理論的には考えられるが、現実的にはありえない――。
男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。
草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。
湯川が推理した真相は――。
***
〝容疑者Xの献身〟に比べるとトリックのインパクトは数段落ちますが、
本作の驚くべき点はトリックや謎解き部分にはあらず。
「そんなのミステリじゃないじゃん」という人もいるかもしれませんが、
こういうサプライズを与えてくれるミステリも斬新でいいのではないでしょうか。
少なくともミステリを死ぬほど読んできた私にも十分に楽しめました。
物語の裏側がすべて明るみに出たとき、トリックがわかったとき以上に驚き、戦慄もした。
ただ惜しむらくは、ヒロインの夫がどうしてそこまで子供を作ることにこだわったかが
不明瞭だった点。そこをもうちょっと詳しく書いてほしかった。
そもそもどうしても子供がほしいなら、結婚したい相手と婚姻手続きを踏む前に
事情を話して子供を産める身体かどうか前もって検査しに行ってもらえば
それで済むことなのに。
そのへんのリアリティの欠如がなければもっといい作品になったのにな、とちょっと
勿体なく思ってしまった。
ところで作中で内海薫刑事がipodで福山雅治を聴いていたのには笑ってしまった。
遊び心あるなあ東野氏。やっぱり大阪出身の人はノリがいいな^-^;
やーでも本作を読了後、タイトルを見返すと「ああ、だからか!!!」と
思い切りはっとさせられます。
島田荘司氏の〝斜め屋敷の殺人〟と同じ衝撃があったな、タイトルと内容のこの関連性には。
ヘタすると内容よりも感動したかも。
まるで時限爆弾にも似た救いの手、差し伸べられたらあなたはそれを握り返しますか?
男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。
草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。
湯川が推理した真相は――。
***
〝容疑者Xの献身〟に比べるとトリックのインパクトは数段落ちますが、
本作の驚くべき点はトリックや謎解き部分にはあらず。
「そんなのミステリじゃないじゃん」という人もいるかもしれませんが、
こういうサプライズを与えてくれるミステリも斬新でいいのではないでしょうか。
少なくともミステリを死ぬほど読んできた私にも十分に楽しめました。
物語の裏側がすべて明るみに出たとき、トリックがわかったとき以上に驚き、戦慄もした。
ただ惜しむらくは、ヒロインの夫がどうしてそこまで子供を作ることにこだわったかが
不明瞭だった点。そこをもうちょっと詳しく書いてほしかった。
そもそもどうしても子供がほしいなら、結婚したい相手と婚姻手続きを踏む前に
事情を話して子供を産める身体かどうか前もって検査しに行ってもらえば
それで済むことなのに。
そのへんのリアリティの欠如がなければもっといい作品になったのにな、とちょっと
勿体なく思ってしまった。
ところで作中で内海薫刑事がipodで福山雅治を聴いていたのには笑ってしまった。
遊び心あるなあ東野氏。やっぱり大阪出身の人はノリがいいな^-^;
やーでも本作を読了後、タイトルを見返すと「ああ、だからか!!!」と
思い切りはっとさせられます。
島田荘司氏の〝斜め屋敷の殺人〟と同じ衝撃があったな、タイトルと内容のこの関連性には。
ヘタすると内容よりも感動したかも。
まるで時限爆弾にも似た救いの手、差し伸べられたらあなたはそれを握り返しますか?
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もしもし、聞こえますか?
母親を刺し殺した“僕”は、自転車で家を飛び出し駅へ走る。
目的地もなく電車に乗り、終点で降りるが行くあてもない。
公園のトイレで自分を殴り、髪を切って自らの風貌を変え、見知らぬ街をさまよう。
やがて所持金が底をつき、空腹が限界に達したとき、わずか3円でパンを譲ってくれたのは
ホームレスのハタさんだった。
誘われるまま“僕”は、経歴を詐称してホームレスたちとテント小屋で生活を共にするようになる。
他人の事情には立ち入らないという暗黙の了解のうえで、なぜか親切にしてくれる彼らに、
“僕”は少しずつ心を開き始めるが――。
***
これは〝生まれることが出来なかった〟少年の物語。
本作の主人公はこの世に〝産まれた〟だけであって〝生まれる〟ことはできなかった。
ただ母親の腹の中から外へと排出されただけだった。
その原因は作品内では特に言及されてはいない。
母親の子の育み方、成長過程での環境、本人の器質・または気質的なもの、
そういった複合要素が複雑に絡み合って、子を生かしたり殺したりする。
まだ母親の胎内に宿っているうちに。そしてこの少年のように、外の世界に出されたあとに。
ラストシーンがそのことを明確に表していると思う。
それにしても、22、3歳の若さでここまで文章がうまいのはすごい。
正直読んでいて自分が小説書く気失くすほど。
二つの異なる情景が読み手の頭の中で交錯し、重なった瞬間の美しさと離れていく際の余韻は、
そこらのプロの比じゃない。
本作がデビュー作である天埜氏、すばる文学賞じゃなく純文学系の(たとえば文藝賞とか
新潮新人賞)賞に送ったほうが更に評価は高かったんじゃないか、むしろ
そっちのほうが作風的に合ってるんじゃないかと思うんだけど
本人はそこらへんどう思ってるんだろ?
