。
多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。
あるポイントまでは…。

***

ひと言で言えば、親友4人に急に絶縁された主人公が、
好きな女のすすめでその4人に何で自分が縁を切られたのか訊きにいく物語。

耳慣れないカタカナ語の連発とか「それはまるで~のように」みたいな
比喩表現のくささとか著者の過剰にフェミニストな部分が透けて見えたりの部分とか
鬱陶しいところはいっぱいあるのだけれど、
村上春樹という名前を抜きにニュートラルに読めばまあそこそこの出来。
個人的な話になるけれど、私も高校時代・大学時代を通して
「彼らだけは失いたくない」と、本作の主人公・つくるほど緊密な結びつきではないにせよ
思えるグループに属していたことがあり、それを失くすことを想像するたび
恐怖して「どうか彼らを私の元から去らせないでください」と祈ったことすらあるので、
村上春樹氏が本作で言いたいことはよくわかった。
むしろ失くしたくないが故にそこまで思いつめることが出来るのかと
切なさを通り越して空恐ろしささえ覚えた。
何か大切なものに対する混じりけのない純粋な気持ちというのは、
取り換えや誤魔化しがきかないぶん失うかも知れない危機に瀕したときに
心を守る術がなく、下手をすると、いや高確率で精神の破綻を招く。
それほどにかけがえのないものに出会えたことをそれでも喜び共存するか、
失っても致命的な痛手にはならないそこそこ好きなものだけに囲まれて生きていくか。
どちらを幸せに思うかは人間の永遠の命題だと思う。

傑作というほどではないけどまあ楽しめました。
あとは、敢えてぼかされたラストがつくるのハッピーエンドで終わるよう祈るだけ。
いや、「エンド」じゃなく、彼がこれから新たに始まっていくことを。
ドミノ倒しはいったい、どこまで続いていくのか。



「元彼の殺人容疑を晴らして欲しい」
探偵・十村の元に舞いこんだ美女からの依頼。
しかし事件に触れると別の事件に行き当たり、
さらなる別の事件を呼び起こす……。

***

激しくつまらなかった。
貫井徳郎氏は大好きな作家さんだけど、彼の著作の中でも、どころか
この世の小説の中でもかなり低位置にランクするのではという
駄作っぷり。
こんなもの商業出版していいのかというレベル。
この盛り上がらない展開&グダグダのオチに納得いくひとは
果たしてこの世に存在するんだろうか。
「ドミノ倒し」とタイトルをつけるぐらいなら、
ラストに倒れたドミノたちを上から俯瞰したときに
あっと驚く流麗な一枚絵を浮かび上がらせてほしかった。なのに倒れっぱなし。
おとぼけ探偵・十村のキャラにはときどきくすりとさせられるけど、
ウケ狙い感があざとすぎて素直に面白がってやりたくなくなるし、
同じおとぼけ探偵ミステリなら荻原浩氏の〝ハードボイルド・エッグ〟でも
読んでいたほうがよっぽどいい。

まったくおすすめしません。
どうしちゃったんだ貫井氏。
さいごにもう一回ゆっくりはなしをしよう。



幼い「わたし」の視点で、父の恋人の「あなた」を語っていく物語。

***

ここ最近の芥川賞受賞作(チェックしてないものもあるけど)の中ではダントツ。
読んでよかった。感動と興奮でぞくぞくした。
死んだ母親の代わりに来た新しい若い母親、
というものに普通の人間が抱くテンプレートなイメージを
本作の三歳の語り部「わたし」が語る「あなた」が見事に打ち壊してくれる。
ともすれば俗っぽい、不倫なんかしちゃう凡庸な女性なのに、
妙に魅力的に描かれているのはひとえに著者の手腕だと思う。
ミステリ小説並に作中に張られた伏線がラストできれいに回収されていることにも
美しさを感じてぞくりときた。
でも個人的に一番印象的だったのは、
若く将来もあってすぐにでも「わたし」の父親と「わたし」から離れていくと思われた
「あなた」が、「わたし」が大きくなってからもずっとそばにいるのだとわかる
中盤の一文かな。何故かそこの描写にいい意味で全身が総毛だった。
とりたてて派手なシーンじゃないのに。
むしろ著者が見せ場として書いただろう最後の〝格闘〟のシーンが
芝居がかっていてあまり好きになれなかった。うまいな、とは思ったけど。

