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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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善意をもって行えば徳となり、悪意をもって行えば毒となる。



話題作『切り裂きジャックの告白』の犬養隼人刑事が、
“色”にまつわる7つの怪事件に挑む連作短編集!
人間の奥底に眠る悪意を鮮烈に抉り出した、珠玉のミステリ7編!

★収録作品★

 赤い水
 黒いハト
 白い原稿
 青い魚
 緑園の主
 黄色いリボン
 紫の献花
 
***

〝切り裂きジャックの告白〟を読んでいなくても
楽しめる短編小説集です。
序盤はオーソドックスな構成のミステリで魅せ、
途中から変化球モードで様々な仕掛けを施してくる
中山氏の筆力に飽きることなく一気に読める。
ある程度ミステリを読んでいる人なら
各話の真相とか犯人とか簡単に見抜けてしまうと思いますが、
徹底してエンタメしているので肩に力を入れず気楽に楽しめば
いいんじゃないかな。
〝白い原稿〟には、作家デビューした某有名俳優の壮絶なパロディに
「やっぱプロ作家も彼の作品とデビュー方法には疑義を呈したいんだなあ」
とちょっとフフっとなってしまった。殺されるのはまあやりすぎだけど。

中山氏の代表作〝さよならドビュッシー〟は超せていませんが
それなりに楽しめる一品。
内容はシンプルなものが多いですがミステリ好きでも
「陳腐だなあ」とは笑い飛ばしたりせずに読めると思います。
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もっとずっとシンプルなルール。



一人の女性の一生を、3歳、16歳、28歳、34歳、47歳、63歳の
それぞれ一日を描いた6編を連ねて構成する長編小説。
「いつか自分が心から一緒にいたいと思える相手に出会えることを
夢見て生きる女性の人生を、「6日間」で鮮やかに切りとる。
前作『嵐のピクニック』で大江健三郎賞を受賞、
いま最も注目される新鋭女性作家の最新作!

***

何だか自己啓発本みたいなタイトルですが、
れっきとした小説です。
とてもよみやすい文体で書かれていますが純文学なので、
オチらしきオチ、物語らしき物語が展開されていないと
読みつけない、というひとは読まないほうが可。

全編を通して書かれているのは
「思うような人間とめぐり会えなくても人生は続いていく」
ということで、読んでいて楽しい気分のものではありません。
主人公・リンデの孤独がリアルに描かれていて胸が痛いし。
現代社会は親友や恋人のいないひとが多いというけれど、
さもありなんと思わせるような内容だった。

47歳と63歳のエピソードの間に3歳のエピソードを挟んだのは
うまいなと思いましたが、もうちょっとひねりがほしかったかな。
って純文学ってひねるとかそういうものじゃないんだろうけど。

やっぱり本谷有希子さんは「生きてるだけで、愛」「江梨子と絶対」
みたいな爽快な話のほうが向いている気がする。
こういうオトボケ風味ながらも重いのはちょっとな、と
思わされました。
確かに、何かが、そこには、ある。




容疑者は名探偵!?
鍵形の館で同時発生した二つの密室殺人事件!

Y湖畔に伝説の建築家が建てた、鍵形の館――「双孔堂(ダブル・トーラス)」。
館に放浪の数学者・十和田只人(とわだ・ただひと)を訪ねた、
警察庁キャリアの 宮司司(ぐうじ・つかさ)は、
同時発生した二つの密室殺人事件に遭遇する。
事件の犯人として逮捕されたのは…… 証明不可能な二つ孔の難問、
館の主の正体、 そして天才数学者たちの秘められた物語を解く鍵は!?
メフィスト賞『眼球堂の殺人』を超えた、シリーズ第二弾!

