忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

打て。



高3の夏、復讐は突然はじまった。
中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。
犯行予告からトロ吉が浮び上がる。
4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、
転校したトロ吉の行方は誰も知らなかった。
光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが――。
やるせない真実、驚愕の結末。高3の終らない夏休みを描く青春ミステリ。

***

荻原浩氏は文体がのほほんとしてるので、こういうどちらかというとシリアスな話は
内容と文章が一致してなくて違和感がある上にスリルを感じられなくて
のめり込みづらいんだよな。。。
しかもたぶんミステリ読み慣れてる人なら最初の段階でオチが読めます。
そのオチの読めっぷりときたら、(わざわざ名前を挙げるのも失礼ですが)東野圭吾氏の
〝ゲームの名は誘拐〟に相通じるものがある(敵役がなかなか姿を現さないところなんか特に)。
挙げ句、筆者の〝いじめはよくないよ〟という教訓が透けて見えてしまっていて、
仮に子どもが読んだとしても
「うわー、人をいじめるとこんな目に遭うんだ。いじめなんてやめておこう」
とビビるよりは
「うわー、この本、ホラー小説かと思ってたら『イジメはやめましょう』ってお堅い教科書みたいじゃん」
と見透かされてしまう確率のほうが高い。
(だいたい、いじめの筆頭だった少年が、ラストでさんざんな目に遭いながらも支えてくれる彼女が
そばにつきっきり、なんて設定じゃ温い上に全然悲壮感がないし)
また、一人一人の復讐のされ方もなんだか地味で(とはいえ二人も死人が出ているので、やっぱり
荻原氏の描写ののほほんぶりにやはり問題があるのでしょうが)ホラーサスペンスの割りに
手に汗握るといったことがまったくなかった。

荻原氏は好きだけど、本作はあんまりおすすめしません。
特にミステリ好きの人には。
PR
それらのすべては繋がっている。



人類の睡眠時間は日ごとに減っていった。
地球では放射能汚染が広まり、オゾンホールからは紫外線が容赦なく降り注ぐ。
スペースアイランド〝飛翔〟でも、睡眠時間減少は変わらなかった。
そこで科学者たちが集まってその謎を解こうとするのだが…。
すべての鍵は「眠り」にあった。

***

。。。この著者がSF作家だってことを忘れてた。。。
瀬名秀明氏や貴志祐介氏が書くような、フィクションではあってもあくまで現実の域を逸脱しない
科学ミステリを想定して読んだのがそもそもの間違いだった。。。

人間の睡眠時間が減少するのはなぜか、それを解明するために集まった学者たちも
それぞれの得意分野を発揮するためにいるにも関わらず、話す内容といえば
ちょっとした科学マニアなら誰でも知ってるようなチンケな推論ばかりだし、
その推論を戦わせるシーンすらほとんどなく、内容の大部分はヒロイン・ダイアンを中心とした
面白みもなく話の筋に関係があるとも思えない男女間の陳腐極まりない愛憎劇、
何より主人公・ダイアンが自己中・自信過剰・ナルシストと三拍子揃っていて
どうしたって好きになれない。
ていうか思い返してみれば、本作の中に好感を持てたキャラは一人もいなかった気が。

オチも多少ロマンチックではあるもののいい歳した大人には拍子抜けはなはだしい。
小中学生だったら中には素直に感動する子もいるかもしれないけど、
スレた私は思わず(物語の途中経過にもイラついていただけに)鼻で笑ってしまった。
本作を読むぐらいなら、冗談抜きでマンガ〝ぼくの地球を守って〟を読んだほうがずっと
感動できる。
物語のコンセプト(作者の言わんとすること)もちょっとかぶってるし(レベルは
天と地ほど違いますが)。

そして本作の最後に登場するある存在にひと言言いたい。
「これ以上ゴミを宇宙にまき散らかすな」
このひと言の意味を理解&共感してくれる人は、きっと私と気が合うでしょう。

あー、鯨統一郎氏好きなのにな。〝オレンジの季節〟以来(以上)にがっかりだった。
地上では、笑えない。



周りには空気しかない。何もない。空の底で生き、戦う「僕」は、空でしか笑えない――。
職業として戦闘を選んだ人間たちのドラマ。
2001年刊〝スカイ・クロラ〟に続く第2弾。