すばるはちょこっとエンタメ方向だからな。
何にせよ今後に期待。
彼の実家も結構地元だし、街でばったり会えたらいいなー@
応援します。
母親を刺し殺した“僕”は、自転車で家を飛び出し駅へ走る。
目的地もなく電車に乗り、終点で降りるが行くあてもない。
公園のトイレで自分を殴り、髪を切って自らの風貌を変え、見知らぬ街をさまよう。
やがて所持金が底をつき、空腹が限界に達したとき、わずか3円でパンを譲ってくれたのは
ホームレスのハタさんだった。
誘われるまま“僕”は、経歴を詐称してホームレスたちとテント小屋で生活を共にするようになる。
他人の事情には立ち入らないという暗黙の了解のうえで、なぜか親切にしてくれる彼らに、
“僕”は少しずつ心を開き始めるが――。
***
これは〝生まれることが出来なかった〟少年の物語。
本作の主人公はこの世に〝産まれた〟だけであって〝生まれる〟ことはできなかった。
ただ母親の腹の中から外へと排出されただけだった。
その原因は作品内では特に言及されてはいない。
母親の子の育み方、成長過程での環境、本人の器質・または気質的なもの、
そういった複合要素が複雑に絡み合って、子を生かしたり殺したりする。
まだ母親の胎内に宿っているうちに。そしてこの少年のように、外の世界に出されたあとに。
ラストシーンがそのことを明確に表していると思う。
それにしても、22、3歳の若さでここまで文章がうまいのはすごい。
正直読んでいて自分が小説書く気失くすほど。
二つの異なる情景が読み手の頭の中で交錯し、重なった瞬間の美しさと離れていく際の余韻は、
そこらのプロの比じゃない。
本作がデビュー作である天埜氏、すばる文学賞じゃなく純文学系の(たとえば文藝賞とか
新潮新人賞)賞に送ったほうが更に評価は高かったんじゃないか、むしろ
そっちのほうが作風的に合ってるんじゃないかと思うんだけど
本人はそこらへんどう思ってるんだろ?
すばるはちょこっとエンタメ方向だからな。
何にせよ今後に期待。
彼の実家も結構地元だし、街でばったり会えたらいいなー@
応援します。
暗い場所で眠れ。
天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、
彼はある行動をとる。
二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。
あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。
***
要所要所にははっとさせられる台詞、描写があったりはするのですが、
全体的には模糊とした、テーマの見えづらい物語だった。
出来のあまりよくない純文小説、といったような。
各エピソードも過去にどこかで読んだようなものばかりだし、
この手の純文学的作品になくてはならない
狂的にインパクトのある見せ場がないことにも不満を感じた。
〝まほろ駅前多田便利軒〟でしをんさんの大ファンになり、期待していただけに残念。
「受けた傷は愛情では本当には癒えない」
という言葉の哀しさにはやられましたが。
よくテレビや何かでやっている「誰々の助けがあったから今の自分がいる」
みたいなドキュメンタリー、あれも結局、傷ついた本人が自分の力で回復したんであって
真の意味では他人に助けてもらうことは無理なんだよな。
余談ですが私の友人も、精神的に本当に参っていたときに恋人がアパートに訪ねてくるたび
「頼むから早く帰ってくれ」と内心思っていたそうだし(別に倦怠期とかいうわけでもないのに)。
何で皆こんなに独りぼっちなんだろう。
本作の登場人物たちを見て思いましたが、それは本の中の世界に限らず
言えることなんだろうな。
桜庭一樹さんの〝私の男〟に空気感が似ているので、あっちが好きな人は
読んでみるのもいいかも(私としてはあっちのほうがダントツで好きですが
まあそこは人それぞれだし)。
天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、
彼はある行動をとる。
二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。
あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。
***
要所要所にははっとさせられる台詞、描写があったりはするのですが、
全体的には模糊とした、テーマの見えづらい物語だった。
出来のあまりよくない純文小説、といったような。
各エピソードも過去にどこかで読んだようなものばかりだし、
この手の純文学的作品になくてはならない
狂的にインパクトのある見せ場がないことにも不満を感じた。
〝まほろ駅前多田便利軒〟でしをんさんの大ファンになり、期待していただけに残念。
「受けた傷は愛情では本当には癒えない」
という言葉の哀しさにはやられましたが。
よくテレビや何かでやっている「誰々の助けがあったから今の自分がいる」
みたいなドキュメンタリー、あれも結局、傷ついた本人が自分の力で回復したんであって
真の意味では他人に助けてもらうことは無理なんだよな。
