忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[293]  [290]  [289]  [287]  [285]  [282]  [286]  [283]  [281]  [284]  [277
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

あぁ。秘密の匂いだ。



消費されて終わる恋ではなく、人生を搦めとり、心を縛り支配し、
死ぬまで離れないと誓える相手がいる不幸と幸福。
優雅で惨めで色気のある淳悟は腐野花(くさりのはな)の養父。
物語はアルバムを逆から捲るように、二人の過去へと遡る。
震災孤児となった十歳の花を若い淳悟が引き取った。空洞を抱え愛に飢えた親子には、
善悪の境も暗い紋別の水平線の彼方。そこで少女を大人に変化させる事件が起き……。
黒い冬の海と親子の禁忌を、圧倒する恐さ美しさ、痛みで描ききる著者の真骨頂。

***

すれ違ったりケンカしたり別れたり。。。そんなとき
愛し合って結婚したはずの男女が口にするのは決まって
「夫婦なんてしょせん他人だから」。
それでいくと本作の主人公二人の恋愛の形はある意味究極形なのだろうと思う。

親子。
同じ傷を持つ。
共犯者。

これだけの繋がりがあれば離れられないのは当然で、だけどそのぶん残酷だ。
万一片方が消えてしまったときに、残された側の心の修復が利かない。
だから男と女は他人で、完璧には分かり合えない、愛し合えないようにできているのかも
しれない。

本作は直木賞を受賞しているだけあり確かに名作ではあるのですが、
終わり方(といっても本作の構成上エンディングは冒頭にきています)が
やや尻切れトンボであったり、
書くべきところを書いていない、その割りに読者が自分の想像で補える部分を
わざわざ書いてしまっていたりと少々描写のバランスが悪い(「おかあさん」のくだりは
ああ何度も書かないほうがやりきれなさが増すし〝父親〟のミステリアスさが保てて
よかった気が)、
そして〝感情らしき感情を持たない、父親以外の人間には無関心〟なはずである
ヒロインの花が、ありがちな嫌悪感を別の女性に抱いたりといったキャラづけの不明確さ、
そういった点が惜しい作品だとも思う。

似たテーマで書かれた物語なら↓のほうがおすすめ(マンガですが)。

 

ところで作中に登場する〝チェインギャング“という絵画、実在はしませんが
この物語を読むとこの絵が(植物じゃなく人間ではあるけど)主人公二人の関係性を
実に的確に表現している気がしてならない。
chaingang.jpg














そしてこの歌も聴くたび彼ら二人の関係性を思い起こさずにはいらない。




それにしても。。。寂しいんだな、皆。
PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]