***

今劇場で公開中の映画〝スカイ・クロラ〟



の続編。
けれど時間軸的にはシリーズ中最古・すべてのはじまりを記した物語。

物語のインパクトは第一作目ということもあってスカイ・クロラのほうが上でしたが、
過剰なクサさや薄っぺらさが抜け、そのぶん淡々としつつも登場人物たちの個性・ドラマ性が増した
本作のほうが、私としては好感が持てた。
ストーリーも全体を通してシンプルかつスピーディでテンポよく読み進めることができるし
一つ一つのエピソードも大げさな描写があるわけでもないのにどこか強烈で惹きつけられる。
一作目のヒロイン・クサナギスイトの過去が明らかになるのも非常に興味深いところ。
また、(蛇足ではありますが)彼女のものの考え方、人との距離の置き方が
私と相当似通っていて(私は彼女ほどその部分をあからさまに表に出さず
愛想の下に隠しているけど)
「ああ自分と同じ人間がいた」と読んでいてどこかほっとさせられ精神的に救われた。

それにしても森氏はタイトルがうまいなあ。。。
〝何もない、ただ空だけがある〟=〝None But Air(ナン・バット・エアー)〟=〝ナ・バ・テア〟。
爆撃機の名前とかに普通にありそうだし。

このシリーズはできれば十代のときに読みたかった気がする。
でもそうじゃないほうがよかったのかな。
さもないと「自分もキルドレになりたい」とか言い出しかねないしな私は(今でもちょっとそう思うし)。

おすすめです。
まだ帰さない。



舞台は、急成長の途上にある宗教団体の聖地、神倉。
大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。
室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして
就職活動中の望月、織田も同調、4人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。
〈城〉と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。
外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、
その間にも事件は続発し……。
江神シリーズ待望の書き下ろし第4長編。

***

「優等生的なミステリだなー」というのが唯一の感想。それもあまりよくない意味で。
前作〝双頭の悪魔〟と設定が似すぎていて新鮮味がなく、
犯人も影が薄いため真相が明かされたときのインパクトが弱い。
著者は格好いいつもりであろう某アクションシーンも何だか昭和のにおい漂う古めかしさで
「いまどきこれは。。。」と微苦笑してしまったし。
大自然や建築物を使った大掛かりなトリックはやはり島田荘司氏のほうが圧倒的にうまいなと
思ってしまった。
唯一興味深かったのは探偵役・江神の過去がようやく(氷山の一角ほどではあるけど)
明かされる点、
その仲間であるミステリ研の面々の個性(特に望月&織田)が
前3作に比べて際立ってたところぐらい。

全体的に、構成もストーリーもすごくきれいにまとまっていて決してつまらなくはないんだけど、
これだけのページ数&しかもこれほど期間を空けて出版されたシリーズ最新作にしては
あまりにミステリとして面白みが欠けるのでは。楽しみにしていただけに残念。
もっとこっちをあっと言わせる遊び的仕掛けがあってもよかったのにな(せめて麻耶雄嵩氏の
10分の1くらいは笑)。
だから本作がミステリ大賞を獲ったのも個人的には微妙。。。もちろん決して
駄作ではないんですが。

むしろミステリ小説としてより、中盤で貼られたマリア×アリスの会話の伏線が
ラストで見事に生かされていたところにドラマ的感動を覚えてしまった。

以前有栖川氏に、某ミステリ新人賞の選評で
「ドラマ部分は書きなれている印象なのにミステリ部分が拙い」
と評された私ですが、奇しくも本作では私が氏の小説に対して同じ感想を抱いてしまった。

そろそろこのシリーズも終わりに近づいているようなので、
完結巻までは見限らずに新刊の刊行を待ち続けるし絶対に読むつもりだけどね。
「I know」



「西の魔女」とは、中学生の少女・まいの祖母のこと。
学校へ行けないまいは、田舎の祖母のところで生活することに。
まいは、祖母の家系が魔女の血筋だと聞く。祖母のいう魔女とは、
代々草木についての知識を受け継ぎ、物事の先を見通す不思議な能力を持つ人だと知る。
まいは自分も魔女になりたいと願い、「魔女修行」を
始める。この「魔女修行」とは、意志の力を強くし、何事も自分で決めること。
そのための第一歩は規則正しい生活をするといった地味なものだった。
野苺を摘んでジャムをつくったり、ハーブで草木の虫を除いたりと、
身近な自然を感じながらの心地よい生活が始まる。次第にまいの心は癒されていく。
魔女はいう。
「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
そしてまいは、この「西の魔女」から決定的なメッセージをうけとるのだった……。

★収録作品★

 西の魔女が死んだ
 渡りの一日

***

映画化されてますね。
有名な女優・シャーリー・マクレーンの娘さん、サチ・パーカーさんが
〝魔女〟の役を演じています。ご両親共に親日家で、サチという名前も
日本語の〝幸子(Blessed Child)〟を意味するそうです。
と、映画の話はまあいいとして。。。