余談ですが私の友人も、精神的に本当に参っていたときに恋人がアパートに訪ねてくるたび
「頼むから早く帰ってくれ」と内心思っていたそうだし(別に倦怠期とかいうわけでもないのに)。
何で皆こんなに独りぼっちなんだろう。
本作の登場人物たちを見て思いましたが、それは本の中の世界に限らず
言えることなんだろうな。
桜庭一樹さんの〝私の男〟に空気感が似ているので、あっちが好きな人は
読んでみるのもいいかも(私としてはあっちのほうがダントツで好きですが
まあそこは人それぞれだし)。
だいじょうぶ。ひとりじゃない。
だいじょうぶ。溶けている。
朝子は、活気あふれる19歳のロックシンガーだ。ライブで人気を集めるバンドを率いている。
騙されて行った京都で、そんな彼らが遭遇する愛と冒険の日々…。
切ない恋心に胸を焦がしたことのある人なら、
自分の不誠実な生き方に後ろめたい想いを抱いて生きている人なら、
読んで涙せずにはいられない、花村萬月、鮮烈のデビュー作。
第2回小説すばる新人賞受賞作。
★収録作品★
ゴッド・ブレイス物語
タチカワベース・ドラッグスター
***
絡みつくような性描写。
咳払い。
赤面(自意識の過剰)。
神という概念。
音楽。
母性。
「とーちゃん」「ねーちゃん」と伸ばす子供の台詞。
花村氏は大好きな作家さんなのですがデビュー作を読むのは初めてで、
それでもやっぱり花村氏を思わせる上記のようなキーワードは随所に散りばめられていて
人の根源はそうそう変わらないものだなと何だか嬉しく思ったり。
ただ、やっぱり文章はどこか若書きで、本作における花村氏の筆致は
どこか金原ひとみさんを髣髴とさせるものがあった。
まあ、暴力&性を描くことが多いという点は似てるからな。
ストーリーとしては、ややご都合主義的な部分が多かったけど、
&主人公の心の動きが読みづらいきらいはあったけど、
デビュー作でここまで書けるのはやはりすごいんじゃないかと思う。
本作で唯一腑に落ちないのは、ヒロインのボーカリストの
「英語の歌では日本人に伝わらない」
と英語の歌詞をわざわざ日本語に直して歌ってみたりするそのスタンス。
私も歌詞はすごく大事なものだと思うけど、歌声やメロディに比べたら
瑣末なものだと思うし、現に本当にいい曲は意味がわからなくても胸を打つから
やはりそのメロディに一番ぴったりはまるリズムの歌詞で歌うのが一番と思う。
もちろん、歌詞を理解した上で聴けば感動もひとしおだけど。
でもヒロインの、かわいくて色気があって男前なキャラは好きです。
ところで本作に登場するシスターテレジアは花村氏の別の作品にも出てくるのですが、
実際教護院で過ごした経験を持つ花村氏のことだから
実在の人物なのかもな、ひょっとしたら。
だいじょうぶ。溶けている。
朝子は、活気あふれる19歳のロックシンガーだ。ライブで人気を集めるバンドを率いている。
騙されて行った京都で、そんな彼らが遭遇する愛と冒険の日々…。
切ない恋心に胸を焦がしたことのある人なら、
自分の不誠実な生き方に後ろめたい想いを抱いて生きている人なら、
読んで涙せずにはいられない、花村萬月、鮮烈のデビュー作。
第2回小説すばる新人賞受賞作。
★収録作品★
ゴッド・ブレイス物語
タチカワベース・ドラッグスター
***
絡みつくような性描写。
咳払い。
赤面(自意識の過剰)。
神という概念。
音楽。
母性。
「とーちゃん」「ねーちゃん」と伸ばす子供の台詞。
花村氏は大好きな作家さんなのですがデビュー作を読むのは初めてで、
それでもやっぱり花村氏を思わせる上記のようなキーワードは随所に散りばめられていて
人の根源はそうそう変わらないものだなと何だか嬉しく思ったり。
ただ、やっぱり文章はどこか若書きで、本作における花村氏の筆致は
どこか金原ひとみさんを髣髴とさせるものがあった。
まあ、暴力&性を描くことが多いという点は似てるからな。
ストーリーとしては、ややご都合主義的な部分が多かったけど、
&主人公の心の動きが読みづらいきらいはあったけど、
デビュー作でここまで書けるのはやはりすごいんじゃないかと思う。
本作で唯一腑に落ちないのは、ヒロインのボーカリストの
「英語の歌では日本人に伝わらない」
と英語の歌詞をわざわざ日本語に直して歌ってみたりするそのスタンス。
私も歌詞はすごく大事なものだと思うけど、歌声やメロディに比べたら
瑣末なものだと思うし、現に本当にいい曲は意味がわからなくても胸を打つから
やはりそのメロディに一番ぴったりはまるリズムの歌詞で歌うのが一番と思う。
もちろん、歌詞を理解した上で聴けば感動もひとしおだけど。
でもヒロインの、かわいくて色気があって男前なキャラは好きです。
ところで本作に登場するシスターテレジアは花村氏の別の作品にも出てくるのですが、
実際教護院で過ごした経験を持つ花村氏のことだから
実在の人物なのかもな、ひょっとしたら。
それは失われた至福感にも似て。
200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは
調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?