***

眼球堂は超せていない。
どころか単体として見てもどうかという出来。

語り部である宮司のシスコンっぷりは
後の伏線のためとはいえキモいし、
作中の数学ウンチクはウンチクというより
ただ難しい言葉を羅列してみましたというだけで
いくら雰囲気を出すためとはいってもやりすぎ感が否めないほどウザいし、
事件の真相は安っぽい二時間ドラマだし。
ツクルなんて人物が出てくるから村上春樹氏へのオマージュかと思ったら
そうじゃないし。
本作は本作でしっかりまとめりゃいいのに
「はい続きは次回~」っていろんな伏線を韜晦しっぱなし
投げっぱなしジャーマンだからすっきりしないことこの上ないし。

苦言を呈したくなるクオリティでした。
それでも次が出たら読むだろうけど、それもつまらなかったら
考えるな。
また大地が私たちを試そうとしている。



私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった――。
大地はまた咆哮をあげるのか?
震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。
原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、
巨大地震が襲う。
来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、
カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。
極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版「罪と罰」。

***

大地震が既に起き、そして近いうちにまた起きることがわかっている
世界が舞台の物語。
あの震災以降、作中に地震のことを書く作家は増えてはいたけれど、
ここまでド直球に地震そのものを小説にしてしまう作家さんは
初めて見たように思う。
直接震災を経験したわけではないのにこんな話を書いてしまう勇気、
というか自信は、やはり芥川賞作家ならではなんだろうか。

肝心の内容は、大震災によって荒廃した世界観は
まあまあよく描かれているけれど(文化の非統一感はあるけれど)、
人間の書き込みが足りずどのキャラもいまいち印象に残らない感じは
受けた。
あと作中に「絶望」という単語が何度か出てくるのだけれど、
その使い方が陳腐にも感じた。
やはりこういった世界を描くのは相当に難しいのだと
読んでいて思わされた。
私は東日本大震災の被災者なので(直撃した地域に比べれば
全然被害は少なかったけれど、街中の電気が停まり交通も
ストップした)読んでいて
「いや違う、あの地震はこんなものじゃなかった」と感じることが
多かった。

逃れようもなく恐ろしいものに対峙してしまった、
その傷を癒せないまま抱えて「再発」に怯え生き続ける、
そんな恐怖はよく伝わってきたけれど。
たぶん綿矢さんにもそういう経験が少なからずあるんだろうな。

ラストは微妙でした。
というかありがち。
セックスして「それでも人間は生きていく」みたいな終わり方って
どうなんだろうねー。確かに性行為は生の根源だけどもさ。

とかいろいろ書きましたが嫌いじゃないです。
まあおすすめかな。
震災に実際に罹災したひと以外には。
〝虚ろな闇〟が口を開ける。



1998年、夏休み――両親とともに海辺の別荘へやってきた見崎鳴、15歳。
そこで出会ったのは、かつて鳴と同じ夜見山北中学の三年三組で
不可思議な「現象」を経験した青年・賢木晃也の幽霊、だった。
謎めいた古い屋敷を舞台に――死の前後の記憶を失い、
消えたみずからの死体を探しつづけている幽霊と鳴の、
奇妙な秘密の冒険が始まるのだが…。

***

先が読めちゃうんだよなー。。。
というわけであまり面白くなかった。
文章もやたらに詩的で改行が多く、もっとカチカチの文体を期待してる身としては
微妙だったし。普段の綾辻節のほうがよかった。
(まあアナザーシリーズはそういう部分が元々あったけど。。。)
ホラーよりはミステリの範疇に入るけど、ミステリとしての出来は
正直あまりいいとは思えない。
アナザーがよかっただけに続編の本作は肩透かしでした。残念。

そしてあとがきで綾辻氏が〝エピソードS〟の〝S〟の意味について
語っていますが、もっと的確な意味づけがあるだろう、と思ってしまった。
ほら、たとえばあのひとの。。。
その年、私は生涯忘れられない出逢いをした。



豆を手にすれば恋愛成就の噂がある、東大寺二月堂での節分の豆まき。
奈良の女子大に通う「私」は、“20年間彼氏なし”生活からの脱却を願って、
その豆まきに参加した。
大混乱のなか、豆や鈴を手にするが、鈴を落としてしまう。
拾ったのは、狐のお面を被った着流し姿の奇妙な青年。
それが「狐さん」との生涯忘れえない、出逢いだった――。
第46回メフィスト賞受賞作。