三歳の少女が父親の恋人を語る、という視点には
どこか切なさのようなものが漂っていてとにかくやられた。
昨今の芥川賞受賞作にありがちな、セックス描写に逃げるところも
本作にはなく満足した。

非常におすすめです。
書籍化が俟たれるところ。
今も自分のすぐ隣で同じ呼吸をしているのがわかる。



東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の
無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、
「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。
マスコミが扇情的に報道し世間が動揺するなか、第二、第三の事件が発生。
やがて被害者は同じドナーから臓器提供を受けていたという
共通点が明らかになる。
同時にそのドナーの母親が行方不明になっていた――。
警視庁捜査一課の犬養隼人は、自身も臓器移植を控える娘を抱え、
刑事と父親の狭間で揺れながら犯人を追い詰めていくが…。
果たして「ジャック」は誰なのか? その狙いは何か?
憎悪と愛情が交錯するとき、予測不能の結末が明らかになる。

***

王道エンターテインメント。
どんな読者でもとっつきやすく読めるスリル溢れる内容に
臓器移植の是非の問題が絡み、単なる娯楽小説を上回るものに
仕上がっている。
ラストでわかる犯人の犯行動機も斬新で、
「そのためにそこまでするか?」とは思いつつも楽しく読むことが出来た。
(ネタバレにつき伏せ字にしますが、
だってねー、医者としてのプライドを守るために
医療ミスが露見しないよう犯行に及んだ
って言われても、
本当に医者のプライドがあるなら患者の命を無闇に奪うことこそが
最大のタブーだと思うのに)

敢えて言うなら主人公の犬養のキャラがちょっと弱かったのが不満だったかな。
同性の嘘は何でも見抜ける、という特技があまり活かされていなかったし、
最後の犯人の取り調べではさすがにその能力が発揮されるのかと思いきや
それも肩透かしだったし。
彼の相棒の古手川のほうがよっぽどキャラが立っていた。
そして内容には関係ないけど登場人物たちの名前が懲りすぎていて
やや鬱陶しかった。もっと普通の名前でいいじゃないかと。
あと最後に、犬養と彼の娘とのやり取りは物語の要となるのだから
あともうちょっと掘り下げて描写してほしかった気がする。
彼らの確執や絆の描き込みが若干足りない気がしたので。

でも良質なミステリで楽しめました。
ラストシーンはちょっと切なくて好きです。
わたしについて。
それからあなた、あなたにも。



『ヘヴン』『すべて真夜中の恋人たち』と一作ごとに新境地を拓く川上未映子の
多彩な魅力が一冊になった初めての短編小説集!
何気ない日常がドラマに変わる瞬間をとらえて心揺さぶる7ストーリーズ。

★収録作品★

 アイスクリーム熱
 愛の夢とか
 いちご畑が永遠につづいてゆくのだから
 日曜日はどこへ
 三月の毛糸
 お花畑自身
 十三月怪談

***

純文学のおおよその常として、物語らしい物語が展開するわけではなく
むしろ文章を通して著者のものの見方、考え方なんかが
垣間見える、そのことを楽しむためにあるような短編集ですが、
表現の一つひとつが「なるほど、それをそう表現するかあ」と
唸らされるほど斬新で個性的で、自分の中にある名づけがたい感情や感覚に
明確に名前を付けてもらったみたいで、読んでいてとても気分がいい。
言葉なきものに言葉を与えてもらったことに、感動で震えがくることすらあった。

〝十三月怪談〟なんかでは、
主人公の語りがどんどん無邪気で透き通ったものになっていくことを表現するのに
漢字がどんどん開かれてやわらかなひらがなのみの表記に
実にナチュラルになっていくくだりなんかに著者のさり気ないセンスを感じて
ぞくっとした。