一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。
大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる
前代未聞の奇妙な危機とは――。
すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント。
***
〝塩の街〟に続く自衛隊三部作の二作目。
率直な感想。
つまらなかった。
〝塩の街〟のあのクオリティの高さは一体どこへ? と首をひねらざるを得ないほど
終始一貫つまらなかった。
何が言いたいのかもよくわからなかったし。
作中に込められたテーマを無理に読み取ろうとせずに単にエンタメとして読んでも、
出来の悪いB級SFのようでまったく入り込めなかった。
未知の生物との邂逅、その生物と人間たちの間に生じる軋轢、そして分かり合えない寂しさ、
そういった内容のものを読みたいのであれば、景山民夫氏の〝遠い海から来たCOO〟を
読んだほうがよっぽどいいです。
〝白鯨(本作中の宇宙人的存在)〟が人間からの爆撃で複数の単体に散ってしまった際、
それぞれの単体を人間でいう〝解離性同一性障害〟の交代人格に見立てて、
再び一つの〝白鯨〟に戻す、という展開になったときは「おお! 斬新!」と
ハラハラしたものでしたが、そこらへんの具体的な描写もないままいつの間にか白鯨一つに
戻ってるし。一体。。。
(しかも著者、解離性同一性障害の解釈間違ってるし。主人格は常にほかの交代人格たちを
見守る立場(ホスト役)にいるので、ほかの人格が表に出ている間主人格は意識を失くすって
ことはないです)
そしてタツミとミキの恋愛描写。恥ずかしすぎる。勘弁してください。
そりゃジュブナイル向けの小説をいい歳して手にとった私が悪いのかもしれませんが、
読んでてこっ恥ずかしいにもほどがある。
ミキ典型的なツンデレだし。
恋愛描写のサムさと言えば本作ラスト一行も「ああこんな本読まなきゃよかったほんと」と
脱力するに十分なものだったし。
おすすめしません。
十代の子とかは感動できるのかもだけど。
私もそれぐらいの歳のときに読みたかったなあ。。。
200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは
調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?
一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。
大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる
前代未聞の奇妙な危機とは――。
すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント。
***
〝塩の街〟に続く自衛隊三部作の二作目。
率直な感想。
つまらなかった。
〝塩の街〟のあのクオリティの高さは一体どこへ? と首をひねらざるを得ないほど
終始一貫つまらなかった。
何が言いたいのかもよくわからなかったし。
作中に込められたテーマを無理に読み取ろうとせずに単にエンタメとして読んでも、
出来の悪いB級SFのようでまったく入り込めなかった。
未知の生物との邂逅、その生物と人間たちの間に生じる軋轢、そして分かり合えない寂しさ、
そういった内容のものを読みたいのであれば、景山民夫氏の〝遠い海から来たCOO〟を
読んだほうがよっぽどいいです。
〝白鯨(本作中の宇宙人的存在)〟が人間からの爆撃で複数の単体に散ってしまった際、
それぞれの単体を人間でいう〝解離性同一性障害〟の交代人格に見立てて、
再び一つの〝白鯨〟に戻す、という展開になったときは「おお! 斬新!」と
ハラハラしたものでしたが、そこらへんの具体的な描写もないままいつの間にか白鯨一つに
戻ってるし。一体。。。
(しかも著者、解離性同一性障害の解釈間違ってるし。主人格は常にほかの交代人格たちを
見守る立場(ホスト役)にいるので、ほかの人格が表に出ている間主人格は意識を失くすって
ことはないです)
そしてタツミとミキの恋愛描写。恥ずかしすぎる。勘弁してください。
そりゃジュブナイル向けの小説をいい歳して手にとった私が悪いのかもしれませんが、
読んでてこっ恥ずかしいにもほどがある。
ミキ典型的なツンデレだし。
恋愛描写のサムさと言えば本作ラスト一行も「ああこんな本読まなきゃよかったほんと」と
脱力するに十分なものだったし。
おすすめしません。
十代の子とかは感動できるのかもだけど。
私もそれぐらいの歳のときに読みたかったなあ。。。
ひとり欠けたからって、世界は何も変わらない。
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。
彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。その告白に魅せられた二人の胸に
ある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間を見たい」。
由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、
敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。
少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?