とても心地いい文体で、一日で読み終えてしまいました。
読み終えて最初の感想。
「あ、魔女になろう、自分も」
地道にがんばれば誰にでも道は拓けているみたいだから。

私にはアメリカ人の叔父がおり、日本人の親戚と違って
私への愛情表現も自分の考えも語り継ぐべき大切なことも皆照れずにストレートに伝えてくれる
叔父のそのやり方がとても好きなのですが、本作の主人公・まいの祖母である
生粋の英国人の祖母も、まさにそんなやり方で自然に、押し付けがましくなく、
大切なことを孫に教えていきます。
それも、いかにも大人が子どもを諭しているというようなお堅い方法じゃなく、
〝魔女のなり方〟というユーモラスでミステリアスなモチーフを交えることで
柔らかく解きほぐしながら。

〝西の魔女が死んだ。〟
というショッキングな一文で始まるこの物語ではありますが、
読み進めるうちにまいと同化した心が少しずつ〝生〟の意味を理屈ではなく感覚で
読むものに教えてくれます。
併録の〝渡りの一日〟とあわせて、ラストにちょっとしたサプライズが待っているところなんかは
ミステリ好きの人にもおすすめかも。

窮屈に凝り固まったものの考え方をほんの少ししなやかにしてもらった、
読み終えたときそんな気がした。

BGMにはもちろんこれをどうぞ。


手嶌葵さんも学生時代に登校拒否経験があるそうです。
だからこんなにも歌声がこの物語にマッチするのかな。

わかるかなあ? 人間ごときに。



神の声が聴こえる娘と、その家族を描く著者初の<長編小説>

「でも最近の神様ちょっと考えすぎだと思うんだよね」
「そういうこと言うから家族がぐちゃぐちゃになっちゃうんでしょ」

『恋愛の解体と北区の滅亡』『グレート生活アドベンチャー』に続く意欲作!!

***

キリスト教が現れてから世界で自殺者が増えた、という説がある。
彼があまりに完璧すぎて、その完璧なる存在と自分とを比べて絶望する人間が増えたというのが
その理由。
対する古代ギリシャ神話の神々は、皆人間以上に人間くさく、
やりたい放題ワガママ放題でもう滅茶苦茶、しかしかえってそれが人々をして
「神様がこうなんだから自分たちもこれでいいんだ」と思わせ、
己の無力や至らなさへの嫌悪や苦しみを軽減してくれた、と、そんなお話。
本作に登場するのは後者の神様。でも寂しがりだったり人肌の温もりを欲しがったり
より一層人間ぽくて、アリだよなこんな神も、と読んでいて何かほっとするような感じ。
かしこまりひざまづく感じじゃなく、思わず後ろから抱きつきたくなるような(前からはさすがに
畏れ多い)、
崇高ながらもどこか等身大な、とても魅力的な神様だった。

というか人にとっての〝絶対神〟はやっぱり、たった一人の生身の人間なんだよな。
家族小説と銘打つ本作、だから私には恋愛小説に思えた。
惚れたはれたの上っ面のことじゃなく、男女のもっと深い部分に根ざした、
原始的な感情を描いたもの。
なので〝リオ〟〝ナオ〟の二人の娘たちはもうちょっとエキストラ扱いでよかった気が。

全編にわたって改行が一切なく、父・母・長女・次女の一人称が溶け合うように変化し巡っていく
(なんだか〝ちびくろサンボのトラバター〟を思わせる)不思議な文体も、
「そうそう、それぞれが一見独立してるように見えても、
実は同じ一つのキーワードで繋がってるんだよね」
と、ネット検索をかけた際にいくつものサイトがヒットしたとき、もしくは
リンクをたどって新しいサイトからサイトへ飛びまわっているときのような共感を抱かせては
くれるのですが、ストーリーそのものがフィクションというよりは著者の散文(エッセイ)といった感じ
なので、
〝皆が一つに繋がっている〟
というよりは
〝著者の自作自演て感じだな〟
の印象が強い。
まあ、著者=神、なわけだから、そう捉えるのも一つの正解なのかもだけど。
登場人物たちが頻繁に口にする「もし自分たちの存在が神の想像に過ぎなかったら」も、
その伏線と捉えることもできるわけだし。

ラストはちょっと無理やりタイトルと絡めて不自然にまとめてるなあ、といった印象。
著者の前田氏には失礼ですが、この手の物語は、舞城王太郎氏なら
もっとうまく書いただろうなあというのが最たる感想。どこか作風が似てるし。どうせ似てるなら
描写力が(あくまで私的にですが)優れているほうの作家に書いてほしい。