主に口語体で書かれた短編集なので
カチカチの文語体が好きなひとには向きませんが、
でも楽しめました。
やっぱり純文学っていいな。

川上未映子さん、エッセイばっかりじゃなくて
もっとこうして小説を発表してほしい。

おまけ:
本作のタイトルにもなっている、リストの「愛の夢」。

あんな女は、殺すにも値しない。



富豪の若き一人娘が不審な事故で死亡して三カ月、
彼女の遊び仲間だった男女四人が、
遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた。
なぜ? そもそもあの事故の真相は何だったのか?
四人が死にものぐるいで脱出を試みながら推理した意外極まる結末は?
極限状況の密室で謎を解明する異色傑作推理長編。

***

本格ミステリの傑作と言われている本作を今更読む。
嫌な予感はしていたのだけど、そういった所謂「名著」は、
その後さまざまな作家がそのスタイルを踏襲してしまっているので
正直目新しさはなかった。
でもリアルタイムで読んだとしたらその斬新さは相当なものだったろうなと
いうことだけはわかる。
某推理漫画に同じトリックが出てきたので、
本作のトリックはすぐにわかってしまったのだけど、それも
もし件の某漫画を読んでいなかったら素直に感嘆出来たろうにと
本作が出たてのころに出会えなかったことが悔やまれてならない。

ネタバレにつき伏字にしますが、
ラストで雄一と鮎美がくっつくのはB級のハリウッド映画みたいで
安っぽくてどうかと思ったけど、
そしてせっかく核シェルターに閉じ込められているのだから
そこに閉じ込められている緊迫感みたいなものをもっと描写して
ほしかったけど、
前者は時代のせい、後者は本格に必須のクローズド・サークルの
変形という単なる舞台装置に過ぎなかったのだ、ということで
眼をつぶることにします。

なかなかに楽しめました。
ミステリ初心者にはおすすめ。
エンタメ性が強いので娯楽大作とか好きなひとにもおすすめです。


2012年に国内で発表された数百の短編から、
日本推理作家協会が選び抜いた、短編推理の決定版。

★収録作品★

 
 父の葬式/天祢涼
 本と謎の日々/有栖川有栖
 機巧のイヴ/乾緑郎
 青い絹の人形/岸田るり子
 ゆるやかな自殺/貴志祐介
 妄執/曽根圭介
 宗像くんと万年筆事件/中田永一
 悲しみの子/七河迦南
 探偵・竹花と命の電話/藤田宜永
 青葉の盤/宮内悠介
 心を掬う/柚月裕子
 暗い越流/若竹七海

***

◆父の葬式◆

本編が収録されている単行本は読んだことがあったので再読。
うまいです。派手な話ではないけれど綺麗にまとまっている。
S県でしか葬儀が行われない世界という特殊な設定もいい。
しみじみくる話。

◆本と謎の日々◆

起承転結はなくのほほんと進む物語ですが、
ちっちゃな手品をいくつか見せてもらったような楽しい気分で
作中に仕掛けられた謎を読み進めることが出来る。
本当にありそうな話なところがいい。
有栖川氏は本当に文章が読みやすくて面白くて
好きなミステリ作家のひとりです。

◆機巧のイヴ◆

時代物は苦手なんだよなあ。。。と思っていたら
機巧(要するにロボット)が出てきて「お?」と思い、
ラストではこれが切ないラブストーリーだとわかって
しみじみとした感動とやるせなさに包まれた。
傑作だと思う。
時代物を読んで感動したのはこれが初めてかも知れない。
やるな乾氏。

◆青い絹の人形◆

それなりにまとまっているけれど、好きになれなかった。
読者を置いてけぼりにせんばかりにどんどん進む物語、
三流ドラマのような展開、
挙げ句拳銃の発砲音が「ズギューン」って。。。ダサすぎ。
これが日本推理作家協会賞短編部門最終候補作って。。。センス疑う。
この著者の作品は読まないでしょう。

◆ゆるやかな自殺◆

ごく単純なトリックがここまでのミステリに仕上がるのは
さすがベテラン貴志氏ならでは。
〝硝子のハンマー〟の榎本に再会出来るのも嬉しい限り。
何かの中毒のひとが読むとぞっと出来るかも。