***
デビュー作〝告白〟がよくも悪くもうまく書け過ぎちゃったんだよな、この作家さんは。。。
ベテラン作家でさえあそこまでのものを生み出せるのは何十作かに一回、とかなのに。
だからどうしても比べると見劣りしてしまう。比べまいとしてもどうしても比べてしまう。
でも敢えて〝告白〟を意識せずに読んだとしても、あまりいい出来の作品とは
感じなかっただろうと思う。
まず文章の書き方。本作には主人公が二人いるのですが、それぞれの一人称が
〝わたし〟〝あたし〟と違うことに気づくまで、一体誰が喋ってるのかわからなくて混乱した。
全体的な構成もグラグラと安定を欠いていて読みづらかったし。
時事ネタ(政治とかじゃなく)を作中に持ってくるのも、流行に媚びているようで
もうそろそろいいんじゃない?と思ったし(ていうか数年後に読んだら『古っ!』と失笑して
しまうだろ、こんな小説ばかり書いてたら)。
物語の着想は最高に興味をそそるものなのに、今回は中身がそのテーマに
ついていけてなかった感じがした。
二人の少女が友情を復活させるのも、あまりに唐突で「え?」って感じだったし。
FF12のラストの「バルフレアっ!」を思い出してしまった(FF12知らない人すいません&
最近微妙にゲームでのたとえが多くてすいません)。
友人や恋人等のほどほどに近しい人間が死んだことをネタに
悲劇の人ぶって陶酔の涙を浮かべたりなんかしてるバカ野郎は大嫌いなので、
読後は結構スカっとしましたが。
まあでも、実際そんなに好きじゃないからその相手の死に酔えるわけで、
本当に大切な相手だったらそんな余裕とてもないけどな。
(私の知人が幼いころ、「危篤の祖父を見てみたい」と不謹慎ながらも病院へ赴き、
しかし実際に臨終の際の祖父を見たらひどく気分が悪くなって
廊下にへたり込んでしまったそうです)
ちなみに冒頭に出てくる映画〝マイ・フレンド・フォーエバー〟は普通に傑作です。
皆さん是非観てみましょう(実際にはエイズの子じゃなくて友人役の子が
死んじゃったけどね。。。)。
最後に、著者の湊さん、今どき過呼吸起こして頭からビニール袋かぶる人はいませんよ。
余計苦しいんで。正しい処置は紙袋を口にあてて深呼吸、です。
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。
彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。その告白に魅せられた二人の胸に
ある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間を見たい」。
由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、
敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。
少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?
***
デビュー作〝告白〟がよくも悪くもうまく書け過ぎちゃったんだよな、この作家さんは。。。
ベテラン作家でさえあそこまでのものを生み出せるのは何十作かに一回、とかなのに。
だからどうしても比べると見劣りしてしまう。比べまいとしてもどうしても比べてしまう。
でも敢えて〝告白〟を意識せずに読んだとしても、あまりいい出来の作品とは
感じなかっただろうと思う。
まず文章の書き方。本作には主人公が二人いるのですが、それぞれの一人称が
〝わたし〟〝あたし〟と違うことに気づくまで、一体誰が喋ってるのかわからなくて混乱した。
全体的な構成もグラグラと安定を欠いていて読みづらかったし。
時事ネタ(政治とかじゃなく)を作中に持ってくるのも、流行に媚びているようで
もうそろそろいいんじゃない?と思ったし(ていうか数年後に読んだら『古っ!』と失笑して
しまうだろ、こんな小説ばかり書いてたら)。
物語の着想は最高に興味をそそるものなのに、今回は中身がそのテーマに
ついていけてなかった感じがした。
二人の少女が友情を復活させるのも、あまりに唐突で「え?」って感じだったし。
FF12のラストの「バルフレアっ!」を思い出してしまった(FF12知らない人すいません&
最近微妙にゲームでのたとえが多くてすいません)。
友人や恋人等のほどほどに近しい人間が死んだことをネタに
悲劇の人ぶって陶酔の涙を浮かべたりなんかしてるバカ野郎は大嫌いなので、
読後は結構スカっとしましたが。
まあでも、実際そんなに好きじゃないからその相手の死に酔えるわけで、
本当に大切な相手だったらそんな余裕とてもないけどな。
(私の知人が幼いころ、「危篤の祖父を見てみたい」と不謹慎ながらも病院へ赴き、
しかし実際に臨終の際の祖父を見たらひどく気分が悪くなって
