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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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わかるかなあ? 人間ごときに。



神の声が聴こえる娘と、その家族を描く著者初の<長編小説>

「でも最近の神様ちょっと考えすぎだと思うんだよね」
「そういうこと言うから家族がぐちゃぐちゃになっちゃうんでしょ」

『恋愛の解体と北区の滅亡』『グレート生活アドベンチャー』に続く意欲作!!

***

キリスト教が現れてから世界で自殺者が増えた、という説がある。
彼があまりに完璧すぎて、その完璧なる存在と自分とを比べて絶望する人間が増えたというのが
その理由。
対する古代ギリシャ神話の神々は、皆人間以上に人間くさく、
やりたい放題ワガママ放題でもう滅茶苦茶、しかしかえってそれが人々をして
「神様がこうなんだから自分たちもこれでいいんだ」と思わせ、
己の無力や至らなさへの嫌悪や苦しみを軽減してくれた、と、そんなお話。
本作に登場するのは後者の神様。でも寂しがりだったり人肌の温もりを欲しがったり
より一層人間ぽくて、アリだよなこんな神も、と読んでいて何かほっとするような感じ。
かしこまりひざまづく感じじゃなく、思わず後ろから抱きつきたくなるような(前からはさすがに
畏れ多い)、
崇高ながらもどこか等身大な、とても魅力的な神様だった。

というか人にとっての〝絶対神〟はやっぱり、たった一人の生身の人間なんだよな。
家族小説と銘打つ本作、だから私には恋愛小説に思えた。
惚れたはれたの上っ面のことじゃなく、男女のもっと深い部分に根ざした、
原始的な感情を描いたもの。
なので〝リオ〟〝ナオ〟の二人の娘たちはもうちょっとエキストラ扱いでよかった気が。

全編にわたって改行が一切なく、父・母・長女・次女の一人称が溶け合うように変化し巡っていく
(なんだか〝ちびくろサンボのトラバター〟を思わせる)不思議な文体も、
「そうそう、それぞれが一見独立してるように見えても、
実は同じ一つのキーワードで繋がってるんだよね」
と、ネット検索をかけた際にいくつものサイトがヒットしたとき、もしくは
リンクをたどって新しいサイトからサイトへ飛びまわっているときのような共感を抱かせては
くれるのですが、ストーリーそのものがフィクションというよりは著者の散文(エッセイ)といった感じ
なので、
〝皆が一つに繋がっている〟
というよりは
〝著者の自作自演て感じだな〟
の印象が強い。
まあ、著者=神、なわけだから、そう捉えるのも一つの正解なのかもだけど。
登場人物たちが頻繁に口にする「もし自分たちの存在が神の想像に過ぎなかったら」も、
その伏線と捉えることもできるわけだし。

ラストはちょっと無理やりタイトルと絡めて不自然にまとめてるなあ、といった印象。
著者の前田氏には失礼ですが、この手の物語は、舞城王太郎氏なら
もっとうまく書いただろうなあというのが最たる感想。どこか作風が似てるし。どうせ似てるなら
描写力が(あくまで私的にですが)優れているほうの作家に書いてほしい。

ラストがあんな陳腐じゃなかったら
芥川賞候補ぐらいになっていてもおかしくない作品ではあったけどね。
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ありがとうございました! 
温かいコメントをありがとうございました!(^^)
お礼を言いたくなったので来ました!

『夜市』の絵は、描きかけで止まっていますがちゃんと制作中です!明日からまた続きを描ける状態になったので、もうしばらく待っていてくださいね!

それにしても今回の『誰かが~』もちょっと面白そうです。
最近「神様って本当のところどういうものなんだろう?」って考えたりしていたもので。
いや霊感も何もない私なので考えたところでどうしようもないんですが(^^);

下のジョニー君の歌声も…というか日本語上手っ!!びっくりしましたよ!!
英語ができるfvさんならではの「話しかける」ことができるのも羨ましいです!!(><);

それではまた、体と心、お互いゆっくり癒しましょうね。(^^)
ジンタ URL 2008/06/08(Sun)16:10:56 EDIT
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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