***

ただ主人公の女の子が偶然出会ったふたりの男女と
奈良の名物行事めぐりをするだけの話なのですが。。。
描写がコミカルなので楽しく読める。
〝神様のカルテ〟シリーズみたいな独特のほんわかとした文体は
とても馴染みやすい。

けれど。。。
これがメフィスト賞?
これがメフィスト賞?(二回言ってみた)
ほかの賞なら普通に「良作だったなー」で終わったけど、
よりにもよってあの賞の受賞作というのが信じられない。
尖ったところも毒もない。
強いていうならラストがちょっと予想外だったけど、それだけ。
メフィスト賞受賞作に特別な期待と思い入れがある
私のような読者は納得がいかなかったのでは。
だって悪く言えば凡庸すぎるし、この物語。
ヒロインの恋心も唐突なら狐さんのあの騒動も唐突すぎる。

編集部員の入れ替えがあって女性編集者が多くなってから
奇抜なものよりロマンチックなもののほうが受賞するようになった、
というのはもしかしたら本当なのかも知れません。

メフィスト賞受賞作ってことを抜きにしたらおすすめなんだけどね。
すばるあたりだったら納得いったのに。
そのへんだけが未だに腑に落ちないところです。
私たちは、絶対にまた、私たちみたいな人に出会える。



「青葉おひさまの家」で暮らす子どもたち。
夏祭り、運動会、クリスマス。そして迎える、大切な人との別れ。
さよならの日に向けて、4人の小学生が計画した「作戦」とは……?
著者渾身の最新長編小説。 直木賞受賞後第一作!

***

良作だと思います。
思うんだけど。。。

朝井リョウ氏の作品でここまで読み進めるのが遅くなったのは
本作が初めてかも知れない。
彼ならではの感性、ものの見方が、本作では発揮されておらず、
テーマもありふれたものだったし、そのありふれたテーマを
彼らならではの筆力・センスで色付けしてあるわけでもなく。

偏見かも知れないけれど、直木賞を受賞した作家さんというのは
その後出す新作が著者本人のカラーを薄めたものになっている率が
高い気がする。
私の敬愛する某作家さんも直木賞受賞後第一作が
これまでの個性が掻き消えたものだったし。

児童養護施設をテーマに書かれた物語なら、
七河迦南氏の〝七つの海を照らす星〟から始まる
一連のシリーズのほうが良作だった気が。

朝井リョウ氏の著作は全部読んでいるけれど、
本作はそこまで響かなかったというのが本当のところ。
小中学生の夏休みの推薦図書、みたいな
毒にも薬にもならない印象を正直受けてしまった。

繰り返すけど、決して駄作ではないんだけどね。
もっと朝井氏ならではの、剥き出しのひりついた物語を読みたかった。
戻ってきてほしい。



7日のあいだ対象の人間を観察し、「可」か「見送り」かを判定。
「可」の場合8日目にその人間の死を見届ける存在、死神。
死神の千葉は、娘を殺した犯人を追う夫婦の敵討ちに参加するが…。

***

連作短編集〝死神の精度〟にいたく感動し
この度の満を持しての続編にまっしぐらに飛びついた私。
ここ最近の伊坂作品は論が先に立っているというか、くどくどしくて
敬遠していたところもあありましたが、今回はなかなかどうして
ハリウッド映画ばりにエンタメしていつつもしっかりと深みもあり
楽しく読むことが出来た。

ちょっとご都合主義な展開もあったし
相変わらず既存の文献からの引用も多かったりして
そこは伊坂氏の個性をもっと爆発させてくれよと思いもしたけど
まあ許容範囲かな。
見えない力で善意の人間が悪者に仕立て上げられそうになる、という
展開もちょっと同著者の著作〝ゴールデンスランバー〟とかぶってたけど
本作には本作なりの独自性があったからそこにも目をつぶるとしよう。
何よりラスト、死神とはいえ神様と名の付く存在から
あんな言葉をもらえるなんて、本作のもう一人の主人公・山野辺は
なかなか大した、そして羨ましい人間だな、とぞくりともした。