ラストがあんな陳腐じゃなかったら
芥川賞候補ぐらいになっていてもおかしくない作品ではあったけどね。
――そう。星に祈ろう。



第19回小説すばる新人賞受賞第一作
特別な存在でありたいと願う中3のはるき。
ある日、同級生の草太の家に隕石が落ちて来たことに嫉妬して、UFOが呼べると言ってしまい…。
星はめぐり、人々はつどう。生の輝きを描く瑞々しい連作集。 

★収録作品★

 ルナ 
 夏空オリオン
 流れ星はぐれ星
 惑星軌道

***

すばる新人賞出身者の中にはありえないほどクサい物語を書く人が多く
(もともとが若い女性向けの青春小説といった作品が受賞することが多いので
仕方ないのかもしれませんが。ってそういやあ先日紹介した関口尚氏もこの賞出身だなあ。。。)
本作も(ちょっと言いすぎかもしれませんが)読んでいて寒気を感じるシーンがしばしば。
だって台詞回しもストーリー展開もヘタな少女マンガよりよっぽど少女マンガなんだもん。
この物語を「読んでるこっちが恥ずかしいよ」と顔を赤らめることなく最後まで読みきれる人は、
女子中学生か根っからのロマンチストぐらいなんじゃないでしょうか。

残念なことにそんな少女マンガテイストとシリアスで深みある表現が
どうにもうまく溶け合ってないんだよなあこの物語は。
互いが互いの魅力を相殺してしまっているというか。
水森さんの独特かつ絶妙な描写に「うまいなあ。。。」と感動しても、その直後に
「あたし、○○のことが好きッ!」みたいなベタ台詞&展開が続くとさすがに興ざめ。

だいたい私には(個人的な話になりますが)親に虐げられて育った友人が多いので、
「おまえは本当は望まれて生まれてきた子じゃなかったんだ」
と平気で実の息子に告げる両親の非常識っぷりが
(悪意がないぶん)相当に不快で仕方なかった。
なのにその父親は、入院すれば皆が見舞いに来るような好人物って。。。何その矛盾。

著者がまだ新人だから仕方ないのかもしれないけど(&デビューもしていない私が
偉そうに言えた義理じゃないけど)、テーマもキャラもそれなりに立ってはいるけど
どこか輪郭が曖昧な感じで、読後も大した感慨は抱けなかった。
というかむしろ伝えたいテーマの描き方があまりに直球過ぎて、
「あーもうわかったよわかりすぎるほどにわかったからいいよもう勘弁して」と
赤面してしまうというか。
。。。どっちなんだ? よくわからない。
。。。。。。どっちもか。

テーマはくっきりと、けれど読み手がそれを著者から押し付けられるのではなく
自分で自然と気づけるように、次回作は書いてくれるとこの作家さんのことは
もっと好きになれる気がします。
デビュー作〝でかい月だな〟はすごくよかったし。

でも本作もラストはとてもよかったですが。
バラバラの星の集まりの銀河系だって遠くから見たらこんななんだよなそういえば、と、
少し世界と繋がれた気がした。

our_galaxy_e.jpg





まるで一つの生き物だ。




ちなみに本作が気に入った人は角田光代さんの〝空中庭園〟も
好きになる気がするのでおすすめ。



蛇足:この著者ひょっとして〝ピューと吹く! ジャガー〟読んでる?
だって〝大人はしょせん老けた子供〟って表現。。。
好きだ。



地方都市の映画館でアルバイトを始めた恵介。
そこで出会った映写技師の杉本ルカは、外へ一歩も出ることなく映写室で生活しているらしい。
バイト採用の条件は、不可解な三つの約束を守ることだった――。
切なく胸を打つ、感動の青春ミステリー。

***

ぬるいなあー、というのが率直な感想。ミステリとしても物語としても。

レイジという男は妙にキャラが立っていて彼が登場するシーンだけは面白く読めましたが、
それ以外の登場人物たちは皆没個性的で、何だかヘタな少女マンガでも読んでいるよう。
彼らの抱えるトラウマもどれもがあまりにありがちすぎて「ふうん、まあよくあることだよね」
としか思えない。
吉本ばななさんのある作品に、本作のヒロイン・ルカと同じ傷を持つ少女が出てくる話が
あるのですが、同じは同じでもその傷との向き合い方や抱え方、そして
それを乗り越えていこうとする意志とその過程で生じる葛藤、そういった描写の一つ一つに
あまりに実力差がありすぎて(もちろんばななさんのほうが上)、
これを読むぐらいならばななにしとけ、といった感じです。