◆妄執◆

ある意味バカミスだと思う(←褒めてる)。
ここまで突き抜けてるといっそ痛快。ラストは腹抱えて笑った。
小説というのは主人公の目線で世界が見えるものだけれど
そのこと自体をトリックにしてしまうこの著者は
やはり感性がほかの作家と一味違っているんだろう。面白い。

◆宗像くんと万年筆事件◆

乙一氏だとわかって読むと確かに乙一テイストなんだよな、
作風も文体も。
相変わらず、一見とぼけているようでいてミステリ的伏線の張り方と
その回収の手腕は見事です。
ラストの切なくてあったかい感じもいい。
乙一氏とか伊坂幸太郎氏とか道尾秀介氏は
ひとを見る目が温かくて読んでいて癒されます。
もちろんそれだけでは済まない毒がふんだんに含まれているところが
好みなんだけど。

◆悲しみの子◆

既読につきこちらを参照。

◆探偵・竹花と命の電話◆

極めてオーソドックスなミステリ。
孤独=寂しい、という世間に浸透した概念を
さり気なく覆してくれる内容には気分がすっと楽になるようだった。
確かに(余談ですが)私も孤独が大好きで独りの時間を満喫していた時期が
ありました。

◆青葉の盤◆

囲碁とか碁盤とか興味ないしなー、と思いながら読むうちに
ふと気づけばその世界観にのめり込んでいた。
伏線の張り方も絶妙で物語としても素敵な余韻を残す、
良作です。

◆心を掬う◆

既読につきこちらを参照。

◆暗い越流◆

これは日本推理作家協会賞短編部門最終候補に
残るだろうなーと思ってみてみたら本当に残っていた。
ベテランならではの、コミカルながらも読み応えもインパクトもある
ミステリ。
「優佳。じゃあね」



新学期、横浜にある女子高の特進クラスで
上杉小春は碓氷優佳という美少女に出会う。
おしゃべりな小春とクールな優佳はやがて親友に――。
二学期の中間試験で、東海林奈美絵が成績を急上昇させた。
どうやら、夏休み中にできた彼氏に理由があるらしい。
だが校則では男女交際は停学処分だ。
気をもむ小春をよそに平然とする優佳。
奈美絵のひと夏の恋の結末を優佳は見切ったようで…(「夏休み」)。
教室のどこかで、生まれ続ける秘密。
少女と大人の間を揺れ動きながら成長していく
きらめきに満ちた3年間を描く青春ミステリー。

★収録作品★

 赤信号
 夏休み
 彼女の朝
 握られた手
 夢に向かって
 災い転じて
 優佳と、わたしの未来

***

〝扉は閉ざされたまま〟のヒロイン・碓氷優佳の高校時代が描かれた本作。
著者コメントのとおり、単独でも普通に読めますが、
碓氷優佳シリーズを読破してからのほうがより楽しめます。
「ああ、優佳が気になってる男性ってあの作品に出てくるあのひとなんだろうな」
「後にあんな女性になる優佳のヤバい人格の片鱗が今から垣間見えてるな」
といった具合に。

内容としては、〝夏休み〟だけは
「そりゃないだろ。それとこれとは別だろ」と真相に突っ込みを入れましたが
それ以外はそこそこ楽しんで読めた。
「~じゃんか」という台詞がやたら出てくるのに
「この時代の女子高生はこんな言葉遣いしないだろ」とも思いましたが
まあそこも眼をつぶるとして、小粒ながらも楽しい本格推理短編集だった。
突っ込みどころは多いもののこの石持浅海さんという作家さんは
非常に独特な物語を展開するひとなので、
どんな微妙な作品を書こうと新作が出るとやっぱり手に取ってしまう。
なんだかんだ言って好きなんでしょう。

少女たちの青春期を舞台に描かれる爽やかなミステリ、
と思いきや、終わりはちょっと不穏です。
物語の語り部である上杉小春が、何故碓氷優佳シリーズに
優佳の親友として出てこないのか。それがわかるラストには
昏い感動を呼び起こされました。

なかなかおすすめです。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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