死神が主人公の話であるせいか、
本作には〝死とは何か〟であるとか死に対する逃れられない恐怖とか
そういうことが割と真面目に書かれていてちょっと重い気持ちにも
させられるけど、
そこはさすがの伊坂節というか救いの言葉もちゃんと書かれているので
恐れず手に取って見てください。

なかなかにおすすめです。
くるくると一緒に回りたい。



ねぇ、銀杏。わたしたちは確かに友達だったよね?
わたしが観覧車の幽霊になって随分時間が経ちました。
この観覧車には変わった人がいっぱい乗ってきます。
盗聴魔、超能力を持つ占い師、自信喪失した女記者、
ゴンドラでお見合いをする美人医師…みんな必死にくるくる生きてる。
だから今、わたしは人を思う力を信じてる。
そうしたらいつかもう一度、あなたに逢えるかな?
これはすれ違う人々の人生と運命を乗せて、回り続ける観覧車の物語――。

***

一人ひとりの登場人物も彼ら各自のエピソードもよく描かれているのですが、
そして思わぬ人物同士が繋がり相互作用し合って
「銀杏」と「千穂」ふたりのヒロインの運命を変えていく描写はとてもいい感じなのですが、
肝心の銀杏と千穂が何故互いをそんなにも大切に想うのかが描かれていないので
千穂がどうして銀杏を好きになり彼女のことを待ち続けているのかもよくわからず
銀杏がどうしてラストで大事なものを犠牲にしてまで千穂のために
あんな行動をとったのかも不明で
彼女たちふたりの絆を描きたいはずだった本作が理解不能の薄っぺらいものに
なってしまっている感じがした。
あと最近気付いたんだけど私はこの著者が作中にちょいちょい入れてくるエロスが
どうも苦手だ。直接的な性描写はなくても、たとえば何かの少女漫画で
よく見ると登場人物全員にわざわざ腋毛が描き込まれているのを発見したような、
もしくは各々のプロフィールに無駄に初体験の年齢が書かれているのを発見したような、
生理的な不快感を感じる。
本作でも「乳首事件」とか出てくるしな。

著者の白河さんは最近乙一氏の称号である「切なさの魔術師」を
奪い取る勢いだと言われているそうだけど、
好き嫌いはあるにせよ私から見ればまだまだ乙一氏には及ばないと思うので
周りが勝手に言っていることとはいえその称号を与えるのはやめにしてほしい。

〝プールの底に眠る〟〝私を知らないで〟はとてもよかったけど
〝角のない消しゴムは嘘を消せない〟と本作はあまりおすすめではないかな。
当たり外れのでかい作家さんだと思う。
必ず来るその日のために。



私たちは何かを失っている。そんな喪失感が確かにある。
この日本という島国に…。
介護に追い詰められていく人々、正義にしがみつく偽善者、
社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説。

***

家族に負担をかけている要介護老人ばかりが
何者かに連続して殺されていく、という物語。
ミステリとしてはシンプルですが、丁寧に練られた内容に
どんな読者でも安心して読み進めていくことが出来ます。

ラストへの伏線のためというのが丸わかりな
主人公検事がクリスチャンという設定や、
シーンが変わるたびに「日付変わって何日後」と入る拙い文章、
更に細かいことを言えば「~している」という文章が「~してる」と度々表記されるのも
未熟さを感じてどうかと思いましたが(葉真中氏は本作がデビュー作)、
本作を書くにあたって念入りに調べ物をしたのが読んでいて伝わってくるので
その熱意で帳消しといったところです。

内容はひと言で言えば「デスノート」。
読めばわかりますが著者は間違いなくあの大ヒットマンガを読んでいると思う。
ので、あのマンガが好きなひとは読んでみると楽しめるかも。

よく「風が吹いて春の訪れを告げていた」とか
「つぼみが芽吹く気配を見せていた」
とかいった爽やかな自然描写でラストを締めくくる小説に出会うことがあり
私は個人的にはこれが大嫌いなのですが、
本作もそう来るのかと思いきやまさかのあのラスト三行。
ぞくりときました。うまい、と思わず拍手を送ってしまったほど。
「ロスト・ケア」というタイトルの意味がわかるクライマックスにも驚かされたし。

総じてよく出来た物語だと思います。
おすすめ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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