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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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まだ、目が覚めない。



どこまでも、堕ちてゆくような気がした。

違う方向に曲がってみた通学路。いつもと反対方向の電車。
東京駅。
新幹線の乗車口。
見慣れないプラットホーム。
発車のアナウンスと警笛。
駅員さんの白い制服。11号車の待機線。
地面におろしたバッグ……。
「生きてるってどういうこと?」
ナオミ14歳。手を伸ばす旅が、今、はじまる。

彼女の見つけた「永遠」とは……

***

 〝火薬と愛の星〟が(大げさでなく)震えが来るほどよかったので
手にとった森氏の最新作。
基本がジャーナリストで小説はあんまり書いてくれないので
一作一作が非常に貴重な作家さんなのですが。。。

内容だけみれば凡庸だった。
ものすごーーーーく上手く書いた携帯小説(恋空とか)、という感じの展開。
ただ、森氏の文章は表現や使う単語のひとつひとつが非常に斬新で
既存の小説家にはない圧倒的な魅力を持っているので、それにいちいちゾクゾクしながら
読み進めることができた。
本当に、この人の紡ぎ出す言葉はすごい。脳や精神が普通とは違うんだろうな。
私には最早崇拝の域です。

惜しむらくは、登場人物たちの個性が一見あるようであまりなく(というか人間味が感じ取り難い)、
感情移入がしづらいということ。
おそらくは著者が敢えて、感情の半ば麻痺したヒロインのフィルターを通した人々、というふうに
彼女の心象を表しているのだとは思いますが。
それでも、
〝自分の本音と建前の境が曖昧でよくわからない〟、
〝わかってはいるけれどそれをうまくコントロールできない〟
〝コントロールできたとしてもそれをうまくこなしている自分に嫌悪が湧く〟
という、誰もが経験したことがあるであろうあの気持ち悪く苛立つような感情を
ここまでリアルかつ緻密に描くことができるのはこの著者ならでは。
そして男性であるにも関わらず、女の〝雌〟の本能を巧みに描写している点も。
(〝雌〟の本能の描写は最近読んだ〝あなたの呼吸が止まるまで〟にもありましたが、
著者の島本理生さんは女性だしな。それと比べても遜色がないというのがすごい)

ラストはベタですが、主人公が言いかけて途中で止めた台詞を想像したとき
かなり切なくなってしまった。
これで主人公と主人公が最後に語りかける相手にもうちょっと絡みがあればもっとよかったのにな。
まあそれも、主人公は本物の〝その人〟ではなく、半分は自分の頭の中で想像し美化した
〝その人〟に語っているのだと捉えれば辻褄は合うのですが。
ヒロインがその相手を本当にはよく知らないということは物語の端々に書かれていたわけだし。

〝火薬と愛の星〟ほどではないですがおすすめです。

あー森氏、専業作家になってくれないかなー。
もっとこの人の著作が読みたい。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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