彼はモンスターです
あなたはモンスターのいる病院で働いているのです――
性の尊厳を巡る書き下ろし医学サスペンス!
「ひとは男女である前に人間だ」。
インターセックス(男女どちらでもない性器官をもっていること)の人々の魂の叫び。
高度医療の聖地のような病院を舞台に、医療の錯誤と人間の尊厳を問う書き下ろし長編。
***
性同一性障害とは異なり、精神ではなく身体そのものがその人本来の性別とは異なる、または
心身共に両方の性を持ち合わせている、いわゆる〝両性具有者〟――インターセクシャル。
詳しくない人はこちらを見るか、↓このマンガがおすすめです。
というのはまあいいとして。。。
昔から男女間だけではなく生物学としての〝性〟を描き続けてきた作家さんだけあって、
本作もインターセクシャルという特殊な病(障害?)を軸に、
その他女性が(場合によっては男性も)抱える性的な葛藤、日本における性差医療の極端な遅れ、
産婦人科医が減少し続けている日本の現状、そういった諸々を見事に描き出していて
非常に読み応えがあります。
ただ、そういったことにページを割いてしまっているぶん〝物語〟部分が薄っぺらい。
ヒロインが終始淡々と様々な医師や患者たちと上記のような問題について語り合うだけで
ストーリー部分がまったく進まず、それどころか彼女がいろいろな場所に行っては
おいしいものを食べるグルメ紀行的展開が始まり(食べ物の描写がおいしそうなのです、実に)。。。
ヒロインと周囲の人間関係も、誰もかれもがただひたすら彼女をちやほやするだけなので
登場人物たちの関係性に緊張感もなければ当然面白みも見出せず、
終盤でやっとはじめからなかったも同然のミステリ部分の真相が明らかになり、
でもそれもとりたてて驚くほどのものでもなく、気づけば何だか半ば無理やり小綺麗に
風呂敷を畳んで終わった、といった印象。
クライマックスのサプライズ、あれも(確かに驚いたけど)ちょっと卑怯だろ。
プロの作家ならあんな一発ネタじゃなく物語そのもので読み手をあっと言わせてほしかった。
〝受精〟を読んだときの衝撃はハンパじゃなかったのになあ。。。
本作を読んだ一番の感想は
「本当のモンスターは本作で五人の命を奪った〝犯人〟ではなく、
我が子の命を奪ってまで生きようとする、そして
第一子が遺伝性疾患を持って生まれたにも関わらず
『二人目の子供が健常者として生まれてくれれば上の子を助けてくれる』と
身勝手極まりないエゴで第二子を作ろうとする、それに何より
自分の子供が特殊な疾患を持って生まれたということから目を逸らし、
関わりを避け、罪もない子供を責め立て、あまつさえは見捨ててしまう、
そんな〝親〟たちである、ということ。
その点では〝犯人〟は、歪んではいるけれど決して間違ってはいないのだと思う。
本作の前作〝エンブリオ〟から読んでいればもっと犯人である〝彼〟の考えが
わかったのにとひどく後悔中なので、本作に興味を持った人はまずはこちらからどうぞ。
オマケ:
本作にぴったりの曲。映画も名作です。
あなたはモンスターのいる病院で働いているのです――
性の尊厳を巡る書き下ろし医学サスペンス!
「ひとは男女である前に人間だ」。
インターセックス(男女どちらでもない性器官をもっていること)の人々の魂の叫び。
高度医療の聖地のような病院を舞台に、医療の錯誤と人間の尊厳を問う書き下ろし長編。
***
性同一性障害とは異なり、精神ではなく身体そのものがその人本来の性別とは異なる、または
心身共に両方の性を持ち合わせている、いわゆる〝両性具有者〟――インターセクシャル。
詳しくない人はこちらを見るか、↓このマンガがおすすめです。
というのはまあいいとして。。。
昔から男女間だけではなく生物学としての〝性〟を描き続けてきた作家さんだけあって、
本作もインターセクシャルという特殊な病(障害?)を軸に、
その他女性が(場合によっては男性も)抱える性的な葛藤、日本における性差医療の極端な遅れ、
産婦人科医が減少し続けている日本の現状、そういった諸々を見事に描き出していて
非常に読み応えがあります。
ただ、そういったことにページを割いてしまっているぶん〝物語〟部分が薄っぺらい。
ヒロインが終始淡々と様々な医師や患者たちと上記のような問題について語り合うだけで
ストーリー部分がまったく進まず、それどころか彼女がいろいろな場所に行っては
おいしいものを食べるグルメ紀行的展開が始まり(食べ物の描写がおいしそうなのです、実に)。。。
ヒロインと周囲の人間関係も、誰もかれもがただひたすら彼女をちやほやするだけなので
登場人物たちの関係性に緊張感もなければ当然面白みも見出せず、
終盤でやっとはじめからなかったも同然のミステリ部分の真相が明らかになり、
でもそれもとりたてて驚くほどのものでもなく、気づけば何だか半ば無理やり小綺麗に
風呂敷を畳んで終わった、といった印象。
クライマックスのサプライズ、あれも(確かに驚いたけど)ちょっと卑怯だろ。
プロの作家ならあんな一発ネタじゃなく物語そのもので読み手をあっと言わせてほしかった。
〝受精〟を読んだときの衝撃はハンパじゃなかったのになあ。。。
本作を読んだ一番の感想は
「本当のモンスターは本作で五人の命を奪った〝犯人〟ではなく、
我が子の命を奪ってまで生きようとする、そして
第一子が遺伝性疾患を持って生まれたにも関わらず
『二人目の子供が健常者として生まれてくれれば上の子を助けてくれる』と
身勝手極まりないエゴで第二子を作ろうとする、それに何より
自分の子供が特殊な疾患を持って生まれたということから目を逸らし、
関わりを避け、罪もない子供を責め立て、あまつさえは見捨ててしまう、
そんな〝親〟たちである、ということ。
その点では〝犯人〟は、歪んではいるけれど決して間違ってはいないのだと思う。
本作の前作〝エンブリオ〟から読んでいればもっと犯人である〝彼〟の考えが
わかったのにとひどく後悔中なので、本作に興味を持った人はまずはこちらからどうぞ。
オマケ:
本作にぴったりの曲。映画も名作です。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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