廊下にへたり込んでしまったそうです)
ちなみに冒頭に出てくる映画〝マイ・フレンド・フォーエバー〟は普通に傑作です。
皆さん是非観てみましょう(実際にはエイズの子じゃなくて友人役の子が
死んじゃったけどね。。。)。
最後に、著者の湊さん、今どき過呼吸起こして頭からビニール袋かぶる人はいませんよ。
余計苦しいんで。正しい処置は紙袋を口にあてて深呼吸、です。
「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」
「悪魔の手」と名乗る者から、警察と湯川に挑戦状が届く。
事故に見せかけて殺人を犯しているという彼に、天才科学者・湯川が立ち向かう 。
★収録作品★
落下る(おちる)
操縦る(あやつる)
密室る(しめる)
指標す(しめす)
撹乱す(みだす)
***
〝探偵ガリレオ〟〝予知夢〟に続くガリレオの短編シリーズ第三弾。
前二作に比べて科学トリックは大人しめになっていますが、
昨秋ドラマ化された〝ガリレオΦ〟の元ネタになった短編が収録されているほか、
序盤には登場しなかった内海薫刑事(柴咲コウ演ずる刑事)が登場したり、
理論一辺倒だった湯川準教授に人間味が身についていたりと
ドラマファンには(もちろんそうじゃなくても)楽しめる内容になっています。
まあ、私は自信家で理屈屋の湯川学のほうが好きだけどね。。。
評価が分かれそうなところです。
「悪魔の手」と名乗る者から、警察と湯川に挑戦状が届く。
事故に見せかけて殺人を犯しているという彼に、天才科学者・湯川が立ち向かう 。
★収録作品★
落下る(おちる)
操縦る(あやつる)
密室る(しめる)
指標す(しめす)
撹乱す(みだす)
***
〝探偵ガリレオ〟〝予知夢〟に続くガリレオの短編シリーズ第三弾。
前二作に比べて科学トリックは大人しめになっていますが、
昨秋ドラマ化された〝ガリレオΦ〟の元ネタになった短編が収録されているほか、
序盤には登場しなかった内海薫刑事(柴咲コウ演ずる刑事)が登場したり、
理論一辺倒だった湯川準教授に人間味が身についていたりと
ドラマファンには(もちろんそうじゃなくても)楽しめる内容になっています。
まあ、私は自信家で理屈屋の湯川学のほうが好きだけどね。。。
評価が分かれそうなところです。
「非日常の楽しみならば、素敵なレストランがあるものね」
下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の
心と舌をつかむものばかり。そんな名シェフは実は名探偵でもありました。
常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか?
甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
……絶品料理の数々と極上のミステリ7編をどうぞご堪能ください。
★収録作品★
タルト・タタンの夢
ロニョン・ド・ヴォーの決意
ガレット・デ・ロワの秘密
オッソ・イラティをめぐる不和
理不尽な酔っぱらい
ぬけがらのカスレ
割り切れないチョコレート
***
のほほんとした雰囲気がかわいいミステリ。
店員たちにもそれぞれ個性があって楽しい。
ただ惜しむらくは、本作の探偵役であるシェフ・三舟が一番影が薄いこと。
何だかFF12のヴァンや逆転裁判4の王泥喜を彷彿とさせるような。。。(ゲームしない人
わからなくてすいません)
終始無言で(まあ無口という設定なので仕方ないですが)ラストにちょろっと出てきて
ぼそっと謎解決してまた引っ込んでいく、というのはあまりに登場頻度が。。。
あともう少し活躍させてあげてほしかった。
不服な点といえばもうひとつ、やっぱり料理ものを小説で書かれると、
料理名が出てきたときにどういう食べ物なのかさっぱりわからないところ。
単に言葉の響きだけを楽しめばいいのかもしれませんが、やっぱり盛り付けや素材に
魅力のあるフランス料理、絵的にも楽しめればなあとちょっと残念。
ヴァン・ショー(ホットワイン)は唯一知ってましたが、雑誌に連載時はいいだろうけど
単行本では毎回毎回一気に出てくるので「またかよ」とちょっと鬱陶しかった。
トリックや動機は基本的に女性作家ならではの発想のものが多いので、
女性のほうが本作は楽しめるしより登場人物たちの心情を理解できるかもしれません。
ちなみにフランス料理ものなら私は(マンガではあるけど)
こっち↓のほうがずっと面白かったな。おすすめ。
下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の
心と舌をつかむものばかり。そんな名シェフは実は名探偵でもありました。
常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか?
甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
……絶品料理の数々と極上のミステリ7編をどうぞご堪能ください。
★収録作品★
タルト・タタンの夢
ロニョン・ド・ヴォーの決意
ガレット・デ・ロワの秘密
オッソ・イラティをめぐる不和
理不尽な酔っぱらい
ぬけがらのカスレ
割り切れないチョコレート
***
のほほんとした雰囲気がかわいいミステリ。
店員たちにもそれぞれ個性があって楽しい。
ただ惜しむらくは、本作の探偵役であるシェフ・三舟が一番影が薄いこと。
何だかFF12のヴァンや逆転裁判4の王泥喜を彷彿とさせるような。。。(ゲームしない人
わからなくてすいません)
終始無言で(まあ無口という設定なので仕方ないですが)ラストにちょろっと出てきて
ぼそっと謎解決してまた引っ込んでいく、というのはあまりに登場頻度が。。。
あともう少し活躍させてあげてほしかった。
不服な点といえばもうひとつ、やっぱり料理ものを小説で書かれると、
料理名が出てきたときにどういう食べ物なのかさっぱりわからないところ。
単に言葉の響きだけを楽しめばいいのかもしれませんが、やっぱり盛り付けや素材に
魅力のあるフランス料理、絵的にも楽しめればなあとちょっと残念。
ヴァン・ショー(ホットワイン)は唯一知ってましたが、雑誌に連載時はいいだろうけど
単行本では毎回毎回一気に出てくるので「またかよ」とちょっと鬱陶しかった。
トリックや動機は基本的に女性作家ならではの発想のものが多いので、
女性のほうが本作は楽しめるしより登場人物たちの心情を理解できるかもしれません。
ちなみにフランス料理ものなら私は(マンガではあるけど)
こっち↓のほうがずっと面白かったな。おすすめ。
こいつらを殺すために生まれたのだから、こいつらを殺すしか方法を知らない。
白のスーツを身にまとう眉目秀麗な荒城咲之助、
学ラン姿に近未来的な義手を持つ真野原玄志郎。
二人の名探偵と、わたし殿島直紀が挑む雲上都市の謎。
楽園の地下に潜む、座吾朗とは何者なのか?そして連続殺人に隠された真実とは?
気障で美形の探偵&わらしべ義手探偵。二人の名探偵が織りなす抜群の物語性と、
ラストに明かされる驚愕のトリック。
第17回鮎川哲也賞受賞作。
***
なんてこった。。。
数年前からプロットをたてていた自作長編と本作、トリックが一部かぶってしまった。。。
でもどうしても書きたいのでこれはこれ、それはそれでいくけど。。。(TT)
と、私事は置いといて、
著者が自らの作品をして「変な物語」と連呼するほど変な物語だとは思わなかった。
むしろ典型的・模範的本格ミステリに思えたけど(メフィスト系の読みすぎだろか?)。
探偵とワトソン役の性格がかなり島田荘司氏の御手洗シリーズとかぶってたけど、
本作には本作なりの個性もちゃんと出ていたし、文章がしっかりしているので(ところどころに
くすりと笑えるポイントもあるし)最後まで楽しく読めた。
時代設定が昭和初期だということをミステリ的欠点の逃げ道にしている感もあったけど
(本作中の謎は時代が今なら一発でバレる。というか昭和初期でもわからんもんかなあ? と
ちょっと首をひねってしまった)、そして
著者が続編を書く気満々なのがあからさまにうかがえるのが(悪い意味じゃなく)笑えたけど、
まあまあの佳作なのではないかと思う。
ただ真犯人については、もうちょっと伏線がほしかったかな。
でなきゃあんなのわかるわけないし、正体がわかったところでインパクトに欠けるし。
初期の御手洗シリーズ的雰囲気があるので、今の同シリーズに不満を感じている人には
おすすめ。
島田荘司氏もまたこういう空気感の御手洗&石岡を書いてくれないものかなあ。。。
白のスーツを身にまとう眉目秀麗な荒城咲之助、
学ラン姿に近未来的な義手を持つ真野原玄志郎。
二人の名探偵と、わたし殿島直紀が挑む雲上都市の謎。
楽園の地下に潜む、座吾朗とは何者なのか?そして連続殺人に隠された真実とは?
気障で美形の探偵&わらしべ義手探偵。二人の名探偵が織りなす抜群の物語性と、
ラストに明かされる驚愕のトリック。
第17回鮎川哲也賞受賞作。
***
なんてこった。。。
数年前からプロットをたてていた自作長編と本作、トリックが一部かぶってしまった。。。
でもどうしても書きたいのでこれはこれ、それはそれでいくけど。。。(TT)
と、私事は置いといて、
著者が自らの作品をして「変な物語」と連呼するほど変な物語だとは思わなかった。
むしろ典型的・模範的本格ミステリに思えたけど(メフィスト系の読みすぎだろか?)。
探偵とワトソン役の性格がかなり島田荘司氏の御手洗シリーズとかぶってたけど、
本作には本作なりの個性もちゃんと出ていたし、文章がしっかりしているので(ところどころに
くすりと笑えるポイントもあるし)最後まで楽しく読めた。
時代設定が昭和初期だということをミステリ的欠点の逃げ道にしている感もあったけど
(本作中の謎は時代が今なら一発でバレる。というか昭和初期でもわからんもんかなあ? と
ちょっと首をひねってしまった)、そして
著者が続編を書く気満々なのがあからさまにうかがえるのが(悪い意味じゃなく)笑えたけど、
まあまあの佳作なのではないかと思う。
ただ真犯人については、もうちょっと伏線がほしかったかな。
でなきゃあんなのわかるわけないし、正体がわかったところでインパクトに欠けるし。
初期の御手洗シリーズ的雰囲気があるので、今の同シリーズに不満を感じている人には
おすすめ。
島田荘司氏もまたこういう空気感の御手洗&石岡を書いてくれないものかなあ。。。
救いたい。
こんどは、なんとしてでも。
臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という
二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を
受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。
それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。
その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。