ルカが引きこもっていた理由も「は? 300P以上引っ張っといてそれだけ?」
としか思えなかったし、
主人公が終盤でルカに想いを告げる際の台詞も
「幼少時にかなり重い体験してきた割には言う言葉がお粗末だな」
と違和感を感じてしまった。
ルカが高校時代ある人物によってひどいコンプレックスを植えつけられ、未だにそれから
抜け出せていないという割には、主人公の弟(イケメン)が
自分を気に入ってくれていたということをあっさりと口にするのも?だし。
悪いけど自分に自信ある女じゃなきゃあんな台詞吐かないよ。

テーマ&導入部だけがやたらと面白く、でも結局は尻すぼみ+ありがちENDという
山田○介的においを感じさせる作品だった。
関口氏は文章が圧倒的にうまいのであれとまったく同列に扱うのは失礼にもほどがあるけど。

あらすじがあまりに興味をそそられる内容だったのでちょっと期待しすぎたなー。
ミステリとして読むのはやめたほうがいいです。ラブストーリー好きの人にはおすすめ。
「信じたかったから、信じた。それだけのことですよ」



連続する幼女誘事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。
若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。
こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。
人は耐えがたい悲しみに慟哭する――
新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈デビュー作。

***

初読がコレ↓だったため(そしてまだ私の本読みキャリアが浅かったため)、



「なんじゃこりゃあーこんな腹立たしいもん書く作家の本二度と読むかあ~!!!」と
ぶちキレて以来一切手をつけていなかった貫井作品。
。。。。。。
とんだ偏見でしたごめんなさい貫井さん。
わずか二十五歳にしてこれだけのものを書けるあなたを心底尊敬します。
ミステリ作家を目指すものとして驚嘆に値する作品でした(そして自分と比べて
けっこうへこみました)。

本作最大の〝真相〟にはかなり早い段階から気づいてしまいましたが、
それでも物語自体が面白く少しも退屈することなく一気に読破。
単なるエンタメでは片付けられないラストにはひどく考えさせられ深みすら感じました。

そしてタイトルにもなっている〝慟哭〟、
終盤である人物がその〝慟哭〟をしてみせる様は、ヘタすると
ミステリ部分よりも意外かつ衝撃的で思わずこっちが慟哭しそうになってしまった。
ものすごいインパクトだった。

ミステリを読みなれてる人はやはりトリックはすぐに見破れてしまうでしょうが、
それを補ってあまりある面白さ(ラスト間際の、主人公の愛人の〝カマかけ〟は
やや蛇足だった気がしないでもないけど)。おすすめです。

余談ですが本作が気に入った人はこれ↓もおすすめ。信仰宗教のヤバさが
これでもかと描写されていてかなり面白いです。

Give and Takeでいこうじゃないか。



産婦人科医・笹川賢一にとってルチアーノとの出会いが破滅の始まりだった。
この執拗なおカマの尾行者のために、笹川氏の世界はハチャメチャな逆転をとげる。
優雅な「上流社会」からの脱落、家庭崩壊、そしてエイズ。
その中で笹川氏が得た真理と救済とは?
エイズを通じて人間の生の深淵をえぐる問題作。 

***

UFOならぬUSO。
〝介護入門〟で芥川賞を受賞したモブ・ノリオ氏が以前インタビューで
「友人から借りて読んだらあまりに面白く自分で買いなおした」と言っていたこと&
タイトルのインパクトに惹かれ手に取った一品。

島田氏ならではの独特かつ絶妙な文章表現、
ルチアーノをはじめとする登場人物たちの今にもこちら側の世界に飛び出してきそうな
人間くささと個性、
SF混じりの純文学といった内容が終盤でサスペンス・ミステリに〝突然変異〟する
その世界観の多様性、
面白かった。魅せられました。

ただ、どっかのカルト教団の教祖(もしくは自己啓発本)あたりが主張してそうな薄っぺらな理屈が
ところどころに見受けられて、いくら少し昔の作品とはいえそれはあまりに陳腐なのでは、と
首をひねることも数回。
プロ作家の割にものの捉え方が平凡というか既に手垢がついている感じというか(島田作品は
これが初読なので、あくまでこの物語に限った感想ですが)。
島田氏が本作で三島由紀夫賞を逃したのはそこらへんが関係あるんじゃ、と
つい考えてしまった。

全体的には良作です。
蛇足ですが、本作がツボな人は、絶対にこれ↓も好きだと思う。



逆もまた然り。片方が気に入ったら是非もう片方も読んでみてください。

蛇足2:ここで紹介しているのは文庫版ですが、単行本のほうが
表紙は圧倒的にかっこいいです。
なので中古で買う人はそっちがおすすめ。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]