美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、
調査をしてみようと決意する。
美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力をえて、
福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。
しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。
『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。
***
二時間ドラマ、といった程度のミステリ。
犯人は相当早い段階で察しがつくし、登場人物たちの浅はかさも話の展開も
まんまテレビのサスペンスドラマ。
まあ、〝このミス大賞〟の大賞受賞作はだいたいいつもこんな感じだけど。
(東山彰良氏の〝逃亡作法〟と深町秋生氏の〝果てしなき渇き〟だけは
ちょっと毛色が違うけど。前者の作家さんは今でもファンです)
あまり深く考えずに読めば面白いのでしょうが、じっくり読むと
突っ込みポイントがあまりに多すぎて笑えるを通り越して最早疲れる。
著者の表現の稚拙さ、それに(これは校正の人と編集者に問題がありそうだけど)
誤字脱字のあまりの多さ。
あと何と言っても主人公の臨床心理士のあまりにひどいキャラ設定。
人の心を読み解くプロでありながら今どき素人でも知っている〝プロファイリング〟を知らないし、
第三者にクライアントの打ち明けた悩みをベラベラ喋ってしまうアホっぷり。
私なら絶対にこの人には診てもらいたくない。
少年の特殊能力もあまり作中で有効に使われてないし(必要だったのか、あれ? ていうか
「能力があるから、言葉がなくてもその声だけで失語症の彩の言いたいことがわかった」って
言ってたくせに「音楽は歌詞のないもののほうが好きだ。歌詞があるとそこから感情が
伝わってきてしまう」って。。。あんた言ってること矛盾してないか?
結局言葉と声どっちで相手の感情読み取ってんだよ)。
そしてクライマックス。
主人公が犯人に叫んだ言葉には「確かにそうだ」と感動させられたけど、
何もフェラチオして犯人が絶頂に達した瞬間を狙って反撃しなくても、
噛み切るか握り潰すかすればいいだけじゃん。
まあそれじゃストーリーの流れ的に美しくないからそうしたんだろうけど。
タイトルセンスはすごくあるので(それに惹かれて手にとったぐらいだし)
この題名だけは忘れないだろうけど、中身はまったく印象に残らなかったので
早々に記憶から消える可能性高し。
テレビドラマが好きな人には楽しめるんじゃないでしょうか。
こんどは、なんとしてでも。
臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という
二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を
受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。
それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。
その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。
美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、
調査をしてみようと決意する。
美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力をえて、
福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。
しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。
『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。
***
二時間ドラマ、といった程度のミステリ。
犯人は相当早い段階で察しがつくし、登場人物たちの浅はかさも話の展開も
まんまテレビのサスペンスドラマ。
まあ、〝このミス大賞〟の大賞受賞作はだいたいいつもこんな感じだけど。
(東山彰良氏の〝逃亡作法〟と深町秋生氏の〝果てしなき渇き〟だけは
ちょっと毛色が違うけど。前者の作家さんは今でもファンです)
あまり深く考えずに読めば面白いのでしょうが、じっくり読むと
突っ込みポイントがあまりに多すぎて笑えるを通り越して最早疲れる。
著者の表現の稚拙さ、それに(これは校正の人と編集者に問題がありそうだけど)
誤字脱字のあまりの多さ。
あと何と言っても主人公の臨床心理士のあまりにひどいキャラ設定。
人の心を読み解くプロでありながら今どき素人でも知っている〝プロファイリング〟を知らないし、
第三者にクライアントの打ち明けた悩みをベラベラ喋ってしまうアホっぷり。
私なら絶対にこの人には診てもらいたくない。
少年の特殊能力もあまり作中で有効に使われてないし(必要だったのか、あれ? ていうか
「能力があるから、言葉がなくてもその声だけで失語症の彩の言いたいことがわかった」って
言ってたくせに「音楽は歌詞のないもののほうが好きだ。歌詞があるとそこから感情が
伝わってきてしまう」って。。。あんた言ってること矛盾してないか?
結局言葉と声どっちで相手の感情読み取ってんだよ)。
そしてクライマックス。
主人公が犯人に叫んだ言葉には「確かにそうだ」と感動させられたけど、
何もフェラチオして犯人が絶頂に達した瞬間を狙って反撃しなくても、
噛み切るか握り潰すかすればいいだけじゃん。
まあそれじゃストーリーの流れ的に美しくないからそうしたんだろうけど。
タイトルセンスはすごくあるので(それに惹かれて手にとったぐらいだし)
この題名だけは忘れないだろうけど、中身はまったく印象に残らなかったので
早々に記憶から消える可能性高し。
テレビドラマが好きな人には楽しめるんじゃないでしょうか。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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